旅行需要は右肩上がり
「旅行」「観光」の検索者数は、それぞれどのように推移しているのでしょうか。毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使って分析していきましょう。
下記グラフは検索者の推移を表しています。注目したいのは、「旅行」が2022年初頭から2022年9月にかけて右肩上がりの傾向にあることです。特に2022年9月は「旅行」と検索したユーザー数が2年間でもっとも多い月になっており、徐々にお出かけムードが戻ってきていることが伺えます。一方の「観光」は、一般に夏休みがある2022年8月がピークとなっています。
図:「旅行」「観光」を検索したユーザー数の推移
集計期間:2020年10月~2022年9月
デバイス:PC・スマートフォン
では、実際にどのような検索が起きていたのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
行き先希望はないけど、割引を使いたい
「旅行」とともに検索されているワードを、Dockpitの「掛け合わせワード」から分析します。推移の部分を見てみると、上位ワードの中でも「割引」「おすすめ」といった掛け合わせが2022年9月になって伸びていることがわかります。
「おすすめ」というワードから、検索者は旅で何をしたいか・どこへ行きたいかが決まっていないまま、手がかりを求めて検索していることが推測できます。「どこでもいいから、久々に旅行したい」「割引施策がせっかくあるので、とりあえずお得に旅行したい」という検索者の心理が現れるような検索ですね。
図:「旅行」の掛け合わせワード ランキング
集計期間:2021年10月~2022年9月
デバイス:PC・スマートフォン
また、「割引」に関しては2022年6月、9月に検索したユーザー数が急上昇しています。これは、2022年6月に観光庁による「全国を対象とした観光需要喚起策の実施について」、9月には経済産業省による「イベント割」の実施について、それぞれ発表があったためと考えられます。
観光庁|全国を対象とした観光需要喚起策の実施について
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000560.html
イベント割|お知らせ
https://wakuwari.go.jp/info/info03.html
「キャンペーン」「補助」「クーポン」といったワードよりも、「割引」の方が現時点では掛け合わせ検索されやすいようですね。
観光は「モデルコース」が人気
対して「観光」とともに検索された掛け合わせワードを見てみます。名だたる観光地名を抑えて1位となったのは、「モデルコース」です。検索者数も増加していることが見て取れます。
図:「観光」掛け合わせワード ランキング
集計期間:2021年10月~2022年9月
デバイス:PC・スマートフォン
「モデルコース」のユーザー数からも、「旅行」における「おすすめ」と同様に、感染が落ち着いてきたので「とにかく出かけたい」「自分軸で行きたい場所の希望は特にないので、誰かの勧める具体的な旅行計画を参考にしたい」という欲求が検索者にあることがうかがえますね。今後また感染拡大が起こっても、旅行が解禁される・割引が出るたびに、同じような現象が起きる可能性が高そうです。
また「旅行」では北海道や沖縄が、「観光」では京都や淡路島、東京、大阪などが掛け合わせの上位に来ており、それぞれのワードに対して検索されやすい地名であることもわかりました。
持ち物リストへのニーズが高まる。気になりごとに応える人気コンテンツ
では、検索者はどのようなページに流入し、気になりごとの解決に動いたのでしょうか。
まず「旅行」検索後の流入ページでトップだったのは、国内旅行における持ち物のチェックリストを紹介するページでした。「久しぶりの旅行で、何が必要か忘れてしまった。チェックしたい」という検索者の心理が見て取れます。7位にも持ち物系のページがランクインしていますね。
旅行に関する情報サイトの運営者は、こうした最近の消費者の心理に則って、その時々の最新情報を網羅したコンテンツを用意しておくとよさそうです。「後悔しない」「男女別」「日数別」といったタイトルづけ・コンテンツづくりも参考になるのではないでしょうか。
スカイワードプラス|国内旅行の持ち物15の必須チェックリスト | 後悔しない旅準備
https://skywardplus.jal.co.jp/plus_one/other/travel_checklist/
Trip It Easy | 確認しておきたい国内旅行の持ち物リスト【男性・女性・1泊2日など】
https://hotels.his-j.com/ct/tripiteasy/post-0-14/
図:「旅行」流入ページ ランキング
集計期間:2021年10月~2022年9月
デバイス:PC・スマートフォン
6位には「兵庫県/ふるさと応援!ひょうごを旅しようキャンペーン」、8位には「全国旅行支援と県民割やGoToトラベルとの違いとは?」といったページがランクインしています。特定の自治体のキャンペーン情報が上位に来ているのが面白いですね。また、数々の支援施策が打ち出される中で、それぞれの違いが気になっている生活者の疑問に応えるようなコンテンツも人気なようです。
一方、「観光」検索後には、以下のページへの流入が多いことがわかりました。
図:「観光」流入ページ ランキング
集計期間:2021年10月~2022年9月
デバイス:PC・スマートフォン
1位から順に淡路島(兵庫)、京都、岡山、新潟、大阪、名古屋、金沢、富山、福井、山梨の観光情報ページがランクインしており、特定のエリアばかりでなく、幅広いエリアが検討に挙がっているようです。「せっかく割引も出るし、今まで行ったことがない場所に足を伸ばしてみようかな」という消費者心理もあるのかもしれません。
「業界別」アプリランキング、今月は「旅行・地域」編です。アプリ利用ユーザー数の順に並べると、1位は「楽天トラベル」、2位「じゃらん」、3位「ANA」…という結果に。トップ20まで掲載しています。
まとめ
2022年シルバーウィークの動向から、旅行や観光に関して下記のようなことがわかりました。
・「旅行」は「割引」「おすすめ」と、「観光」は「モデルコース」と掛け合わせて検索されることが多い
・観光先は京都や大阪などの定番だけではなく、兵庫・淡路島や岡山など幅広いエリアが検討されている
・「持ち物」「日数別」「男女別」など、旅行の条件に合致した情報が求められている傾向にある
これらのことから、お出かけを大きく抑制された後に、割引・キャンペーンなどの支援策が展開されると、消費者としては「どこでもいいから、とにかく出かけたい」という心理に響くことがうかがえます。
旅行業界としては、国や自治体などによる公的な割引・キャンペーンの時期を逃さず、施策を打つ必要があります。その際には「出かけたい」の欲求に応えられるように、旅行の場所、日時、人数、持ち物といったように旅行準備に必要な事柄を幅広くカバーするとよいでしょう。
そうはいっても2022年冬は、新型コロナウイルスに加えインフルエンザの流行も懸念されています。政府の方針が変更となる可能性を踏まえて、オールシーズンに通用するテーマをベースに最新のお得情報を盛り込んだコンテンツを用意しておくのがよさそうです。
今後の新型コロナウイルス感染症の動向に注目です。
【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2020年10月〜2022年9月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
IT企業にシステムエンジニアとして10年あまり勤務。結婚・出産を経てお声がかかり、あっという間にライター・編集が主たる業務になりました。IT系記事と一般家庭向けの役立つテーマをメインに、今さら聞けない人でもしっかり参考にできる、わかりやすい記事を心がけています。