ゲーム好き以外も使っている?睡眠アプリ「Pokémon Sleep」の利用動向

ゲーム好き以外も使っている?睡眠アプリ「Pokémon Sleep」の利用動向

大人気コンテンツのポケモンから新たに睡眠アプリがリリースされました。睡眠を利用したゲームアプリとして注目を集める「Pokémon Sleep」はどのような人に利用されているのでしょうか。リリース直後の利用状況とユーザーの人となりについて調査しました。


朝起きるのが楽しみになる画期的な睡眠アプリ

「Pokémon Sleep」とは、睡眠の様子を計測・記録するアプリで、寝つくまでにかかった時間や睡眠時間を計測してくれます。さらに、睡眠中の録音データも記録できるため、寝言や環境音も確認することができる他、入眠用BGMやアラームを設定する機能もあります。また、監修には睡眠研究の権威、柳沢正史氏がついており、公式サイトでは睡眠に関する記事も掲載されています。
参照:https://www.pokemonsleep.net/science/

ここまでの情報だけでは、既存の睡眠記録アプリと大差ないように思われるかもしれません。しかし、「Pokémon Sleep」最大の特徴は「ゲーム」アプリであるという点です。

睡眠データはその深さによって「すやすや」「うとうと」「ぐっすり」の3タイプに分けて記録されます。ユーザーが目覚めて睡眠の計測を終了すると、その日の自分の眠りのタイプに合ったポケモンたちが集まって寝ている様子が確認できます。全てのポケモンの睡眠の様子を記録し、「寝顔図鑑」を完成させることがこのアプリの最大の目的です。また、集まったポケモンは仲間にすることができるため、お気に入りのポケモンと一緒に眠るという楽しみもあります。

また、より多くのポケモンを記録するためには「カビゴン」というポケモンを育てる必要があります。「カビゴン」は、自分の睡眠時間の規則正しさと長さに応じたスコアによって大きく成長するため、ユーザーがよく眠ることがポケモンをたくさん集めることに直結する仕組みとなっています。

さらに、「カビゴン」は日中にご飯を与えることでも成長するため、ある種の放置ゲームではなく、こまめにゲームを起動し、手持ちポケモン固有のスキルを活かして食べ物を集めるなど、やりこむ要素があるというのも、熱中する人が増える要因になると考えられます。

筆者も実際に利用した際、計測中にほかのアプリを使用すると計測が中断される可能性があるため、寝る前についついスマホをいじってしまう時間が減り、入眠がスムーズになったと感じました。また、計測を忘れたり睡眠時間が短かったりすると、仲間にしたポケモンたちの元気が回復せず、アプリ上で眠そうな表情をするため、罪悪感が「きちんと眠って計測しよう」というモチベーションになりました。

またヴァリューズ社員にインタビューしてみたところ、ポケモンの残体力が高いほど「カビゴン」を成長させる手伝いを効率よく行ってくれるため、ポケモンをできるだけ回復させるために寝ているという声も挙がりました。睡眠時間を削ってしまう人にはよく寝ることを促し、そうでない人にもより長く寝ることを促す工夫が施されていると言えますね。

最近はヤクルト1000が注目されたり、様々なスリープテックが展開されたりなど、睡眠の質の向上に注目が集まる中、「Pokémon Sleep」は「朝起きるのが楽しみになる睡眠ゲームアプリ」をコンセプトとして開発されました。「Pokémon Sleep」は睡眠時にのみ活躍するのではなく、起きているときに最も楽しめるゲームという、画期的な睡眠アプリと言えるでしょう。

ゲーム好きや若いユーザーから注目を集める

では、Pokémon Sleepのユーザー属性について詳しく見ていきましょう。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

注目度が高く、継続利用が多い

まず「Pokémon Sleep」のユーザー数は4,020,000人となっています(2023年5月~7月)。リリース日が2023年7月20日だったにもかかわらず、非常に多くのユーザーが利用していることがわかります。

次にアプリの起動頻度を見てみましょう。6~10日起動しているユーザーが約26%、11~15日起動しているユーザーが約20%もいることがわかります。

繰り返しますが、「Pokémon Sleep」のリリース日は2023年7月20日なので、2023年7月に「Pokémon Sleep」を起動することが可能な日数は12日しかありません。つまり、「Pokémon Sleep」はリリース直後から連日利用しているユーザーが全体の半数近くおり、注目度も継続度も高いと言えます。

Pokémon Sleepの月平均アプリ起動日数
Dockpitより集計。対象期間:2023年5月~2023年7月
デバイス:スマートフォン

続いて「Pokémon Sleep」が利用されている時間帯を見ていきましょう。利用割合は6~8時に50%前後になった後下降していきますが、12時に一度上昇して約37%になります。その後18時から上昇し始め、21時から1時に再び40%を超えています。

「Pokémon Sleep」は夜寝る前に起動し、朝起きたときに再び利用するため、夜と朝を中心に利用が多いことがわかります。また、「カビゴン」に食事を与えるタイミングは朝昼夜の3回あるため、昼食を与えるために12時に利用が増えると考えられます。

Pokémon Sleepの接触時間帯
Dockpitより集計。対象期間:2023年5月~2023年7月
デバイス:スマートフォン

若年層や女性を中心に人気を集める

続いてユーザー属性を見ていきましょう。性別は女性が約6割を占めており、年代は20代が約45%、30代が約27%となっています。ここから、ユーザーは若者に集中しており、女性の方が多いことがわかります。

Pokémon Sleepのユーザーの性別、年齢層
(点線はインターネット利用者全体)
Dockpitより集計。対象期間:2023年5月~2023年7月
デバイス:スマートフォン

ポケモンやゲームになじみのあるユーザーが利用?

さらに「Pokémon Sleep」のユーザーの特徴を調査するために、「Pokémon Sleep」のユーザーがどのようなアプリに関心があるのかを男女別で見ていきます。

まず男性について見ていきます。2位の「Pokémon GO」をはじめ、6位、7位、10位、14位、17位、20位にゲームアプリがランクインしています。そのほかにも、1位の「Discord」はゲーマー向けボイスチャットアプリであり、9位の「Pokémon HOME」は歴代の「ポケットモンスター」シリーズのゲーム同士でポケモンをやり取りするアプリ、13位の「Twitch」はゲームのライブ配信が多く行われるプラットフォーム、18位の「Nintendo Switch Online」は「Nintendo Switch」をインターネットに接続し、フレンド登録したユーザーとやり取りが出来るアプリです。このように、ゲーム関係のアプリが20位中11個をしめており、元来ゲームに関心を持っている男性ユーザーが「Pokémon Sleep」を始めていると考えられます。

また、8位には2023年7月にリリースされ、「X(旧Twitter)」の大体アプリとして注目を集めた「Threads」がランクインしており、新しいもの好きのユーザーが多いとも考えられます。

Pokémon Sleepの男性ユーザーが利用しているアプリ(上位20位抜粋)(リーチ差優先※)
Dockpitより集計。対象期間:2023年7月
デバイス:スマートフォン

※リーチ差:一般的なネット利用者と比べて、対象者がどれくらい特徴的に利用しているかを表す指標。以下の式で計算される。
 リーチ差=対象者のリーチ率(※)ーネット人口全体のリーチ率
※リーチ率:抽出条件に当てはまった人のうち、当該アプリを利用している人の割合。

続いて女性ユーザーです。男性と同様「Pokémon GO」、「Discord」、「Nintendo Switch Online」がそれぞれ2位、7位、11位にランクインしていることに加え、ゲームアプリが8位、10位、12位、14位、20位にランクインしています。男性と比べてランクインしているゲーム関連アプリは数が少なく、それらのリーチ差も小さいことから、男性ほどゲーム好きな人が多いとは言えないようです。Pokémon Sleepは女性ユーザーの割合が高めであったことから、普段ゲームをあまりやらない女性が多く利用している可能性がありそうです。

また、男性と同様16位に「Threads」がランクインしており、新しいもの好きのユーザーが一定数いることがわかります。

Pokémon Sleepの女性ユーザーが利用しているアプリ(上位20位抜粋)(リーチ差優先※)
Dockpitより集計。対象期間:2023年7月
デバイス:スマートフォン

さらに、ポケモンの公式アプリの特徴値を表したのが以下の表です。既存のアプリの20%以上のユーザーが「Pokémon Sleep」を利用していることから、ポケモンに関するアプリを積極的に利用する姿勢があるユーザーが一定数いることがわかります。

Pokémon Sleepのユーザーが利用しているポケモンの公式アプリ※₁(特徴値優先※₂)
Dockpitより集計。対象期間:2023年7月
デバイス:スマートフォン

※₁「ポケモンクエスト」はヒットしなかったため、除外
※₂特徴値:当該アプリのユーザーのうち、指定したアプリも利用した人の割合
Aというアプリについて分析している場合、Bというアプリの特徴値は次の式で求められる。
Bの特徴値 = Aを利用し、かつBも利用した人数 ÷ Bを利用した数

Pokémon GOよりもゲーム好きは少ない?

ここで、ポケモン関係のアプリの中で最もユーザー数の多い「Pokémon GO」と「Pokémon Sleep」を比較していきます。

まずはユーザー数を見ていきましょう。2023年7月に絞って見ると、「Pokémon Sleep」のユーザー数は4,020,000人、「Pokémon GO」のユーザー数は3,720,000人となっており、「Pokémon Sleep」の方がユーザー数が多くなっています。

Pokémon SleepとPokémon GOのユーザー数
Dockpitより集計。対象期間:2022年8月~2023年7月
デバイス:スマートフォン

続いてユーザー属性です。「Pokémon Sleep」は女性が6割であるのに対し、「Pokémon GO」は男女比がほぼ1:1であり、ネット利用者における男女比とほとんど同じになっています。また年齢層については、「Pokémon Sleep」は20代で約45%を占めていますが、「Pokémon GO」では20代は約28%にとどまり、40~60代を合わせて約43%となっています。

このことから、「Pokémon GO」の方がネット利用者の平均に近く、様々な属性のユーザーに利用されているのに対し、ポケモンスリープは女性や若年層の割合が高いことがわかります。

Pokémon SleepとPokémon GOの性別と年齢層
Dockpitより集計。対象期間:2023年5月~2023年7月
デバイス:スマートフォン

次に関心アプリを比較していきます。まず「Pokémon Sleep」ですが、ユーザー数が多く、広く浸透しているアプリが多く見られます。

それに対してPokémon GOでは、6位に「LINE:ディズニー ツムツム」、9位に「モンスターストライク」、16位に「妖怪ウォッチ ぷにぷに」と、3つのゲームアプリがランクインしています。また、前述した「Pokémon Home」、「Discord」といったゲーム関係のアプリも見られることから、「Pokémon Sleep」よりはゲームに興味があるユーザーが多いのかもしれません。

Pokémon Sleep(左)、Pokémon Go(右)のユーザーの関心アプリ(リーチ差優先)
Dockpitより集計。対象期間:2023年7月
デバイス:スマートフォン

最後に「Pokémon GO」と「Pokémon Sleep」の互いの併用状況を見ていきます。「Pokémon Sleep」ユーザーの約25%が「Pokémon GO」を、「Pokémon GO」ユーザーの約27%が「Pokémon Sleep」を利用しており、四分の一程度の人が両方のアプリを使っていることがわかります。

Pokémon Sleep(左)とPokémon Go(右)それぞれから見た互いの併用率
Dockpitより集計。対象期間:2023年7月
デバイス:スマートフォン

まとめ

今回は「Pokémon Sleep」のユーザー属性について調査してきました。リリース直後にもかかわらずユーザーがかなり多く、注目度がかなり高かったことが伺えます。また、「Pokémon Sleep」のユーザーには若者や女性が多いですが、もともとポケモンやゲームというコンテンツに馴染みがあるユーザーは男性に多いのではないかと考えられます。加えて、関心を持っているアプリを見ても、全体的にゲームを普段しない人の利用が多そうであることから、ポケモン・ゲームが好きな人だけではなく、様々な人が注目し、利用していると言えそうです。

今までにない斬新なゲームである「Pokémon Sleep」は、どのような人が継続して利用していくのか、今後も目が離せません。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

2024年春にヴァリューズに入社しました。
大学では言語学を専攻していました。

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