4C分析とは?4P分析との違いは"消費者目線"かどうか

4C分析とは?4P分析との違いは"消費者目線"かどうか

マーケティング戦略のフレームワークで4P分析とセットで使われる4C分析について、用語の定義や使い方を解説します。4P分析の4つの要素を顧客目線で捉え直すと4C分析になります。売り手目線の4P分析から導き出された戦略が顧客目線から見ても妥当か?というチェックするのに役立ちます。


4C分析とは?

4C分析は4P分析を改良するマーケティング理論です。

4P分析は企業が製品のマーケティング戦略を考える際に、自社でコントロール可能な4つの要素から自社が取りうるポジションや施策を検討するフレームワークです。

4P分析の定義
・Product(製品)
・Price(価格)
・Place(流通)
・Promotion(プロモーション・販売促進)

4P分析は自社が取りうる手段に落とし込むには良い方法ですが、それらの施策が顧客目線でもメリットがあるか?という視点で捉え直すのが「4C分析」です。

4P分析は1960年代に提唱され、改良した4C分析は1990年代に発表されています。

4C分析の定義
・Customer Value(顧客にとっての価値)
・Customer Cost(顧客が費やすお金)
・Convenience(顧客にとっての利便性)
・Communication(顧客とのコミュニケーション)

両者の対応関係は以下の通りです。

4P分析とは?マーケティングミックスに活用

https://manamina.valuesccg.com/articles/623

4P分析は企業が販売戦略を決める際に使わるフレームワークでProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の頭文字を取った用語です。ニーズを満たした製品を、適切な価格で適切な流通で効率よく販促できれば、売上拡大につながります。

企業目線と顧客目線で行き来することでマーケティング戦略を検討する

4C分析の各項目の詳細を見ていきます。

Customer Value(顧客にとっての価値)
4P分析のProductでは企業が売りたい製品という目線になりがちですが、4C分析のCustomer Valueでは顧客のニーズを解決する方法は何か?を考えます。

例としてはProduct側では多機能化して他社との差別化を図ろう!となるかもしれませんが、顧客にとっては価格が上がるだけで不要かもしれません。

Customer Cost(顧客が費やすお金)
4P分析のPriceで高級時計を売ろうとしたとして、顧客はその製品にいくらまで出せるか?というCustomer Costの目線が必要です。

Convenience(顧客にとっての利便性)
4P分析のPlaceでは流通や販売店舗などを検討しますが、顧客が必要としたときに買える場所かどうかの目線が必要です。あるいは、高級ブランドの販売では適度な希少性や行列に並ぶ体験が顧客の所有欲を満たすかもしれません。

Communication(顧客とのコミュニケーション)
4P分析のPromotion目線で頻繁にDMした方が売上が上がる場合でも、顧客目線では違和感のあるCommunicationである場合があります。

いくつか例示したように売り手目線と顧客目線を行き来することでマーケティング戦略のバランスを取る使い方をします。

「ヘルシア緑茶」に見る4C分析の事例

4C分析に基づくマーケティング成功例としては花王の「ヘルシア緑茶」があります。2003年に新発売されると2004年には年間売上300億円を超える爆発的なヒットを記録しました。

年間800商品が発売され、そのほとんどがすぐ消える清涼飲料水ジャンルで花王が取ったマーケティング戦略を4P/4Cの目線で見てみましょう。

Product/Customer Value
「ヘルシア緑茶」は茶系飲料では初めて体脂肪低減機能をうたった「トクホ飲料」です。

健康市場に向けた商品開発の結果、茶カテキンに体脂肪を減らす効果があることを発見した経緯はProduct目線ですが、「トクホ飲料」として認定されたこともあって、消費者からはお茶を飲むだけで痩せられるというCustomer Valueが生まれました。

また茶カテキンには苦味がありますが「効き目がありそう!」という期待に転換できています。

「当社はヘルシア緑茶以前から栄養代謝や肥満の研究に取り組み、いわゆる健康市場に向けた商品開発に熱心にチャレンジしていました。その結果として、体に脂肪がつきにくい食用油の開発など成果を挙げることもできました。

その商品開発の一貫として、さらに体脂肪を減らす効果のある素材を探していたところ、ポリフェノールの1つである茶カテキンにその作用があることがわかり、それに注目しました」(花王担当者談)

Price/Customer Cost
当時120円が多かった清涼飲料市場で「ヘルシア緑茶」は350ml入りペットボトル1本が180円と高めでした。思い切った価格でしたが消費者からは「効きそう」というプレミアム感を持たせる結果になりました。

消費者が感じるメリットが大きければ消費者が負担できるコスト(Customer Cost)も上げられる、という事例です。

Place/Convenience
飲料業界に新規参入する花王には自販機での販売経路がありませんでした。当初コンビニ専用商品になった経緯は花王側の都合でしたが、消費者からはビジネスマンでも手に取りやすいというメリットにつながりました。現在はスーパーやAmazonなどに販路を広げています。

Promotion/Communication
TV広告を中心に展開しています。後発企業による新商品ですから、認知度を上げる必要がありました。

まとめ

最後の花王の事例でわかるように4P分析によるマーケティングミックスでは売り手目線と顧客目線双方から見た「バランス」が大事ということがわかります。

飲むだけで痩せられる、トクホとして機能が保証されているという製品の良さはあったものの、180円と高い値付けや当初はコンビニ専用商品だった点など既存の商品とは異なる戦略を取っています。

その理由は企業都合によるものもありますが「消費者から受け入れられるか?」のバランスを踏み外さなかったことが大ヒットにつながりました。

関連記事

基礎から学ぶ代表的なマーケティング理論(3C・4P・カスタマージャーニー・AIDMA/AISAS・パーセプションフロー)

https://manamina.valuesccg.com/articles/608

マーケティングで使われる理論は略語や似た用語が多く混乱しがちです。代表的な「3C分析」「4P分析」「カスタマージャーニー」「AIDMA / AISAS」「パーセプションフロー」について用語の定義と役立つ場面について説明します。

​​

メールマガジン登録

最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連するキーワード


4C 4P

関連する投稿


ファッション通販サイトのポジショニングを分析! 20代に人気「GRL」を4P分析で紐解く

ファッション通販サイトのポジショニングを分析! 20代に人気「GRL」を4P分析で紐解く

新型コロナウイルスの蔓延を経て、ファッション業界でもオンラインショッピングの利用が急拡大しました。実店舗よりも選択肢が増える状況下で、多くの支持を集めるブランド「GRL(グレイル)」「ユニクロ」「GU」「SHEIN(シーイン)」に注目し、好調の理由を分析します!


データ分析のヴァリューズが「競合分析ガイドブック」を公開 ~ 商品企画からプロモーションまで、知っておきたい 6つのフレームワーク・8つの事例・19の分析ツールを徹底解説 ~

データ分析のヴァリューズが「競合分析ガイドブック」を公開 ~ 商品企画からプロモーションまで、知っておきたい 6つのフレームワーク・8つの事例・19の分析ツールを徹底解説 ~

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、運営するデータマーケティング・メディア「マナミナ」にて公開した記事から厳選し、知っておきたい6つのマーケティング・フレームワーク、8つの事例、19の分析ツールを収録した「競合分析ガイドブック」を公開しました。


振り返る!ユニクロを世界有数のアパレルに押し上げたマーケティング戦略

振り返る!ユニクロを世界有数のアパレルに押し上げたマーケティング戦略

低価格で高品質、年齢や性別問わず支持されるアパレルブランド「ユニクロ」。アパレル業界の時価総額で世界2位に成長したユニクロを、4P分析や成長段階ごとのマーケティング戦略​からご紹介します。


競合調査とは?比較・分析してライバルと差別化しよう

競合調査とは?比較・分析してライバルと差別化しよう

競合他社と差別化する戦略のベースとなる「競合調査」。競合調査では市場における自社の強みや弱み、そして他社の戦略などを把握する必要があります。この記事では競合調査の基本や進め方、そして競合調査の準備・実行に使えるフレームワークなどについてご紹介します。


競合調査の代表的フレームワークを紹介!

競合調査の代表的フレームワークを紹介!

市場における自社の強み・弱みや他社の戦略を把握するために行う「競合調査」。ビジネスの競合調査でよく使われているフレームワークは、3C分析・SWOT分析・ファイブフォース分析(5フォース分析)・PEST分析・バリューチェーン分析・4P分析の6つです。本稿では、各フレームワークの概要と分析方法、使い分けをご紹介します。


最新の投稿


約5割がWeb広告運用の成果に「満足していない」!約8割が広告運用の成果把握に課題を実感【富士フイルムビジネスイノベーション調査】

約5割がWeb広告運用の成果に「満足していない」!約8割が広告運用の成果把握に課題を実感【富士フイルムビジネスイノベーション調査】

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社は、事業会社に勤めており、Web広告の運用に携わっているマーケティング担当者を対象に、広告運用と成果把握に関する実態調査を実施し、結果を公開しました。


人新世をめぐって ~ 人が起源の地質革命

人新世をめぐって ~ 人が起源の地質革命

SDGs(持続可能な開発目標)という言葉にも慣れ、人類と環境の関係に関しても再考が必要との認識が深まりつつある今。人類が我がもの顔で地球資源やそれら環境の利益だけを享受する行動を制し、あらゆる自然環境と共存するという考えとその行動を真剣に追求することを急がねばならない時に来ているかもしれません。本稿では「人新世(じんしんせい)」というワードをキーに、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、人類と地球の歩んできた歴史関係の精緻な理解の薦め、そして未来のために今とるべき行動は何かを問いかけます。


LINEヤフー、法人向けサービス「LINEプロモーション絵文字」の正式提供を開始

LINEヤフー、法人向けサービス「LINEプロモーション絵文字」の正式提供を開始

LINEヤフー株式会社は、法人向けサービス「LINEプロモーション絵文字」の正式提供を、4月1日より開始したことを発表しました。


ReBearとOshicoco、Z世代の決済手段と消費行動についての合同調査結果を公開

ReBearとOshicoco、Z世代の決済手段と消費行動についての合同調査結果を公開

α・Z世代に特化したリサーチプラットフォームを運営するReBear合同会社と、推し活領域を専門としたマーケティング企画会社である株式会社Oshicocoは、「Z世代の決済手段と消費行動の多様化」について合同調査を実施し、結果を公開しました。


より早いスピード感で手軽に調査をスタート!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」とは【第1回】

より早いスピード感で手軽に調査をスタート!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」とは【第1回】

トレンドの変化が速い、と言われている中国市場。「最近、中国市場の変化が掴めない。言語の壁もあり、中国人生活者の考え方がよくわからない。」というのも多く耳にします。従来の調査には1ヶ月以上の時間が必要ですが、サブスクリプション型のWeb調査ツール「ValueQIC(ヴァリュークイック)」なら、言語の壁を感じることなく最短1週間で調査結果を確認することが可能です。第1回は、その特徴を事例とともにご紹介します。※本資料は記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ