キャッシュレス・ポイント還元対象決済額は4.3兆円
キャッシュレス・ポイント還元事業によると2019年10月1日~2020年1月13日までの対象決済金額は約4.3兆円、還元額は約1,750億円で、すでに当初予算1,786億円に迫り、政府は補正予算案約1,500億円を追加計上しています。さらに4月に発表される10兆円超の新型コロナウィルス緊急経済対策の一環で、現金給付と並びキャッシュレス・ポイント事業の拡充あるいは延長も議論が始まりました。
ポイント還元事業登録加盟店推移
(キャッシュレス・消費者還元事業より)
期間中の還元対象決済金額に占める決済手段は「クレジットカード」が2.7兆円(約63%)、PayPayに代表されるQRコード決済は0.3兆円(約7%)、「その他電子マネー等」が1.3兆円(約30%)とのこと。10月1日~11月25日の段階ではそれぞれ約60%、約10%、約30%だったので、意外にもQRコードよりクレジットカードの方が決済金額は増えているようです。
通信系キャリアへの集約が進む
昨年11月の記事「消費増税の追い風で、スマホ決済アプリPayPayが独走!1日の起動ユーザー数は900万人以上に」でもお伝えした通り、1年前からキャッシュ/ポイント還元で会員そしてLTV獲得バトルを牽引してきたPayPayはその後も独走中。消費増税10月では一気に2,000万ユーザーの大台を突破し、以降右肩上がりでユーザーを増やしていて、2020年2月20日には登録ユーザーが2500万人突破のプレスリリースも出ています。
d払いはPayPayに約1,000万人ほど差をつけられるものの、こちらも増税後は1,200万ユーザー程度で推移。ゆるやかにユーザーを増やしてきたau WALLETに10月楽天ペイが追いつき、2アプリはほぼ同程度の1,000万ユーザーをうかがう勢いで推移しています。コンビニ系のファミペイや交通系モバイルSuicaも増税前に比べユーザーが増えました。
主要スマホ決済アプリの月次起動ユーザー数
(「LINE Pay」は決済機専用アプリのログのみで、
「LINE」アプリから「LINE Pay」機能を使用した分は含まない)
LINE PayはLINEアプリから決済機能を利用するユーザーを含みませんが、IR資料によると2019年10月-12月期の月間アクティブユーザーは370万人で、対前年同期比2.5倍程度には増えているとのことです。
LINEの月間アクティブユーザー
ゆうちょPay、Origami、Kyash、QUICPayなども堅調にユーザー数は伸びていますが、1月にはメルカリがOrigamiの買収を発表しています。現時点ではLINEと経営統合予定のソフトバンク/Zホールディングス(ZHD)陣営、NTTドコモ、au、楽天(通信は4月から本格参入)の通信キャリアが市場を制したといっていいでしょう。
「ペイ」検索のピークは10月。チャージやキャンペーンに関心がシフト
「ペイ」または「PAY」を含むキーワードで検索したユーザーは、消費増税の10月が過去2年間のピークでした。11月以降は若干減りますが、それでもPayPayが還元バトルの号砲を鳴らした2018年12月の202万を上回る水準で推移していて、関心は衰えていません。「キャッシュレス」や「消費税」は検索キーワードとしての利用は意外に多くありませんでした。
「ペイ」または「PAY」で検索したユーザー数
※デバイス:スマートフォン
個別の検索キーワードも、増税前後で変化がみられます。「ペイ」「Pay」を含む検索キーワードは、増税前はブランド名のない「PAY」が1位でしたが、増税後「ペイペイ」「PAYPAY」が200%以上増えて「PAY」を抜き1位と2位を独占しました。「楽天ペイ」も8位から4位へ順位を上げ、伸び率も190%に。
他のブランドでは増税前4位だった「LINE」が9位に順位を下げ、検索ユーザー数も唯一ダウン。5位「ラインペイ」、6位「メルペイ」、7位「ファミペイ」はトップ10に入りませんでした。替わってランクインしたのが7位「クイックペイ」と8位「QUICPAY」です。前述の通りQUICPAYアプリユーザー数は増えていないのですが、増税後12月15日までの20%還元キャンペーン上限額が1万円と他社より大きかったせいか、いずれも50万人近くが検索しました。
増税前4ヶ月/増税後4ヶ月の検索キーワード
※増税前:2019年6月~9月、増税後:2019年10月~2020年1月
※デバイス:スマートフォン
※単語分割。網掛けは増税前後両方で登場
増税前10位だった「チャージ」が5位に上がったのは、実ユーザーが増えてチャージ方法が気になりだした影響でしょうか。「キャンペーン」も9位から6位に順位を上げる一方、増税前圏外だった「ポイント」が10位にランクインしました。決済時のキャッシュバックだけでなく各社がテコ入れを図るECや通話料とのポイント連携を含め、いちばんおトクな手段を模索しているのかもしれません。
囲い込みバトルはまだ続く
2018年12月に始まったキャッシュ/ポイント還元キャンペーンそして増税を機に、各社の囲い込みは進んだのでしょうか。主要決済アプリの併用状況を確認します。
ログからは、程度の差はあれ、いずれのアプリも増税後「併用なし」の高ロイヤルティユーザーは減少傾向。顧客LTVをめぐるバトルはむしろまだ続いているといえそうです。とくにau WALLETは増税前67%から増税後50%へ17ポイント、d払いは50%から39%へ11ポイントダウンし、その分PayPayの併用が増えています。楽天ペイユーザーは62%がPayPayを増税前から併用していましたが、増税後はさらに73%と、10ポイント以上併用が増えました。
増税前4ヶ月(2019年6-9月)の主要決済アプリの併用状況
増税後4ヶ月(2019年10月-2020年1月)の主要決済アプリの併用状況
PayPayはというと、他アプリほどではないもののやはり増税前40%から38%へ2ポイント「併用なし」が減り、d払い併用が3ポイント増加しています。LINE PayユーザーのPayPay併用は75%から85%と10ポイント増加し、LINEとPayPayとの親和性は高まっているようです。ZHD-LINE経営統合の観点では、顧客基盤全体の拡大というよりも、すでにPayPayを使っているLINEユーザーへのエンゲージメント強化が目先の成果といえるでしょうか。
第2回は、キャッシュレス決済普及推進へ向けた施策のヒントをeMark+の行動ログから考察してみます。
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消費増税の追い風で、スマホ決済アプリPayPayが独走!1日の起動ユーザー数は900万人以上に
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法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。
CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している。