DAISOネットストアのユーザー数は右肩上がりに成長
まずは冒頭で触れた、DAISOネットストアへの訪問ユーザーの状況を把握しましょう。DAISOネットストアと、同じく大手の100円ショップである「Can Do(キャンドゥ)」のECサイトの訪問ユーザー数を比較します。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使用します。
「DAISOネットストア」「Can Doネットショップ」のサイト訪問者数(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年6月〜2022年5月
デバイス: PC・スマートフォン
上記、青色のグラフがDAISOネットストア、ピンク色が「Can Doネットショップ」のサイト訪問者数です。過去1年の推移を比較すると、Can Doネットショップの訪問者数は一定なのに対して、DAISOネットストアは右肩上がりにユーザー数が伸び続けていることがわかります。
なお、DAISOネットストアは2021年6月に東京都・千葉県・神奈川県の3地域限定でプレオープンし、同年10月に全国展開をしています。先ほどのグラフと照らし合わせると、この2つの時点の前後で、段階的にユーザー数が増えている様子も窺えます。
■ダイソーのEC展開の狙いはどこにある?
一般的にECは、低価格帯の商品が多いダイソーとは相性が悪いと考えられます。それは、1件あたりの売上に対する送料や人件費の割合が大きくなってしまうため、利益率を考慮すると「送料を無料にする」ような販売戦略が取りにくく、コストのコントロールもシビアになるといった諸問題があるためです。ゆえに、これまでの100円ショップのECサイトでは、一定量の商品をまとめて注文する、卸売に近い形での提供が一般的でした。
しかし、上記のような問題がある中、それでもダイソーが個別商品の注文が可能なECサイトを立ち上げたのには、以下のような理由があったのではないかと考えられます。
• オンラインによる商品の認知や販路の拡大が重要になってきた
• コロナ禍でステイホーム・おうち時間が増えたことで日用品への需要が伸長した
• コロナ禍で大型の商業施設などが営業自粛を余儀なくされた
1つ目の理由は、昨今のSNSの拡大やデジタルネイティブの市場への影響が増したことで、ダイソーの商品を実店舗だけでなく、ネットを介して流通させる大きなメリットが作れるようになった、という時代の流れがあるかと思います。
また、新型コロナの影響によりECの市場は一気に拡大し、ダイソーの主力商品である日用品・生活雑貨の需要も伸びました。ここで生まれた大きな需要に対し、ダイソーがテナントとして入るような、大型の商業施設が自粛によって稼働しづらい状況に陥ったこと、も理由として考えられます。
実際に、DAISOネットストアのユーザーがサービス開始から伸び続けているのを見ると、ダイソーは理にかなった戦略を実行に移せたのではないかと考えられます。
【関連】2022年は値上げラッシュ!消費者が気にしているのは何の値上げ?検索データから調査してみた
https://manamina.valuesccg.com/articles/17572022年は値上げの年になります。1月に入って、山崎パン、キッコーマン、コクヨなど消費者の生活に近いところから値上げが始まりました。これに続いて、原油価格上昇の影響やロシアのウクライナ侵攻、円安などの社会情勢を受け、マヨネーズ、ティッシュ、トイレットペーパーなどの日用品も続々と値上げが発表され、ついに3月には電気・ガス料金が値上げ…。そして4月、本格的な値上げラッシュに突入しました。食卓も、光熱費も、交通も、あらゆるシーンでの値上げに、消費者もため息が出るばかり。今回は、そんなため息と共に検索されている情報を深掘りながら、消費者が気にしているのは何の値上げかを分析していきます。
【関連】オウンドメディアで商品戦略を仮説検証!「となりのカインズさん」が実践するデータとコンテンツの接続方法
https://manamina.valuesccg.com/articles/1691カインズのオウンドメディア「となりのカインズさん」でのデータ活用について聞きました。同社ではオウンドメディアで商品を記事化することで、アプローチ戦略の仮説検証も可能にしています。コンテンツマーケティングやデータ分析業務に携わっている方、必見の内容です。
集客構造では自然検索が過半数を占める
DAISOネットストアにはどのような属性のユーザーが訪れているのでしょうか。Dockpitを用いて、DAISOネットストアの訪問ユーザーのデータを分析していきましょう。
はじめに、性別と年齢のデータから見ていきます。
「DAISOオンライン」のユーザー属性(性別・年齢)(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年6月〜2022年5月
デバイス: PC・スマートフォン
上記のグラフを見てみると、まず性別のデータに関しては、男性46.1%・女性53.9%とやや女性ユーザーが多い結果となりました。筆者も実際にダイソーの店舗を利用したことがありますが、女性客が目立った印象だったので、オンラインとオフラインで客層の差は大きくないのかもしれません。
年齢のデータでは、ネット利用者全体の割合と比較すると20~40代のユーザーの割合が多く、50~70代のユーザーが少ないという結果でした。このことから、DAISOネットストアは若年~壮年層のユーザーが多く、熟年層のユーザーが少ないことがわかります。
これも筆者の実体験ですが、DAISOの実店舗は熟年層の顧客も多かった印象があるので、この点ではDASIOネットストアと差異がありそうです。逆に言えば、熟年層ユーザーの利用にはまだ伸びしろがある、という観点も持つことができます。
つづいて、Web上でのDAISOネットストアの集客構造についても確認してみます。
「DAISOネットストア」の集客構造(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年6月〜2022年5月
デバイス: PC・スマートフォン
上記、集客チャネル別の割合を見てみると、最も多いのが検索エンジン経由ユーザーである「自然検索」で、その割合は57.7%となっています。次が「外部サイト」の11.8%、「リスティング」の4.4%…と続きますが、割合としてはほとんどが自然検索のユーザーであることがわかります。
さらに、集客構造を過去1年の時系列で集計したデータも見てみます。
「DAISOネットストア」の集客構造(月次推移, 「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年6月〜2022年5月
デバイス: PC・スマートフォン
時系列で集客構造の変遷を追ってみると、サービスのプレオープンをした2021年6月時点では、自然検索・外部サイト・リスティングの3チャネルの割合が均一である印象です。また、上記に合わせて「ディスプレイ広告」の出稿も行われていたことがわかります。
その後、2021年10月の全国展開までに右肩上がりにユーザーは増えていきますが、その過程で自然検索の割合がどんどん大きくなり、逆にリスティング・ディスプレイといったネット広告経由のユーザーは割合が小さくなります。同年11月以降はネット広告の出稿がほぼなくなっているようです。加えて、割合として小さくはありますが、プレオープンのタイミングからソーシャル(SNS)経由の集客も一定発生しているのも特徴的です。
ここからわかることは、DAISOネットストアがサービスイン直後に認知拡大目的でネット広告やSNSを活用し、Web集客を軌道に乗せる戦略を採っていたのではないかということです。
多くのWebサイトで取られる戦略として、集客に広告費がかからない指名検索ユーザーの割合を拡大することで、利益率を高めていく手法があります。DAISOオンラインの検索流入キーワードを見てみると、「ダイソーネットストア」や「ダイソー通販」といったワードによるセッションが非常に多いので、インフルエンサーやネット広告による認知拡大 → 自然検索による指名流入の拡大、というプロモーション戦略が功を奏していそうです。
「DAISOネットストア」の流入キーワード(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年6月〜2022年5月
デバイス: PC・スマートフォン
DAISOオンラインの人気カテゴリは何?
DAISOネットストアには非常に多くの商品ラインナップが掲載されていますが、消費者から特に人気を博しているカテゴリはどれでしょうか。Dockpitの「コンテンツランキング」機能を用いて、商品カテゴリページごとの訪問者数を集計し、ランキングを作成しました。以下の表をご覧ください。
「DAISOネットストア」の商品カテゴリ別ユーザー数(TOP20, 「Dockpit」データを集計)
期間:2021年6月〜2022年5月
デバイス: PC・スマートフォン
商品カテゴリ別に訪問ユーザー数を合計してみると、最も人気が高いのは「キッチン用品」、2位が「インテリア」、3位が「文具」となりました。特に、キッチン用品は唯一訪問者数で30万ユーザーを超えるカテゴリであり、ダイソーの調理器具・便利アイテムのファンが多いことを感じ取れます。
人気上位のジャンルを見ると、やはりダイソーの実店舗でもよく購入されている品が多い印象ですが、9位の「衛生・オーラル・バス用品」や16位「感染予防」など、withコロナの世相を反映していそうなカテゴリもありました。
【関連】カインズの通販サイトがコロナ影響でユーザー急増!成長を遂げるホームセンターEC市場を調査
https://manamina.valuesccg.com/articles/984新型コロナウイルスの影響で外出制限が続き、小売業界は大きな岐路に立たされています。そんな中で、ホームセンター業界は特にオンラインショップで売上を大きく伸ばしているようです。今回はホームセンター大手5社を取り上げ、オンラインショップのユーザー数推移や検索キーワードなどから、好調の理由を調査します。
【関連】躍進するドラッグストア業界。気になるネット勢力図やエリア特性は?
https://manamina.valuesccg.com/articles/1280新型コロナ禍で、多くの企業が厳しい経営を強いられる中、ドラッグストア業界が快進撃を続けています。品揃えも、従来の日用品・医療品・化粧品などに加え、食料品や酒類、日用雑貨、中には弁当や惣菜を取り扱う店舗も出現、「ドラッグストアのコンビニ化」と言われるまでに進化しています。今回は成長を続けるドラッグストア業界を徹底調査。ネットでの勢力図や各社の強みなどを分析します。
まとめ
今回の調査では、DAISOネットストアの集客戦略が窺い知れたように思います。特に、サービス認知拡大→指名流入の増加というダンドリで、ECと100円ショップの掛け合わせが抱える課題を解消しながら、着実にユーザーを増やしている様子は見事です。
さらに今年4月には、ダイソーは自社の3つのサブブランドを擁するグローバル旗艦店を銀座に出店しています。コロナ禍でオンライン領域に注力したうえで、国外市場への展開も見据えた実店舗の出店に踏み切っている点は、アフターコロナで人流が戻った局面を考えた布石なのかもしれません。
【参考記事】もう行った?銀座の大型ダイソー訪問レポ!“見たことないコーナー”に感動 | 女子SPA!
https://joshi-spa.jp/1160861東京・銀座の「マロニエゲート銀座2」に、100円ショップ「DAISO(ダイソー)」のグローバル旗艦店が4月15日オープンしました。ダイソーの銀座エリア初出店で、「DAISO」「StandardPro…
また、DAISOオンラインの好調を受けてか、今年6月からはCan Doも1品注文が可能なネットショップを開始しています。送料をDAISOオンラインと同額の770円に設定している点を見ると、同方式であれば十分に採算が取れると判断したのでしょうか。
株式会社キャンドゥ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長 城戸一弥)は、2022年6月8日(水)より、たくさんのお客さまのご要望にお応えし、1個からご注文いただけるインターネット通販を一部地域でスタートいたします。
本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。
【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2021年6月〜2022年5月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。