低価格ジムとして急成長したchocoZAPを早期に検索していたアーリーアダプターの特徴とは?

低価格ジムとして急成長したchocoZAPを早期に検索していたアーリーアダプターの特徴とは?

「コンビニジム」という呼び名としても知られるchocoZAPは、RIZAPが展開する24時間経営のジムです。2022年7月にサービスを開始してから、低価格かつ全国どこでも利用できることに加え、脱毛器やエステがセルフで利用できたり、入会で便利な機器がもらえたりと、多様なサービスによって多くの人の支持を集めています。急成長を続けるchocoZAPですが、サービス開始当初にはどのような人が興味を持っていたのでしょうか。chocoZAPというワードを早期に検索していた人を対象に、ユーザー属性を調査していきます。


アーリーアダプターとは

はじめにアーリーアダプターについて、化粧品のアーリーアダプターについて調査しているこちらの記事を引用して説明します。

アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用層):
流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人。他の消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれる。市場全体の13.5%。

アーリーアダプターは、1962年に米・スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授が発表した『イノベーター理論』の中で定義している消費者の分類です。イノベーター理論では商品購入の態度を新商品購入の早い順に五つに分類しており、アーリーアダプターは2番目に早い層に分類されています。

イノベーター理論の分類の中で、イノベーターは少人数であり、重視するポイントが商品の新しさそのもので、商品のベネフィットにあまり注目していません。一方、アーリーアダプターは新しいベネフィットに注目していて、他の消費者への影響力が大きいことから、新しいベネフィットを自らのネットワークを通じて伝えてくれます。

新商品を発売した際、イノベーター・アーリーアダプター(全体の16%)まで広がるかどうかが、アーリーマジョリティ以後への普及に影響してくると言われています。

chocoZAPのアーリーアダプターを分析

では、さっそくchocoZAPのアーリーアダプターについてみていきましょう。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

以下は、2022年1月~2023年12月の各月において「CHOCOZAP」とそれに類似したキーワード※を検索したユニークユーザー数の遷移を表しています。2022年6月に初めて検索者が現れ、増減を繰り返しながら徐々に増加しています

各月において「CHOCOZAP」とそれに類似したキーワード※を検索した人数推移

各月において「CHOCOZAP」とそれに類似したキーワード※を検索した人数推移
Dockpitより集計。対象期間:2022年1月~2023年12月
デバイス:PC,スマートフォン

※「CHOCOZAP」、「チョコザップ」、「ちょこざっぷ」、「ちょこザップ」、「チョコざっぷ」、「チョコZAP」、「ちょこZAP」、「CHOCOザップ」、「CHOCOざっぷ」のいずれか

さて、全期間における累積ユニークユーザーにおいて、最初期の2.5%に近いのは2022年9月、16%に近いのは2022年12月であるため、本記事では2022年9月~12月の検索者をchocoZAPのアーリーアダプターと定義します。また、これ以降、2023年1月から2023年12月までの検索者、すなわちアーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードを、『イノベーター理論』を基に発展させた『キャズム理論』に倣って「メインストリーム市場」と呼び、アーリーアダプターと比較していきます。
参照:https://www.onemarketing.jp/contents/chasm_re/

2022年6月から各月までに「CHOCOZAP」とそれに類似したキーワード※を検索した人の総数(累積)

2022年6月から各月までに「CHOCOZAP」とそれに類似したキーワード※を検索した人の総数(累積)
Dockpitより集計。対象期間:2022年1月~2023年12月
デバイス:PC,スマートフォン

30~40代の比率が高く、女性が約56%

まずはユーザー属性を見ていきます。ネット利用者平均と比べ、30代~40代の層はアーリーアダプターが約11%、メインストリーム市場が約8%多く、女性はどちらも約10%多くなっています。

「メインストリーム市場」とアーリーアダプターで比較すると、アーリーアダプターにおいて若干30,40代が多いものの、男女比と年齢層は大きく変わらないことがわかります。

「CHOCOZAP」とそれに類似したキーワードを検索した人の年代(左)性別(右)
Dockpitより集計。対象期間:2022年5月~2023年12月
デバイス:PC,スマートフォン

関東在住者や投資家が注目

続いて居住地域を見ると、メインストリーム市場と比較して、アーリーアダプターは関東在住者の割合が約19%多いことがわかります。これは、いまでこそchocoZAPは全国に店舗を展開していますが、当初は関東圏を中心にした店舗展開であったためと考えられます。

「CHOCOZAP」とそれに類似したキーワードを検索した人の居住地域
Dockpitより集計。対象期間:2022年9月~12月、2023年1月~12月
デバイス:PC,スマートフォン

次に、世帯年収を見ると、アーリーアダプターとメインストリーム市場では大きな差が見られませんが、いずれにおいてもネット利用者平均より年収400万円未満の層が10%程度少ないです。chocoZAPは比較的安価にジムに通うことができることを売りにしていますが、低年収層の検索が比較的少ない結果となっています。

「CHOCOZAP」とそれに類似したキーワードを検索した人の世帯年収
Dockpitより集計。対象期間:2022年9月~12月、2023年1月~12月
デバイス:PC,スマートフォン

また、性別・年収による検索ワードを見ると、アーリーアダプターでは男性の高年収層において「株主優待」を併せて検索している人が多いです。これは、chocoZAPの株主優待として、ジム利用金額が一部無料になるという仕組みを早期から行っていたことで、高収入の投資家に注目されたのではないかとも考えられます。

また、メインストリーム市場では、男性の高年収層の併用ワードが「フランチャイズ」に入れ替わっています。これは、投資家にとってchocoZAPのビジネスモデルが成功しており、投資に値すると考え、フランチャイズ経営をしていないかを調べた結果であると考えられます。実際は、chocoZAPはフランチャイズ経営を行っていないため、それだけ多くの人が気になったということができるでしょう。

「CHOCOZAP」とそれに類似したキーワードを検索した人が併せて検索した文字列(縦軸:世帯年収|横軸:性別)(性別0.5以上は省略)
Dockpitより集計。対象期間:2022年9月~12月(左)|2023年1~12月(右)
デバイス:PC,スマートフォン

投資や旅行に興味のある人が多い

ではここから、Web行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定の Web行動の前後の動きと属性を集計できる、ヴァリューズの分析ツール「story bank」を使用して深掘り分析をしていきましょう。

まずchocoZAPのアーリーアダプターの興味関心を見てみると、まず最も特徴値が高い「海外旅行」が目に入ります。それに続くように「イベント、コンサート」「アート、芸術」「スポーツ(ジョギング、ジムなど自身が行うスポーツ)」も特徴値が高いです。次に、特徴値・リーチ率共に高いのが「ダイエット」「グルメ、レストラン」ですが、食とダイエット、双方への関心が高いのは面白い特徴です。最後に、リーチ率が最も高いのは「マネー・投資」「国内旅行」で、アーリーアダプターには投資に興味のある人や、国内旅行が好きな人が多いことがわかります。

メインストリーム市場の興味関心を見ると、最も高い物でも特徴値は約6.7ptとなっており、例えば「マネー・投資」は約3pt、「ダイエット」は約5ptとアーリーアダプター時点よりも特徴値が減少していることから、上述の特徴はアーリーアダプターに特徴的なものと言えるでしょう。

「CHOCOZAP」とそれに類似したキーワードを検索した人の興味・関心(縦軸:リーチ率|横軸:特徴値)(特徴値10pt未満省略(左))(特徴値6pt未満省略(右))
Dockpitより集計。対象期間:2022年9月~12月(左)|2023年1~12月(右)
デバイス:PC,スマートフォン

※特徴値:一般的なネット利用者と比べて、対象者がどれくらい特徴的かを表す指標。以下の式で計算される。
 特徴値=対象者のリーチ率ーネット人口全体のリーチ率
※リーチ率:アンケートで当該項目に回答した人数の比率

すでにジムに通っている人が比較対象として検索か

次にスポーツを見てみると、アーリーアダプターでは「スポーツジムでのトレーニング、エクササイズ」を実践している人がchocoZAP検索者の約42%とかなり多いことが分かります。しかし、メインストリーム市場を見るとリーチ率は約20%、特徴値も20pt以上減少しています。

このことから、アーリーアダプターはジムでのトレーニングをすでに行っており、ジムの情報に対してアンテナを伸ばしていたと考えられるのに対し、メインストリーム市場ではもともとジムに興味を持っていなかった人も多く流入してきたと考えられます。

「CHOCOZAP」とそれに類似したキーワードを検索した人が観戦・実践しているスポーツ(縦軸:リーチ率|横軸:特徴値)
Dockpitより集計。対象期間:2022年9月~12月(左)|2023年1~112月(右)
デバイス:PC,スマートフォン

まとめ

chocoZAPのアーリーアダプターには高収入層が多く、その中には投資先としてchocoZAPの情報を集めていた人もいると考えられます。また、ダイエットに興味を持っている層や、すでにジムでのトレーニングを行っており、比較対象としてchocoZAPの情報を集めている層もいると言えます。

その後メインストリーム市場ではもともとジムに興味のなかった人が流入しており、chocoZAP自体の店舗範囲拡大に伴い、関東圏以外のユーザーも増えています。この流れを見て、投資家はchocoZAPのビジネスをさらに高く評価していると考えられます。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

2024年春にヴァリューズに入社しました。
大学では言語学を専攻していました。

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