中国で大人気のリモートワークアプリ「DingTalk(ディントーク)」を徹底解説|中国トレンド調査

中国で大人気のリモートワークアプリ「DingTalk(ディントーク)」を徹底解説|中国トレンド調査

新型コロナウイルスが「無接触」サービスの発展を促しました。中国では、アリババやテンセントなどがグループウェアで激しい勢力争いを繰り広げ、中国版のSlackとしてもよく知られる、アリババグループの「DingTalk(ディントーク)」がオンライン授業、リモートワークサービスの覇権を握るようになりました。今回は、新型コロナ対策としての「DingTalk」について紹介します。


「DingTalk(ディントーク)」とは

「DingTalk(ディントーク、中国語:「釘釘」)」は、アリババグループが、中小企業を支援するために自社開発した、一体型コミュニケーションおよびモバイルオフィスサービスです。App StoreやGoogle Playストアなどから無料でダウンロードできます。

DingTalk のサービス動画

※DingTalkの中国語のキャッチフレーズ
「三億人に使われるDingTalk、勉強と日常生活をもっと便利に」

「DingTalk 」は業務効率化に役立つツールとして2015 年よりサービスを開始し、1,000 万を超える企業、2億人以上のユーザーに利用されるプラットフォームに成長しました。中国版のSlackとしてもよく知られています。

そして、リモートワークが急速に普及したここ数ヶ月で、「DingTalk(Lite版を含む)」は、中国で最も利用されているオンライン授業・リモートワークアプリとなりました。その他に、「DingTalk」は、世界中の医療専門家が新型コロナウイルス感染症対策に関する情報を共有し合うプラットフォームとしても利用されています。

2020年4月、新型コロナウイルスの影響を受け、ビジネスにおけるビデオ会議やオンライン授業のライブ配信に対する需要がこれまで以上に高まったことから、企業や教育機関を支援するための「DingTalk Lite(ディントーク・ライト)」がリリースされました。現在、「DingTalk」は日本語、英語、中国語に対応しており、日本、シンガポール、香港、マカオのユーザー向けに提供されています。

「DingTalk(ディントーク)」の日本語サイト

「DingTalk」の機能を解説! Slack、Zoomとの相違点とは

では、次に「DingTalk」の機能について解説します。

「DingTalk」には、社内の連絡帳およびチャット、出勤管理、タスク管理といったSlackと共通する機能や、ビデオ会議などのZoomと共通した機能があります。しかしそれだけではありません。「DingTaik」ならではの特徴的な機能は、大きく分けて4つあります。

【1】大規模なオンライン・コミュニケーションを支える1000人の参加者をライブ配信グループに招待できる「ライブ配信機能」、および300人以上が同時にグループに参加できる「ビデオ会議機能」です。これら二つの機能を無料で利用可能なことは、Zoomの有料プランよりお得だと考えられます。

【2】未読メッセージについて相手にリマインドできる「DING機能」です。「DingTalk」はすべての機能を無料で利用することができますが、「DING機能」に関しては、一日に利用可能なDing(リマインド)の回数が決まっており、上限回数を越えると、有料となります。例えば、20人のグループであれば、無料版では、一日で最大40回のDing(リマインド)が利用可能です。

Ding機能の上限回数

【3】従業員や学生が感染の疑いがないか検査するために、毎日の体温を記録する「健康カード機能」です。

健康カード機能

【4】ビデオ会議にA Rを取り入れた「美顔機能」です。

美顔機能
出典:dingtalk.com

以上のような利便性の高い機能が評価され、2020年2月初頭には「DingTalk」は、中国版アプリストアで、最大のメッセージアプリである「微信(ウィーチャット)」を上回るダウンロード数を獲得しました。

中国の新型コロナ対策としての「DingTalk」〜オンライン授業編〜

では、続いて、オンライン教育の観点から、「DingTalk」をみていきましょう。現在、中国では、300を超える都市で、5000万人超の生徒が、オンライン授業のために「DingTalk」を利用しています。

組織&部門管理機能が整備されたため、学校を「DingTalk」に組織として登録し、認証を得ることで外部のメンバーが参加できないセキュアな環境を構築できます。更に、クラスを部門として登録することでオンライン授業を行うことが可能です。

組織&部門管理機能

グループチャットを利用することで、教師と生徒がコミュニケーションを行ったり、授業の予定や注意事項などをアナウンスしたりすることができます。さらに、教科ごとにスレッドがあり、課題などはそこに掲示されます。教師は、生徒らが「DingTalk」内に取り組んだ課題をアップロードすることで、課題を管理することが可能です。

このように授業の準備から課題の回収までサービスを提供できる「DingTalk」は、新型コロナウイルスの影響を受け、政府主導のオンライン教育プラットフォームとして定着し、淘宝(タオバオ)に加えてアリババの代表サービスになりました

中国の新型コロナ対策としての「DingTalk」〜在宅勤務編〜

最後に、会社の総務用プラットフォームとしての「DingTalk」を見ていきましょう。

「Dingすれば、仕事がきます」というキャッチフレーズを掲げている「DingTalk」は、サービス開始初期から、toBサービスをメインに、企業への売り込みを続けてきました。そこに、新型コロナウイルスの流行という追い風が吹いたことで「DingTalk」はより一層、オフィスサービアプリでトップの地位を固めることとなりました。

「Ding一下,使命必达」(Dingすれば、仕事がきます)

「DingTalk」の最新バージョンDingTalk 3.5の更新情報をまとめてみました。

一つ目は、企業のデジタル化、業務効率化、情報セキュリティーをまとめて評価する「DingTalk指数」がリリースされました。

「DingTalk」の導入に当たって「DingTalk指数」を参考にすることで、リモートワークにおける改善点がわかり、リモートワークをより円滑に作業を進めることが可能です。

二つ目は、「企業ホームページ」の新設置です。
企業は従来、「钉钉服务窗」(DingTalkチャット画面)を通してクライアントと連絡を取っていましたが、「企業ホームページ」の設置によって、企業の最新情報を公示できるようになりました。クライアントとなる企業や連携先企業はこの「ホームページ」に訪問することで、最新情報を参考にしながら、直接担当者に連絡することが可能です。

三つ目は、「DING 2.0」です。
ミーティングをワンクリックで予約や、ミーティング向けのタイムカード機能の追加により、All in oneのミーティング開催が可能になりました。

まとめ

在宅勤務の動きが広がる中で、無償提供×テレワークの推進が可能となる機能をすべて搭載した「DingTalk」のおかげで、リモートワークが飛躍的に便利に行えるようになりました。

しかし、コロナによってユーザー数が爆増し、接続の問題についての不満、ビデオ会議ツールの能力の増強を求める声も、「DingTalk」ユーザーの中で高まっています。そのため、コミュニケーションの効率向上、業務管理のデジタル化の完全実現に向けて歩む「DingTalk」の旅路は、果てしなく長いものになるかもしれません。

<参考文献>
日経産業新聞 「コロナで中国IT勢力図に異変(日経BP専門誌から)」 2020/04/09,12面
DingTalk ホームページ https://m.dingtalk.com
DingTalk百度百科 https://baike.baidu.com/item/钉钉/16595044?fr=aladdin

関連記事

中国人のリアルな購買行動の実態をオンラインでインタビュー!安全な日本製品はパッケージを重視。コロナ後はEC利用が9割に

https://manamina.valuesccg.com/articles/892

新型コロナにより日本経済は甚大な打撃を受け、感染拡大も油断ならない状況が続く一方、中国は収束に向かい、経済の活性化が予想されています。国内の経済状況が不安定な中、中国マーケットへの進出を検討する企業も増えているのではないでしょうか。しかし、中国人の嗜好や効果的なマーケティング手法が分からなければ、手探り状態に陥るリスクもあります。 それらの大きな手助けとなるのが、どのような商品が現地で好まれるのか?どのような購買行動を取るのか?などのリアルな声(データ)です。本稿では、ヴァリューズが開催した中国市場オンラインセミナーをご紹介。中国でのビジネス展開に役立つ定性調査として、現地人を対象にしたインタビュー模様をお届けするセミナーです。

中国におけるアフターコロナのネット利用・購買行動を探る|中国市場セミナーレポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/957

日本国内では、依然として感染拡大の収束が見えない新型コロナウイルス。第3波が懸念されている中国では一定の収束が見られるものの、局地的に感染が発生したケースもあるようです。生活様式の変化だけでなく、経済活動にまで甚大な影響をもたらし続けている今、中国市場でもどのような変化があったのでしょうか。今回はロックダウン前後の中国人のネット利用や購買行動などの変化に焦点を当て、株式会社ヴァリューズがアンケート調査にもとづき開催したオンラインセミナーをレポートします。

ロックダウン前後の中国人の行動・消費意識変化を調査 ~ 休日の過ごし方は“ネットショッピング”が継続1位

https://manamina.valuesccg.com/articles/969

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、中国の20~40代の男女1,071人を対象に、新型コロナウイルス感染拡大およびロックダウンによって中国人の消費意識がどのように変化したのかアンケート調査を実施しました。

​​

メールマガジン登録

最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします

この記事のライター

中国出身の留学生。慶應義塾大学に在学中。

関連する投稿


中国シルバー経済の新傾向を調査

中国シルバー経済の新傾向を調査

日本と同様、年々高齢者の割合が高くなっている中国。中国民政部が発表した《2023年民政事業発展統計公報》によると、2023年末の時点で全国の60歳以上の人口は29,697万人に達し、総人口の21.1%を占めました。高齢者の増加に伴い、近年中国では“銀髪経済”(シルバー経済)という高齢者を主力とした現象が発生しており、高齢者の間で新たな生活様式が広がっています。


「感情」で消費する中国のZ世代

「感情」で消費する中国のZ世代

新型コロナウイルスが終息した後、経済が低迷しているように見える中国ではさまざまな新しい消費現象が現れています。以前から話題となっていたシティウォーク、ペット経済、リラックス感のあるファッションや「搭子社交」など、これらの現象をよく考えてみると、一つのキーワードに辿り着きます。それが「感情」です。社会的地位を証明するためにブランド品を追い求め、他人に自慢するのではなく、現在の中国のZ世代は、むしろ自己の癒しに注目し、一つの活動や商品を購入する際に自分に「感情的な価値」をもたらすかどうかを重要視しています。この現象は中国で「感情経済」を生み出すに至りました。本記事ではこの現象について詳しく紹介します。


掃除の悩みや求めることは同じ?中国における家庭の掃除意識を調査

掃除の悩みや求めることは同じ?中国における家庭の掃除意識を調査

コロナ禍が後押しとなって、中国において家庭掃除への関心が高まっています。その中でユーザーは掃除に関してどのようなことに苦労し、どのようなことを望んでいるのでしょうか。ヴァリューズ独自の中国定性調査サービス「百路QIC(ヴァリュークイック)」を用いて、ユーザーの本音を明らかにしました。


中国Z世代における消費観“情緒経済”の特徴とは|ホワイトペーパー

中国Z世代における消費観“情緒経済”の特徴とは|ホワイトペーパー

巨大市場中国。本調査は、中国の消費者の消費動向、購買実態や新しい消費トレンド、消費観を明らかにすることを目的として調査。中でもキーとなるのは、世代間比較。この比較を行うことで、“情緒経済”を重視していると言われているZ世代の特徴や、居住地域によるZ世代内の消費観の差について検討が可能となっています。海外展開事業担当者の方や中国Z世代向けマーケティングを考えている方必見のレポートです。※調査レポートは記事末尾のフォームより無料でダウンロードいただけます。


中国におけるAI。スポーツ、就職、人材育成での活用動向

中国におけるAI。スポーツ、就職、人材育成での活用動向

さまざまな文化、技術発展の速い中国。そんな中国人は新しい技術に対して楽観的な態度を持つことが多く、AI技術も例外ではありません。2023年にスタンフォード大学が発表したAI Index Report の調査結果によると、中国人はAIに対して最も楽観的な態度を持っています。AIがもたらす可能性のあるプライバシー侵害などのリスクよりもAIが生活をより便利にすることが信じられているようです。本稿では中国AI業界の最新情報を詳しく紹介します。


最新の投稿


博報堂研究デザインセンター、生活者発想技研からメタバース生活者たちと共にメタバースの未来を考える 「メタバース生活者ラボ™」を設立

博報堂研究デザインセンター、生活者発想技研からメタバース生活者たちと共にメタバースの未来を考える 「メタバース生活者ラボ™」を設立

株式会社博報堂は、メタバース空間における新しい生活者価値の創出と、イノベーションを生み出すことを目指し、研究員全員がメタバース生活者当事者によって構成されたコミュニティ型プロジェクト「メタバース生活者ラボ™」を設立したことを発表しました。


【2024年12月2日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2024年12月2日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


SEOの失敗から学んだ教訓、「技術的な最適化の重要性」「キーワード選定の重要性」「コンテンツの質が検索順位に与える影響」が上位に【eclore調査】

SEOの失敗から学んだ教訓、「技術的な最適化の重要性」「キーワード選定の重要性」「コンテンツの質が検索順位に与える影響」が上位に【eclore調査】

株式会社ecloreは同社が運営する「ランクエスト」にて、SEO対策で実際に失敗を経験した担当者に対し、その原因や対策についてアンケートを実施し、結果を公開しました。


ゴンドラ、CXデザイン・カスタマーサクセスの最新トレンドと顧客エンゲージメントに関する調査結果を発表

ゴンドラ、CXデザイン・カスタマーサクセスの最新トレンドと顧客エンゲージメントに関する調査結果を発表

株式会社ゴンドラは、カスタマーサクセス、CRM、CXデザイン業務経験者を対象に、顧客エンゲージメントに関するアンケート調査を実施しました。


SEOにおける動画コンテンツの活用目的は検索順位・ブランド認知度向上!約8割がSEO効果を実感している結果に【eclore調査】

SEOにおける動画コンテンツの活用目的は検索順位・ブランド認知度向上!約8割がSEO効果を実感している結果に【eclore調査】

株式会社ecloreは同社が提供する「ランクエスト」にて、動画コンテンツ活用者を対象に、SEO対策としての動画の有効性について調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ