マーケティング戦略や施策を練る上で陥りがちな問題点
マーケティングにおける戦略・施策を練る上ではさまざまなポイントがありますが、そのなかでも重要なタスクのひとつが、的確な市場環境の把握です。自社が提供するサービス・商品が属している市場環境については、社内の既存の知見やリサーチ結果、あるいは自分の実体験や肌感など、様々な観点から把握することが多いかと思います。
しかしここで大きな問題になるのは、消費者が実際に購買するまでの検討行動やプロセスが多角化していることです。マーケティングに携わる業界の方々がこれまで指摘してきたとおり、デジタル利用が浸透して以降、この傾向はより顕著になってきています。
消費者のリアルな検討行動・購買プロセスの全体像を把握できず、実感も持てないままでは、顧客の行動をセグメントやファネルごとに整理できません。これにより、曖昧なまま戦略・施策の立案が進んでしまう場合が多く見られるのです。
マーケティング戦略立案の上で市場環境の把握の難度が上がっているため、顧客の購買プロセスがセグメント・ファネルごとに整理できていない場合が多く見られる
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自社の商品・サービスを市場に普及させるには、一貫したマーケティング戦略が必要です。企業のマーケティング戦略立案に使われる3C分析・STP分析・4P分析などのフレームワークや、有名企業のマーケティング戦略事例をご紹介します。
なぜ購買プロセスの理解が難しいのか?
購買プロセスの理解が難しくなっている要因は、「購買プロセスの複雑化」にあります。具体的には次の図にあるように、消費者はオンラインとオフラインを横断しながら情報収集を進め、最終的な購買を行います。しかもこのプロセスは対象となる商材、あるいは個人の嗜好によっても異なり、全体像の把握が難しい状況です。
消費者のカスタマージャーニーの例。SNS利用やWebサイトにて情報収集し、加えてオフラインの本やテレビ、店頭なども接点としながら、複雑な過程を経て購買につながっている
こうした現状については現場のマーケターもよく悩んでいるのではないでしょうか。例えば、アンケートやインタビュー調査を日々実施しているマーケターの方々からは、消費者行動の変化について「店舗来店前の顧客インサイトが不明」「OMOに向けた消費者理解が困難」「調査結果とオンライン行動とのつながりが不明」といった声がしばしば上がっています。
購買までの意識調査については従来、アンケートやグループインタビューなどの調査手法が使われてきました。しかし消費者は自身のオンライン行動について、意識的に把握しているとは言えません。実際のところ消費者の意識と行動には乖離があり、既存の意識調査のみでの実態把握はさらに難しくなっています。
次のグラフは、主要なアプリの利用日数をアンケートでの回答(意識)と、株式会社ヴァリューズが保有する消費者のWeb行動ログデータでの実測(行動)を比較し、ギャップをまとめたデータです。横軸に各アプリを並べ、縦軸は利用日数に2日以上のずれがあった不正解率を示しています。
この結果から、不正解率は最低でも46%、最高だと91%にも上っていることが分かります。
つまり特にオンライン利用については、質問して記憶を頼りに回答してもらう意識調査では、結果と実際の行動の間にギャップが生じてしまうことがあります。
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「カスタマージャーニーマップ」を作るワークショップを通じて、顧客理解を深めよう
https://manamina.valuesccg.com/articles/959顧客の購買プロセスを旅にたとえて図式化するカスタマージャーニーマップは、チームメンバーや関係部署間でのカスタマーエクスペリエンスの共通理解を促進できるメリットがあります。このメリットを活かすのにおすすめなのが、カスタマージャーニーマップのワークショップによる作成です。ワークショップ開催にあたってどのようなメンバーを集めるのが最適か、また、ワークショップの円滑化のための施策を紹介します。
購買プロセス調査が可能にすること
購買プロセスの複雑化により、全体像を把握することが難しいという課題を解決するのが、次に示すターゲット顧客の意思決定プロセスと離脱要因を把握する「購買プロセス調査」の手法です。
オンラインとオフラインを交互に行き来しながら購買までの道筋をたどる消費者。この動きを明らかにしていくために、株式会社ヴァリューズが提供する購買プロセス調査ではAsking型とListening型の2つのリサーチ手法を組み合わせています。
それぞれのリサーチ手法にはそれぞれの強み・弱みがありますが、2つを掛け合わせることで、意識と行動の乖離といったこれまでの課題を解決することができます。ヴァリューズでは、Web行動ログの取得モニターに対してアンケートを行い、行動データをユーザー単位で紐づけて行うアンケート×ログ調査を行っています。
では、この購買プロセス調査は具体的にどのように行うのでしょうか。自動車購入者に対して購買プロセス調査を行った結果の一例が以下になります。
まず左上のグラフでは、Web上での自動車購買の検討が購入の何か月前から本格化するかについて、アンケートとWeb行動ログデータを比較しています。アンケートでは購入の1ヶ月前という回答の割合がもっとも多かったものの、Web上では実は3ヶ月前から検索行動の盛り上がりが発生していることが分かります。
また、右下のグラフは各メーカーの自動車購入者がどの程度公式サイトに接触しているかを調査しています。他社の状況とも比較し、自社の情報発信がどれくらい適切かが見えてくるでしょう。
この事例のように、アンケートを用いて消費者の意識調査を行うだけでなく、実際のWeb行動ログを用いてサイトへの接触率等を調査する購買プロセス調査によって、より正確な消費者行動を把握できるのです。
▼関連記事:「Listening型リサーチ」について詳しく解説しています。
ウィズコロナ時代の新たなビジネス機会を発見する「Listening型リサーチ」とは
https://manamina.valuesccg.com/articles/9998/28,9/9にヴァリューズが開催したオンラインセミナーでは、新しいビジネス機会を発見するための手法として、「Web行動ログを活用したListening型のリサーチ手法」を紹介。有効なアプローチやプロセスを紐解きました。本稿はそのレポートをお届けします。
意識と無意識を含めて消費者・カスタマージャーニーを理解
マーケティングの戦略・施策を練る上では市場環境の把握が重要です。しかし、Web利用拡大による購買プロセスの複雑化や、消費者の意識・行動間のギャップにより、既存の意識調査のみでは市場環境の把握が難しくなってきていました。
その課題を解決できるのが、今回お伝えしたアンケートと行動ログを用いてターゲットの意思決定プロセスと離脱要因を把握する購買プロセス調査です。この手法では、Web上の検討行動と背景を両軸で可視化でき、また、無意識も含めて消費者のペルソナ・カスタマージャーニーを把握できます。
意識調査だけでは出てこないリアルな消費者像を描けることで、オフライン行動・意識とオンライン行動の関係性を深められ、調査結果を施策に落としやすくなっています。また、普段のWeb行動分析や、記憶に残らないような詳細な粒度での分析を行うことで、想定していなかった消費者像の発見に繋がり、意識/無意識を含めて消費者を理解することができます。
今回取り扱った購買プロセス調査については、さらに詳しい内容や事例についてセミナーで解説を行いました。
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■意識×行動の両面から明らかにする真のカスタマージャーニーとは
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