本セミナーでは、株式会社ヴァリューズが実施したアンケート調査のデータをもとに、以下の4つのテーマに分けて、新型コロナウイルスによるロックダウン前後の中国人の行動や意識の変化について解説。
図:セミナーテーマ
■ アンケート調査概要
【対象者】 中国全土における20代から40代の男女
【調査期間】 2020年6月16日(火)〜6月22日(月)
【回収サンプル数】 1,071サンプル (割付条件:性年代で均等割付)
図:スピーカー紹介
ロックダウン中はTikTokなどのショートムービー系が増加|接触媒体
プロモーション媒体選定に重要となるメディアの利用状況を見てみると、カテゴリ別に、SNS系、ニュース情報系、動画サイト系、ショートムービー系の媒体が、ロックダウン中の利用率が高く、全て80%を超えています。
特に、SNS系、動画サイト系は利用時間が増えた人の割合も高く、ニュース情報系、ショートムービー系は新規利用者率の急増も見られました。
図:媒体利用状況
続いて、各カテゴリ別に詳細を見てみましょう。
まずSNS系では「Wechat」が利用率、利用時間が増えた人の割合がともに一番高くなっています。「知乎(Zhihu)」は利用率は5割強にとどまりますが、新規利用者率としては他よりも高く、20%を超えているところに注目です。
図:SNS利用状況詳細
ショートムービー系では、「抖音(TikTok)」の利用時間が増加。次いで「快手(Kuaishou)」が利用率・利用時間が増えた人の割合がともに2位となっています。
図:ショートムービー、動画、レシピ利用状況詳細
リサーチャー 姜(以下、姜):「各サービス共に、今まではネット利用者と言えば若年がメインユーザーでしたが、アンケート結果をみると、40代女性の新規利用率が高いという印象を受けました。
「TikTok」と並ぶ「快手」はインスタグラムのストーリーのようなサービスなのですが、”健康体操”などのコンテンツがミドルエイジの女性に人気があり、そういったことからも利用率が伸びたようです。コロナの巣ごもり生活で、ネット利用者のすそ野が広がったと推測できます。」
マーケティングコンサルタント 戴(以下、戴):「中国の「TikTok」の機能について加えると、アプリ機能が日本と異なる点が色々とあります。
例えば、動画は掲載と共有の機能だけではなく、動画から直接ECサイト(「T-MALL」など)にとべるようになっていて、この機能は各社メーカーもプロモーションに利用しているという実例もあります。
また地図機能もあり、店舗の詳細ページへの遷移だけでなく、現在地との距離や経路を調べることができたりと機能が多様。こういったことから、中国では「TikTok」は単なるSNSというだけでなく、総合的に買い物や食事の情報収集に幅広く利用されています。」
図:「図:SNS・ショートムービー利用状況詳細」性年代別
動画系の利用率の上位3サービスとしては、「爱奇艺(iQIYI)」、「腾讯视频(Tencent Video)」、「哔哩哔哩(bilibili)」となっており、どれも利用率が50%を超えています。新規利用率者では「哔哩哔哩(bilibili)」が最も高く、特に20代に人気が高いことが見うけられます。
またレシピ系では、コロナ禍での自炊が増えたためか「下厨房(xiachufang)」といった、日本の「クックパッド(coocpad)」に似たレシピサービスの利用も伸びています。特に20~30代女性の新規利用者率の上昇が目立っています。
図:「動画・レシピ利用状況詳細」性年代別
接触媒体の調査結果より
■ショートムービー系、動画系の利用時間が増えた人の割合がアップ。40代の新規利用も増加。
→40代以上の高年齢層でのネット利用が加速。若年層のみならず、幅広い世帯でネットマーケティングが生かしやすい環境になりつつある
ロックダウン中と後では購入した物の変化も顕著に?|購買行動
ロックダウン中に購入が増加したもの、減少したものはどのような違いがあったでしょうか。引き続きアンケートにて調査した結果が紹介されました。
ロックダウン中は日本市場と同様に、衛生用品・日用品・食品の購入が増加した模様。対して、ロックダウン中に購入が減少したものは、カバン・化粧品・宝飾品との結果になりました。
ロックダウン解除後に購入が伸びたものとしては、服・カバン・靴、日用品(シャンプー・歯ブラシなど)があるようです。
図:ロックダウン中・解除後に購入が増えたもの
また、揺戻率(※)から見てみると、前述した、服・カバン・靴などのアパレルに加え、化粧品・コスメアイテムなどのを先頭に購入が回復しつつある様子が見受けられました。「リベンジ消費」の一端とも言えると推測します。
※「揺戻率」…「ロックダウン中の購入減少率」と「ロックダウン解除後の購入増加率」のクロス集計を掛け合わせた結果。揺戻率が高いほど、商品購入の回復傾向が強いとみなしてよいと考えられる。
図:ロックダウン中に購入が減少、解除後に増えたもの
ロックダウン中や解除後に利用したECサイトの変化は?|EC利用状況
ロックダウン解除後の利用ECランキングを見ると、「淘宝(Taobao)」、「天猫(Tmall)」、「京东(Jingdong)」の利用率が上位3位となっています。
一方、第4位の「拼多多(Pinduoduo)」のロックダウン中の利用率は35%にとどまりましたが、新規利用率では22%と最も高い結果になっています。
戴:「拼多多(Pinduoduo)はオンラインショッピン グとソーシャルメディアを融合させたECプラッ トフォームです。特徴としては、商品のまとめ買いができることや、「WeChat」を使って共同購入する仲間を見つければ、最大90%の割引きが受けられることもできます。また、工場直送のためリーズナブルな価格での購入が可能なことからも、中国国内でいう三級都市や四級都市といった地方郊外のユーザーに人気があります。」
姜:「先日、中国ECサイトの大きなキャンペーンイベントである6.18でもアフターコロナの「リベンジ消費」の影響で売上増だったようです。これらの実績を見ても、EC購入はロックダウン前の水準にもどってきていると思われます。」
図:ECの利用状況
購買行動・EC利用の調査結果より
■ロックダウン解除後、日用品(シャンプー・歯ブラシなど)の購入が増加
■日用品(掃除用品など)、医薬品・サプリメント、お菓子・おやつの購入増加率が依然として高い
■ECでの購買もロックダウン前に戻りつつある
→ECでの販売強化はこれからチャンスだと考えられる
■服・化粧品はロックダウン中に購入が低下したが、ロックダウン解除された現在は購入増加率が高い
→アパレル・化粧品にも購入回復の兆しが見えている
コロナ収束後の海外旅行は?インバウンドへの影響は?|海外旅行
コロナ収束後、海外旅行を検討するかとの質問には、66%に前向きな回答が得られました。
中でも、コロナ収束後に海外旅行したい国の首位は日本。もともと日本は旅行先として人気がありますが、依然として訪日意欲は高いようです。性年代別でみると、男性20代〜30代、女性30代の訪日意向が高いとの結果になりました。
姜「国の方針や政策などの諸事情もあり確かな予定は見えませんが、渡航時期として、2020年10月の「国慶節」や2020年年末から2021年明け「春節(旧正月)」頃に渡航を希望している人が多く現れました。
また、コロナ対策が万全かということに不安を抱きつつ、次いで気になるポイントとしては、中国に友好的かどうかという観点で行先を検討している模様です。」
図:行きたい海外旅行先
海外旅行の調査結果より
■中国人の訪日意向が依然として高い。新型コロナウイルスの収束度合いにもよるが、消費者マインド的には10月(国慶節)に海外旅行を考える人が約16%もいた
→少しずつ観光客が戻ってくる可能性があり、インバウンド復活を見据えたプレマーケティングでエリア認知、ブランド認知を高めるタイミングであろう
まとめ
ロックダウン中、生活に欠かせなかっただったインターネット。これにより40代以上中高年層のネット利用が増えたということで、「今後の中国市場向けのプロモーションの手法にも変化が必要なのでは」というスピーカーの言葉が印象的でした。
日本経済にも大きく影響があるインバウンド市場も、状況が整えば、既に戻りつつあるECサイト利用と同様に戻ってくることがおおいに見込まれる結果が見え、インバウンドによる経済回復にも希望の持てるデータの一つとなったのではないでしょうか。
今回のセミナーで一部抜粋してご紹介した、中国市場における「新型コロナウイルス前後の行動・意識変化に関する調査」に関して、詳細なレポートは無料でダウンロードできます。下記フォームよりお申し込みください。
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マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。