「カスタマージャーニーマップ」を作るワークショップを通じて、顧客理解を深めよう

「カスタマージャーニーマップ」を作るワークショップを通じて、顧客理解を深めよう

顧客の購買プロセスを旅にたとえて図式化するカスタマージャーニーマップは、チームメンバーや関係部署間でのカスタマーエクスペリエンスの共通理解を促進できるメリットがあります。このメリットを活かすのにおすすめなのが、カスタマージャーニーマップのワークショップによる作成です。ワークショップ開催にあたってどのようなメンバーを集めるのが最適か、また、ワークショップの円滑化のための施策を紹介します。


カスタマージャーニーマップとは?そのメリット

カスタマージャーニーとは、顧客が商品を購入するまでの流れを「旅」に例えたもの。そして、顧客の購買行動におけるフェーズを、時系列に合わせて図式化したものが「カスタマージャーニーマップ」です。

カスタマージャーニーマップのメリットとして、単に顧客の行動を可視化するだけではなく、社内のメンバーや関係部署間での共通理解を促進するツールになるほか、商品やサービスが抱えている課題の洗い出し、そして、全体を俯瞰しユーザー目線で現実的な改善策を立てられる、という3点が挙げられます。

カスタマージャーニーの基礎から事例まで【まとめ】

https://manamina.valuesccg.com/articles/915

企業のマーケティングに活用される「カスタマージャーニー」。顧客の購買行動を「旅」にたとえ、顧客との接点や課題を洗い出します。カスタマージャーニーの基本概念から作り方、B2B・B2C事例まで、まとめて紹介します。

カスタマージャーニーの3つの具体的な使い方

https://manamina.valuesccg.com/articles/626

カスタマージャーニーは、近年様々な企業において顧客の分析に活用されています。多様化した顧客の購買行動を可視化して、それぞれの接触ポイントごとに改善施策を実施することで、コンバージョンを改善します。今回はカスタマージャーニーの具体的な使い方を3つに絞り込んでご紹介します。

ワークショップ開催のメリット

カスタマージャーニーマップはひとりでも作成できますが、複数人でのワークショップ形式にすれば、顧客の体験の収集や分析を通じて各メンバーの顧客理解を深められるメリットがあります。

ワークショップ参加メンバーの選び方

ワークショップに参加するメンバーを闇雲に集めただけではその効果を発揮できません。参加してもらうメンバーは、基準を設けた上で選定する必要があります。

まず、プロジェクトの目標によっては、1つのペルソナに対して複数のシナリオのマップ化も想定されます。これを踏まえ、関係する部署(=関係チーム)のメンバーは、カスタマージャーニー作成段階の初めから参加してもらわなければなりません。

そして、上層部や上級管理職といった、権限を持つ人々にもプロセスに参加してもらうのが理想的です。こうした人々、つまり顧客と触れる機会が少ない人々が参加することは、新しい知識の共有にもつながるので、双方にとってメリットがあります。

ワークショップを取りまとめるファシリテーターを設定

ただ場を設けても、期待どおり盛り上がるとは限りません。ワークショップを円滑に進めるには、ファシリテーション(集団による問題解決、アイデア創造といった知識創造活動を支援する働き)が重要です。そのためにはファシリテーターという進行役的な役割をする人物を決めます。

ファシリテーションとは - FAJ:特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会

https://www.faj.or.jp/facilitation/

~ファシリテーションとは~ ファシリテーション(facilitation)とは、...

ファシリテーターは、自身が意見を押しつけるのではなく、参加者の内側から意見を引き出すことが重要です。議論が多方向に広がってしまった場合に原点に引き戻したり、発想を広げたり、論点を深めたりという、いわば「場作りの役割」に徹します。

ワークショップでのカスタマージャーニーマップ作成ステップ

ワークショップによってカスタマージャーニーマップを作成する際は

・ファシリテーターによるペルソナの作成
・顧客行動の収集
・顧客の感情と思考の収集
・課題のディスカッション
・顧客行動の可視化

という、5つのステップを作業の中心にします。

ファシリテーターが先導してペルソナを作成

カスタマージャーニーマップ作成においては、ターゲットとなるペルソナの作り込みがもっとも重要です。しかし、顧客がどのようなキャラクターなのかを正しく理解できていない場合があります。ある程度理解できていたとしても、情報を出すのが難しいと感じるメンバーが出てくるのも事実です。

こうした状況を踏まえ、まずはファシリテーターの「このような想定のペルソナを作ろう」
という誘導によって、確実なペルソナ作成を狙います。

改めておさらい!ペルソナの意味やメリット、作り方から事例までまとめ

https://manamina.valuesccg.com/articles/733

商品・サービスが想定する架空の顧客像を「ペルソナ」として設定し、マーケティングに活用する事例が増えています。購買行動が多様化しペルソナが必要になった背景や利用するメリット、ペルソナの作り方からカスタマージャーニーマップで活用する方法、活用事例をまとめました。

顧客行動の収集

顧客自身は自らの購買行動を体系化して把握していません。したがって、課題に対する顧客の行動を思いつく限り付箋に書き出し、広いスペース(ホワイトボードや模造紙など)にそれを貼り出します。

その後、顧客の行動を目的別にグルーピングします(=付箋を並び替える)。これによって顧客の行動パターンがある程度見えてきます。

顧客の感情と思考の収集

顧客の行動を整理、体系化できたら、それぞれのフェーズにおける顧客の「感情」や「思考」も付箋に書き出して貼りつけていきます。

感情や思考を列挙すると、顧客との共感を深められ、打つべき施策の輪郭が次第に浮かび上がってきます。

課題のディスカッション

行動や感情などを列挙する時点で、顧客が感じている課題は数多く出てきたはずです。しかし、これらの課題に対する優先順位や解決に向けてのレベルはまちまちです。

続いてはこれらをディスカッションして整理します。その内容を再度整理したり分析し、施策のアイデアに結びつけます。

顧客行動の可視化

上記の作業で集めた情報はツールを利用して可視化します。ツールを使うと容易にビジュアライズできるだけではなく、ほかのメンバーとの共有もしやすくなります。

また、提供すべき価値のポイントがどこに存在しているかの検討材料にもしやすいというメリットがあります。

こちらで紹介しているツールは、ITに詳しいメンバーだけが扱えるというものではなく、誰もが扱いやすい特徴がありますので、ぜひ参考にしてみてください。

カスタマージャーニー作成を支援してくれるツール

https://manamina.valuesccg.com/articles/658

カスタマージャーニー作成に役立つツールには2種類あります。一つはマップの作成ツールで、もう一つは前段のデータ収集や分析を担当するツールです。 本記事ではマップ作成やその後のアクションまでサポートするSalesforce「Marketing Cloud」や「KARTE(カルテ)」、前段の顧客行動を分析する「eMark+(イーマークプラス)」などのツールを紹介します。

まとめ

カスタマジャーニーマップをワークショップ形式で作成することによって、課題の解決に必要な「ヒト」「モノ」「コト」を効率的に導き出せるほか、顧客への理解を深められることにもつながっていきます。

BtoBマーケティングでデータ起点のカスタマージャーニーづくりが効く理由とは【ネットイヤー神田×ヴァリューズ宇都宮】

https://manamina.valuesccg.com/articles/596

BtoBでもカスタマージャーニーが重要視され始めたのはなぜなのでしょうか。BtoBマーケティングにおけるカスタマージャーニー活用の理由を探るため、ネットイヤー社の神田さんとヴァリューズ社の宇都宮さんの対談模様を取材しました。

この記事のライター

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