完全栄養食とは?
「完全栄養食」とは、「日本人の食事摂取基準」に示された必須栄養素をすべて含んだ商品のこと。1食分で1日に必要な栄養素の約3分の1が摂れるものが数多く登場しています。その種類は麺類やパンなどの「ごはん系」、プロテインやスムージーのように水などに溶かして飲む「ドリンク系」、グミやクッキーなどの「おやつ系」の3タイプが主に販売されています。
忙しい人や料理が苦手な人、一人暮らしの人など、栄養バランスを考えるのが面倒な人が手軽に摂取でき、栄養の偏りを防ぐことができるということで近年注目を集めています。また、必要以上のカロリーを摂取することを防げることから、ダイエット中の方や体形を維持したい方からも支持されています。
多くの「完全栄養食」は定期配送やサブスクリプション形式のものが多かったものの、最近では「BASEFOOD」や日清「完全メシ」のように、コンビニエンスストアで1個ずつ購入ができる商品も増えてきており、購入のハードルが下がったことから一気に市場が拡大している印象です。
株式会社日本能率協会総合研究所の市場規模推計によると、日本国内の完全栄養食品市場は右肩上がりで拡大しており、2024年には145億円規模になると予測されています。さらに2027年には世界で63億米ドル規模になるという予測もあり、今後の市場拡大が予想できます。コロナ禍で多くの人が手軽かつ長期保存可能、その上栄養価の高い食品をストックする流れが進み、「完全栄養食」の摂取習慣が定着したことも、市場拡大の影響のひとつとみられています。
BASEFOOD・Huel・完全メシのポジショニングは?
それでは、「完全栄養食」の中でも注目されている「BASEFOOD」「Huel」「完全メシ」の購買層はどのような人たちなのでしょうか?この3ブランドは競合ではあるものの、購買層が異なるような印象も受けます。まずはそれぞれのブランドの概要から見てみましょう。
■・BASEFOOD
「BASEFOOD」は2016年にDeNA出身の橋本舜氏が自身の食への課題を解決すべく立ち上げたブランドです。最初はクラウドファンディングで事業をスタートし、パスタからパン、クッキーなど商品数を増やしていきました。当初は専用サイトからの定期購入がメインでしたが、最近ではセブン-イレブンやファミリーマートでも専用棚で取り扱いされるなど、購入のハードルが下がったことで手に取りやすくなっています。1回食べてその良さを感じた消費者が定期購入に踏み切るという流れも生まれています。
では、Dockpit(ドックピット)で「BASEFOOD」のサイト訪問者数推移を見てみましょう。なおDockpitとは、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツールです。
「BASEFOOD」サイト訪問者数推移
(集計期間:2021年7月〜2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)
サイト訪問者数は毎月約20万〜30万人程度という数字になっていました。BASEFOODは2021年10月には中部と関西のファミリーマートで販売を開始。また、2022年2月には初のテレビCM放映を行い、月間定期購入者数が10万人を突破しました。こうした影響もあって、2022年5月には月間約50万人の訪問者が訪れています。
検索ワードごとのつながりを示す、ワードネットワークはどうなっているのでしょうか。
「BASEFOOD」ワードネットワーク
(集計期間:2021年7月〜2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)
ワードネットワークを見ると、「クーポン」「継続コース」「解約」といったワードが目立ち、どうしても定期購入の価格面がネックになっていることが伺えます。SNSでも味の評価は概ね好評だったものの、価格面への課題からか「クーポンコード」についての投稿が多く見られました。
■・Huel
続いては、イギリスに本社のあるHuelです。「動物や環境への影響を最小限に抑えながら、栄養価の高い、便利で手ごろな価格の食品をつくること」をミッションに掲げている会社で、動物性食品を使用せずにビタミン・ミネラルなどの栄養素を意識した完全栄養食のドリンクを粉末タイプとボトル入りタイプで販売しています。日本で販売開始をした2019年4月時点ですでに世界100か国で累計1億食以上を販売発売しており、現在は公式ホームページかAmazonで購入することが出来ます。
■・完全メシ
カップ麺でおなじみの日清が2022年5月30日から発売している「完全メシ」シリーズ。ラインナップはカップ麺の「豚辛ラ王」、カップカレーの「カレーメシ」、スムージー2種類、大豆グラノーラの5種。セブン‐イレブンで大々的に棚を割いてコーナー化していたこともあり、注目度は発売と同時に一気に高まり、発売からわずか1カ月で累計出荷数100万食を突破しました!
パッケージや陳列ポップには「栄養バランスを考えるのが、めんどくせぇヤツらに!」と書かれており、コンビニで売られていることからもメインターゲットは30〜40代かつ「栄養バランスが気になりつつも対策は特に講じておらず「面倒だと感じている人」のようです。さらに日清食品は今後「日本を未病対策先進国へ」をテーマに、パーソナライズ化された完全栄養食の普及を目指していると明かしています。
では、「完全メシ」のサイト訪問者数はどうなっているのでしょうか。
「完全メシ」サイト訪問者数推移
(集計期間:2021年7月〜2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)
2022年5月30日の発売でしたが、5月から訪問者数は急上昇しています。いきなりセブン‐イレブンで大々的に販売されたこともあり、今年6月には約12万人がサイトを訪問。いま急成長中のサービスであることが分かります。
■・3ブランド比較
続いて、この3ブランドを並べて比較してみましょう。
「BASEFOOD」「Huel」「完全メシ」ユーザー属性性別
(集計期間:2021年7月〜2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)
ユーザー属性の性別では男性が多いものの、「BASEFOOD」は女性からの注目が高いことがわかります。パッケージのオシャレさ、そしてプロテインよりも摂取しやすいパンやクッキーであることが要因なのかもしれません。
「BASEFOOD」「Huel」「完全メシ」ユーザー属性年代
(集計期間:2021年7月〜2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)
ユーザー属性の年代を見てみると、この3サービスのなかで「Huel」はもっとも20代と30代訪問者の割合が多いという結果に。一方、40代で見ると「完全メシ」がもっとも訪問者の割合が多い完全栄養食のWebサイトとなっていました。3サービスをまとめて見ると、ネット利用者全体と比べて20〜40代の比率が高い傾向となっており、働く世代からの注目度が高いようすがうかがえます。
人類の食事はどうなる?「完全栄養食」の可能性
今後「完全栄養食」はさらに普及し、私たちの食事を代替していく……かどうかはまだ分かりませんが、今後の広がりは気になります。Dockpitのキーワード分析「完全栄養食」から、現状を分析してみましょう。
「完全栄養食」検索者のユーザー数推移
(集計期間:2021年7月〜2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)
「完全栄養食」というワードの検索数は2022年3月に急上昇しています。この理由を2022年3月の「検索キーワード」から見てみると……
「完全栄養食」検索キーワード
(集計期間:2022年3月、デバイス:PC&スマートフォン)
日清食品というワードがあります。これは2022年3月に日清食品が完全栄養食市場に出る準備をしていることがテレビ番組「カンブリア宮殿」で放送された影響が大きいと考えられます。この番組で「完全栄養食」という概念を知って興味を持った方も多いのではないでしょうか。
次に、「完全栄養食」について調べている人の男女比を見てみると……
「完全栄養食」ユーザー属性性別
(集計期間:2021年7月〜2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)
「完全栄養食」というワードを検索しているのは男性の方が若干多いという結果に。特に一人暮らしの男性は自炊をしない人が多いこともあり、「完全栄養食」という言葉は魅力的に響くのかもしれません。
ワードネットワークではどうでしょうか。
「完全栄養食」ワードネットワーク
(集計期間:2021年7月〜2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)
「完全栄養食」のワードネットワークを見てみると、個別名以外だと「どこで売っている」「コンビニ」「ファミマ」「通販」といった、購入経路が気になる方が多いことがわかります。食べるのが1回きりの贅沢品ではなく、毎日摂取するたぐいの商品ですから、やはりその入手方法は気になるところです。
完全栄養食と掛け合わせて検索されているワードには何が多いでしょうか。
「完全栄養食」掛け合わせワード
(集計期間:2021年7月〜2022年6月、デバイス:PC&スマートフォン)
掛け合わせワードでは「コスパ」「おすすめ」「足りない」というワードも見られます。興味はあって検索はしているけれど、どこで買えばいいのか、自分に合ったものはどの商品なのかといった疑問や、価格(コスパ)はどうなのか、1食分で足りるのか……といった不安がうかがえます。こうした点に対して解決策を示すことで、さらに購買層は広がるのではないでしょうか。
まとめ
現代人にとって、栄養状態はなかなか管理しづらく、手間やコストも気になるでしょう。手軽に「完全」な「栄養」が摂れるという完全栄養食は幅広い層に魅力的です。現時点で網羅しているターゲット層以外にも、まだまだ取りこぼしている層はいるはず。さらにキーワード検索から見えた課題である「購入できる場所」「価格面(コストパフォーマンス)」などの解決ができればさらにチャンスは拡大するのではないでしょうか。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。