振り返る!ユニクロを世界有数のアパレルに押し上げたマーケティング戦略

振り返る!ユニクロを世界有数のアパレルに押し上げたマーケティング戦略

低価格で高品質、年齢や性別問わず支持されるアパレルブランド「ユニクロ」。アパレル業界の時価総額で世界2位に成長したユニクロを、4P分析や成長段階ごとのマーケティング戦略​からご紹介します。


4P分析から見たユニクロのマーケティング戦略

4P分析

ユニクロのマーケティング戦略を紹介するにあたり、まずはユニクロを「4P分析」にあてはめ、同社の概要や特徴を振り返ってみます。「4P分析」とは、企業が販売戦略を決める際に使うマーケティング戦略のフレームワークです。4Pは、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の頭文字から来ています。​

Product(製品)

高品質でありながら、手ごろな価格の衣料品を提供しています。シンプルなデザインにこだわり、ベーシックなアイテムに高い機能性を組み合わせる(たとえばヒートテック)ことで、幅広い層の消費者から支持されています。

Price(価格)

手頃な価格帯での商品提供もユニクロの特徴です。価格競争力を維持するために、生産ラインの効率化や省コスト化を進めているほか、セールや割引キャンペーンなども積極的に行っています。

Place(流通)

日本国内にとどまらず、現在では世界中に多数の店舗を展開しています。都市部やショッピングモールなど、消費者が利用しやすい場所に出店することで、消費者にとってアクセスしやすい販売チャネルを確保しています。また、オンラインストアも積極的に展開しています。

Promotion(販促)

広告やマーケティングに力を入れており、世界中で積極的に展開しています。国内では毎週のように新聞の折込チラシを配布するほか、アプリのプッシュ通知を利用してオンライン、オフラインの店舗に対応する幅広い販売促進戦略を展開しています。また、新商品の発売や季節限定の商品なども積極的にプロモーションしています。

初期以降のユニクロのマーケティング戦略

ユニクロ マーケティング戦略

ユニクロの初期のイメージは低価格路線で、「ユニクロバレ」「ユニクロかぶり」といった、ネガティブなイメージもあったことは否めません。しかし、現在ではそのようなイメージを持つ人は少ないのではないでしょうか。

2006年のニューヨーク店オープンにあたり、同店舗のクリエイティブ・ディレクターを務めた佐藤可士和氏がデザインしたロゴデザインの採用、フランスのデザイナー「クリストフ・ルメール」とのコラボ、トップインフルエンサーをブランド・アンバサダーとしての起用するなど、着々とブランドイメージを向上させてきました。

著名人とのコラボ以外にも、コンセプトに「LifeWear(究極の普段着)」を掲げ、「質の良いものを安価に購入したい」「ベーシックで機能性を重視したい」というさまざまな人々のニーズに応じた商品展開を行っています。

そのためにニーズに着目したセグメンテーションを行い、強みであるスピーディーな生産調整を活かして市場にアイテムを送り出しています。

Tシャツでは、「UT」ではコアなクリエイターとコラボした個性的なキャラクターTシャツ、「UNIQLO U」ではクリストフ・ルメールがデザインしたファッション好きに受け入れられるTシャツと、ユニクロ内のブランドで異なる商品展開が見られます。

さらに、近年では環境に配慮した製品ラインナップを拡大し、持続可能性に焦点を当てたマーケティングを強化しています。例えば、リサイクル素材を使用したウェアの販売、自社で回収した古着の再利用などが挙げられます。

これにより、消費者の環境意識に訴えかけ、ブランド価値を高めています。

ユニクロの世界進出戦略について

ユニクロの世界進出戦略については、世界進出を本格化させた、いわば世界進出前の2006年と進出後の2011年のプレスリリースからその戦略の概要を読み取ることができます。

ユニクロの世界進出戦略

まず2006年の「ユニクロ事業の海外戦略〜世界No.1のカジュアルブランドになるために〜」というプレゼンでは、目標値として2010年までに売上高1000億円、経常利益で100億円達成を掲げました。これを達成するために、以下の4項目を戦略として発表しています。

1.国内チームを最大限に活用
2.成功要素の世界展開
3.強い現地チームを作る
4.ブランド力を高める

具体的には、海外事業を国内事業と同じレベルで考えるとし、海外事業には国内各部署のリーダーが深く関わっています。

2番めの「成功要素」として、日本国内で成功した要素として「商品」「顧客サービス」「店舗」を挙げています。先行して店舗展開した香港や韓国で成功した要因として、日本国内のユニクロと同じように楽しい買い物環境を構築し、それを体感してもらったことがブランド理解の最善の方法にもつながったとしています。

3番めの「強い現地チーム」とは、現地経営者がリーダーシップを持ち、日本のマネジャーや本社チームと密な連携を取るほかに、強い現地パートナーとの提携も重要であると説明。これに関しては、韓国のユニクロが成功した要因のひとつに、ロッテとの強力なパートナーシップがあった点を挙げ、これが今後の良いモデルになるとしています。

最後の「ブランド力」について、もっとも効果的なのが旗艦店を出店し、そこを通じてユニクロの魅力を直接体感してもらうことが、ブランドの認知度を高めるためには最適だと解説しています。

ユニクロが2011年に発表した世界進出戦略

2006年にニューヨークに旗艦店をオープンさせ、本格的な海外進出を果たしたユニクロ。その4年後の2010年の8月期には売上高8000億円超、海外事業は前期比4倍(参考)と成功を収めています。

ユニクロの世界進出計画として、まずアジアで1位のグローバルプレーヤーとなり、次に世界で1位になるという点。次に、欧州からグローバル・ブランドを確立し、グローバル統合を進める。最後に人材育成に注力する方針です。

これらは、2020年までの目標(2011年時点での目標)である「売上高5兆円、世界一のSPA企業」を達成するために、海外売上高を50倍にする必要があることを柱として立案されたものです。

結果としては新型コロナウイルス感染症のまん延により、2020年の8月期の売上高は2兆88億円(参考)でしたが、2011年当時の方針は2023年の現在においても引き継がれていると思われます。

アパレル各社のサイトやアプリの利用状況調査から見えてくること

ファストファッション業界のユニクロ、GU、H&Mを分析したところ、2023年1月の時点では3社ともサイトよりアプリのユーザー数の方が多いという結果が出ています。

各社の主な特徴をまとめると、ユニクロはメールからの流入の割合が高く、それがリピーターの多さにつながっており、アプリユーザーには比較的男性が多く、40~60代を含めた幅広い世代に利用されています。

GUに関しては、ソーシャル流入の中では、LINEからの流入が非常に多く、LINEスタンプやLINEショッピングなどの施策の影響と考えられ、アプリユーザーには若い世代と女性が多くなっています。

最後のH&Mですが、自然検索からの流入の割合が高いものの、メールからの流入の割合は低く、それが新規ユーザー率の高さ(3社の中で最多)につながっています。そして、アプリユーザーには若い世代と女性が多いという結果となっています。

これらの詳細については以下のリンクで解説しています。ぜひご参照ください。

ユニクロ・GU・H&M...値上げはファストファッション業界の追い風となるか?大学生のデータドリブン就活

https://manamina.valuesccg.com/articles/2204#outline9

あらゆるモノの値上げが続く昨今。そんな情勢下でも、プチプラでファッションを楽しみたいという生活者にとって、ファストファッションブランドは引き続き注目していきたい業界なのではないでしょうか。今回は、業界最大手の「ユニクロ」「GU」「H&M」をピックアップ。各社サイトとアプリへの消費者のアクセス状況を分析し、どんなチャネルでどんな人を呼び込んでいるのか、その集客戦略を探ります。同じファーストリテイリング子会社の、ユニクロとGUの違いについても分析しました。

まとめ

ユニクロのマーケティング戦略は、市場調査を通じて顧客のニーズを把握し、それに基づいて製品やサービスの開発をベースとし、販促活動においては、セールやキャンペーンなどを実施し、顧客の購買意欲を高めるほか、テレビCMやポスター広告、SNSなどを活用してブランド価値の向上にも取り組む、というのが基本的な流れとなっています。

世界進出の戦略については、日本→アジア→世界とその範囲を徐々に広げるために各地の一等地に大型の旗艦店をオープンさせてインパクトのある店づくりとプロモーションを行うことにより、高品質でありながらコストパフォーマンスの高いブランドとして欧米でも認知され、IRによると2022年の8月期には2兆3011億円の売上高を数えるまでのグローバルブランドに成長しました。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

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