解説者紹介
TikTokが検索エンジンになる?Googleによる対策とは
安部:2023年2月のコンテンツマーケティング最新動向レポートでは、「短尺動画×検索」をテーマに取り挙げます。実は2022年5月頃から、Googleが検索結果画面の上位に短尺動画を表示させるようになったんです。実際に目にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
岩間:2022年5月というと、Googleがコアアップデートを実施した頃ですね。
安部:その通りです!イメージしやすいよう、最初に「短尺動画×検索」にまつわる流れをピックアップしてみました。
安部:2022年5月の変化に続き、Googleは7月に「約40%の若者が昼食の場所を探すとき、Google マップや検索を使わず、TikTokやInstagramを使用する」と発表し、Googleサービスの機能改善についての方向性を示しました。
そして9月のコアアップデートで、さらにTikTokを中心とした短尺動画を検索結果画面で上位表示させるようになり、2023年1月頃には、特定のクエリにおいて、検索画面結果に「ショート動画」セクションを導入しています。
これらGoogleの動きに加え、2022年12月には、短尺動画の先駆けであるTikTokが、自らを検索エンジンとして活用することをユーザーに促すプロモーションを開始しました。
これら「短尺動画×検索」の一つひとつの動きを読み解きながら、今後の可能性を見ていきましょう。
Googleが短尺動画を重視する理由
岩間:そもそもなぜ、Googleは短尺動画を重視しているのでしょうか。
安部:やはりユーザーファーストを重視しての判断だと思います。Googleとしても、短尺動画のニーズが世の中で高まりつつあることを感じているのではないかと。今後ユーザーのニーズに応えていくことを考えたとき、テキストだけでなく短尺動画も出していく必要があると判断したと考えられます。
岩間:確かにレシピなどは、テキストよりも動画で説明してもらったほうが理解しやすいですね。でも、レシピの短尺動画は以前からあったと思うのですが、どうしてこのタイミングでGoogleは重視しはじめたのでしょうか。
安部:やはりTikTokの人気が影響しているのだろうと思います。
GoogleがいかにTikTokを重視しているかはデータにも表れています。従来はGoogleの検索結果画面において、TikTokの上位表示キーワードはほとんどなかったんです。例えば「オムライス 作り方」といったキーワードで検索しても、Googleの検索結果画面でTikTokの動画が上位になることはほとんどありませんでした。しかし、下図のグラフを見ると2022年5月から増加していることがわかるでしょう。Googleの検索画面結果にTikTokの動画が表示されることがぐんと増えました。
岩間:ユーザーファーストのほかにも、TikTokにユーザーが流れてしまうことを防ぐといった狙いもありそうですね。
安部:そうですね。ユーザーの可処分時間をいかにとっていくかを考えているのでしょう。
TikTokを検索エンジンとして活用する動きも
安部:Googleだけでなく、TikTokも動きを見せています。一連の流れのところでも紹介した通り、TikTokは自身を検索エンジンとして使ってもらうことを訴求するプロモーションを開始しました。
2022年12月にはTikTok UKが検索エンジンとしての利用を促すプロモーション動画を展開、「Search it, learn it. Do it with TikTok(TikTok で検索して、学び、行動しよう)」とTikTokでの検索(と学びや行動)を促しています。
安部:背景として、成長を加速させたいTikTokの姿勢が感じられます。TikTokはレコメンドの強さが特徴のアプリです。そのため、もともと能動的に情報収集するためのものというより、受け身的な使われ方をするほうが多かったと思います。
検索エンジンとして使えることを発信することで、より多くのユーザーを取り込んでいきたいと考えたのではないでしょうか。Googleの「ググる」や、Instagramなどの「タグる」と同じように、TikTokで検索する動きが活発になってきています。
岩間:検索エンジンとして使えるくらい、TikTokでもハウツー系のコンテンツが増えていくかもしれませんね。
安部:そうですね。初期のTikTokはダンス系の動画が多かった印象ですが、最近ではコンテンツの多様化が進んでいます。ハウツー系のコンテンツももっと増えていくかもしれません。
Google検索画面結果にショート動画セクションが登場
安部:最後に紹介するのが、2023年1月、Googleの検索結果画面にショート動画セクションが登場したことです。
何が変わったかというと、見せ方が変わりました。これまでは、検索結果画面でテキスト(ページ名・URL)で表示されていましたが、動画のサムネイルで表示されるようになりました。
岩間:ショート動画セクションって、日本語だとまだ多くないですよね。僕は頑張って探して、「バナナケーキ」というクエリで表示させることができました!
安部:今後ショート動画は、ジャンルを問わずどんどん増えていくだろうと考えています。手軽に視聴できるというユーザーの利便性はもちろん、クリエイターにとっての動画作成のハードルの低さにもメリットがあります。
簡単な内容だけでなく、大学の講義のような専門的な内容も、検索結果画面上に動画が増えていくのではないでしょうか。テキスト8割:動画2割なのか、動画8割:テキスト2割なのかなど、状況は内容によるでしょうが、学びたいもの系のハウツー動画は増えていきそうですね。
Googleで検索すれば、いろいろな媒体のショート動画を見られる。Googleはユーザーにとって、そのようなプラットフォームになることを目指しているのではないかと考えられます。
マーケターがとるべき対策は
岩間:今後、マーケターはどのような行動を起こすべきでしょうか。
安部:ショート動画が増加しているからといって、今すぐ活用しましょうというスピード感は必要ないと思います。ただ、取り組むタイミングを見極めるために、成功事例や他社の状況などを見ながら、TikTokやショート動画で実際どれくらい成果が出るかを定点で追っていくことをおすすめします。広告やYouTubeよりもショート動画のほうがトラフィックやCVを集められているようなら、参入の時でしょう。そのタイミングが年内など早い段階でやってくる可能性はあると思います。
また、すでにYouTubeで長尺動画を活用している企業は、ショート動画の活用を一度検討してみてもよいでしょう。ショート動画は制作工数が少ないため、どれくらいコストを抑えられるかを見てみてもよいのではないでしょうか。
岩間:ショート動画のマーケティング価値がより高まっていることがわかりました!
安部:以上、2月のコンテンツマーケティング動向「SEO編」でした。次月のネタも楽しみにお待ちください。
(本調査はあくまでも傾向に注目し、今後の施策における仮説立てや優先順位の検討に有効活用するためのものであり、因果関係を示すものではないこと、また、各トピックの内容やVALUESの見解は、資料作成時のものであり、今後の情勢やアルゴリズムの変化によって変わることがある旨、ご留意ください)
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IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。