中国冬季の新トレンド「冰雪消費」を調査

中国冬季の新トレンド「冰雪消費」を調査

現在中国では、冬季のウィンタースポーツや雪祭り、氷祭りなどの「冰雪経済」「冰雪消費」が盛んになっています。政策の支援や商品の刷新などのプラスの影響を受け、「冰雪消費」は著しく増加しています。本記事では中国における冰雪消費の盛り上がりをデータで確認し、活発な冰雪旅行やウィンタースポーツ関連事業の具体例を紹介します。


中国で活発な冰雪消費の実態

2022年の北京冬季オリンピック開催に伴い打ち出された「带动三亿人上冰雪(3億人を氷雪スポーツに)」のスローガンの下、中国ではスキーやスノーボード、スケートなどのウィンタースポーツ関連事業、及び雪や氷関連の観光業(雪祭りなど)が盛んになっています。
美团研究院のデータによると、2023年冬季の冰雪旅行消費総額は2019年同期比で132.5%増加しました。11月と12月における消費増加が特に著しく、2019年の同時期と比較して消費総額は262.3%増加しています。

また、中国旅行研究院が発表した《中国冰雪旅游发展报告(2024)(中国氷雪旅行発展報告)》によると、2022年から2023年の冬季における冰雪休暇旅行の一人当たり平均消費額は1119元で、2022年の国内旅行全体の一人当たり平均消費額の1.39倍となりました。政策面での支援や需要増加、商品の刷新などのプラスの影響を受け、2023年から2024年の冬季において冰雪休暇旅行人数は25~30%の増加率を実現すると予測されています。2023~2024年の冬季における全国の冰雪休暇旅行人数は4億人を突破する見込みがあり、さらに冰雪休暇旅行関連収入は5500億元を突破すると見込まれています。

「冰雪游」の人気が急上昇

中国では、2021年から2022年、2022年から2023年と二期連続で冬季における冰雪旅行人数が3億人を突破しています。中国旅行研究院の冰雪旅行専門調査によると、66.2%の観光客が2023年から2024年の冬季も冰雪旅行をしたいという希望を示しました。さらに64.8%の観光客が冰雪旅行の頻度を増やすだろうという回答をしています。

2024年の年始休暇では、「冰雪游(冰雪旅行)」が休暇期間のトレンドになりました。中国南方からの観光客が、黒竜江省、遼寧省、吉林省など東北三省に訪れ、雪や氷に関連する観光地で旅行を楽しんでいます。東北三省の他にも、北京市、河北省、新疆ウイグル自治区などが冰雪経済において主力地域となっています。

例えば、黒竜江省の哈爾浜市は2023年下半期の冬季において2022年の同時期と比較し冰雪旅行消費規模が207%増加しました。また、観光客から最も人気な旅行目的である哈爾浜冰雪大世界(ハルビン氷祭り)の2023年11月と12月のチケット売上額は前年同期比859.2%の増加を記録しました。

ハルビン氷祭りの様子

2024年の年末年始期間において、哈爾浜市は1月1日時点での旅行客はのべ304.79万人、観光業総収入は59.14億元を実現しました。

「冰雪游」で人気を集めているのは、北方地域に限りません。南方の屋内スキーも観光客から注目されています。例えば浙江省では2023年12月以来「スキー」の検索数が同期比30%増加、そのうち「屋内スキー」の検索数は同期比42%増加しました。また、華南地区最大の屋内スキー場・广州热雪奇迹(広州熱雪奇跡)がある広東省では、2023年11月における「屋内スキー」関連の検索数が前年同期比295%増加しました。香港や澳門からの観光客を含む周辺地域の観光客が多く訪れ、スキー体験を楽しんでいます。

广州热雪奇迹の施設内の様子

「冰雪游」の形として、「冰雪+○○」も注目されています。「冰雪+美食」、「冰雪+温泉」、「冰雪+民族文化」、「冰雪+ショッピング」、「冰雪+農村振興」など要素を掛け合わせることで新しいビジネス業態を生み出します。これにより顧客により良い体験をもたらし、業界融合やイノベーションを促すことで、冰雪旅行発展の新傾向を打ち出しています。

ウィンタースポーツ関連事業の顕著な成長

前項で述べた通り、中国ではスキーをはじめとするウィンタースポーツが現在高い人気を有しています。美团大众点のデータによると2023年11月におけるスキーチケットの集団注文数は2019年の同期比で788%増加しました。また携程のデータによると、2023年末までのスキーチケット購入数は前年同期比113%の増加が見込まれ、2022年の2倍近くになると予測されています。さらにスキー目的の団体旅行の注文数も2022年同期比で3割近く増加することが見込まれます。

ウィンタースポーツを楽しむための関連商品の売り上げも伸びています。ECサイトでは2023年12月第1週における「スキー」関連の検索指数が前年同期比14倍の増加を記録し、スキーウェアやスキーブーツなどの売上も大幅に伸びました。そのうちスキーウェアの売上は同期比120%以上、スキーゴーグルの売上は同期比310%、スキーボードの売上は同期比130%増加しました。

2023年北京冰雪消費節にてもスキーウェアが展示された

「冰雪消費」の発展の背景にある政策面での支援

「冰雪消費」の発展には政策面での強いサポートがあります。2015年に北京が冬季オリンピックの開催地に決定して以降、中国はウィンタースポーツや冰雪旅行、関連商品などの冰雪関連政策を打ち出し、冰雪旅行の発展を促しました。2019年3月に中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁が発表した《关于以2022年北京冬奥会为契机大力发展冰雪运动的意见(2022年北京冬季オリンピックを契機としたウィンタースポーツ発展に関する意見)》において、冰雪関連産業の発展や冰雪旅行の推進、冰雪関連産業と他分野の産業の深い融合が国家戦略として打ち出されました。

これらの政策や、北京冬季オリンピック時に出された「带动三亿人上冰雪」のスローガンの下、中国のスキー産業は急速に発展し、中国国内におけるスキーを行う人数は2020年の約760万人から2022年は1200万人に増加し、延べ人数も1600万人から2200万人に増加しています。

北京や河北省、黒竜江省、吉林省、新疆などの、現在冰雪旅行の主要地となっている地域においても、《北京市进一步促进冰雪消费三年行动方案(2023—2025年)(北京市冰雪消費の更なる促進を目指した三年行動案)》など、冰雪消費に関する政策が打ち出されています。
これらの政策の支援の下、冰雪旅行は発展を遂げ、冰雪関連事業は拡大を続けてきています。

まとめ

今回は中国でトレンドとなっている「冰雪消費」について紹介しました。ウィンタースポーツや冰雪旅行などは著しく成長を続けており、その背景には北京冬季オリンピック開催に基づいた政策の支援があることが分かりました。冰雪消費発展のための様々な施策の結果が、現在の高い人気という結果として現れており、この傾向は今後数年は続くであろうと推測されています。現在は中国国内での流行が目立っていますが、冰雪旅行目的の海外観光客が将来的に増加するならば、「冰雪消費」の更なる発展が見込めるでしょう。

参考URL

美团研究院:2023年雪季全国冰雪消费比2019年增长超262%
https://finance.eastmoney.com/a/202401272974779343.html
冰雪旅游热力十足 2023-2024冰雪季游客有望超4亿人次
http://m2.people.cn/news/default.html?s=M18zXzIwOTE1OTQ0XzM1MzhfMTcwNDg1MDY4MQ==&from=sohu
冰雪经济全国升温 “冷”冰雪如何释放消费“热”活力
http://tradeinservices.mofcom.gov.cn/article/yanjiu/hangyezk/202401/160424.html
推动冰雪经济高质量发展
http://www.news.cn/fortune/20231227/be38af15bd3d40a0a5972bc6b4f59f69/c.html

この記事のライター

早稲田大学在学中。

関連するキーワード


中国トレンド調査

関連する投稿


中国シルバー経済の新傾向を調査

中国シルバー経済の新傾向を調査

日本と同様、年々高齢者の割合が高くなっている中国。中国民政部が発表した《2023年民政事業発展統計公報》によると、2023年末の時点で全国の60歳以上の人口は29,697万人に達し、総人口の21.1%を占めました。高齢者の増加に伴い、近年中国では“銀髪経済”(シルバー経済)という高齢者を主力とした現象が発生しており、高齢者の間で新たな生活様式が広がっています。


「感情」で消費する中国のZ世代

「感情」で消費する中国のZ世代

新型コロナウイルスが終息した後、経済が低迷しているように見える中国ではさまざまな新しい消費現象が現れています。以前から話題となっていたシティウォーク、ペット経済、リラックス感のあるファッションや「搭子社交」など、これらの現象をよく考えてみると、一つのキーワードに辿り着きます。それが「感情」です。社会的地位を証明するためにブランド品を追い求め、他人に自慢するのではなく、現在の中国のZ世代は、むしろ自己の癒しに注目し、一つの活動や商品を購入する際に自分に「感情的な価値」をもたらすかどうかを重要視しています。この現象は中国で「感情経済」を生み出すに至りました。本記事ではこの現象について詳しく紹介します。


中国Z世代における消費観“情緒経済”の特徴とは|ホワイトペーパー

中国Z世代における消費観“情緒経済”の特徴とは|ホワイトペーパー

巨大市場中国。本調査は、中国の消費者の消費動向、購買実態や新しい消費トレンド、消費観を明らかにすることを目的として調査。中でもキーとなるのは、世代間比較。この比較を行うことで、“情緒経済”を重視していると言われているZ世代の特徴や、居住地域によるZ世代内の消費観の差について検討が可能となっています。海外展開事業担当者の方や中国Z世代向けマーケティングを考えている方必見のレポートです。※調査レポートは記事末尾のフォームより無料でダウンロードいただけます。


中国におけるAI。スポーツ、就職、人材育成での活用動向

中国におけるAI。スポーツ、就職、人材育成での活用動向

さまざまな文化、技術発展の速い中国。そんな中国人は新しい技術に対して楽観的な態度を持つことが多く、AI技術も例外ではありません。2023年にスタンフォード大学が発表したAI Index Report の調査結果によると、中国人はAIに対して最も楽観的な態度を持っています。AIがもたらす可能性のあるプライバシー侵害などのリスクよりもAIが生活をより便利にすることが信じられているようです。本稿では中国AI業界の最新情報を詳しく紹介します。


健康志向が浸透する中国、飲料品トレンドを調査

健康志向が浸透する中国、飲料品トレンドを調査

近年、中国では人々の収入が高くなるにつれて生活の質に対する要求がますます高まっており、健康意識の向上が顕著になりました。さまざまな分野で健康志向に基づいたトレンドが生まれ、その影響は飲料品にも表れています。今回は、飲料品の流行にどのような変化が起こっているのかを紹介します。


最新の投稿


DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

株式会社ecloreは、同社が運営する「ランクエスト」にて、データベース型サイト運営者を対象に、SEOの実施状況やその効果について調査を実施し、結果を公開しました。


SEOに積極的に取り組んでいるサイトの9割以上が表示速度の重要性を認識!改善に取り組む目的は「顧客体験の向上」と「リピート率の改善」が上位【Repro調査】

SEOに積極的に取り組んでいるサイトの9割以上が表示速度の重要性を認識!改善に取り組む目的は「顧客体験の向上」と「リピート率の改善」が上位【Repro調査】

Repro株式会社は、Webサイト運営・管理者を対象とした、「Webサイトの表示速度改善についての実態調査」を実施し、結果を公開しました。


感性について ~ マーケティングとハプティクス

感性について ~ マーケティングとハプティクス

人には5感が備わっています。さらに突き詰めれば第6感という感覚も。それら人の持つ感性や感覚を補うべくあらゆる技術も日々進歩していますが、人のそれらの代替となるような技術はまだ未完の途上です。それほどに他に取って代われない私たちの感性・感覚。本稿では、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、広告やマーケティングを通して人の感性の深さを説き、ハプティクス(Haptics)を用いて人の感覚の重要性を解説します。


イードとガイエ、リアルとデジタルの融合でアニメファンの推し活を支援する広告パッケージを提供開始

イードとガイエ、リアルとデジタルの融合でアニメファンの推し活を支援する広告パッケージを提供開始

株式会社イードと株式会社ガイエは、全国のファミリーマート、ローソン(※一部店舗を除く)に設置されているマルチコピー機で展開するコンテンツサービス「エンタメプリント」を活用した広告パッケージ「Anime Touch Ad」を共同開発し、販売開始することを発表しました。


ネオマーケティング、ボーダーリンクとの協業で在日外国人リサーチサービスを提供開始

ネオマーケティング、ボーダーリンクとの協業で在日外国人リサーチサービスを提供開始

株式会社ネオマーケティングは、株式会社ボーダーリンクと協業し、在日外国人リサーチサービスを提供開始したことを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ