データマーケティングを行うためには
「自社のいろいろな場所にデータが眠っている。データは宝だ。うまく使えば何かいいことが起こる」
こうしたデータ活用の可能性を模索している企業は多いのではないでしょうか。新しいマーケティング戦略やプロモーション施策、新規ビジネス企画などを作るとき、データは現状を変える大きな力になる、と。
一方で、実際に成果に結びつくデータ活用法が見えていない企業も多いでしょう。とりあえずGA(Google Analytics)を入れてサイト分析をしてみたけれども、次の施策にはつながらない。エクセルで顧客データを管理しているけれども、どう分析すればいいか分からない。このように、データ活用に至るまでの道のりは長いと感じてしまう場合も多々あります。
ではどうすればデータをマーケティングに活かすことができるのでしょうか? 7月24日に開催された「日経クロストレンドFORUM 2019」で「データマーケティングはまず小さく始めればいい」と語ったのは、株式会社ヴァリューズの執行役員・子安氏です。
株式会社ヴァリューズ 執行役員 子安亜紀子(こやすあきこ)
慶應義塾大学 環境情報学部卒。システムエンジニア・Webコンサルタントを経て、(株)マクロミルに入社。マクロミルのベンチャー時代から、商品開発、事業企画、営業企画などを手掛ける。2011年よりヴァリューズに参画。現在は執行役員として、事業企画やマーケティング部門の統括などを担当している。
講演は「事例で解説!カスタマーデータ徹底活用によるデータマーケティングの最前線」というタイトルで、自社に眠るデータをマーケティングに活かす方法が語られました。本稿ではその内容をレポートします。
リゾートホテル事業、ダイワロイヤルホテルの事例
「データ分析の環境を作るために、大規模なプロジェクトは必ずしも必要ない」。こう語るのはヴァリューズの岩村氏です。
株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 岩村大輝(いわむらだいき)
創業初期のヴァリューズでアルバイトとして勤務し、2015年に入社。業界最大手のメーカーや広告代理店の大規模なプロモーションから、新規事業立ち上げにおける市場調査など大小様々なフェーズのマーケティングリサーチを経験。
事例として挙げられたのはダイワロイヤルホテル。大和リゾート株式会社が提供するリゾートホテルで、全国28箇所で展開されています。
日本全国で多くのホテルを運営しているため、大和リゾート社には部屋の稼働状況や予約状況といったデータが多く存在しています。Webマーケティング部門の担当者2名がこれらのデータを確認し、マーケティング施策に活かしていました。
しかし課題がありました。
まず、じゃらんなどのOTA(Online Travel Agent)から提供される予約状況データがOTAごとに異なっていたこと。また、ホテルごとにWebサイトがあるため、GAデータを別々に見て分析を行う必要があったこと。つまり、データが様々な場所に散在していたのです。
そのためデータ集計が大変になってしまい、マーケティング施策を考えるための充分な時間がなかったと言います。
通常、このような状態の改善策としてはシステムの改修を考えるでしょう。ただ、その場合は要件定義に最低1年はかかるような大規模プロジェクトが必要になってしまいます。
そこで、データコンサルティングサービスを提供するヴァリューズではこうした問題に対しできるところから小さく始めていくと言います。
具体的に今回の大和リゾート社の事例では、まずGAデータを統合して一元管理するためのダッシュボードを個別にアレンジして提供しました。
この一元化によって、ホテルごとのGAページを一つずつ見ていた状態から、ダッシュボードを見るだけですべてのホテルへのアクセスログが分かるように。データ集計作業にかかっていた時間が削減されました。
さらに、データ可視化ツールであるTableauの導入を支援。OTAによる予約データと、自社基幹システム内にある稼働データ・目標データを集約し、データの一元管理を進めました。
このように、まずは散在しているデータを一箇所に集め、利用可能な状態にするのが重要だと岩村氏は語ります。
では、データ集約によってどのようなアクションが可能になるのでしょうか? その例として岩村氏は予約者居住地域をマップ上に可視化した整備を挙げました。
このマップでは、あるホテルを予約した人が住んでいる都道府県について、「宿泊のどれくらい前に予約したか」別に色分けを行っています。
これを見れば、予約日と宿泊日が近ければ近いほど、ホテル近隣の県からの旅行者が多いことが分かります。いままでこの事象は担当者の肌感覚で理解されていたことでしたが、実際にデータの可視化を行うことで根拠のあるナレッジとなりました。
そこで、直前になっても宿泊者の目標値に達していないホテルについては、近隣の県に住んでいる人をターゲティングして広告を配信するといった施策が効果を発揮すると分かります。
「このようにデータマーケティングの壁打ち相手を呼べば、できるところから小さく始められる。すると自社でのデータ分析に慣れていき、そこから他部署を巻き込んだデータマーケティング組織を作っていけるはずだ」
推進者を立てよ、小さく始めよ
データマーケティングの活用事例について語られた本セッション。ポイントはまずスモールスタートを切ることでしょう。最後に子安氏はこのように総括しました。
「『データを使って◯◯がやりたい』と語れる推進者がいることが大事です。ただ、もしデータで何ができるかも分からない場合は『データで何ができるかを知りたい』でもいい。そういったときは外部のパートナーを壁打ち相手として使えばいいのです。限られたマーケティング予算であっても、まず小さく始めることがデータ文化を作る上で重要だと思います」
壁打ち相手としてのヴァリューズ
CDM -Customer Data Management- | 株式会社ヴァリューズ
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マナミナ編集部でデスクを担当しています。新卒でメディア系企業に入社後、フリーランスの編集者・ライターとして独立。マナミナでは主にデータを活用した取り組み事例の取材記事を執筆しています。