動画配信サービスのユーザー数はコロナ影響で伸びたのか?市場全体と各サービスの動向を調査

動画配信サービスのユーザー数はコロナ影響で伸びたのか?市場全体と各サービスの動向を調査

Amazon prime videoやNetflixといった動画配信サービスのユーザー動向とは。海外発のサービスだけでなく、TVerやGyao、Huluといった日本発のサービス、ディズニーが運営するDisney+など、動画配信サービスの種類は拡大。本記事では動画配信サービスのユーザー規模のコロナ影響による変化や、サービスごとのユーザー属性の違いについて調査します。


動画配信サービス市場全体のユーザー規模は?

まずは動画配信サービス業界全体の状況に注目してみましょう。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用します。

本ツールの「カスタム業界」機能を用いて、Netflix、Hulu、Disney+、TVer、GYAO!、dTV、U-NEXT、楽天TV、DAZN、J SPORTSの10サービスのサイトを合算したものを動画配信サービス全体のユーザー数と見立て、そのユーザー数推移を算出しました。下記のグラフをご覧ください。

動画配信サービスのユーザー数推移

動画配信サービスのユーザー数推移
(集計期間:2019年11月~2021年12月、デバイス:PC&スマートフォン、使用ツール:Dockpit)

上記の推移グラフより、市場全体のユーザー数はおよそ2,000万人。推移の傾向として、2019年から右肩上がりで増加していることが分かります。まず2019年12月を境にユーザー数が徐々に減少したのち、2020年2月から再び増加し、5月に1回目のピークを迎えています。3月頃から国内でのコロナ感染者の話題が大きくなり、5月末に1回目の緊急事態宣言が解除されているため、コロナ禍でおうち時間が増えた影響だと考えられます。

その次に目立つピークは2021年1月ですが、これは2回目の緊急事態宣言期間と重なります。3回目以降の緊急事態宣言と重なる大きなピークは見られませんが、2019年11月段階で業界全体で約1,500万人だったユーザー数が2021年12月には約2,150万人となっており、全体としてユーザー数は増加し続けています。

では、ユーザーはどういった検索行動から各サービスのサイトを訪れているのでしょうか。各サイトの流入キーワードを合算してランキングしたものが下の表になります。

動画配信サービスの流入キーワードランキング

動画配信サービスの流入キーワードランキング
(集計期間:2019年11月~2021年12月、デバイス:PC&スマートフォン、使用ツール:Dockpit)

キーワードはすべて「TVer」や「GYAO」といったブランド名を検索するものになっています。テレビCMなど広告でサービス名の認知自体は広がっているため、ブランド名を指名した検索が多くなっていると言えそうです。

また、ブランド名での検索を除いたキーワードのランキングは次のようになっています。

動画配信サービスの流入キーワードランキング(ブランド名検索を除く)

動画配信サービスの流入キーワードランキング(ブランド名検索を除く)
(集計期間:2019年11月~2021年12月、デバイス:PC&スマートフォン、使用ツール:Dockpit)

「見逃し」や「無料」キーワードを含むものが上位にランクインしており、ユーザーのニーズが伺えます。他には「愛の不時着」「全裸監督」「イカゲーム」といった人気作品名での検索もランクインしています。

ブランド指名以外での検索については、気になっている特定の作品を見るための検索と、様々なドラマや映画を見るための検索の2つに大きく分けられそうです。

▶関連記事:コロナ感染拡大前~現在までのメディア接触動向変化を公開。新しい情報源・躍進したSNSなどメディア変化を徹底分析

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第一弾「生活変化編」に続き、今回第二弾「メディア編」として、感染拡大前~コロナ1年目~コロナ2年目現在までの各メディアへの接触頻度・SNSやアプリの使い方などの変化を公開。なおアンケート調査に加え、ヴァリューズが独自保有する消費者行動ログを用いての分析も実施しています。

TVerが過去2年で躍進!MAUは2倍近く増加

続いて、動画配信サービスを「Netflix」「Hulu」「Disney+」「TVer」「GYAO!」のエンタメ動画系のサービスと、「DAZN」「J SPORTS」のスポーツ動画系サービスの2つに分けて詳細を見ていきます。またその際、Amazon prime videoのアプリユーザーとも比較を行います。

まず、エンタメ動画系サービスについてユーザー数の推移を見てみましょう。

Netflix、Hulu、Disney+、TVer、Gyao!のサイトユーザー数推移

Netflix、Hulu、Disney+、TVer、GYAO!のサイトユーザー数推移
(集計期間:2019年11月~2021年12月、デバイス:PC&スマートフォン、使用ツール:Dockpit)

エンタメ動画系のサービスでは、2019年11月の段階ではGYAO!が最もユーザー数が多かったものの、2020年6月からTVerのユーザー数が急激に増加し、2021年12月時点ではTVerがこのなかで首位となっています。またDisney+も、リリースされた2020年6月から徐々にユーザー数を伸ばしていることが分かりました。

一方、Amazon Prime Videoのアプリユーザーの推移はどうなっているのでしょうか。

Amazon prime videoのアプリユーザー数推移

Amazon prime videoのアプリユーザー数推移
(集計期間:2019年11月~2021年12月、デバイス:スマートフォン、使用ツール:eMark+)

アプリでの数字のため単純な比較はできませんが、Amazon prime videoは全期間をとおしてGYAO!やTVerよりもユーザー数が多く、2021年12月時点では月間約1,100万人のユーザーがいると分かります。推移としては2020年2月から5月にかけて大きく増加しましたが、その後は横ばいとなっています。

次にスポーツ動画系サービスのユーザー数推移を見てみましょう。

DAZN、J SPORTSのサイトユーザー数推移

DAZN、J SPORTSのサイトユーザー数推移
(集計期間:2019年11月~2021年12月、デバイス:PC&スマートフォン、使用ツール:Dockpit)

スポーツ動画系のサービスでは、DAZNが2020年5月を境に大きくユーザー数を伸ばし、J SPORTSと大きな差がついています。

動画配信サービス全体としては右肩上がりにユーザーが増加していましたが、各サービスごとに見るとGYAO!やHulu、J SPORTSはほとんど横ばいになっており、大きな増加が見られません。市場自体はコロナ禍も追い風となり拡大しているため、各サービス間でのユーザー獲得競争が激しくなっていると言えそうです。

【媒体調査】Yahoo!系の動画サービス「GYAO!」のユーザー像を媒体資料×Webログデータから読み解く

https://manamina.valuesccg.com/articles/1459

月間1,550万UB(ユニークブラウザ)を誇るYahoo!の動画配信サービスである「GYAO!」。昨今のVOD市場の拡大も後押しし多くのユーザーを集める「GYAO!」について、媒体資料とWeb行動ログデータを用いて利用者の嗜好や興味を分析、メディアの特徴を探ります。

Netflixでは20代ユーザーが特徴的に多い

次にユーザー属性についてです。まずはエンタメ動画系サービスの性別のデモグラフィックデータを見てみましょう。

Netflix、Hulu、Disney+、TVer、GYAO!ユーザーの男女比

Netflix、Hulu、Disney+、TVer、GYAO!ユーザーの男女比
(集計期間:2019年11月~2021年12月、デバイス:PC&スマートフォン、使用ツール:Dockpit)

エンタメ動画系サービスの男女比については、NetflixとGYAO!で残りの3サービスと比較して男性の比率が5%ほど高くなっています

年代別ではどうでしょうか。

Netflix、Hulu、Disney+、TVer、GYAO!ユーザーの年代構成比

Netflix、Hulu、Disney+、TVer、GYAO!ユーザーの年代構成比
(集計期間:2019年11月~2021年12月、デバイス:PC&スマートフォン、使用ツール:Dockpit)

年代構成比としては、Netflixで20代の割合が飛びぬけて高い点が特徴的です。Hulu、TVer、GYAO!については概ねネット利用者全体の構成比と一致していました。Disney+はそれに比べてやや30代の割合が高く、40代の割合が低くなっています。

次に、スポーツ動画系サービスのユーザー属性も見てみましょう。

DAZN、J SPORTSユーザーの男女比

DAZN、J SPORTSユーザーの男女比
(集計期間:2019年11月~2021年12月、デバイス:PC&スマートフォン、使用ツール:Dockpit)

DAZN、J SPORTSユーザーの年代構成比

DAZN、J SPORTSユーザーの年代構成比
(集計期間:2019年11月~2021年12月、デバイス:PC&スマートフォン、使用ツール:Dockpit)

スポーツ動画系サービスの男女比は、どちらも同じような割合となっていますが、エンタメ動画系サービスと比較すると20%ほど男性比率が高くなっています。スポーツの動画への興味が強いユーザーは男性の方がかなり多いことがわかります。

年代構成比については、DAZNはネット利用者全体と概ね同じ構成比で、J SPORTSは40-50代の比率が高くなっています。エンタメ動画系サービスのユーザーと比較すると、スポーツ動画系サービスのユーザーはやや年齢層が高いと言えます。

『バチェラー・ジャパン』待望の新作に歓喜!バチェラー女子をデータから徹底分析

https://manamina.valuesccg.com/articles/1565

婚活サバイバル番組『バチェラー・ジャパン』、待望のシーズン4が、11月25日(木)22時よりAmazon Prime Videoにて独占配信開始されます。シーズン4では、男性版『バチェラー・ジャパン』である『バチェロレッテ・ジャパン』のシーズン1で、最後の2名に選ばれた実業家の黄皓(こうこう)氏がバチェラーに抜擢され話題に。今回は番組の配信に先立ち、番組人気の実態やファン層など、“バチェラー女子”の深層心理をデータから紐解きます。

まとめ

今回の記事では動画配信サービスについて、業界全体と、エンタメ系/スポーツ系での分類の2つの観点から分析を行いました。コロナ禍の影響もあり、動画配信サービスの全体としての市場は大きくなっており、そのなかでも特にAmazon prime video、GYAO!、TVerの3つのサービスのユーザー数が高い割合を占めることがわかりました。

サービスごとのユーザー数推移に着目すると、GYAO!やHulu、J SPORTSはほとんど横ばいになっており大きな増加が見られませんでした。市場自体はコロナ禍も追い風となり拡大しているため、各サービス間でのユーザー獲得競争が激しくなっていると言えそうです。

今後も動画配信サービスの市場では規模の拡大やユーザー獲得競争が想定されます。ぜひ今回の記事を今後のご参考にしていただければと思います。

▼今回の分析には主にWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

【無料ダウンロード】総ページ数150P以上のライフスタイル・消費トレンドレポート|デジタル・トレンド白書2024

https://manamina.valuesccg.com/articles/3792

ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。その中から注目領域の調査・コラムをピックアップし、白書として収録。2021年の発行から4回目を迎える「デジタル・トレンド白書2024」は、Z世代トレンド・SNS動向編、ライフスタイル・消費トレンド編の2部構成になっています。(「ライフスタイル・消費トレンド編」ページ数|153P)

この記事のライター

2022年の春から、新卒としてヴァリューズに入社。

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