中国人口の7割を占める「下沈(かしん)市場」。消費者の生活と購入実態とは|ウェビナーレポート

中国人口の7割を占める「下沈(かしん)市場」。消費者の生活と購入実態とは|ウェビナーレポート

中国経済といえば北京・上海・広州・シンセンといった大都市が成長を支え、どちらかといえば地方部は脇役のイメージがある人も多いのではないでしょうか。実は今、中国経済の新たなマーケットとして近年注目を浴びてきているのが、地方都市を意味する「下沈市場(かしんしじょう)」です。「下沈市場のセミナー」では下沈市場に住む消費者の特徴やアプローチの仕方について徹底解説。中国国内だけに限らずグローバル企業までもが下沈市場に注目している真実に迫ります。


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Agenda

・下沈市場のポテンシャル
・下沈市場生活者のライフスタイル
・利用メディア、購入チャネル
・商品購入時の重視点
・日本ブランドの参入余地

中国の7割を占める「下沈市場」のポテンシャル

下沈市場とは

まず「下沈(かしん)市場」とは、中国の3級都市以下の都市および農村のことを指します。「下沈=地方」という意味合いを持ちます。

下沈市場は人口母数が大きく、消費の力の向上、およびインフラ投資拡大などの理由から、中国国内だけでなくグローバル企業からも注目を浴びている市場です。「下沈市場」や「都市市場(都市等級)」という言葉は、経済専門誌やマーケティング会社により独自に規定されている都市の分類です。

それでは、下沈市場とはいったいどういった都市のことを指すのでしょうか。下の図は、中国の都市市場と下沈市場の都市が大きく2つに分かれていることを表しています。

中国市場と言えば北京、上海、広州、シンセンなどのいわゆる大都市をイメージされる方が多いのではないでしょうか。新しいマーケットの考え方では、大都市に分類される1級~3級都市は合計49都市、下沈市場と言われる3級~5級都市は合計288都市に分けられます。

そして、人口別でみると中国総人口のうち約3.9億人が都市市場、それに対して下沈市場はおおよそ2.5倍の約10.04億人です。下沈市場は中国全体の72%を占めているほど、以外にも大きなボリューム層であったと言えます。

人口が多い下沈市場ですが、「インフラ」「消費力」は都市市場と下沈市場でどういった差があるのか比較していきましょう。

下沈市場のインフラ

まずはインターネットの普及率です。

インターネット普及率は2008年から毎年右肩上がりです。2020年時点の中国全体の普及率は65.6%、農村部では46.2%と都市部に近づくほどの勢いがあります。つまり、デジタルマーケティングを行っていくうえでは、遜色のない水準となってきていると言えます。

下沈市場の消費力

続いては消費力です。

下方のグラフは人口7割を占める下沈市場が、社会に対してどれくらいのインパクトを与えるのかを表した割合です。

2018年中国全体の社会消費財小売総額は380,987億元、そのうち下沈市場が占める割合は45.1%を占めています。下沈市場の人口ボリュームと比較するとそれほど大きくはないものの、中国進出するうえで侮れない市場と言えるでしょう。

下沈市場生活者のライフスタイル

下沈市場に住む生活者はどのようなライフスタイルなのか、「町の様子」「収入・消費」「消費意識」の3つに分けて紹介していきます。

町の様子

下沈市場の4級都市でもある遼寧省(りょうねいしょう)・丹東市(たんとうし)に加え、その他の下沈市場の町の様子をみていきましょう。

中国と北朝鮮の国境にある丹東市の人口は、新潟市や浜松市とほぼ同じ80万人規模の都市です。

丹東市に進出しているグローバルの商業施設は、
・アメリカの世界最大スーパーマーケット「Walmart」
・アメリカのファストフード「ケンタッキー」
・アメリカの高級ホテル「ヒルトン」
・日本のアパレルブランド「ユニクロ」
など、世界が誇る国際ブランドが展開されています。

下方の写真は中国北部河北省・濰坊市(3級都市)、南部の広東省・陽江市(4級都市)、西部の四川省・資陽市(5級都市)の街並みですが、どれも大きな商業施設がいくつも建設され美しい景観です。このような下沈市場にスターバックスやマクドナルドの進出も予定されているほど、続々とグローバル企業が展開しています。

収入・消費

続いては、収入や消費の差をみていきましょう。下方のグラフは、世帯月収と毎月自由に使えるお金を表しています。

世帯月収の平均は都市市場が26,167元、下沈市場は20,450元、その差は約6,000元(約96,000円)と大きな差が開いているのが分かりました。一方で、毎月自由に使えるお金は都市市場が4,264元、下沈市場は3,491元、その差はわずか700元(約11,200円)しかありません。

なぜ都市市場の方が収入は高いのにも関わらず自由に使えるお金の割合が少ないのかは、不動産価格が大きな要因となっています。下沈市場は都市市場の半分以下の価格で購入できるため、賃貸やローン返済の負担が少ないためです。

消費意識

こちらは消費意識についてです。都市市場と下沈市場の消費意識は下記の順位となっています。

■都市市場の消費意識
1位:計画を立ててお金を使う(68.3%)
2位:衝動買いを控える(61.7%)
3位:なるべく節約して欲しいものにお金を惜しまない(58.7%)

■下沈市場の消費意識
1位:計画を立ててお金を払う(66.0%)
2位:趣味や欲しいものにお金を惜しまない(61.0%)
3位:なるべく節約して欲しいものにお金を惜しまない(59.0%)

2つの市場で大きく異なるのは「趣味や欲しいものにお金を惜しまない」点についてです。先ほど紹介した収入と消費を表したデータのとおり、都市市場よりも下沈市場の方が自由に使えるお金が多いため、欲しいものがあれば消費する傾向にあるということです。

利用メディア・購入チャネル

普段利用しているメディアや購入チャネルにおいても、消費者の価値観や嗜好によって利用されているものが異なります。

利用メディア

都市市場と下沈市場に住む消費者の「メッセージアプリ」や「検索サイト」はほぼ同じ結果ですが、趣味や嗜好の「動画コンテンツ」、生活に欠かせない「ECサイト」では利用メディアが異なるようです。

■都市市場が毎日利用しているメディア
・ショートムービーアプリ「抖音/TIkTok」51.3%
・ECサイト「淘宝/TAOBAO」42.0%
・ECサイト「京東/Jindong」21.7%

■下沈市場が毎日利用しているメディア
・ショートムービーアプリ「抖音/TikTok」57.3%
・ショートムービーアプリ「快手/Kuaishou」27.7%
・ECサイト「拼多多/Pinduoduo」19.3%

利用メディアの好みが異なる理由は、メディアの特徴によるものです。

まずショートムービーアプリ「Kuaishou」は、TikTokよりも以前にリリースされた下沈市場をメインターゲットとしている中国初代のアプリです。特徴としては料理や普段の生活など、身近な情報発信を行っている傾向にあります。一方で「TikTok」の場合は、海外旅行や国際結婚といったキラキラした生活情報の発信を行う傾向にあります。

購入チャネル

ECサイトの「Pinduoduo」は共同購入の仕組みを取り入れているのが特徴です。人が集まることで商品をお得に購入できるワクワク感や、独自のコミュニティ機能が下沈市場ユーザーの心に刺さっているようです。

そのため大手EC「T-MALL」や「京東」よりもよりも利用率が上回っている結果となっています。

商品購入時の重視点

商品購入時に重視している点について「化粧品」の3つのジャンルで、購買行動や意識の差を見ていきましょう。

※記事末尾のフォームからダウンロードできるセミナー資料では、「レトルト食品」や「家電」の事例もご紹介しています。ぜひご覧ください。ダウンロードはこちら

商品購入時の重視点:化粧品

下方のグラフは、直近2年で購入した化粧品ブランドの一覧です。

■都市市場の購入した化粧品
1位:資生堂(日本)28%
2位:ロレアル(フランス)24%
3位:エスティーローダー(アメリカ)23%

■下沈市場の購入した化粧品
1位:ロレアル(フランス)34%
2位:自然堂(中国)28%
3位:資生堂(日本)28%

下沈市場は古くから中国に参入した「ロレアル」や「資生堂」以外の、「自然堂」や「完美日記」といった中国国産ブランドの購入が多くみられます。一方で都市市場の場合は、中国国産ブランドより海外ブランドの方が購入率が高くなっています。

日本ブランドの参入余地

下沈市場の特徴をおさらい

日本ブランドの参入余地があるのかどうか解説していく前に、下沈市場の特徴について一度整理していきましょう。

■日本製品の販売ポテンシャルはある
購買意欲や購買力が高いため、良い商品だと認知することができれば、中国国産ブランドより価格が高くても売れるポテンシャルがある

■生活に馴染む商品の方が人気
都市市場の消費者は「おしゃれ、ステイタス、ハイブランド」といった非現実的で憧れの世界観を重視する。一方で下沈市場の消費者は「親しみやすさ、使いやすさ」といった生活に馴染みやすい商品やサービスの方が受け入れやすい傾向にある

■現状では、都市部と比べて新たな海外ブランドの存在感が低い
古くから中国市場に参入している海外製品や日本製品は、下沈市場でも既に浸透し馴染みがある。しかし、普段の生活で触れる機会が少ないため新たなブランドは認知度が低くなりがちな傾向にある

日本企業の参入余地

では、日本企業が中国へ参入する余地があるのでしょうか。下方のグラフは「コロナ収束後に最も行きたい国はどこか」というアンケートを取った結果です。

都市市場と下沈市場のどちらも、最も行きたい国に「日本」が堂々の1位となっています。
日本への親しみは都市市場と下沈市場も変わらないため、日本企業にとっては中国参入がチャンスになるのではないかと子安は語ります。

日本企業とグローバル企業の動き

ECサイトのPinduoduoで既に中国進出している「日本企業」と「グローバル企業」の3つの例を簡単に紹介します。

1つ目は歯磨き粉やハンドソープなどの日用品を販売している「ライオン」です。Pinduoduoではデンタルケア商品を中心に、既に10万件以上の販売実績があります。

2つ目は中国市場で浸透率の高い「パナソニック」です。Pinduoduoで冷蔵庫販売の店舗を開設しており、現地に特化した商店を展開しています。

3つ目はアメリカのファストフードチェーン「ケンタッキー」です。中国国内では約7,000店舗を構えるケンタッキーですが、2020年8月に初めて下沈市場の河南省・封丘県(人口約80万人)に出店しました。

ケンタッキーらしいフライドチキンやハンバーガーといった主力商品だけでなく、中国消費者のニーズに合わせた麺類やお粥などのローカライズに力を入れたことで、これだけの店舗数を獲得することに成功しました。これを機に下沈市場への出店が拡大していくと予定されています。

まとめ

今回は中国の7割を占める地方都市「下沈市場」について徹底解説しました。

下沈市場は人口ボリュームやインフラ、購買力などの基準が高いという実態をデータで見ることで、大都市だけにフォーカスするのはマーケットを狭めてしまうことだと感じるようになったのではないでしょうか。都市市場だけでなく地方都市にも目を向けていくことで、ブランドの浸透率や購買率へと繋げていくことができます。

当メディアを運営しているヴァリューズでは、日本企業の皆さまの中国・アジアでのマーケティング支援を強化しています。ご興味のある方は、ぜひご相談ください。

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この記事のライター

語学留学、国際結婚、海外移住とフィリピンに関わる暮らしをしているフリーライター。趣味は旅行で、これまでに訪れたフィリピンの島々は50以上。
インバウンド、旅行、留学、海外移住、生活雑貨関連の記事を多く執筆しています。

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