メタバースとは
メタバースとは、ギリシア語で「越える」の意の接頭語「Meta-」と、現実事象をあらわす「Universe」を融合させた造語です。
現時点ではメタバースについてまだ公式的、統一された定義はありませんが、ここでは、メタバースを以下のように定義します。
メタバースとは、人々があたかも現実のような「パーセプション」を実現でき、リアルタイム・参加型の「ソーシャル性」を持ち、オープンでありながら、独立の経済・価値を保障した「エコシステム」を構築できている「場=仮想空間」。
パーセプションは、人が世界に対する感知・認識。ソーシャル性は社交性、「エコシステム」は経済・価値システムのことです。
話題のメタバースとは?定義と歴史|メタバースの現在地と未来を考える
https://manamina.valuesccg.com/articles/14585G時代が本格的に到来し超高速の大容量通信が実現。新たなコミュニケーションの手段として 「XR(XReality:VR、AR、MRなどの総称)」への注目が高まっています。経営コンサルタントで上級VR技術者としてXRの市場調査や新規事業創成支援等の活動を行っているパトリック・ショウさんが、XRビジネスの今と未来を解説する連載企画がスタート。初回テーマは今後のテックトレンドとしてマーケターも見逃せない「メタバース」です。メタバースとはどんなもので、近年どのように進化しているのでしょうか。
■各社が投資!Facebookがメタ社に社名変更
メタバースがどれほど注目を集めているか、わかりやすい例はFacebook社が「Meta(メタ)」に社名を変更したことでしょう。これによって、メタバースの構築への注力を更に強化する方向性を市場に示しました。
メタバースに必要なハードウェア開発への積極的投資、メタバースの経済エコシステムの構築として、独自暗号通貨プロジェクトも開始し、今までSFの作品の中でしか存在しなかった、リアルの未来において曖昧でイメージしにくくかったメタバースの具体的な形を、世の中に提示しています。
メタバースは意外と身近なもの?
唐突に現れ、多くのメディアで「メタバース」というワードが登場するようになったため、新しい言葉、概念のように感じられるかもしれませんが、じつはメタバースは意外と古いものなのです。
■メタバースの歴史
「メタバース」という言葉が初めて誕生したのは、1992年にアメリカのSF作家Neal Stephensonによって発表されたSF小説「スノウ・クラッシュ(Snow Crash)」です。
小説の中で描かれた仮想空間(Metaverse)は、全周65,536kmにも及ぶ黒い球体の惑星を走る、幅100mの道路(The Street)に沿って開発された巨大な都市。メタバースにおける土地を購入できたり、建物の建築も可能です。また、メタバースに接続したユーザーは様々な形態を持った化身=「アバター(avatar)」を通して登場できる、というのが本書の内容です。
そして、スノウ・クラッシュに影響を受けたアメリカのLinden Lab社が2003年に「セカンドライフ(second Life)」という仮想空間をリリースしました。スノウ・クラッシュ同様に仮想空間での土地の売買や分譲住宅の建設なども行え、このセカンドライフで巨額の利益を得たユーザーの出現によって、セカンドライフは加熱。これがメタバースの最初のブームと言えます。
セカンドライフ内でのインフレの発生、未成熟なハードウェアという要因で、このメタバースブームは2009年頃に沈静化しました。そこからおよそ10年後、ハードウェアの進化などを踏まえ、あらためてメタバースの波が訪れています。
■すでにあるメタバースの事例
メタバースは近未来的な話で自分にはまだ縁がないと思われるかもしれませんが、すでにメタバースを利用したゲームなどがリリースされています。したがって、知らぬ間にメタバースに触れていた、というケースは少なくないでしょう。
任天堂の「あつまれ どうぶつの森」も、仮想空間でアバターで活動し、ほかのキャラクターやユーザーとコミュニケーションできるメタバース的要素を持っています。
・Fortnight(フォートナイト)
「Fortnight(フォートナイト)」はEpic Gmes社がリリースする、オンラインゲームです。Youtubeにプレイ動画が多くアップロードされているので、ゲームに明るくない方でもその名前やゲーム画面などを一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?対戦のほか、島づくりやコンサートなどが楽しめるのが特徴です。
・Decentraland(ディセントラランド)
メタバースプラットフォーム「Decentraland(ディセントラランド)」は、仮想空間に「仮想通貨」を組み合わせたものです。ユーザーは仮想通貨ウォレット(「MetaMask<メタマスク>」など)の接続によって、仮想空間内でのアイテムの売買、カジノ、そして土地の売買を行えます。
メタバースを利用するのに必要なもの
スマホやタブレット、PCなどのモニターでもメタバースにアクセスできますが、360度の没入感は得られません。メタバースをフルに体感=360度の没入感を味わうには「VRヘッドセット」「ARヘッドセット」が必須です。
VRヘッドセットとは、ディスプレイに2つの画像を表示し、装置内にあるレンズを通すことで1つの画像に見えるという錯視を利用したものです。比較的安価な製品が多いのが特徴です。ちなみに、VRヘッドセットの代表的な製品はこちらです。
ARヘッドセットとは、AR=拡張現実のとおり、現実に存在するものに対してデジタル情報を重ねて表示するものです。しかし、まだ高価で一般的ではないのが現実です。
メタバースとVRの違い
VR=バーチャルリアリティは、仮想現実としてすでに浸透しているワードですが、こちらは厳密には「仮想現実を体験できるツール、デバイス」を指す言葉なので、メタバースとは若干異なる概念となります。また、VRは個人が仮想の映像や情景、空間などを体験するためのもので、他のユーザーとの交流は考慮されていないのが特徴です。
その一方、メタバースはアバターを用いて他のユーザーとの交流も可能な「空間」である点が、ツールやデバイスといった技術を指すVRとの最大の相違点です。そして、メタバースはコミュニケーションを重視している点もVRとは異なる点となります。
メタバースの利用例
先述した「Fortnight(フォートナイト)」など、ゲームやイベントなどの利用が多くなっていますが、バーチャルライブ(これはFortnight内でも行われています)や「メタパ」などのバーチャルショッピングモールも登場しています。こちらは単に買い物ができるだけではなく、遠隔地にいる友人、家族と一緒にバーチャルの店舗で買い物ができるのがポイントです。
こうしたアトラクティブなものばかりではなく、メタバースを使ったオンライン会議「Horizon Workrooms」も登場しています。オンライン会議と言えば「Zoom」が有名ですが、Horizon Workroomsとの違いは、没入感から来る「臨場感」にあるようです。このようなオンライン会議のほか、「oVice」といったバーチャルワークスペースも注目されています。
メタバースのメリット&デメリット
メタバースがもたらすメリットやデメリットはどのようなものが考えられるのかをまとめました。
■メタバースのメリット
メタバースとVRの違いでも紹介しましたが、メタバースはコミュニケーションを重視するシステムです。アバターを介することで世界中の人が同じメタバースの空間に集まってコミュニケーションを取れるので、コンサートなどのイベントの在り方を変えられます。
コミュニケーション、コミュニティという面から、より濃いファンに向けてダイレクトなPR活動を行えるのもメリットです。そして、NFT作品の販売といった新たなビジネスチャンスが出てきます。ビジネスチャンスにおいては、メタバース内の土地取引も注目を集めています。
■メタバースのデメリット
ヘッドマウントディスプレイはまだ大げさで、手軽に扱えるものではありません。ということで、まずは気軽にメタバースの世界に入り込める機器が充実していないのがデメリットのひとつとして挙げられます。
そして、のめり込みすぎて仮想空間と現実の区別を付けづらくなる、ゲーム依存症ならぬ「メタバース依存症」の懸念があります。メタバース依存症と併せて、現実世界でのコミュニケーション能力の低下も危惧されます。
そして、先述の「Decentraland(ディセントラランド)」で紹介したように、メタバースは仮想通貨ウォレットと紐付けての利用も盛んです。ここでは、ウォレットがハッキングされてしまう危険性を考慮しなければなりません。
メタバースと投資の関連性
メタバースに関連する市場は、2020年に自転でおよそ5.5兆円に達しているとエマージェン・リサーチ社は予測しています。同社は2028年にはメタバース市場は100兆円規模にまで拡大すると予測しています。
このような現実世界での経済発展もさることながら、「Decentraland(ディセントラランド)」での投資や投機といった経済活動にも注目が集まっています。
メタバース市場における代表的な企業・プレイヤー(後編)|メタバースの現在地と未来を考える
https://manamina.valuesccg.com/articles/1575「Facebook」が社名を「Meta」に変更するなど、いまテックトレンドとして注目度が急速に高まっている「メタバース」。経営コンサルタントで上級VR技術者としてXR(XReality:VR、AR、MRなどの総称)の市場調査や新規事業創成支援等の活動を行っているパトリック・ショウさんが、XRビジネスの今と未来を解説するこちらの連載企画では、前回に続き、メタバース市場の主要企業やプレイヤーを紹介していきます。後編となる本稿では、ブロックチェーン系の新興テック企業をご紹介します。
まとめ
新型コロナウイルスの影響によって非対面のコミュニケーションが求められるようになったことなど、多くの要因が重なり少しずつ積み上げられてきた「メタバース」の世界が、いよいよ本格化しようとしています。
メタバースの市場は、まだ注力が始まったフェーズです。盛り上がりが期待されていますが、確定事項ではありません。メタバースの動向はつねにチェックし、その状況を冷静に見極めて自社のビジネスと結びつけることをおすすめします。
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