スパイスカレーはコロナ禍にブームが加速
まずはスパイスカレーの検索者データを見てみましょう。以下は「スパイスカレー」と検索したユーザー数の過去2年の推移データとなっています。
「スパイスカレー」検索ユーザー数推移
(集計期間:2020年6月〜2022年5月、デバイス:PC&スマートフォン)
ユーザー数推移では何度か山が来ている印象ですが、特に2021年1月~7月にかけて検索ユーザー数が大きく増加していたことが分かります。また、直近の2022年5月でも上昇傾向にあることがわかりました。
次に、「スパイスカレー」検索者の流入ページを見てみましょう。
「スパイスカレー」流入ページ
(集計期間:2020年6月〜2022年5月、デバイス:PC&スマートフォン)
流入ページを見ると、レシピや作り方を検索している人が多いことがわかります。自宅で食事をする機会が増え、またテレワークなどで時間ができたことから、それまで料理をあまりしなかったけれど手軽にオリジナリティを出しやすい「スパイスカレー」に興味を持った人が増えたことが予想できます。
さらに、スパイスカレーの人気を後押しした別の要因もあります。コロナ禍で飲食店が苦戦する中、注目を浴びた「間借り」という営業スタイルです。
それまでもコロナ前の2019年頃からじわじわと増加傾向にあった「間借り」という飲食店の運営スタイル。夜にしか営業していないバーの店内を昼間に格安の家賃で借りてランチ営業をしたり、本屋など異業種の店内でカフェなどを営業したりするスタイルです。「固定費を浮かせることができる」「保証料などが不要で初期投資を抑えられる」とこれから飲食店を始めたい人のお試し営業手段としても増えていました。
特にカレーは材料費が高額でなく、大掛かりな調理設備なども不要で鍋さえあれば作れるうえにオリジナリティを出しやすいことから「間借りカレー屋」は急増。
そこから人気に火が付き、大人気店となったお店も多い様子。さらにSNSへの投稿が日常となった今、「映える」スパイスカレーはSNSへの投稿数も多く、投稿を見て食べたくなる→お店を訪れ(あるいは自分で作り)投稿する→見た人がまた食べたくなる→……というサイクルが生まれているのではないでしょうか。その影響か、大阪で人気だったスパイスカレー屋がここ数年で80軒以上も東京進出を果たしたと言われています。
さらに検索データを見ていると、妙に気になるワードが頻出していることに気づきました。
「スパイスカレー」流入ページ
(集計期間:2020年6月〜2022年5月、デバイス:PC&スマートフォン)
「スパイスカレー」季節比較
(集計期間:2020年6月〜2022年5月、デバイス:PC&スマートフォン)
東大院生のスパイス料理研究家である「印度カリー子」さんという存在です。
大学在学中からカレーのレシピを紹介したりオリジナルスパイスセットの販売をしたりするなど、カレーに関する活動を幅広く行っていた印度カリー子さん。東京大学大学院進学後は「東大院生のスパイス料理研究家」としても大きな話題となり、メディアにも多く登場していました。
彼女が提唱するのは、「スパイスが3種類あればスパイスカレーは簡単に作れる」という考え方。これが人々の心を掴み、彼女のレシピはコロナ禍でスパイスカレーブームの後押しに!
これまで「スパイスカレーはたくさんスパイスを揃えて複雑なことをしないと作れなそう」というイメージを一気にくつがえしたことで、様々な雑誌・Web媒体・テレビなどでひっぱりだこに。そんな印度カリー子さんの存在がスパイスカレー作りのハードルを下げてくれたこともブームの要因のひとつと言えるでしょう。
【関連記事】食のアーリーアダプターとアーリーマジョリティの違いとは?キャズムを超えたマリトッツォのデータから考察
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クラフトコーラはノンアルコール市場の拡大により注目が高まる
続いてはクラフトコーラについてみていきましょう。そもそもクラフトコーラとはなにか?と疑問に思う方も多いかもしれませんが、明確な定義はありません。コーラの定義は厳密には「コーラナッツという木の実を使用している飲み物」ということになるのですが、実際には現在コーラとして販売されているものにはコーラナッツはほとんど使用されていません。コーラ専門情報メディア「Cola-Fan」編集長を務める空水りょーすけ氏は「結局コーラと名乗っているものがコーラ」とお話されているほど、その存在は曖昧。
しかし、近年注目が集まっているクラフトコーラの傾向を見ると「スパイスを多く使用している」「砂糖は(ほとんど)使用していない」「ノンアルコールながら独自の味わいを追求している」と健康志向のものが人気を集めており、特にその先駆けといわれている「伊良コーラ」が人気です。
そんなクラフトコーラの検索ユーザー数を見てみると……
「クラフトコーラ」検索ユーザー数推移
(集計期間:2020年6月〜2022年5月、デバイス:PC&スマートフォン)
2021年の夏頃から急激に検索数が増えています。なぜこのタイミングで急激に注目が集まったのでしょうか。要因を調べるため、「クラフトコーラ」の検索ワードランキングを調べてみます。
「クラフトコーラ」検索キーワード
(集計期間:2020年6月〜2022年5月、デバイス:PC&スマートフォン)
検索ワードを見ると、大手メーカーがこぞってクラフトコーラを販売していたことがわかります。実は2021年6月頃から、カルディーコーヒーファーム、成城石井、ポッカサッポロフード&ビバレッジ、ペプシコーラなど大手メーカーから続々とクラフトコーラが発売されました。
特にカルディのクラフトコーラは、「手に入らない!」と騒がれるほど注目を集めていました。
さらに、ブームになるものは必ずこの番組が影響を与えているのでは……というほど絶大なる影響力を持つ「マツコの知らない世界」でもクラフトコーラを紹介していました。
先ほどの検索ユーザー数が急増した箇所は、このように「カルディ・成城石井・ポッカ・三ツ矢サイダーからクラフトコーラが発売されたタイミング」、そして「マツコの知らない世界が放送されたタイミング」でした。
「クラフトコーラ」検索ユーザー数推移
(集計期間:2020年6月〜2022年5月、デバイス:PC&スマートフォン)
とはいえ、なぜここまで注目が集まったのか……ここ数年の世の中の流れも大きな要因となっています。
「若者のアルコール離れ」などという言い方もされますが、アルコールを体質や病気などではなく、飲めるのに敢えて飲まない人が増えています。2019年にサントリーが行った調査によると、ノンアルコール市場は2009年から2019年の10年間で4倍以上にも拡大しているとの結果が。こうした敢えてアルコールを飲まない人のことを「ソーバーキュリアス」と呼ぶなど、その人口は増えてきています。
「ソーバーキュリアス」検索ユーザー数推移
(集計期間:2020年6月〜2022年5月、デバイス:PC&スマートフォン)
「ソーバーキュリアス」の検索ユーザー数を調べてみると、クラフトコーラが注目され始めたタイミングで一定の伸びが見られました。クラフトコーラのようにノンアルコールでも飲料として楽しめるものが増えてきたことは、ソーバーキュリアスの人にとっても朗報でしょう。
クラフトコーラは「ネクスト・スパイスカレー」になるのか?
さて、そんなクラフトコーラですが、スパイスカレーほどのブームを巻き起こすことができるのでしょうか?かなり注目されているとはいえ、まだまだ未知数な存在ではあります。
「スパイスカレーvsクラフトコーラ」検索ユーザー数推移
(集計期間:2020年6月〜2022年5月、デバイス:PC&スマートフォン)
スパイスカレーとクラフトコーラの検索ユーザー数を比較してみると、圧倒的にスパイスカレー(赤)の方が検索数は多いものの、なんとクラフトコーラ(青)が逆転している瞬間も(マツコの知らない世界の影響であることは明白ですが……)。
「スパイスカレーvsクラフトコーラ」検索ユーザー属性(性別)
(集計期間:2020年6月〜2022年5月、デバイス:PC&スマートフォン)
気になるのは、スパイスカレーとクラフトコーラの検索ユーザー属性の男女比。クラフトコーラの方が男性が多いのです。
スパイスカレーブームは、実は男性がハマったこともブームの牽引とされていました。普段料理はしないけれど、スパイスカレーはハマっていろいろ作ったと話す人も多く、「複雑な調理工程が不要であること」、そして「こだわりを持った人がハマりやすい実験的な要素があること」が多くの男性を引き込んだのではないかと思います。
「スパイスカレーvsクラフトコーラ」検索掛け合わせワード
(集計期間:2020年6月〜2022年5月、デバイス:PC&スマートフォン)
「クラフトコーラ」検索掛け合わせワードを見てみると、販売されているものを飲むだけでなく、クラフトコーラを「手作りしたい」と考えている人が(スパイスカレーほどではないにせよ)多いこともうかがえます。
そのため、スパイスカレーのように手軽にクラフトコーラを自宅で手作りできるキットなどが販売されれば、こうした手作りニーズに応えることができ、さらに大きなブームが期待できるのではないでしょうか?
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まとめ
前述の印度カリー子さんもクラフトコーラとスパイスカレーの共通点に言及しています。材料にスパイスを使用していること、そして健康に良いということは共通項です。今後さまざまなクラフトコーラ関連商品が登場し、クラフトコーラとスパイスカレーの相乗効果が生まれることを期待したいと思います!
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恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。