コロナが変えた消費者行動を検索から深掘る Googleが提唱したバタフライ・サーキットを活用【NewsPicksウェビナー】

コロナが変えた消費者行動を検索から深掘る Googleが提唱したバタフライ・サーキットを活用【NewsPicksウェビナー】

DX時代に求められるマーケティング戦略について、NewsPicks主催のイベントが4月14日、YouTube Liveで開催されました。登壇者は株式会社Kaizen PlatformのCEO・須藤憲司さん、ヴァリューズの副社長・後藤賢治と執行役員・子安亜紀子の3人。新型コロナの影響によって変化した消費者の行動を、データからディスカッションした内容をお伝えします。


DX時代のキーワード「タコツボ化」「パルス消費」

イベントの前半では、ヴァリューズの子安が現在のデジタルトレンドをデータから考察しました。

子安は「デジタル時代の人の行動には大きく2つの変化がある」と語ります。その2つとは、「Filter Bubble=タコツボ化」と「消費行動の刹那化」。一体どういうことでしょうか。

まずタコツボ化とは、ひとりひとりに情報が最適化されることによって、個人は自分にとって好ましい情報だけに触れた状態になる、という現象を指します。

消費者がこうした「泡」の中に閉じ込められた状態=「Filter Bubble」が提唱されたのは、「アメリカのトランプ大統領の選挙がきっかけだった」と須藤さんは指摘。子安は「タコツボ化は実際のデータからも分かる」と次のスライドを示しました。

このグラフは、Webサイトのスマホブラウザでのセッション数について、2016年1月を1とした場合の増減を表したもの(ヴァリューズ調べ)。ブログやまとめサイトは2016年以降セッション数が徐々に減少しており、YouTubeやGoogleなどのプラットフォームはセッションが伸びていることが分かります。

ではこのような情報の最適化の波によって、消費者の購買行動はどのように変化したのでしょうか。子安はデジタル時代の2つ目の変化として「消費行動の刹那化=パルス消費」を挙げました。

「いままではAIDMAに見られるような段階的な購買行動が想定されていましたが、デジタル時代の行動はもう少し複雑です。『さぐる』と『かためる』をバタフライのように繰り返しながら、突発的に購買アクションを起こす。こんな『パルス消費』が消費者の本当の姿ではないでしょうか。」(子安)

バタフライ・サーキットとパルス消費は、Google社がヴァリューズと共同でデータ分析を行い提唱した考え方。消費者の検索を読み込んでいくと、従来考えられていたリニアな購買検討というよりはむしろ、さまざまな段階を漂っているように見えると言います。

「実は昔から消費者の購買行動ってそんな感じだったのかもしれない」と須藤さん。「消費者の検索行動を可視化できる技術ができたことによって、より詳細に分かるようになったのかもしれないですね。」

ここまでの内容は本メディア・マナミナの記事『ネット行動からみるデジタル時代のコンシューマ変化とは…「戦略的ブランドコミュニケーションフォーラム2020」レポート』にも詳しくまとめられています。データの詳細を把握したい方はこちらをご覧ください。

コロナ禍で「ダイエット」や「サブスク」に変化が

イベントの後半では、現在の新型コロナ影響下における消費者の心理変化をテーマに、ヴァリューズ社のデータを見ながらディスカッションが行われました。その模様をお伝えします。

子安:消費者の興味・関心や購買行動を知る方法のひとつに、検索行動を類型化するクラスタリングがあります。コロナ禍によって「クラスター」という言葉が浸透してきていますが、マーケティングにおいてクラスターの発見は元来より重要な活動でした。

では、検索行動を「束」で集めて傾向を見ていくとはどのようなイメージでしょうか。ダイエットをしたいと考える人たちを分類した次のスライドをご覧ください。

検索キーワードによるクラスタリングの例(「ダイエット」)

子安:例えばクラスター1では「体幹」や「産後」「骨盤」といった検索をするユーザーのキーワードを集積、これを「マタニティダイエッター」としています。

実はこの「ダイエット」関連検索者のクラスターについて、コロナ禍が発生する前と後では違いが生じているようなんです。下は2019年2月〜2020年1月のダイエット検索者を、ヴァリューズのモーメント分析ツール「story bank」でクラスタリングした図です。

コロナ禍前(2019年2月〜2020年1月)の「ダイエット」関連検索者のクラスター

子安:「ランニング」「糖質」「サプリ」などのクラスターが存在していますよね。

一方、同じ方法で今年3月のみを分類すると、一気に様相が変わっています。

今年3月の「ダイエット」関連検索者のクラスター

子安:今年3月では、過去1年で存在していた「ランニング」のクラスターが消失し、代わりに「ウォーキング」が現れています。外出自粛ムードになり、在宅勤務する人が増えたタイミングで、軽く運動したいというニーズを持つダイエット関連検索者が増えたのではないでしょうか。

後藤:また、緑色の「ウォーキング」クラスターの人たちを詳しく見てみると、縄跳びやトランポリンなどの器具を検索していたりしました。今後状況が長引くと、このようなライトな健康器具のニーズが増えていくかもしれないです。

須藤さん:面白い、クラスターが変わっているんですね。コロナが起こってから消費動向がめちゃくちゃ変わっていますよね。そんなとき、このように違いを知るだけでも相当見えてくるものがあります

後藤:そうですね。最近いろいろなクライアントの方とお話ししていると、いま消費者の行動として何が起きているのかわからない、とよく伺います。そこでまずは、どんなキーワードが注目されているのかをランキングで見てみると、傾向がつかめると思います。

35位に「サブスク」がランクイン

後藤:これは検索数の上昇率(傾き)が大きい順にキーワードをランキングしたものなのですが、その中で私が注目したのは「サブスク」です。ではスドケンさん、サブスクと一緒に調べられている単語は何だと思いますか。

須藤さん:「サブスク 解約」。

後藤:あ、確かに! それもありますが、実は男性だといま「サブスク トヨタ」や「サブスク ホンダ」などが多いんです。つまり車のサブスクに注目が集まっている兆しがあるんですね。これは仮説ですが、サブスクというものに興味があって、ちょっと試してみようかなという人たちが調べ始めている気がしますね。

須藤さん:なんと…! これはいまサブスクやっている人はチャンスかもしれません。でも言われてみれば、確かにいま一時的に大きな買い物はしづらいですもんね。

後藤:データは3月時点のものだったので、4月はもっと検索数が伸びるかなと思っていました。ただ、これはあくまで上昇率なので、検索ボリュームは集計時点ではまだそこまで多くはありませんが。

須藤さん:ですが、僕はこれけっこう大事だと思っています。変化の一番最初を捉えて、それがなぜ起きているのかを考える。次の打ち手やマーケティングを考えるときにとても重要ですよね。

後藤:そうなんです。トレンドの変化を知り、検索ワードのクラスタリングでニーズのありかの仮説を立てれば、打ち手に直接的につながっていくと思いますね。

需要と供給、両方の変化を捉える

最後に、ウェビナー参加者から「須藤さんは検索行動以外ではどのような方法で消費者の変化の行動を捉えていらっしゃるのでしょうか」という質問がありました。

須藤さんは「消費者側は検索行動などで見ていく。一方、注視しているのはサプライサイドの変化。例えば建設業界では資材は届いているのかなど、供給側の変化を知るのも重要。いまは1週間ごとに景色が変わっていく。ダイナミックな変化なので、注意して追い続けている」と語っていました。

Filter Bubbleの中で個人に最適化された情報に触れ、商品をバタフライのように漂いながら検索し、突発的に購入するようなデジタル時代の購買行動。

消費者の動きを掴むために、今回は検索キーワードからクラスターを発見してモーメント分析ができるヴァリューズのツール「story bank」を活用しました。

今回活用したSaaS型モーメント分析ツール「story bank」

さまざまな情報に触れて購買を検討する消費者に対して、どこで点をしかけるかが重要」と須藤さんは言います。新型コロナ影響で短いスパンで変わっていく状況の中で、データから変化量を捉えて柔軟に打ち手を決めていく姿勢がますます必要になるのではないでしょうか。

本セミナーは無料でアーカイブ視聴が可能になっています。こちらのフォームよりお申し込みください。お申し込み後、視聴URL(YouTube)をお送りいたします。

関連記事

コロナウイルスによる消費者行動の変化とは?コロナ禍で起きた消費者行動変化をネット行動ログとアンケートで調査

https://manamina.valuesccg.com/articles/880

新型コロナウイルスの感染拡大により、外出自粛やテレワークなど、人々のライフスタイルが大きく様変わりする中、消費者の行動や意識にはどのような変化が起きているのか、Webやアプリの行動ログとアンケートから、日別の推移、商品ジャンルの閲覧伸び率などを通じて、変化の実態を調査したレポートです。(ページ数|37p)

この記事のライター

マナミナ編集部でデスクを担当しています。新卒でメディア系企業に入社後、フリーランスの編集者・ライターとして独立。マナミナでは主にデータを活用した取り組み事例の取材記事を執筆しています。

関連する投稿


物価高での消費行動調査2025|3人に1人が食料品を「代替品」へ移行。「バター→マーガリン」が代替1位に!

物価高での消費行動調査2025|3人に1人が食料品を「代替品」へ移行。「バター→マーガリン」が代替1位に!

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:辻本 秀幸、以下「ヴァリューズ」)は、国内の18歳以上の男女33,276人を対象に、直近2年間の物価高による消費行動変化に関する消費者アンケート調査を実施しました。また、WEB行動ログを使用し、WEB上における興味関心を分析しました。※本レポートは記事末尾のフォームから無料でダウンロードできます。


窮地の家業を救ったEC 八代目儀兵衛が貫く顧客満足基点の経営戦略

窮地の家業を救ったEC 八代目儀兵衛が貫く顧客満足基点の経営戦略

業界の常識を打ち破り、「ブレンド米」のブランド化やお米の「ギフト需要」を創造した八代目儀兵衛。改正食糧法が施行され、米の販売が自由化されるなかで、家業である米屋のビジネスをどう成長させるかを考える中で生み出された方向性だったという。ギフトECで新たな米の需要を喚起した、同社のマーケティング戦略の背後には、顧客視点の経営がある。データマーケティング支援を行うヴァリューズの辻本秀幸社長(元マクロミル代表)が、八代目儀兵衛 代表取締役社長の橋本儀兵衛氏に話を聞いた。


リアルとオンラインを融合し「旅」を通じた体験価値の 向上を目指すJTB

リアルとオンラインを融合し「旅」を通じた体験価値の 向上を目指すJTB

「交流創造事業」を事業ドメインとし、従来の旅行会社の枠組みを超えて旅という体験を通じた価値の提供を推進するJTB。コロナ禍を経て人の移動が再び活発化する中で、顧客との接点をいかにとらえ、事業に反映しているのか。「データ×マーケティング」をキーワードに、マーケティング支援などを行うヴァリューズの後藤賢治副社長が、JTB 取締役 専務執行役員 ツーリズム事業本部長の西松千鶴子氏に聞く。


老舗・今西酒造の決断と再生への軌跡。酒の聖地・三輪を「世界の聖地」へ

老舗・今西酒造の決断と再生への軌跡。酒の聖地・三輪を「世界の聖地」へ

奈良・三輪で360年以上の歴史を持つ今西酒造。全国トップクラスの評価を得る代表ブランド「みむろ杉」は、どのようにして生まれたのでしょうか。28歳、未経験から代表となった14代目蔵元・今西将之氏が目指したのは効率化とは真逆とも言える「清く、正しい、酒造り」。 Forbes JAPANの2025カルチャープレナー(文化起業家)30も受賞された今西氏に、酒の聖地である三輪に根差した改革の歩みとチームづくりについて、ヴァリューズ代表の辻本秀幸がうかがいました。


現役大学生が語るリアルなSNS活用実態。インスタ"本垢・サブ垢"の使い分けとは|Z世代インタビュー

現役大学生が語るリアルなSNS活用実態。インスタ"本垢・サブ垢"の使い分けとは|Z世代インタビュー

Z世代の消費やコミュニケーションを理解する上でSNSは無視できません。彼らにとっては目的別に複数のアカウントを使い分けるのが当たり前。アプリを横断しながら「本音」と「建前」を巧みに操ります。今回は現役大学生3名に、そのリアルなSNS実態について聞きました。Z世代ならではのアカウントの使い分け、自己表現とは?


ページトップへ