2024年の市場はどう動いた?中国美容・化粧品市場を調査

2024年の市場はどう動いた?中国美容・化粧品市場を調査

多忙な毎日を送る中国人による「怠け者経済」が話題になった2023年、新たな美容トレンドに伴って多様な製品が開発されました。そのような中、さらなる成長が見込まれた美容・化粧品市場ですが、2024年には思わぬ変化が見られました。例年通り 2024年も開催された大規模ショッピングセール・ダブルイレブンを終えた中国において、2024年には市場でどのような変化が起こっていたのかを振り返ります。


多様化する中国化粧品市場の動向

2024年中国化粧品市場全体の成長は、必ずしも順調ではありませんでした。国家統計局のデータによると、2024年上半期における化粧品類の売上総額は約2168.1億元となり、前年同期比でわずか約1%の増加に留まりました。特に2024年6月の売上総額は前年同期比14.6%減少の405億元となり、その減少幅は過去10年の同時期において最低水準にまで落ち込みました。

この原因としては、消費者の購買行動がより理性的となり、コストパフォーマンスや品質の高さを重視するようになったことが挙げられます。

艾媒諮詢のデータによると、化粧品購買の際には消費者の58.8%が製品の成分を重視し、41.4%が製品の効果を重視しているといいます。また3割以上の消費者が、製品説明の曖昧さや製品効果持続の短さを問題視しているといい、製品の品質や安全面が注目されています。以前はブランドやパッケージ、ブランドアンバサダーを務める芸能人が購買の主な決め手となっていたことに比べると、やはり理性的な消費傾向となっていると言えるでしょう。

また、化粧品市場の新たな傾向として消費者による多様なニーズが挙げられ、例えばメンズスキンケア、キッズスキンケア、高齢者によるシルバー経済などの新興市場が発展しています。

特にメンズスキンケアの成長は凄まじく、艾媒諮詢のデータによると 2023年の市場規模は、前年同期比300%増加の165.3億元に達しました。2024年もその勢いは衰えず、青眼情報のデータによると、ダブルイレブンでは500元以上のメンズスキンケア新商品売上は前年同期比300%超えの増加となりました。前瞻研究院の調べでは、メンズスキンケア市場における2021年-2026年の年平均複合成長率は15.88%に達することが予測されています。

↑Taobaoでの「メンズスキンケア」検索結果

香水の消費が停滞

一方で、売上の伸び悩みは香水市場で起きていました。FBeauty 未来迹の外部データプラットフォームの検索では、2024年1-9月のEC プラットフォームにおける香水品目の落ち込みが見られました。具体的には、Taobao・Tmall における香水/香水用品の売上総額が前年同期比14.6%減少の48 億元、Douyin における香水/練り香水の売上総額が前年同期比8.4%減少の25億元という結果になりました。

この背景にもやはり消費者による理性的な購買行動があります。消費者による贅沢品の購買意欲が下がっており、イギリス・バークレイズ銀行の分析報告によると中国高級品市場のオーガニック成長率の回復は2027年になると予想されています。

また、香水市場内のシェアには偏りも見られます。2024年9月に発表された《2024中国香水業界白皮書》によると、市場の53%を占めるトップブランドのうち国際ブランドのシェアが82%に上昇するなど、国産ブランドに圧力がかかっています。一方で、スキンケアの国産トップブランドが香水のテスト販売を始めるという動きも見られます。

例えば2024年4月頃、Shanghai Vive はフレグランスブランド・to summer とコラボしたパルファムを、また8月には PROYA がオードパルファムを売り出しました。しかし国産ブランド製品は国際ブランドよりも価格が高くなっており、例えば to summer のとある製品は100ml で1598元、melt season のとある製品は100ml で1480元となっています。

中国香水市場において、これらの高級製品に対して特に理性的な消費傾向が反映されており、またその消費主体は依然として高所得者層となっています。

美顔器に新たな規制

美顔器市場においても伸び悩みが見られました。自家用美顔器は2018年から2023年にかけて猛烈なブームが巻き起こり、青眼情報の《2023中国化粧品年鑑》によると2023年の中国美顔器市場規模は前年比70%上昇の183.7億元に達しました。

自家用美顔器は主に「LED美顔器」「導入導出美顔器」「微弱電流美顔器」「レーザー美顔器」「ラジオ波美顔器」の5 種に分類されますが、今回は特に「ラジオ波美顔器」に焦点を当てています。

ラジオ波美顔器は高価格な製品が多く、業界レポートによると54%が1500-5000元・13%が5000元以上だといいます。このように高単価で高い利益が得られるため、ラジオ波美顔器はほぼ全ての美顔器ブランドにおいて売上総額を引き上げる主要製品でした。《2023年LED 美顔器業界傾向白皮書》によると2023年Taobao・Tmall での自家美容ブランドのトップ10においても、ラジオ波美顔器が88%を占めるほどです。

しかし2024年4月、国家薬品監督管理局が新たな政策を発表し、ラジオ波美顔器は「小型家電」から「三類医療機器」となることが決まりました。つまり、ラジオ波美顔器は医療機器登録証を取得しなければ生産・販売できない製品となりました。この政策によって業界の品質レベルが向上し、違法製品や不合格製品に打撃が与えられることになります。

実際の施行は2026年4月に延期されたものの、この政策の影響は既に広がっており、FBeauty 未来迹が得たデータによると、2024年1-10月におけるオンラインでの美顔器販売について、販売量は前年同期比3.1%の増加となったものの、販売額は前年同期比36.49%の減少という大幅な落ち込みが見られました。

また消費者側も同様に、美顔器の品質に注目しています。
2024年の艾媒諮詢のデータによると、美顔器を購入する際に機能の多様性を重視する消費者が47.5%、技術の先進性を重視する消費者が42.9%を占めています。また同データによると美顔器の欠点について、安全性を問題視する消費者が53.5%、不安定な性能・不十分な効果を問題視する消費者が47.2%となりました。

↑Taobaoでの「美顔器」検索結果

ダブルイレブンでは好調な売れ行きに

消費者の1年間の動向を追うにあたって欠かせないのがダブルイレブンです。大規模ショッピングイベントのダブルイレブンは2024年、10月14日から11月11日にかけて開催されました。星図データによると、今回のダブルイレブンの総合ECプラットフォーム・ライブ配信 ECプラットフォームにおける売上総額は前年同期比 26.6%増加の14418億円となりました。

EC総合データによると、そのうちオンラインチャネルにおける化粧品の売上総額は、総合平均で前年同期比17.42%増加の1267 億元に達しました。各EC プラットフォームの化粧品売上状況は以下の通りです。Taobao・Tmall では化粧品がプラットフォーム全体の売上の50.1%を占め、その総額は前年同期比29.3%の増加となりました。Douyin では全体売上の26.7%を占めて総額は前年同期比27%の増加、JD.com では全体売上の11.7%を占めて総額は前年同期比14.1%の増加となりました。

その中でも特に注目すべき企業が PROYA です。国産化粧品ブランドである PROYA は、2024年ダブルイレブンにおいてTmall・Douyin・JD.com の3 つのプラットフォームで首位の取引額を達成しました。PROYA は高級エネルギーシリーズ・オイリー肌シリーズ・光学美白シリーズなどのトレンドカテゴリーにいち早く参入し、これらの取り組みによってセール期間中には5000万元超の売上増加を実現しました。

一方で国際ブランドの勢いも依然として衰えず、Tmallでは取引額トップ20のうち15が、Douyinでは取引額トップ10のうち5つが国際ブランドによって占められるという結果となりました。

まとめ

ここまで2024年中国美容・化粧品市場の主な動向を紹介しました。香水や美顔器を始めとして全体での伸び悩みが見られた化粧品市場では、これから消費者の多様なニーズへの対応、同時に国産ブランドのさらなる成長が求められていくでしょう。

2025年以降も、中国化粧品市場にどのような変化がもたらされるのかが注目されます。

参考URL

《2024美妆行业发展趋势报告》发布 美妆行业快速增长
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1810978421596806391&wfr=spider&for=pc
艾媒咨询|2024-2025年中国美妆行业发展现状与消费趋势报告
https://m.baidu.com/bh/m/detail/ar_9733923483746898376?data_from=lemon
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https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_28984470
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この記事のライター

早稲田大学在学中。

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