身近なサービスからDXの本質・ビジネスプロセスの変革に迫る

身近なサービスからDXの本質・ビジネスプロセスの変革に迫る

DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されるようになった理由のひとつに、経産省のDXレポートがあります。今後、多くの企業でDXの推進されるなか、実際に自社の発展につなげるために必要なこととは?まずは、DXの本質である「ビジネスプロセスの変革」を明確に理解することです。


DXを実現できないと年間最大12兆円の損失!?

経産省は2018年に「DXレポート」を発表し、旧態依然のシステムによる改修の遅れや今後到来するIT人材の不足などといった課題を克服できない場合、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性がある、と試算しました。

この課題を解消するため、経産省は「DX推進ガイドライン」を出し、DXを推進するための経営のあり方や仕組み、実行プロセスを明らかにしました。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?

https://manamina.valuesccg.com/articles/730

デジタル技術の進化にともない、ビジネス環境にも変化がみられます。ここ数年注目を集めている概念「デジタルトランスフォーメーション(DX)」もそのひとつです。 デジタルトランスフォーメーションの定義や意味、日本の現状を解説します。具体的な企業事例も紹介しながら、DXの効果や単なるIT化にとどまらず、革新的な変化を起こす点を理解しましょう。

DXの本質は「ビジネスプロセス」の変革にある

企業におけるDXの基本概念は、市場環境のデジタル化に対応し、従来の権益を保つために競争力の維持・強化を図るべく、組織の制度や文化までもを変革する取り組み、となります。この中では「組織の制度や文化までも変革」がとくに重要です。

DX=デジタル化という連想から、部分的なIT化や業務効率化にとどまると、DXとは呼べません。DX推進にあたっては、経営やビジネスプロセスを変革しなければならないというマインドセットが必要になります。

マインドセットをスムーズにするひとつの例として、モノを買う、つまり「買い物」について考えてみましょう。

実店舗で商品の検索のためのパソコンや電子マネー決済といったITツールを導入。これはDXになるのでしょうか?答えはNOです。店鋪が商品を仕入れて消費者がその場で購入するという「プロセス」自体は旧態依然のままです。

一方、ECサイトでの買い物はどうでしょうか。消費者はインターネット上にある商品のデジタルデータを見て商品購入を決めます。購入した商品は宅配業者が消費者の手元に届けます。

消費者が商品を入手するまでのプロセスが実店舗での買い物と変化している、プロセスの変革をイメージできるのではないでしょうか。とはいえ、これだけではイメージがわきづらいので、以下、DXで従来のプロセスを変えた事例を紹介します。

DXによるビジネスプロセス変革事例:Amazon

買い物、ECという例を出したので、まずはその事例としてAmazonを紹介します。

Amazonはもともとは「インターネット経由で本を販売する」ところから事業をスタートしています。なお、創業時にはネットで本を売る、というビジネスモデルはまだ定着していませんでした。

つまりAmazonは「本を売る」プロセスを変えた、と言えます。さらに、DX推進により、カスタマーレビューやレコメンデーション機能を搭載したり、使いやすいWebサイト設計を行いました。そのほか、注文履歴を顧客単位で機械学習による分析を行い配達先に近い倉庫へあらかじめ商品を置いて短期間納品を可能にするなど、徹底した「ユーザーファースト」で世界を席巻するECサービスに成長しました。

同社はECのみならず、AWSでクラウドサービスの大手に成長するなど、継続的なビジネス改革に成功しています。

DXによるビジネスプロセス変革事例:メルカリ

「インターネットオークション」のプロセスをDXで変えたのがメルカリです。

PCがメインだったインターネットオークションを、スマホアプリで展開して成功しています。従来のインターネットオークションとは異なり、スマホ専用アプリから出品、匿名で発送という一連の流れ、ユーザーの個人情報を知られたくないという懸念を払拭し、ネット上ですべてを完結させられる点が変革ポイントです。

また、売上金を「メルペイ」にチャージし、電子マネーとして実店舗でも使えるようにするなど、個人間での商品売買のプロセスをDXによって変えています。

DXによるビジネスプロセス変革事例:Uber

「Uber」というと、フードデリバリーサービスの「Uber Eats」が思い浮かぶかもしれませんが、ここで紹介するのはUber本来のサービス、一般人が自分の空き時間と自家用車を使って他人を運ぶ「ライドシェア」を紹介します。

Uber創業地アメリカで展開されているこのサービス、配車から料金決済までをすべてアプリを経由して行われます。サービスの安全性などに関しては、オークションサイトの出品者評価のように、利用者がドライバーの評価できます。これにより、Uberが不相応と判断したドライバーを排除でき、サービス品質を確保しています。なお、利用者もドライバーから評価されるので、好ましくない利用者もシャットアウトできるようになっています。

こうした仕組みはスマホ、デジタル技術の活用が前提のDXです。つまり、Uberは「移動」のプロセスを変革した、と結論付けられます。

まとめ

DX推進にあたって、今回紹介した事例のように、経営やビジネスプロセスをデジタルによって変えることを大前提にする必要があります。さらに、AmazonやUberで見られるように、ビジネスの変革を継続的にできる文化を持った企業が、DX時代の勝者となっています。

今回紹介した事例を参考に、自社ではどのような変革ができるかを考えることが、DX推進の第一歩になります。

コロナが変えた消費者行動を検索から深掘る Googleが提唱したバタフライ・サーキットを活用【NewsPicksウェビナー】

https://manamina.valuesccg.com/articles/826

DX時代に求められるマーケティング戦略について、NewsPicks主催のイベントが4月14日、YouTube Liveで開催されました。登壇者は株式会社Kaizen PlatformのCEO・須藤憲司さん、ヴァリューズの副社長・後藤賢治と執行役員・子安亜紀子の3人。新型コロナの影響によって変化した消費者の行動を、データからディスカッションした内容をお伝えします。

【DX事例集】これでデジタルトランスフォーメーションを理解しよう!

https://manamina.valuesccg.com/articles/762

デジタル技術でビジネスに変革をもたらすDX(デジタルトランスフォーメーション)。概念はわかるものの海外の華々しい事例のほかに、日本ではどのようなDX事例があるでしょうか?身近な企業の取り組み事例を元に、デジタルトランスフォーメーションを理解していきましょう。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連する投稿


データマーケティング企業が解説! DXを加速させるデータ活用人材の育成と組織作りとは?|セミナーレポート

データマーケティング企業が解説! DXを加速させるデータ活用人材の育成と組織作りとは?|セミナーレポート

国をあげて産業界のDX化が推進され、データ活用がビジネスの成長に欠かせない時代となっている中、多くの企業がデータの活用に課題を抱えています。これは、データを活用し業務に生かすスキルや知識を持つ人材の不足や、スキルを持った人材を育成できる環境が整備できていないことが一つの原因です。 データ×マーケティングの領域で多くの企業との伴走によって培ったヴァリューズのノウハウをもとに、データ活用人材の育成・組織作りと、デジタルマーケティング基礎におけるデータ活用に焦点を当て解説した本セミナー。そのセミナーレポートを無料でダウンロードいただけます。


職場のデジタル化に遅れを感じる人は約6割 進まない原因に「経営上位層の認識遅れ」や「古いシステムの継続利用」などの声も【TOA調査】

職場のデジタル化に遅れを感じる人は約6割 進まない原因に「経営上位層の認識遅れ」や「古いシステムの継続利用」などの声も【TOA調査】

TOA株式会社は、全国の20~50代の働く男女を対象に「職場環境・デジタル化の実態に関する調査」を実施し、結果を公開しました。


tripla、宿泊施設の宿泊客滞在中業務を一元化するWEBサービスの提供を開始

tripla、宿泊施設の宿泊客滞在中業務を一元化するWEBサービスの提供を開始

tripla株式会社は、宿泊中の必要情報を集約した旅ナカ専用のWEBサービス「tripla Guide」の提供を開始したことを発表しました。


リピートされる観光地を目指したDMP構築とデータ活用組織作り【広島県観光連盟インタビュー】

リピートされる観光地を目指したDMP構築とデータ活用組織作り【広島県観光連盟インタビュー】

コロナ禍を経て活況が戻った観光業において、データドリブンの施策を展開する広島県観光連盟(HIT)。本稿では「圧倒的な顧客志向」を掲げるHITでの、VALUESのデータ分析伴走支援サービスを通じたチャレンジに迫ります。


データ活用の内製化、約6割の企業で進むも人材育成・採用・人員確保が課題に【メンバーズ調査】

データ活用の内製化、約6割の企業で進むも人材育成・採用・人員確保が課題に【メンバーズ調査】

株式会社メンバーズの社内カンパニー、メンバーズデータアドベンチャーカンパニーは、DX・データ分析業務に携わる就業者に対して、データ活用に関する調査を行い、結果を公開しました。


最新の投稿


Increasing popularity among men? Investigating the needs for “sunscreen”! Latest Edition [2024]

Increasing popularity among men? Investigating the needs for “sunscreen”! Latest Edition [2024]

As men's cosmetics receive increasing attention, what are the consumer needs for sunscreen? Also, does the quality of sunscreen differ depending on the season, with summer and winter? We will analyze changes in needs and consumer psychology for sunscreen based on the behaviors during the consideration stages.


生成AIの時代におけるWEBライティング業界の健全な発展及び進化を実現する「日本AIライティング協会®」設立

生成AIの時代におけるWEBライティング業界の健全な発展及び進化を実現する「日本AIライティング協会®」設立

生成AIによるテキスト創出「AIライティング」の急速な普及に伴い、情報の正確性や倫理基準の劣化のリスクがある中で、WEBライター集団を抱える団体を中心に構成する「日本AIライティング協会®(英称:JAPAN AI Writing Association 略称:JAIWA)」を発足したことを発表しました。本協会では、前述の課題がある中で、「AIライティングの新たな規範の樹立」と「WEBライターと生成AIが共存共栄できる未来の探究」を目的に活動するといいます。


日々の生活で「時間不足」と感じている女性は7割以上 1日に自分のために使える時間は1時間以上2時間未満が最多【SHE株式会社 調べ】

日々の生活で「時間不足」と感じている女性は7割以上 1日に自分のために使える時間は1時間以上2時間未満が最多【SHE株式会社 調べ】

SHE株式会社は、SHElikesで学ぶ女性を対象に、時間の使い方や環境が変化する新生活・新年度のタイミングに、タイパ時代の「女性のスキマ時間の関する調査」を実施し、結果を公開しました。


ギブリー、企業の生成AI開発ををサポートする共創ラボ「Givery AI Lab」を設立

ギブリー、企業の生成AI開発ををサポートする共創ラボ「Givery AI Lab」を設立

株式会社ギブリーは、生成AIを活用した開発プロジェクトを総合的にサポートする共創型ラボ開発機関「Givery AI Lab(ギブリーAIラボ)」を設立したことを発表しました。


「引っ越し」に関するニーズを調査!「挨拶」や「ふるさと納税」に注目

「引っ越し」に関するニーズを調査!「挨拶」や「ふるさと納税」に注目

進学、卒業、就職など環境が大きく変化する春。引っ越しをして新天地での生活を始める人も多いと思います。引っ越しを考える上で一番気になることは何なのでしょうか。引っ越し検索者の心理を読み解いていきます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ