3ヶ月で物件決めから引っ越しまで完了か
まずは「引っ越し(引越し、引越も含む)」検索者数の推移を見てみましょう。
なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツールDockpitを用います。
2022年からの2年間を分析した結果、毎年1〜3月にピークが見られます。4月からの大学進学や就職、転勤などの理由で引っ越しを検討している人が多いと考えられます。実際、2023年以降は新型コロナウイルスによる規制が緩和されたこともあり、引っ越しをしたくてもできない「引っ越し難民」が3月4月を中心に発生しているようです。
参考:「引っ越し難民」ってなに?難民になる原因とならないための対策方法
https://hikkoshizamurai.jp/estimate/refugees/引越し難民とは、引越し料金が高い・引越し業者の空きがないなどの理由で「引越しをしたくてもできない人」を指します。特に引越し需要が高まる3月4月にニュースで取り上げられることが増えています。この記事では、気になる引越し難民の原因と対策、2022年、2023年の引越し難民について解説しています。
また、平時でも40~60万人前後の検索者がいることから、1年を通して関心が高いワードであることや長期的に検討している人がいることが予想されます。
比較のため、同じ期間(2022年からの2年間)での「賃貸」検索者数の推移を見てみると、こちらは1月にピークを迎えていることが分かります。1月に物件を検索し始め、3月に引っ越しを行うという動きをする人が多数派なのかもしれません。
「引っ越し」および「賃貸」検索者数の推移
調査期間:202203-202402
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:Dockpit
関東地方の独身若手サラリーマンが中心
次に、「引っ越し(引越し、引越も含む)」検索者の属性分布を見てみると、男女比はほぼ半々、20-30代がボリュームゾーン、未婚率が約60%であることが分かります。これらのデータより、独身の若手サラリーマンが引っ越し検索者の中心なのではないかと考えられます。
10代の割合はネット利用者全体と比べて高くないことから、初めての引っ越しになるであろう大学進学の学生による検索は、そこまで割合を占めていないと思われます。親に手伝ってもらうケースが多く、自分で積極的に検討する学生は少ないのかもしれません。
また、40代以降の割合もネット利用者全体と比べて高くありませんが、これは家庭をもつなどして定住を決めた人が多いことや、すでに何度も引っ越しを経験してノウハウが身についている人が多いことが考えられます。
居住地域は関東地方の割合がネット利用者全体よりも多いことが分かります。国土交通省による賃貸住宅市場の実態についての調査では、賃貸用住宅の数は一都三県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)を中心に多くなっているため、関東地方ほど賃貸物件の需要が高く、更新や同棲・結婚などのタイミングで圏内での引っ越しを行う人も多いと考えられます。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/001011169.pdf
「引っ越し」検索者の属性
調査期間:202303-202402
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:Dockpit
引っ越し経験者でも、都度検索している?
さらに、Web行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定の Web 行動の前後の動きと属性を集計できる、ヴァリューズの分析ツールstory bankを用いて検索者の居住形態を見てみると、ネット利用者全体よりもマンションやアパートなどの賃貸物件に住んでいる人が多いことが分かります。引っ越しが初めてだから不安で検索する、というよりは、何度やっても分からないことがあるから毎回検索する、という人が多いのかもしれません。
「引っ越し」検索者の居住形態
調査期間:202303-202402
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:story bank
コスパやToDo、インフラなどの検索が上位
次に、集計対象のキーワードと一緒に検索された単語を集計する掛け合わせ検索ワード分析を行った結果、「引っ越し」検討者の検索モチベーションが以下に示すような3つのタイプに分けられました。
・「見積もり」「相場」「料金」「費用」「安い」
:金銭面に関するワード。仲介業者の選び方によって費用が大きく異なってくるため、コスパよく引っ越しを行いたいと考えているのではないか。
・「手続き」「やること」
:大まかな流れを知るために検索するワード。初めての引っ越しで勝手が分からない、もしくは失敗を防ぎたいという心理から、まずはざっくりと概要を把握したいと考えているのではないか。
・「水道」「冷蔵庫」「電気」「洗濯機」「ガス」「NHK」
:引っ越す前に整理しなければならない製品やサービス。今までの契約を解約・変更したり、片付けや処分、大型荷物として運搬するなど正確性を求めて検索しているのではないか。
「引っ越し」検索者の掛け合わせワードTOP20
調査期間:202303-202402
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:Dockpit
特に黄枠で囲った金銭面に関するワードは言い方を変えて数多くランクインしていることから、引っ越し料金は検索者の懸念事項の中でも大きな割合を占めているものと考えられます。新生活を前に無駄な出費は抑えたいという気持ちがあるのかもしれません。
さらに、掛け合わせワード分析であがった「挨拶」および「ふるさと納税」について詳しく分析を行いました。
引っ越し時の挨拶に気を遣うのはどんな人?
まずは「挨拶」について。最近は昔ほどご近所付き合いを大切にしない、女性の一人暮らしを周囲に悟られてはいけない、などの理由で引っ越しの際に挨拶をしないケースも多くなってきたと耳にしますが、掛け合わせワードとしては9位にランクインするほどまだまだ慣習としては残っているようです。
実際、株式会社AlbaLinkが行った引越しの挨拶に関する意識調査によれば、引っ越しの際に近所に挨拶をする人の割合は、「必ずする」「することもある」を合わせて70.0%に及んでいます。
引越しの挨拶に関する意識調査
Dockpitを用いて、先ほどの掛け合わせ分析上位3ワード(「引っ越し」の表記ゆれを除いた「見積もり」「手続き」「水道」)と「挨拶」検索者の属性分析を行ったところ、「挨拶」検索者に特徴的なデータが見えてきました。
性別は他のワードとおよそ10ptの差をつけて女性の割合が高く、約6割を占めています。また、年代分布は30代が最も高く、既婚者が約半数、子供ありの割合が約40%となっていました。
これらのデータから、「挨拶」検索者には結婚を機に定住を決めたため近所の雰囲気を知りたい人、もしくは子供がいて周囲に迷惑をかけそうだから事前に挨拶しておきたい人などが一定数いるのではないかと考えられます。
「引っ越し 見積もり/手続き/水道/挨拶」検索者の属性
調査期間:202303-202402
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:Dockpit
引っ越し前のふるさと納税は少し面倒?
続いて「ふるさと納税」について、先ほどと同様に掛け合わせ分析上位3ワード(表記ゆれを除いた「見積もり」「手続き」「水道」)とともに属性分析を行いました。その結果、性別分布に大きな違いはありませんでしたが、20-30代の割合が他の年代と比べて顕著に高く、若年層に特徴的なワードだと分かりました。また、居住地域はネット利用者全体の分布に近く、全国的に広く検索されているワードと言えそうです。
「引っ越し 見積もり/手続き/水道/ふるさと納税」検索者の属性
調査期間:202303-202402
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:Dockpit
さらに「引っ越し ふるさと納税」検索者の流入ページを見てみると、どれも引っ越しに際して必要な追加手続きの方法や条件について解説しているページでした。ふるさと納税は税金の控除を実現しながら商品を手に入れられる便利な仕組みですが、一方で手続きを間違えると返礼品を受け取れないばかりでなく税金の控除も受けられなくなってしまうため、慎重さ、そして正確さが求められているようです。
「引っ越し ふるさと納税」検索者の流入ページTOP3
調査期間:202303-202402
デバイス:PC、スマートフォン
ツール:Dockpit
ふるさと納税は、寄付金上限額が12月31日にリセットされることもあり、年末に駆け込み需要が増します。そのため、1月から3月にかけて引っ越しを行う人にとっては、返礼品の受け取りや住民票の異動手続きとの兼ね合いが気になってくるのではないでしょうか。
社会人は辞令によって急な引っ越しを余儀なくされることもあるかと思います。忙しいときに手間を増やすことのないよう、ふるさと納税は年末に駆け込まずに前もって完了させておくとよいのかもしれません。
まとめ
今回は「引っ越し」検索者の分析から、その特徴を見ていきました。
転勤などにより急ピッチで準備を進めなくてはいけなかったり、時期によっては配送スケジュールを考慮する必要があったり、はたまた「ふるさと納税」のように新しく生まれた仕組みに対応していかなくてはいけなかったりと、引っ越しにまつわる悩みは尽きません。
さらにトラックドライバーの働き方改革に伴い、今後ますます前もった準備が求められそうな状況となっています。いかに欲しい情報を素早く入手できるかが、コスパのよい引っ越しには重要となりそうです。
郊外に移り住む人が増えている?コロナ禍での引っ越し傾向を探る自主調査レポート
https://manamina.valuesccg.com/articles/1321コロナ禍でのテレワークの浸透や在宅時間の増加から、住環境を見直す人が増えているようです。都心を離れての近距離の移住や新たに住宅を購入する動きなどが見られる中、コロナが引っ越しに与えている影響はどのようなものなのでしょうか。アンケート調査とインターネット行動ログデータの分析から調査しました。(ページ数|25p)
「引っ越し」検討者への効率的なアプローチ法は? | 「戦略ターゲット発想」シリーズ
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▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
2024年春にヴァリューズに入社しました。大学院では生命情報学を専攻していました。