スキルシェアマーケットの動向を探る

スキルシェアマーケットの動向を探る

― 急成長をみせるCtoCマーケットプレイス ―


ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:辻本 秀幸)は、「ココナラ」や「メルカリアッテ」等、個人スキルのシェアマーケット動向を分析しました。

分析概要

ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用し、2016年7月から2017年8月におけるスキルシェアマーケットサイトのユーザー数や属性を分析した。
※サイト訪問者数はPCとスマートフォンからのアクセスを集計し、VALUES保有モニタでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。

考察サマリ

ココナラがメルカリアッテを猛追

1兆1,812億市場ともいわれるシェアリングエコノミー。なかでも2016年の取引金額751億円に対し潜在市場2,395億円規模と見積もられているのが、占いやイラスト制作、ハンドメイド作品など、個人スキルの売買です。(*1)
ランサーズやクラウドワークスといった、発注者側が提示した案件に対し制作希望者が金額や作品をエントリーするタイプの企業主導型サービスが、長く市場拡大を牽引してきましたが、昨年あたりから様子が変わり、仕事や作品を提供したい個人ユーザー主導のサービスが急成長しています。

(*1)情報通信総合研究所「シェアリングサービスの市場規模は年間1兆1,800億円! 将来的には2兆6,300億円まで拡大の可能性」
http://www.icr.co.jp/press/press20170628.pdf


図1 主要サイト(PC・スマートフォン合算)における14ヶ月間のユーザー数推移

eMark+のSiteAnalyzerでスキルシェアサイト・アプリのユーザー数推移を確認したところ、会員数35万人ともいわれる「ココナラ」、フリマアプリ「メルカリ」のブランド力を擁する「メルカリアッテ」は、やはり2強であることが確認できました(図1)。
これらサイトのユーザーがよく利用すると考えられる「イラスト 依頼」といったキーワードでヒットする類似サイトには、「TimeTicket(タイムチケット)」、「WoW!Me(ワオミー)」、「Skillots(スキロッツ)」などがありますが、月間ユーザー数はいずれもココナラ、メルカリアッテとは大きな開きがあります。
ココナラは、2017年7月にユーザー数が急増しており、強化したテレビCMが、集客に奏功したものと見られます。メルカリアッテの3月の急伸から6月までは後塵を拝してきましたが、同月一気に引き離し、月間約68万ユーザーを獲得。8月には勢いが落ち着いたものの、依然メルカリアッテのユーザー数を上回っています。

各社の取組みは?

各社サイト等を参考に、表1サービス比較をまとめました。スキロッツが発注者向け以外は、いずれも作品やサービスを提供する個人に向けたメッセージを採用しており、個人会員数の獲得に注力していることがわかります。
ココナラ、スキロッツ、タイムチケットの3社は、サービス等を提供する個人ユーザーに対する課金モデル。ワオミーは売買成立時に発注者から手数料を得ています。他方、完全無料を謳うのはメルカリアッテ。サービス自体の収益ではなく、メルカリブランドの浸透を目指す戦略なのかもしれません。それが奏功してか、アプリのユーザー数ではココナラを大きく引き離しています。


表1 サービス比較

(*2)各社公開情報、ニュース等より調査した参考値。
(*3)2017年3月~8月の月間平均アクティブユーザー数をeMark+より推計。タイムチケットアプリは出現母数が少ないため除外。

eMark+のSiteAnalyzer基本指標機能でデバイス別のユーザー数分布を比較しても、メルカリアッテだけは8割以上がスマートフォンユーザーと突出しています(図2)。(*4)
メルカリアッテアプリのレビューでは、手数料や送料、梱包費用がないこと、ユーザー同士直接対面の安心感などが評価されており、「スマホで手軽にスキルや不用品シェア」のニーズに応えているものと見られます。

(*4)2016年7月~2017年8月のデバイス別ユーザー数をeMark+の基本属性より推計。

図2 PCとスマートフォンのユーザー分布

高年収ユーザーはタイムチケット?!

どんなユーザーがこれらサービスを利用しているのか、eMark+ SiteAnalyzerの「ユーザー属性」で個人年収分布を見てみましょう(図3)。(*5)
メルカリアッテは年収400万円未満のユーザーが7割を超えています。同じく比較的低所得層が多いスキロッツでは、5割近くが年収200万円未満でした。両サイトは年収1,000万円以上がともに2.4%と5サイト中最も低い水準です。
特徴的なのはタイムチケットで、およそ半数が年収400万円以上。年収1,000万円以上のユーザーも1割程度含まれています。ココナラは年収400万円未満ユーザーが6割強と、5サイト全体の傾向とほぼ相似形でした。

(*5)eMark+のユーザー属性より、2017年8月のPC及びスマートフォンユーザー数を合算。個人年収が「わからない」「未回答」のユーザーを除く集計値。

図3 サービス別のユーザー個人年収

一般会社員が3割を占める

各サービスユーザーの職業を分析してみたところ、最も多いのは一般の会社員(図4)。次いで、パート・アルバイト、自営業(商工・サービス)、専業主婦(主夫)、会社経営(経営者・役員)、無職・定年退職・家事手伝いの順でした。(*6)
サービスごとのユーザー属性の違いは、職業でも顕著です。タイムチケットでは4割以上を会社員(一般)が占め、比較的安定した高年収層が時間単位で副業を手がけている模様。フリーランス・SOHOとパート・アルバイトが多いのはスキロッツです。ワオミーは専業主婦(主夫)や自営業に人気があるようです。母数の多いメルカリアッテは、5サイト全体の傾向とほぼ相似形でした。

(*6)eMark+のユーザー属性より、2017年8月のPC及びスマートフォンユーザー数を合算。

図4 サービス別の職業区分

メール占いが一番人気

人気のあるコンテンツ分野を、ココナラのページ別ユーザー数から探ってみましょう(図5)。
ココナラは、別ドメインで展開するハンドメイドと法律相談・弁護士検索を除くと、21の「カテゴリ」を展開していますが(*7)、eMark+でサイト内のカテゴリページを分析してみると、メール占いのアクセスが多い様子です。「マネー・不動産」や「語学・翻訳」など、14のカテゴリは、上位コンテンツに登場していませんでした。(*8)

(*7)トップページ「カテゴリから探す」の掲載メニュー数。https://coconala.com/
(*8)eMark+を使い、2017年6月~8月の間にココナラのサイトを利用したユーザーが8月にサイト内で閲覧したコンテンツを、ページごとに推計。第1階層のディレクトリが「category」のメニューページのうち、ログを取得できた上位ページのデータを掲載。

図5 ココナラの人気カテゴリ(ページ別ユーザー数)

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連する投稿


【マーケター入門編】マーケティング基礎知識まとめ28選 ~ 用語やフレームワーク、便利ツールまで

【マーケター入門編】マーケティング基礎知識まとめ28選 ~ 用語やフレームワーク、便利ツールまで

新年度がスタートし、マーケティングの部署へ新たに配属となった方も多いかと思います。そこで今回は、“まなべるみんなのデータマーケティングマガジン”である『マナミナ』で、よく見られているマーケティングのナレッジをまとめました。マーケティング用語や注目のビジネスモデル、マーケティングに役立つツールなど、スキマ時間にチェックして、マーケティングの基礎知識を身につけておきましょう。


「タイミ―」牽引のスキマバイト市場にメルカリが参入! 注目の新サービスはリーダーとなれるか

「タイミ―」牽引のスキマバイト市場にメルカリが参入! 注目の新サービスはリーダーとなれるか

近年、値上げラッシュや副業推奨、労働力不足も相まってスキマバイト市場が急速に拡大しています。また、2024年3月からフリマ市場最大手「メルカリ」がスキマバイトアプリ「メルカリ ハロ」を開始するなど、スキマバイト市場は一層活発になることが予想されます。そこで、今回は現在のスキマバイト市場を先導する「タイミ―」と、新規参入者である「メルカリ ハロ」それぞれについて、アプリの特徴やユーザー層を比較。今後のスキマバイト市場の動向について分析を行っていきます。


ライドシェア解禁を受けて配車サービスの利用実態はどう変化した?行動データから考察

ライドシェア解禁を受けて配車サービスの利用実態はどう変化した?行動データから考察

ライドシェアサービスは、運送する人と運送してほしい人を専用プラットフォームでマッチングする仕組みであり、日本語では「相乗り」を意味します。これまで日本では自家用車を使った有償運送が原則禁止されていましたが、2024年4月から限定的に解禁されました。これにより、一般ドライバーが特定の地域や時間帯で自家用車を使って旅客を運べるようになり、タクシー運転手不足の解消が期待されています。この記事では、「ライドシェア」の検索結果や主要サービスを調査し、関心や利用実態を考察していきます。


カーシェアの市場規模や利用者数を調査。主要サービスの公式サイト訪問データから考察

カーシェアの市場規模や利用者数を調査。主要サービスの公式サイト訪問データから考察

カーシェアは車を共同利用するサービスで、日本にシェアリングエコノミーの考え方が広がるとともに普及しました。今回は国内の主要な13のカーシェアサービスのWebサイトを訪問した人のデータから、カーシェア業界の市場規模やどのような層が関心があるのかを調査していきます。


コロナ禍を乗り越えても人気継続?カーシェア大手4社のアクセス数を分析

コロナ禍を乗り越えても人気継続?カーシェア大手4社のアクセス数を分析

好きな時に好きな時間だけ借りられるという便利なシステムのカーシェア。コロナ禍では公共交通機関を避ける移動手段として注目が集まりました。しかし、コロナウイルスが5類に分類された今でも人気なのでしょうか。カーシェア大手4社(タイムズカー、トヨタシェア、オリックスカーシェア、カレコ)のWebサイトへのアクセス数を分析し、その疑問に迫っていきます。


最新の投稿


アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

Repro株式会社は、アパレル系店舗アプリのインストール前後の利用状況に関するユーザー調査を実施し、結果を公開しました。


認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

未知株式会社は、全国の企業に在籍する20〜60代の方を対象に「コンテンツマーケティングの実施・成果」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

近年、美容インフルエンサーの発信により特定のスキンケア成分がフォーカスされ、「成分関心層」が増加しています。今回は、@cosmeを運営するアイスタイル社が保有する、日本最大級の美容に関する生活者データと、ヴァリューズが保有するオンライン行動データを活用。成分に関する情報感度の高いアーリーアダプター層に注目し、その裏にあるユーザーインサイトから、成分関心層と取るべきコミュニケーションを探ります。※本セミナーのレポートは無料でダウンロードできます。


官民連携の智略 ~ PPP/PFI

官民連携の智略 ~ PPP/PFI

高い効率性が求められるのは今や個人の仕事や学業の範疇にとどまらず、国の施策運営である公共事業などにもその思考傾向は浸透しつつあります。その結果、国は民間企業の協力を得て「官民連携」で公共事業を進めることでそれらを効率化し、さまざまな事業を支えている例が多く存在します。本稿では、このような「官民連携」で効率化を目指す手法のPPPやPFIなどについて、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏が解説します。


観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

動画視聴を通じてポイ活を行うアプリ「TikTok Lite」が注目を集めています。「TikTok」に少し変化を加えただけに思えるこのアプリですが、実は「TikTok」と同じぐらい勢いがうかがえます。そこで、本記事では「TikTok Lite」と「TikTok」のアプリユーザーのデータを分析し、双方の違いから「TikTok Lite」の人気の要因を探っていきます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ