「睡眠」ブームの裏にある悩みとは?現役サラリーマンの幅広いアプローチに注目

「睡眠」ブームの裏にある悩みとは?現役サラリーマンの幅広いアプローチに注目

三大欲求の一つにも数えられる「睡眠」ですが、日本人の平均睡眠時間は世界でもトップクラスに短いと言われています。ゲームアプリ「Pokémon Sleep」の人気もあり、睡眠への関心が高まっている昨今。「睡眠」検索者が知りたがっていることやその実態を、行動データから調査してみました。


若手の現役世代が関心層

毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて分析を行っていきます。

まずは「睡眠」検索者数の推移を見てみましょう。

過去2年間(2022)を通して、おおよそ15万人前後と高い関心をもたれていることが分かります。2022年春ごろに見られる大きなピークは、睡眠の質を高めるとして乳酸菌飲料「ヤクルト1000」が一気に注目を集めた時期、2023年7月に見られるピークは任天堂のゲームアプリ「Pokémon Sleep」リリースによって睡眠への関心が高まった時期と考えられます。

一方で、全体としては減少傾向にあるとも言えます。「ヤクルト1000」や「Pokémon Sleep」の話題からしばらく経ち、睡眠ブームが早くも落ち着きを見せ始めているのかもしれません。

「睡眠」検索者数の推移
期間:202202-202401
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:Dockpit

「ヤクルト1000」・「Pokémon Sleep」については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

ヤクルト1000……なぜここまで大バズり?検索ワードから見えた「SNS投稿したくなるきっかけ」

https://manamina.valuesccg.com/articles/1801

食品業界のマーケターや、トレンドに敏感なマーケター層に向けて、食品のトレンドを分析します。今回のテーマは「ヤクルト1000」。とにかく様々な場所でよく耳にする「ヤクルト1000」ですが、なぜここまで流行っているのでしょうか?そこで今回は「ヤクルト1000」検索者のデータからそのブームのきっかけと理由を分析します。

ゲーム好き以外も使っている?睡眠アプリ「Pokémon Sleep」の利用動向

https://manamina.valuesccg.com/articles/2720

大人気コンテンツのポケモンから新たに睡眠アプリがリリースされました。睡眠を利用したゲームアプリとして注目を集める「Pokémon Sleep」はどのような人に利用されているのでしょうか。リリース直後の利用状況とユーザーの人となりについて調査しました。

2023年のトレンド、あの後どうなった?2024年はどうなる?【Pokémon Sleep編】

https://manamina.valuesccg.com/articles/3144

大注目の中、2023年7月にリリースされた、画期的な睡眠アプリ「Pokémon Sleep」。マナミナではリリース直後にユーザー分析を行い、ポケモンが好きな人も、普段スマホゲームをしない人も利用していることがわかりました。リリースから半年経った現在、ユーザー層はどのように変化したのでしょうか。Dockpitとstory bankを使って分析していきます。


次に、検索者の属性分布を見てみると、男女比に大きな偏りはなく、20-40代がボリュームゾーン、未婚率が6割近く、世帯年収はネット利用者全体と比べると600-800万円の人の割合が比較的多い、ということが分かります。これらのデータから、睡眠への関心は若手の現役世代(特に独身サラリーマン)を中心に高いことが予想されます。

「睡眠」検索者の性別・年代・未既婚・世帯年収
期間:202302-202401
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:Dockpit

内服・デジタルツールによる解決に加え、「アロマ」なども注目

次に、具体的にどのようなニーズから検索に至っているのかを知るため、「睡眠」を含む検索ワードランキングを見てみると、悩みの解決や自己分析が主な検索モチベーションのようでした。

例えば、「サプリ」「ピルクル」「カルピス」「ヤクルト」「GABA」「グリシン」検索者は睡眠導入剤や睡眠補助剤の服用によって、「音楽」「耳栓」「アロマ」検索者は五感への作用を介して、睡眠に対する悩みの解決を試みているものと考えられます。

ピルクル」「カルピス」「ヤクルト」「GABA」「グリシン」はそれぞれ、睡眠の質の改善と疲労感やストレスの軽減を報告している乳酸菌飲料やアミノ酸です。特に「ヤクルト(ヤクルト1000)」は検索者数推移のデータからも注目の高さが伺えます。

また、同様に上位ランクインしている「Apple Watch」「Fitbit」は「Pokémon Sleep(「ポケモン」は3位ランクイン)」と同様に自身の睡眠データを記録・管理できるツールとして知られ、睡眠の悩みの有無に関わらず、現状把握を行う目的で使用が検討されていると考えられます。

9位には「睡眠 質」が検索されていることからも、限られた睡眠時間の中でいかに質を高められるかを模索している層が多いようです。

「睡眠」検索者の検索ワードTOP20
期間:202302-202401
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:Dockpit

あらゆるデジタルツールを使いこなす。「頭痛ーる」「あすけん」などもランクイン

ここからは、Web行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定のWeb行動の前後の動きと属性を集計できる、ヴァリューズの分析ツール「story bank」を用いて、さらに検索者の実態を分析していきます。

まずは「睡眠」検索者に特徴的な利用アプリを見てみます。

「睡眠」検索者の利用アプリTOP10
期間:202302-202401
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:story bank

1位には検索ワードでも上位にランクインし、世間の注目を集めている「Pokémon Sleep」が入っています。
ヤフー・データソリューションによるレポートでは「『Pokémon Sleep』ユーザー群の睡眠時間が約26分増加している」という結果が公開され話題になりました。コスパやタイパを重視する現代では、自身の睡眠さえも有効利用できることが大きな魅力に感じられるのかもしれません。

2位にランクインしたのは「頭痛ーる」でした。このアプリは毎日の天気予報とともに気圧変化にともなう頭痛の程度を予報してくれるほか、その日、その時間の自分の体調を記録しておくことができます。最近では、先ほど話題に上がった「Fitbit」との連携を開始し、睡眠データや心拍データも加えた詳細な体調管理を行うこともできるようになりました。

4位にダイエット管理アプリ「あすけん」もランクインしていることから、「睡眠」への関心が高い層は、自身の健康管理そのものにも強く関心をもっていることが伺えます。客観的な評価が行えるデジタルツールと健康管理との親和性の高さは、今後ますますの発展が予想されるため、引き続き注目していきたいですね。

また、「Amazon Kindle」「Google ToDo リスト」「ぴよログ(夫婦で共有できる無料育児記録アプリ)」など、アナログでも用が足りそうな事柄についてもアプリを利用している傾向にあることから、デジタルネイティブな人が多いことも予想されます。これは検索者の多くが現役世代であることも影響しているものと思われます。

電子機器の多用で眼精疲労ぎみ

次に「睡眠」検索者の興味・関心について分析していきます。利用者に定期的に行っているアンケートから、対象者が一般的なネット利用者と比べて特徴的な興味・関心を抽出しました。

以下の表には、アンケートで当該項目に回答した人数の比率を示すリーチ率が30%以上かつ、一般的なネット利用者とのリーチ差を示す特徴値が正のものを抜粋しました。「パソコン」が1位にランクインしているのは、仕事で頻繁に使用する現役サラリーマンの特徴と考えられます。また「健康、医療、病気」の関心の高さから、健康意識が高い傾向にあることがさらに裏付けられたと言えます。

「睡眠」検索者の興味・関心(リーチ率30%以上、特徴値が正のものを抜粋)
期間:202302-202401
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:story bank

次に「睡眠」検索者の身体の悩みについて分析してみました。

先ほどと同様に、アンケートから、対象者が一般的なネット利用者と比べて特徴的な身体の悩みを抽出し、特徴値が正を示すものをリーチ率の高い順に3つ抜粋したところ、「目の疲れ」が1位にランクインし、次いで「肩こり」「睡眠不足」の順となりました。

電子機器やデジタルツールへの関心が高く、普段から仕事でパソコンを利用するなど目を酷使していることで、自覚症状が出るほど目の疲れを感じ、睡眠の質自体が落ちている可能性が高いと考えられます。これは情報社会を生きる現代の我々にとって、切っても切り離せない副作用とも言えるのではないでしょうか。

また、先ほど特徴的な利用アプリとして「頭痛ーる」がランクインしていたにも関わらず「頭痛」が悩みの上位にはいなかった(気にしていること7位、対策していること11位)ことから、「頭痛ーる」の利用は「睡眠」検索者の一部にとどまっている、あるいはその利用目的が悩み解決ではなく体調管理である可能性が考えられます。

「睡眠」検索者の身体の悩み(リーチ率TOP3、特徴値が正のものを抜粋)
期間:202302-202401
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:story bank

転職で睡眠レベルをアップしたい?

最後に、「睡眠」検索者が検索前後180分に閲覧したサイトを分析しました。

「睡眠」検索者の検索前後分析
期間:202302-202401
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:story bank

「睡眠」検索を行う前、そして行った後に見られた特徴的な検索行動として、前半1位に転職サイト「doda」、後半8位に企業口コミサイト「カイシャの評判」がランクインしていました。どちらも転職を考える際に参考にするサイトのため、「睡眠」関心層は現役ビジネスパーソンが多いことに加え、現在の職場に満足していない人が多いことが考えられます。「より自由な働き方で、睡眠時間を含む自分の時間を確保したい」という人が多いのかもしれません。

また、ベッドに関するサイトが中間に上位ランクインしているのも特徴的な結果と言えます。検索ワードの分析では耳栓やアロマなどの検討が推測されましたが、この分析からは寝具自体の改善も検討されている様子が分かります。1位の「フランスベッド」など、かなり大きな買い物と言えるので、関心層は睡眠にかなり重きを置いている、もしくは睡眠の悩みが深い可能性も考えられます。

まとめ

今回は「睡眠」検索データからその関心層を深掘りしていきました。

20-40代の現役世代を中心としたデジタルネイティブ層が、自身の健康管理の一環として睡眠の質の向上を目指し、アプリによる睡眠トラッキングや、サプリや耳栓・アロマ、寝具の変更といった身体の内外に多様なアプローチを検討していることが分かりました。

また、デジタルツールの普及が進むにつれて、睡眠に悩む人も今後さらに増えていくことが示唆されているようにも感じます。

睡眠トラッキングデータをさらに解析することができれば、睡眠に関する悩みに対して新たな解決策を望むことも期待でき、潜在ニーズの探索にも繋がっていくかもしれません。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。



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この記事のライター

2024年春にヴァリューズに入社しました。大学院では生命情報学を専攻していました。

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