SNSで脚光を浴びる音楽プロジェクト「MAISONdes」をデータで分析。新しい音楽配信の姿を調べてみた

SNSで脚光を浴びる音楽プロジェクト「MAISONdes」をデータで分析。新しい音楽配信の姿を調べてみた

昨年、SNSを中心に「ヨワネハキ feat.和ぬか&asmi」が大ヒット。この曲を発表したMAISONdes(メゾン・デ)は、日経トレンディ「2022ヒット予測」にも選出されるなど、新時代のトレンドセッターとして今注目を集めています。今回は、そんなMAISONdesについて、検索ユーザー数の推移、年代別属性や関連ワードなどを分析。今“最もSNSで使われる”新たな音楽トレンドについて考察しました。


2021年、SNSを中心に音楽プロジェクト「MAISONdes(メゾン・デ)」の楽曲である「ヨワネハキ feat.和ぬか&asmi」が大流行しました。TikTokが発表した「2021年投稿に使われた音楽ランキング」では、BTSなどの名だたるアーティストを抑え、楽曲別・アーティスト別ともに1位を獲得。MAISONdesは、今“最もSNSで使われる楽曲”を生み出す存在として注目を集めています。

今回は、そんなMAISONdesについて、検索データを中心に分析を行いました。分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用します。

【関連】ヨルシカ・YOASOBIなど「夜好性」アーティストのヒットの要因を検索データから分析

https://manamina.valuesccg.com/articles/1368

「ヨルシカ」「YOASOBI」「ずっと真夜中でいいのに。」の3組のネットカルチャー発のアーティストについて、ヒットの理由を検索データから分析します。検索者数の推移を見ると、いずれも人気爆発とともに検索者数が急増していました。

「MAISONdes」検索者数は過去1年で3回急増

MAISONdesとは、「どこかのアパート、六畳半。誰かの歌。」というコンセプトのもと、架空のアパートの入居者同士が自由にコラボして各々の部屋から楽曲を創るという新しい形のアーティストです。2021年2月にYouTubeチャンネルを開設して以来、次々と話題の楽曲を発表しています。

MAISONdesには、オリジナル曲「なにやってもうまくいかない」がTikTokで話題となったmeiyoや変態紳士クラブのプロデューサーであるGeGなど、インターネットカルチャーで絶大な支持を集める人を中心に多くの有名アーティストが「入居」しています。これらの入居者のコラボは他ではあまり見ることができないため、MAISONdesは新たな形のアーティストとして注目を集めているのです。

では、ユーザーはMAISONdesの何に興味を持っていて、どのような傾向があるのでしょうか。検索ユーザーを分析し、MAISONdesについて様々な角度から考察していきたいと思います。

はじめに、「MAISONdes」の検索推移をみてみます。過去1年で検索数が上昇した時期が3回みられました。

「MAISONdes」検索者の検索推移

「MAISONdes」検索者の検索推移
(集計期間:2021年3月~2022年2月、対象デバイス:PC&スマートフォン)

1回目は、デビュー1カ月後の2021年3月です。話題のアーティストが多く参加したこともあり、最初の楽曲リリースからじわじわと認知を獲得していったことがうかがえます。

2回目は2021年5月。この時期は、冒頭でも触れた大ヒット曲「ヨワネハキ feat.和ぬか&asmi」のリリース時期であるため、この曲をきっかけに検索した人が多いと考えられます。

3回目は2021年10月でした。同月、MAISONdesではすでに発表された楽曲をリミックスする新シリーズ「Re: MAISONdes」がスタート。第一弾として「ダンス・ダンス・ダダ feat. EMA, たなか(Misumi Remix)」がリリースされていました。また、「ヨワネハキ feat.和ぬか&asmi」の音源がTikTokで流行り始めたのもちょうどこの時期であるため、検索数が増加した原因の1つであると考えられます。

その後もピーク時に近い検索数を維持しており、デビューから1年経ってじわじわと注目度が上がってきている様子がうかがえます。

検索ユーザー分析でみる「MAISONdes」

興味を持っているユーザーの姿をより鮮明にするため、次にユーザー属性を分析してみましょう。まず年代別の構成比を見ると、やはりSNSをよく利用する20代の割合が最も高い結果となりました。

「MAISONdes」検索者の年代比

「MAISONdes」検索者の年代比
(集計期間:2021年3月~2022年2月、対象デバイス:PC&スマートフォン)

ただし、ネット利用者のボリュームの多い40代も、20代に次いで検索割合が高いことがわかります。若者だけでなく、幅広い層から注目されていることがうかがえます。

次に検索者の性別比では男性が約72%と、女性割合よりも断然多いことがわかりました。

「MAISONdes」検索者の性別比

「MAISONdes」検索者の性別比
(集計期間:2021年3月~2022年2月、対象デバイス:PC&スマートフォン)

TikTokで流行「ヨワネハキ」がMAISONdesを有名に

次に、MAISONdesの検索キーワードをみていきます。

「MAISONdes」検索者の検索キーワード

「MAISONdes」検索者の検索キーワード
(集計期間:2021年3月~2022年2月、対象デバイス:PC&スマートフォン)

「MAISONdesヨワネハキ」「MAISONdes夏風に溶ける」など、楽曲名とともに検索するケースが多い結果となりました。アーティストそのものよりも、その楽曲が検索者の興味の対象となっていると考えることができます。とはいえ、「MAISONdes」「MAISONdes とは」といった検索もみられることから、この新しいプロジェクト自体に興味を示している人も一定数いることがわかります。

季節ごとのトレンド把握が可能な季節分析も行ってみましょう。今回は3カ月ごとに掛け合わせワードを集計しました。

「MAISONdes」検索者の季節分析

「MAISONdes」検索者の季節分析
(集計期間:2021年3月~2022年2月、対象デバイス:PC&スマートフォン)

デビュー後約半年間は、「MAISONdes」単体での検索が多いことがわかりました。また、2021年9月~11月には、他の時期に比べて大ヒット曲「ヨワネハキ」との検索が極めて多い結果となりました。

「ヨワネハキ」のリリース自体は5月であるため、その後TikTokをはじめとしたSNSでの流行を経て、検索数が伸びたと考えられます。最新の2021年12月~2022年2月の区分でも「ヨワネハキ」というワードがみられることから、この曲のヒットがMAISONdesを知るきっかけとなっていることがうかがえます。

【関連】動画配信サービスのユーザー数はコロナ影響で伸びたのか?市場全体と各サービスの動向を調査

https://manamina.valuesccg.com/articles/1667

Amazon prime videoやNetflixといった動画配信サービスのユーザー動向とは。海外発のサービスだけでなく、TVerやGyao、Huluといった日本発のサービス、ディズニーが運営するDisney+など、動画配信サービスの種類は拡大。本記事では動画配信サービスのユーザー規模のコロナ影響による変化や、サービスごとのユーザー属性の違いについて調査します。

まとめ

今回は、今話題の「MAISONdes」について検索ユーザーのデータを用いて様々な角度から分析を行いました。その結果、MAISONdesについて語る上で「ヨワネハキ」の大ヒットが重要となってくることがわかりました。

季節分析で「ヨワネハキ」が特徴的なキーワードとして挙げられていたことや、この曲がSNS上で流行し始めた頃からMAISONdesの検索数が伸びていることがその根拠として挙げられます。また、MAISONdesの検索者は、そのアーティスト自体よりも、その楽曲に強い興味を示していることもわかりました。MAISONdesの今後の活躍に要注目です。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

大学では広報PR・広告を専攻。2022年の春からは新卒としてヴァリューズに入社。

関連する投稿


2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

コンテンツには事欠かない現代ですが、話題を呼ぶ人気作には、どのような「勝ちパターン」が存在するのでしょうか。2024年に放送された新規アニメ「薬屋のひとりごと」「逃げ上手の若君」「怪獣8号」「ダンジョン飯」に、11月に劇場版が公開された「進撃の巨人」を加えて、消費者の関心を調査しました。


2024年トレンド総決算!6つのテーマのマーケティング調査で振り返る

2024年トレンド総決算!6つのテーマのマーケティング調査で振り返る

マナミナでは、国内最大規模の消費者オンライン行動データを活用して、世の中のトレンドを調査しています。2024年もさまざまなトレンドを記事として取り上げてきました。今回は調査記事の総集編として、2024年のトレンドを振り返ります。


2024年のトレンドワードまとめ!新語・流行語大賞の「ふてほど」ほか、50-50、新NISAなど

2024年のトレンドワードまとめ!新語・流行語大賞の「ふてほど」ほか、50-50、新NISAなど

パリ2024オリンピックや衆議院選挙が行われた2024年は、どのような1年だったのでしょうか?2024年新語・流行語大賞の分析とヴァリューズで分析した今年1年間の週間検索キーワードランキングから2024年のトレンドを分析しました。


新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

リリースされてから、Z世代を中心に強い支持を集めている「BeReal(ビーリアル)」。2023年初頭から人気を集め始めていますが、いまだにその人気は衰えていません。2024年7月には、日本で広告事業を本格化しはじめたことが大きな話題になりました。今回は、BeRealの最新動向をデータを用いて分析するとともに、広告ビジネスの可能性を調査していきます。


日本のLDHとタイのGMMが一丸となって誕生した新会社G&LFH 背景とトレンドを解説

日本のLDHとタイのGMMが一丸となって誕生した新会社G&LFH 背景とトレンドを解説

2024年6月5日、EXILEを輩出した音楽事務所LDHがタイ大手音楽レーベルGMM MUSICと新エンターテイメント会社【G&LDH】開設を発表しました。タイ最大のメディア企業GMM GRAMMYの子会社であるGMM MUSICは、タイの音楽産業を牽引する存在です。 この合弁会社の設立により、両国の音楽市場の強化と相互の文化理解が期待されています。 本記事では、タイと日本の音楽文化の違いや、音楽がビジネスに与える影響、そしてG&LDH設立の背景を探っていきます。


最新の投稿


マイクに向かって喋るだけで、誰でも萌え声やイケボ風に!picon、スマホで使えるAIリアルタイムボイスチェンジャーをリリース

マイクに向かって喋るだけで、誰でも萌え声やイケボ風に!picon、スマホで使えるAIリアルタイムボイスチェンジャーをリリース

株式会社piconは、AIリアルタイムボイスチェンジャーの「ボイミー」をリリースしたことを発表しました。


コアウェブバイタル(core web vitals)とは?SEO評価への影響や改善方法を解説

コアウェブバイタル(core web vitals)とは?SEO評価への影響や改善方法を解説

ユーザーエクスペリエンス(UX)を向上させるうえで重要な指標である「コアウェブバイタル(core web vitals)」。この記事では、コアウェブバイタルとはなにか、構成する3つの指標、コアウェブバイタルがSEOに与える影響、スコアの確認方法、改善方法などについて詳しく解説します。


6割以上が年末年始のマーケティング施策を行う!消費者の関心が高まる年末年始のアプローチに効果期待【NEXER調査】

6割以上が年末年始のマーケティング施策を行う!消費者の関心が高まる年末年始のアプローチに効果期待【NEXER調査】

株式会社NEXERは、マーケティング業務に携わった経験がある全国の男女を対象に、「年末年始のマーケティング施策」についてのアンケートを実施し、結果を公開しました。


インバウンドマーケティングで成功している企業が実施している施策ベスト3は「SNS」「自社サイト運営」「SEO」【PRIZMA調査】

インバウンドマーケティングで成功している企業が実施している施策ベスト3は「SNS」「自社サイト運営」「SEO」【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、四半期以上商談数が伸びている企業で、3年以上インバウンド施策に取り組むマーケターを対象に、「商談数が伸びている企業におけるインバウンドマーケティングの実態調査」を実施し、結果を公開しました。


"飲みづらい"のに人気な「ゆっくりビアグラス」誕生秘話と想いに迫る

"飲みづらい"のに人気な「ゆっくりビアグラス」誕生秘話と想いに迫る

クラフトビールメーカー、ヤッホーブルーイングが手がけた"飲みづらい"グラス「ゆっくりビアグラス」。ビール好きからは疑問の声が上がりそうな飲みづらいグラスは、メディアやSNSで大きな反響を呼んだほか、「プレスリリースアワード2024」においてもインフルエンス賞(※)を受賞しました。社会のニーズを的確にとらえ、人々の共感を呼び、形にしていく同社の取り組みについて、河津さんと渡部さんにうかがいました。<br> <br> ※株式会社PR TIMESが開催している「プレスリリースアワード」の賞の一つ。発信と活用により社内外へもっとも広く好意的な影響をもたらしたプレスリリースに贈られる賞


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ