業績がV字回復!日本マクドナルドでマーケティング戦略が果たした役割は?

業績がV字回復!日本マクドナルドでマーケティング戦略が果たした役割は?

直近業績が好調な日本マクドナルホールディングス(以下日本マクドナルドHD)ですが、2015年には異物混入問題を受け大幅な赤字に転落。その1年後の2016年12月期にはおよそ50億円の黒字転換というV字回復を成功させた復活劇が有名です。その源となったマーケティング戦略・施策の中でも代表的なもの、そしてその戦略が果たした役割について紹介します。


業績不振を受けテレビCMからSNSやWebを活用するマーケティング戦略にシフト

日本マクドナルド マーケティング戦略

日本マクドナルドHDはもともと、多大な費用の投入を必要とするテレビCMをプロモーション、マーケティングの中心としていました。しかし、マーケティング本部長として足立光氏を迎え入れたところから、CMよりもTwitterなどのSNS、自社アプリ、Webメディアといった「Web」を活用したプロモーションにも注力するようになりました。

SNSなどのプロモーション活動に注力するようになった理由のひとつに、業績低迷の影響で広告費用が削減されたことが挙げられます。

2014年5月期~2015年5月期の広告費がおよそおよそ58億円だったのに対し、翌2015年6月期からの1年の広告費は約48億円にまで減少しています。この分を補うべく、費用をかけずにプロモーション効果が期待できるSNSや自社アプリ、Webメディアを活用しました。

日本マクドナルドHDが採ったWebを利用したマーケティング事例

SNSなどのマーケティングによって業績V字回復。どうしてそんなことができたのか?日本マクドナルドHDが行ったマーケティングを分析していきます。

まず、前提としてWebマーケティングの基本的な概念「インフルエンサーマーケティング」を紹介しておきます。これは、影響力のある人(インフルエンサー)を活用し、商品やサービスを広告するマーケティング手法を指します。

インフルエンサーマーケティングでは、企業がターゲットとする消費者層がフォローしているインフルエンサーに、自社の商品やサービスを紹介してもらいます。この紹介によって、消費者はインフルエンサーが使用している商品やサービスに興味を持ち、自分自身も購入する可能性が高まります。

日本マクドナルドHDの場合は、SNSのなかでも拡散力の強いTwitterに注力し、多くの人に自社の情報が届くように工夫したことが特徴です。

例えば、単に「リツイートお願いします」とするのではなく、読んだ人が思わずリツイートしたくなるような企画、内容としました。情報が拡散されると「周囲の推薦には耳を貸す」という人間の本質に触れ、一層日本マクドナルドHDがSNSユーザーの印象に残る、というわけです。

続いて、日本マクドナルドHDが具体的に行った施策を紹介します。

SNSでの情報拡散

日本マクドナルドHDのマーケティング戦略において、とくに注目したいのがTwitterを利用したプロモーション展開です。先ほど紹介した「インフルエンサーマーケティング」とTwitterの親和性の高さを上手に利用し、インフルエンサーマーケティングを成功させています。

インフルエンサーマーケティングを成功させるためには、まずインフルエンサーとなる人に「刺さる」投稿=インフルエンサーが思わずリツイートし、それを見た別のユーザーがさらにリツイート、という流れを作る投稿が必要となります。そのために必要なのが、以下の要素と言われています。
・議論したくなる内容
・つっこみたくなる内容
・写真に撮りたくなる内容

こうした要素を盛り込んで投稿された具体例として、チキンタツタの新商品発売前のツイートで「明日なにかが起こる!?チキンタ◯タ」と、タツタの部分をあえて伏せ字にして投稿。

マクドナルド=チキンタツタと認識されているなかで「なぜそこを伏せ字にする?」という「つっこみ」が入るでしょうし、「いやいや、タツタではないのかもしれない?」という裏読みから「議論」への発展も予想されます。

そのほかにも、『正体不明の怪盗ナゲッツ!」』というチキンマックナゲットのキャンペーンでは、期間限定商品の「フルーツカレーソース」と「クリーミーチーズソース」を狙う「怪盗ナゲッツ!」の正体を予想したり目撃情報をTwitterで募集する企画を実施。

怪盗ナゲッツのハッシュタグをつけて投稿した人の中から抽選で賞品をプレゼントするなど、さまざまなインフルエンサーマーケティングを仕掛け、成功させました。

理念に立ち戻った日本マクドナルドHD

インフルエンサーマーケティングの成功が業績回復の一因ではありますが、その根本には日本マクドナルドHDの基本理念である「QSC&V」の徹底があります。
・Quality (品質)
・Service (サービス)
・Cleanliness(清潔さ)
・Value (価値)
「おいしさとFeel-Goodなモーメントを、いつでもどこでもすべての人に。」という同社がかかげるミッションをプラスし、理念・意義をインフルエンサーマーケティングに乗せたことも業績回復の原動力と言えるでしょう。

レストラン・ビジネスの考え方 | マクドナルド公式

まとめ

テレビCMというマスメディアを使ってのプロモーション展開を得意としていた日本マクドナルドHDでしたが、インフルエンサーマーケティングにシフト。大幅な赤字をわずか2年ほどで黒字化することに成功しました。マーケティングを担当した足立光さんは、本を出したりNianticやスマートニュース、ファミリーマートの役職を歴任するなど、有名人となりました。マーケティングに強いP&G出身者「P&Gマフィア」としても注目されています。

マクドナルド、P&G、ヘンケルで学んだ 圧倒的な成果を生み出す 「劇薬」の仕事術

日本マクドナルドHDのインフルエンサーマーケティングの中心になっているのは、「議論したくなる内容」「つっこみたくなる内容」「写真に撮りたくなる内容」でした。この要素によってインフルエンサーが思わず拡散したくなるようにし、多くの人に日本マクドナルドHDの商品、そして会社自体について認識させることに成功しています。

今回は日本マクドナルドHDのマーケティング成功例を紹介しましたが、ほかにもマーケティング戦略に長けている企業はいくつもあります。代表的な企業の成功例を以下のリンクで紹介していますので、こちらもぜひご参照ください。

成功事例を参考に!マーケティング戦略が上手な企業

https://manamina.valuesccg.com/articles/1697

自社製品・サービスを普及させるためにはマーケティング戦略が必要です。その重要性、必要性は理解していても実際に戦略を立案する段になるとどうすればよいのか悩まれるのではないでしょうか?こうした場合は、マーケティング戦略の事例、とりわけ成功事例をもとに考えるのが効率的です。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
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編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

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