スポーツメディアのユーザー数や滞在時間など基本指標
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2019年4月〜2021年3月、対象デバイス:PC、スマートフォン
ユーザー数についてはデイリースポーツと日刊スポーツが他の2つのサイトと比較して大きく上回っています。
PV数、平均滞在時間の2指標の数字は4サイトのなかで日刊スポーツがもっとも大きく、また直帰率に関しても日刊スポーツが最も低く抑えられており、ユーザーがサイト内を回遊していると考えられます。一方、新規ユーザー率についてはスポーツ報知が最も高い数値になっています。
次に、ユーザー数の推移を見ていきます。
時期ごとに多少の前後はありつつも、全体としてはデイリースポーツ、日刊スポーツ、スポニチ、スポーツ報知の順番でユーザー数を確保しています。また、直近のトレンドとして、昨年の12月からデイリースポーツが大きくユーザー数を伸ばしています。
デイリースポーツ好調の要因はGoogleのコアアップデートか?
デイリースポーツの集客構造を、ユーザー数が増加する2020年12月以前と増加後の期間で比較したものが下のグラフと表になります。
▼増加前(2020年8月〜2020年11月)
▼増加後(2020年12月〜2021年3月)
円グラフの青色部分、「自然検索」からの流入割合の増加が見られます。これがデイリースポーツのユーザー数増加に繋がっているようです。
自然検索での流入キーワードおよび、セッション数を比較すると以下の表のようになります。
▼増加前
▼増加後
「デイリースポーツ」や「デイリー」といった、サイトに関連するキーワードからのセッション数には大きく変化はありませんが、「阪神タイガース」からの流入や、「今井ゆうぞう」など芸能人の名前単一での検索からの流入が大きく増加しています。
ロングテールのキーワードからの流入が増加しており、またこのタイミングが2020年12月であることを考えれば、デイリースポーツの流入増は昨年12月に行われたGoogleのコアアルゴリズムアップデートと関連がある可能性もありそうです。
スポーツメディアごとにユーザー属性の違いはあるのか
続いて、4つのスポーツメディアにおけるユーザー属性について比較していきます。
▼性別構成比
▼年代別構成比
それぞれのグラフは、赤:日刊スポーツ、緑:デイリースポーツ、黄:スポニチ、紫:スポーツ報知
性別、年代ともに目を引くほどの大きな差はありませんが、わずかながら各メディア間で違いが見られます。
性別比は全体として男性のほうがやや多いものの、日刊スポーツが最も男性が多く、デイリースポーツが最も女性が多い割合を占めています。年代比では、20-30代は日刊スポーツが、40代はスポニチが、50-60代はデイリースポーツが高い割合を占めています。
また、4つのメディアの併用状況を表すと以下の表のようになります。
4つの内、2サイト以上を併用しているユーザーが約7割と、大きな割合を占めています。併用なしの割合に注目すると、最も割合が高いデイリースポーツで約11%、最も低いスポーツ報知だと約3%となっています。
スポーツメディアの利用者には、利用するメディア自体にはあまりこだわりなく、集めたい情報をそれぞれのメディアから集めているユーザーが多いと考えられます。
各メディア利用者の興味・関心からメディアの特性を探る
デモグラフィック属性にはスポーツメディアごとに大きな変化が見られませんでしたが、サイコグラフィック的な特徴でなにか違いはないのでしょうか。この観点でスポーツメディア利用者の興味・関心を分析していきます。
以下では日刊スポーツとデイリースポーツに焦点を当て、ヴァリューズのツール「story bank」を用いてユーザー層を興味・関心の違いから6つのクラスタリングに分けてみました。
▼日刊スポーツ
▼デイリースポーツ
2つのメディアについてクラスタを比べてみると、日刊スポーツはライブハウスやメイドなどの情報に興味を持つクラスタと、高校野球に興味を持つクラスタが特徴的です。一方で、デイリースポーツは野球のなかでも特に阪神タイガースの情報に興味を持つユーザーが特徴的に見られました。
では、全メディアで最も関心が高いスポーツ観戦のなかでも、どの種目のスポーツの関心が各メディアで高いのでしょうか。
特徴値とリーチ率をマッピングしたものが以下になります。図の見方としては、右に行くほど当該サイト訪問者の特徴値が高く(=全体に対して特徴的に関心を持っている)また、上に行くほど回答者のボリュームが多い(=当該サイト訪問者内に占める割合が高い)という見方になります。ですので、右上に行くほど当該サイトへの訪問者が特に興味関心を持っている内容となります。
▼日刊スポーツ
▼デイリースポーツ
▼スポニチ
▼スポーツ報知
どのメディアでも「国内プロ野球」「国内サッカー」「海外プロ野球」は共通して関心度が高いことが分かります。メディア間での特徴値の違いに着目すると、
・日刊スポーツは「高校野球」「陸上競技」「自転車競技」
・デイリースポーツは「サッカー日本代表」「プロレス」「ボクシング」
・スポニチは「海外サッカー」
・スポーツ報知は「大相撲」「ゴルフ」
への関心が、他のメディアよりもやや高くなっています。
スポーツの各種目のなかでも各メディアごとに、強みとなる種目が異なるようです。
まとめ
本稿ではスポーツメディアに関して、サイトの基本指標や集客構造、ユーザーの属性・興味・関心を分析しました。複数のスポーツメディアを併用しているユーザーが7割以上を占めましたが、そのなかでも、各メディア間でユーザーの興味・関心は少しづつ異なっていました。
また、デイリースポーツは自然検索からの流入を大きく伸ばしていました。これは昨年12月のGoogleコアアルゴリズムアップデートの影響が考えられます。メディア戦略は集客構造に表れるとも言われ、この部分を見直すことが自社メディア改善には重要なポイントでしょう。
▼参考記事:オールアバウトの徳永さんに、メディア戦略の分析観点を取材しました
「メディア戦略の骨はチャネル構成」All Aboutが他メディアとの比較分析から新規事業を立ち上げる方法とは
https://manamina.valuesccg.com/articles/1086月間2000万人以上の読者を集める国内最大規模の生活総合情報サイト「All About」を中心とし、多様なメディアを運営する株式会社オールアバウト。同社ではWeb行動ログ分析ツール「<a href="https://www.valuesccg.com/service/emarkplus/" target="_blank">eMark+</a>」を活用し、市場ニーズの分析や新規事業の戦略策定につなげていると言います。メディアビジネス部のジェネラルマネジャー・徳永さんに、All Aboutの戦略設計やデータ活用をお聞きしました。
今回のデータを参考に、自社メディアの改善や広告出稿先の検討に役立ててみてください。
<分析概要>
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「Dockpit」を使用し、2019年4月~2021年3月のネット行動ログデータを分析しました。
※ユーザー数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
2022年の春から、新卒としてヴァリューズに入社。