デジタルトランスフォーメーション(DX)の課題とそれに対する解決策

デジタルトランスフォーメーション(DX)の課題とそれに対する解決策

既存のビジネスをデジタル技術を活用して変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)を、企業戦略として取り入れる企業が増えています。しかしDXを実現するのは簡単ではありません。この記事ではDXに取り組む上で想定される課題を洗い出し、解決のための糸口をご紹介します。


海外に後れをとる日本のDX事情

企業を取り巻く最近の状況を見ると、さまざまな業種でデジタル技術を活用した新たなビジネスモデルが台頭しています。GAFA、Uber、Netflixなど、グローバルなサービスが既存の事業モデルと入れ替わろうとしています。ハードからソフト、ローカルからグローバル、モノ作り志向からサービス志向へと移行しているように、これまでの常識が通用しなくなってきているのです。

そのなかで、日本のDXの取り組みは先進国に比べて後れをとっている状況です。経産省は、日本企業のIT投資の8割が現行システムの維持管理に向けられていると指摘しています。一方、IT先進国であるアメリカでは、企業価値を上げるためのIT投資に重きが置かれ、戦略的な投資の部分で差が出ています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?

https://manamina.valuesccg.com/articles/730

デジタル技術の進化にともない、ビジネス環境にも変化がみられます。ここ数年注目を集めている概念「デジタルトランスフォーメーション(DX)」もそのひとつです。 デジタルトランスフォーメーションの定義や意味、日本の現状を解説します。具体的な企業事例も紹介しながら、DXの効果や単なるIT化にとどまらず、革新的な変化を起こす点を理解しましょう。

DX推進の4つの課題

それではなぜ、日本ではDXの取り組みが円滑に進まないのでしょうか。ここではDXを推進する上で想定される課題を考えてみます。

DXの適切な目標設定が難しい

デジタル技術活用の重要性は、多くの経営者が理解しています。しかし、実際にどうしたら良いか、明確なビジョンを持っているケースは多くはありません。さらにDXの概念は広く、個々人が考えるDXのイメージもばらつきがちです。当然、DXに取り組む目的と目標が定まらず、うまく機能しない事態に陥ります。

そうならないためにも、経営層自らがDXのビジョンを持つことが大切です。その上で、DXを通じて「どうなりたいのか」「何を達成したいのか」を社内で議論する必要があるのです。

DXを現場で推し進める人材の不足

DXを推し進めるうえで、優秀なIT人材の育成・確保も重要です。開発に携わるエンジニアだけでなく、プロジェクト全体をデザインできるビジネスデザイナー、新たな発想を生むイノベーターの存在も欠かせません。

しかし、国内外問わずエンジニアは不足しており、優秀なIT人材の確保は一筋縄にはいきません。経産省の調査では、2019年にIT人材の供給量のピークを迎え、2030年には50万人以上の人材不足が生じると推計されています。優秀な人材を確保するため、メルカリやサイバーエージェントなど「初任給を一律にしない企業」も出てきています。つまり、必要な人材を集めるためには、採用・教育の面からもDXを考えないといけません。

DXの費用対効果

DXの取り組みは一朝一夕にはいかず、不断の努力を続ける必要があります。そこで問題になるのが、「DXの費用対効果」です。たとえばDX専門の部署を設立し、イノベーションのために投資をするものの、最初の間は 収益が出ない期間があります。その間我慢できないと、撤退ということにもなりかねまません。

既存システムとの調整コスト

DX投資の費用対効果にくわえ、日本で特に問題なのが「レガシーシステム」です。既存のシステムがあるゆえに、新たな技術を導入できないケースが多くあります。

特に大企業の場合、事業・部署ごとに個別のシステムを抱えていることが多く、全社最適の視点でITインフラが構築されてきませんでした。システムが肥大化すると、維持コストが多大なものになります。このように複雑化した既存システムをレガシーシステムと呼びます。

DXを取り組むうえでは、既存システムを刷新するのか、新旧システムを共存させるのか、その意思決定が重要です。

DXの課題を解決するためのプロセス

続いて、先に紹介した課題を認識したうえで、DX推進のプロセスを考えてみます。
まず最も欠かせない要素は、経営陣のDXへの本気度です。これなくして成功はありえません。まずトップ自らが、自社が抱えるリスクを洗い出し、DXのビジョンを掲げる必要があります。ロードマップを考える際に、役立つのがDX推進システムガイドラインです。ガイドラインの策定は経産省も推奨しており、ステークホルダー間での意思統一に役立ちます。

■DX推進システムガイドラインに盛り込む内容の一例
・経営戦略におけるDXの位置づけ
・DXにより実現すべきもの
・ITシステムの基本構想の検討体制
・経営トップのコミットメント
・新たなデジタル技術活用におけるマインドセット
・事業部間のオーナーシップ
・評価、ガバナンスの仕組み
・情報資産の分析、評価
・情報資産の移行プランニング
・DXの取り組みの継続

ガイドラインを作ったら、DX専門部署やプロジェクトを立ち上げます。DX部署では、ガイドラインに沿ってさらに具体的な目的・KPI・人材育成についての計画を考えます。最後にDXの計画・方針を全社共有します。関係各所と協調しながら進めていくという流れです。

DXの課題と解決策のまとめ

技術の進歩が目覚ましく、昨今の市場環境はとても不透明です。だからこそ、デジタルトランスフォーメーションに取り組み、激しい競争を勝ち残っていかなくてはいけません。DX推進は目的ではなく手段です。取り組んだ結果、「新たな価値を創造できるか」が企業の生存確率を高めるカギとなります。

関連記事

企業でDXを推進する組織づくりとは?3つのタイプを事例とともに考察します

https://manamina.valuesccg.com/articles/879

デジタル技術を活用し、革新的なビジネスモデルを生み出すDXに取り組む企業が増えています。革新的なビジネスモデルを実現するには、単なるツール導入や業務効率化にとどまらず、社内の仕事の進め方を全般的に変える必要があります。そのために、DX専任の組織を置く企業も増えています。今回は、企業のDXを推進する組織づくりの事例を紹介します。

【DX事例集】これでデジタルトランスフォーメーションを理解しよう!

https://manamina.valuesccg.com/articles/762

デジタル技術でビジネスに変革をもたらすDX(デジタルトランスフォーメーション)。概念はわかるものの海外の華々しい事例のほかに、日本ではどのようなDX事例があるでしょうか?身近な企業の取り組み事例を元に、デジタルトランスフォーメーションを理解していきましょう。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連する投稿


AIを取り入れた新ライセンスTableau+で実現する次世代データ分析と 活用支援事例のご紹介

AIを取り入れた新ライセンスTableau+で実現する次世代データ分析と 活用支援事例のご紹介

日本国内で多くの企業が採用しているデータ可視化(BI)ツールの「Tableau」から、新たに提供をスタートした新ライセンス「Tableau+」をご存知でしょうか?2024年12月24に開催されたセミナーでは、データの前処理・可視化から意思決定・アクションを導くBIツールで知られる「Tableau」の新ライセンス体系「Tableau+」の概要とヴァリューズにおけるTableau活用深耕ご支援事例をご紹介。TableauにAI機能を組み合わせることで、BI機能だけでは難しいより高度な予測・分析を実現できる様子を解説しました。※本セミナーのレポートは無料でダウンロードできます。


DX推進のために取り組んでいることは「ITシステムの利用促進」が最多!DAPを導入している企業は6.8%に留まる【クラウドサーカス調査】

DX推進のために取り組んでいることは「ITシステムの利用促進」が最多!DAPを導入している企業は6.8%に留まる【クラウドサーカス調査】

クラウドサーカス株式会社は、同社が提供する、CSM(カスタマーサクセスマネジメント)ツール『Fullstar(フルスタ)』にて、企業の情報システム部担当者に対し、「DAP実態調査 第1弾(2024年版)」を実施し、結果を公開しました。


業務の自動化を望むECサイト運用事業者は約9割!業務自動化を進める上での最大の障壁は「費用」【エートゥジェイ調査】

業務の自動化を望むECサイト運用事業者は約9割!業務自動化を進める上での最大の障壁は「費用」【エートゥジェイ調査】

株式会社エートゥジェイは、ECサイトの運用経験のある全国の20代~50代の男女を対象に、ECサイトの運営の業務効率に関する調査を実施し、結果を公開しました。


電通デジタル、DX組織の持続的発展に繋げる簡易診断プログラム「DX組織クイックスキャン」を提供開始

電通デジタル、DX組織の持続的発展に繋げる簡易診断プログラム「DX組織クイックスキャン」を提供開始

株式会社電通デジタルは、DX組織※の現状と課題を診断し、DX組織の持続的成長に向けた戦略を提案する簡易診断プログラム「DX組織クイックスキャン」を開発し、提供開始しました。


DX推進企業の約7割がSaaSを導入している一方で、生産性向上や業務効率化を実感できているのは4割未満にとどまる【うるるBPO調査】

DX推進企業の約7割がSaaSを導入している一方で、生産性向上や業務効率化を実感できているのは4割未満にとどまる【うるるBPO調査】

株式会社うるるBPOは、DXを推進している企業の係長以上の役職者を対象に、「SaaSを利用した業務の実態調査」を実施し、結果を公開しました。


最新の投稿


現役大学生のうち約4割がマスメディアよりSNSを信用!情報は正確性よりも"早さ"で選ぶのが主流【RECCOO調査】

現役大学生のうち約4割がマスメディアよりSNSを信用!情報は正確性よりも"早さ"で選ぶのが主流【RECCOO調査】

株式会社RECCOOは、同社が運営するZ世代に特化したクイックリサーチサービス『サークルアップ』にて、最新のZ世代調査として「情報リテラシー」をテーマにした調査を実施し、結果を公開しました。


コスモヘルス、シニア世代の保険加入に関する実態調査結果を公開

コスモヘルス、シニア世代の保険加入に関する実態調査結果を公開

コスモヘルス株式会社は、同社が運営するシニア専門の調査プラットホーム「コスモラボ」にて、保険に関する市場調査・アンケートリサーチを実施し、結果を公開しました。


カスタマージャーニーマップ(体験設計のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

カスタマージャーニーマップ(体験設計のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回はカスタマージャーニーマップ(体験設計のアウトプット)について寄稿いただきました。※本記事は菅原さんの書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)と連動した内容を掲載しています。


コンタクトレンズを使用したい子どもは6割以上!対して9割超の親が子どものコンタクトデビューに不安あり【メニコン調査】

コンタクトレンズを使用したい子どもは6割以上!対して9割超の親が子どものコンタクトデビューに不安あり【メニコン調査】

株式会社メニコンは、小学4年生以上中学3年生以下の子どもを持つ親を対象に「子どものコンタクトレンズ選びに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


Z世代が最も利用しているSNSは「YouTube」で利用率8割超!前年から利用率が最も伸びたのは「BeReal.」に【サーバーエージェント調査】

Z世代が最も利用しているSNSは「YouTube」で利用率8割超!前年から利用率が最も伸びたのは「BeReal.」に【サーバーエージェント調査】

株式会社サイバーエージェントは、インターネット広告事業の「サイバーエージェント次世代生活研究所」において、「2024年 Z世代SNS利用率調査」を実施し、Z世代が利用しているSNSおよび各世代のSNS利用率・認知率を発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ