コンテンツのサブスク「cakes」を調査。noteとの併用状況を考察すると…

コンテンツのサブスク「cakes」を調査。noteとの併用状況を考察すると…

デジタルコンテンツプラットフォーム「cakes」とは一体どのようなサービスなのか、また同様のサービスである「note」との違い、共通点、そしてつながりは何なのか。ユーザー数、ユーザーの流入元、コンテンツランキングを調べ、サービスの特徴を考察しました。


コンテンツプラットフォーム・cakesとは?

群雄割拠のデジタルコンテンツ配信サービス業界ですが、コンテンツプラットフォーム「cakes」は早くから月額課金のサブスクリプションモデルを採用した、先駆け的なサービスです。購読料は週150円あるいは月500円。プロのライターの上質な記事を読めるのが強みとなっています。

2020年1月15日現在、購読可能な記事数は25000本以上にも上るcakes。近年勢いを失っている出版業界に代わり、クリエイターと読者の架け橋として機能するプラットフォームをつくりたいという理念が根底にあります。

本記事ではcakesのユーザー数推移、属性や流入元、サイト内人気コンテンツについて、サイト分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使用して分析し、サブスクリプション型コンテンツ配信サービスの実態を探りました。

cakesのMAU推移は

ではまず、eMark+を使用してcakesの過去1年の月間ユーザー数の推移を見てみます。

上図がユーザー数の推移状況です。過去1年では平均して月間40万人〜50万人がcakesを訪れていました。2019年10月には訪問者数が約73万人と伸びていますが、コンテンツやアクセス流入元からはその理由を見出せませんでした。

noteとの併用状況は

cakesを運営するピースオブケイク社のもうひとつの主要サービスは、個人が自由にコンテンツを制作・配信し、ファンと交流できるプラットフォーム「note」です。誰もがコンテンツを作って公開できる手軽さから、2019年9月にはMAUが2000万人を突破。マーケティングに携わる業界の界隈でも、コンテンツマーケティングとしてnoteを利用する方が増えているように思います。

両サービスともに、クリエイターの受け皿となり読者との懸け橋となることを理念としています。違いは、プロのクリエイターによるコンテンツを、読者がお金を出して読むcakesに対して、noteはだれでも自由に好きな内容を投稿できるという点です。

そのため、noteはcakesへの登竜門として機能している側面もあります。noteで人気を集めたり、頻繁に行われている各種コンテストなどで入賞するなどして実力を示したライターが、cakesでの投稿権、連載権を獲得し、プロデビューするのです。

ここで、cakesとnoteの棲み分けは実際にどのようになっているのか、両サービスの併用状況を見てみました。

※分析対象期間は19年7月から12月、対象デバイスはPCのみ

まずは、cakesを使用している人のうちどれくらいの人がnoteも使っているかを見てみましょう。

118万人のcakesユーザー全体のうち、76.4%がnoteを利用していることが分かりました。およそ4分の3のcakes読者が、noteも利用していることがうかがえます。

では一方、note利用者のcakesの併用状況はどのようになっているのでしょうか。

※分析対象期間は19年7月から12月、対象デバイスはPCのみ

こちらの棒グラフを見ると、1,070万人のnoteユーザーのうち、cakesも併用しているユーザーは約8%に過ぎないことが分かります。

まとめると、「cakes利用者の多くはnoteも利用しているが、note利用者の大部分はcakesを利用していない」ということになります。ここから、noteというサービスの間口の広さと、そこから興味が発展してcakesに移行していくユーザーの様子がうかがえるのではないでしょうか。

cakesの流入元

次に、cakesのアクセス獲得経路について調べてみましょう。

※分析対象期間は19年7月から12月、対象デバイスはPCのみ

上のグラフを見ると、外部サイトからの流入が主であることがわかります。どのようなサイトから流入しているのでしょうか。具体的な流入元のサイトを見てみましょう。

※分析対象期間は19年7月から12月、対象デバイスはPCのみ

上の流入元サイトランキングを見ると、twitterからの流入が圧倒的に多いことがわかります。また二番目に多い流入元はFacebookであり、SNS上での拡散がアクセス獲得につながっているようです。また4番目はnoteとなっており、やはりnoteとの結びつきも垣間見える結果となりました。

次に、自然検索ではどのようなキーワードでユーザーが検索しているのかも見てみましょう。

※分析対象期間は19年7月から12月、対象デバイスはPCのみ

最も多い検索ワードは「CAKES」で、このプラットフォーム自体を目当てに検索する人々の存在が感じられます。また、2位のHSCは「Highly Sensitive Children」の頭文字であり、cakes上に自己診断リストなどの人気記事があるためヒットしたものと思われます。

3位の「稲垣えみ子」、9位の「幡野広志」はともにcakesの人気作家です。4位の「ワックスエステル」は、ある種の魚に含まれる特殊な油で、この魚についてのブログ記事を書いていたライターがcakesへも同様の記事を投稿し始めたため、cakesへの流入につながったのではないでしょうか。

cakesで人気のコンテンツとは

最後にユーザー数でのコンテンツランキングを見てみましょう。cakes内ではどのような記事が人気を集めているのでしょうか。

※分析対象期間は19年7月から12月、対象デバイスはPCのみ

1位:『相談者は読まないほうがいい回答』

トップページを除いて圧倒的にユーザー数を集めているのが『相談者は読まないほうがいい回答』という記事でした。

内容は子育てに苦悩する母親からの相談に対して、ライターの幡野広志氏が回答するというもの。逆説的なタイトルがキャッチーで、内容も非常に興味を掻き立てるものとなっています。肝心の回答部分は、有料会員のみ閲覧可能となっています。

2位:『ぼくの言葉なんかよりずっといい言葉があなたにはある』

ログインページを除くと、訪問ユーザー数で2位の記事も幡野広志氏の同じ連載、『幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう』の記事でした。タイトルは『ぼくの言葉なんかよりずっといい言葉があなたにはある』というもの。幡野広志氏の記事はコンテンツランキングに複数ランクインしており、人気を集めていることがわかります。

その他

先ほど自然検索のキーワードでも出てきた「HSC」についての記事が7位にランクインしています。この記事には、HSCについての解説と、実際に我が子がHSCであるかをチェックできる質問リストが載せられていました。

興味深い記事が目白押しのcakes。今回の分析でnoteとの併用状況も明らかになりました。noteではtoB、toCを問わずコンテンツが投稿されており、今後もますます成長を続けそうです。そしてnoteのユーザーが増えるほど、cakesのプレゼンスも上がっていくのではないでしょうか。

クリエイターと読者の新しい関係の構築に貢献する、cakesとnoteの今後に注目です。

分析概要

全国のモニター会員(20代以上)の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」を使用し、2019年1月~2019年12月におけるユーザーの行動を分析しました。
※ユーザー数はPC、スマートフォンからのアクセスを集計し、ヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。

関連記事

note利用動向調査

https://manamina.valuesccg.com/articles/17

SNSとの親和性でユーザーを集めるメディア・プラットフォーム

いくつご存知ですか?日本でメジャーなサブスクリプションサービス事例

https://manamina.valuesccg.com/articles/769

生活に定着しつつある「サブスクリプション」型のサービス。代表的な動画配信サービスといったデジタル系だけではなく、住まいや自動車、食材といった「モノ」を提供するサブスクリプションサービスも増えています。今回はさまざまなジャンルの代表的なサブスクリプションサービスの事例を紹介します。

サブスクリプションとは?ビジネスモデルや具体的なサービス事例をわかりやすく解説

https://manamina.valuesccg.com/articles/732

最近、よく耳にするようになった「サブスクリプション」方式。定期購読に代表される定額で一定期間利用できるサービスです。この記事ではサブスクリプションの定義や、具体的なサービスの事例を紹介していきます。

​​

メールマガジン登録

最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします

この記事のライター

ウィーン大学への留学を経て京都大学文学部卒業。
外資系大手ITコンサルティング会社に勤務後、フリーランスライターに転向。

関連する投稿


【March 2025 core update】Googleコアアルゴリズムアップデートをリリース(2025年3月)

【March 2025 core update】Googleコアアルゴリズムアップデートをリリース(2025年3月)

Googleが2025年3月のコアアルゴリズムアップデート(March 2025 core update)をリリースしました。


【2025年】花粉症の検索トレンド分析。近年注目されている対策は?

【2025年】花粉症の検索トレンド分析。近年注目されている対策は?

「時期が早い」「花粉飛散量が多い」と言われている2025年春、花粉症に悩まされている方々も多いのではないでしょうか。「花粉症」についての検索者はいつ多くなるのか、どのような人なのか、さらに注目の花粉症対策について調査しました。 ※本記事に掲載する医療情報や健康関連情報は一般的な参考情報を提供するものであり、内容の正確性や信頼性を担保するものではありません。個別の状況においては必ず医師や専門家に相談してください。


リライトによって効果が出た記事は全体の75%!効果が見られた記事のうち50%は倍以上のセッション伸長がみられた例も【PLAN-B調査】

リライトによって効果が出た記事は全体の75%!効果が見られた記事のうち50%は倍以上のセッション伸長がみられた例も【PLAN-B調査】

株式会社PLAN-Bは、SEOにおいて欠かせない施策のひとつである「リライト」の影響や効果について調査を実施し、結果を公開しました。


SEO記事のリライトにおける課題は「適切な更新のタイミングや優先度付けが分からない」が最多【ランクエスト調査】

SEO記事のリライトにおける課題は「適切な更新のタイミングや優先度付けが分からない」が最多【ランクエスト調査】

株式会社ecloreは、同社が提供する「ランクエスト」にて、SEO業務に携わるプロフェッショナルを対象にリライトの実態を探る独自調査を実施し、結果を公開しました。


電気やガスを使った分だけ株がもらえる!話題の新サービス「カブアンド」を調査

電気やガスを使った分だけ株がもらえる!話題の新サービス「カブアンド」を調査

申し込み殺到により一時受付を停止した、話題の新サービス「カブアンド」。電気やガス、モバイル、ネット回線などを使った分だけ株がもらえるという、革新的なビジネスモデルで注目を集めています。今回は、世間の関心が高まった背景や、同サービスがどのような人に検討されているのか、公式サイトの閲覧者データをもとに分析していきます。


最新の投稿


インフルエンサー活用の選定基準は「商品やサービスとの親和性」!7割が成功を実感するも「購買に繋がらない」課題も【PRIZMA調査】

インフルエンサー活用の選定基準は「商品やサービスとの親和性」!7割が成功を実感するも「購買に繋がらない」課題も【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、インフルエンサーを事業プロモーションに活用したことがあるBtoC業界の企業担当者を対象に「【2025年版】インフルエンサーPRの実態調査」を実施し、結果を公開しました。


博報堂DYホールディングス、メタバース生活者定点調査2024を実施

博報堂DYホールディングス、メタバース生活者定点調査2024を実施

株式会社博報堂DYホールディングスは、全国15~69歳の生活者を対象に、メタバースに関する現状の生活者意識や動向を把握することを目的とした「メタバース生活者定点調査2024」を実施し、結果を公開しました。


8割以上がWebサイトの運用に「課題」を実感!そのうち約6割が「分析結果を具体的な改善施策に結びつけられない」【富士フイルムビジネスイノベーション調査】

8割以上がWebサイトの運用に「課題」を実感!そのうち約6割が「分析結果を具体的な改善施策に結びつけられない」【富士フイルムビジネスイノベーション調査】

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社は、事業会社に勤めており、Web広告の運用に携わっているマーケティング担当者を対象に、Webサイトの継続的改善と効果測定に関する実態調査を実施し、結果を公開しました。


生成AIは誰がどう使っている? ChatGPT、Gemini、Copilot、Claudeの利用データを比較調査

生成AIは誰がどう使っている? ChatGPT、Gemini、Copilot、Claudeの利用データを比較調査

ChatGPTやGeminiをはじめとした生成AIが近年急拡大しています。生成AIではテキストのみならず画像や音声など様々なものを出力できますが、実際はどのように使われているのでしょうか。本稿では、そんな生成AIを利用するユーザーの属性や関心を比較・分析し、各AIとそのユーザーの実態を明らかにしていきます。


AIライティングツールの進化で人間ライターの存在意義は本当に脅かされる?AIよりも人間ライターを選ぶ理由とは?【ランクエスト調査】

AIライティングツールの進化で人間ライターの存在意義は本当に脅かされる?AIよりも人間ライターを選ぶ理由とは?【ランクエスト調査】

株式会社ecloreは、同社が提供する「ランクエスト」において、ライティング業務を外注している方を対象に、AIよりも人間ライターを選ぶ理由に関するアンケート調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ