TVerアプリのヘビー / ライトユーザー
初めに、ユーザーによるTVerのアプリの利用頻度のデータを分析していきましょう。以下は、(横軸)ユーザーが1か月の間にTVerのアプリを起動する日数と、(縦軸)起動日数別のユーザー数の全体に対する割合を可視化したデータです。
TVerアプリ起動日数分布(月当たり)
期間:2019年9月~2022年6月
棒グラフは、1か月の各利用日数のユーザー数が、全体の何割を占めるかというデータになります。例えば、「1(起動が月に1日)」のユーザーは22.7%、「2(起動が月に2日)」なら15.3%です。線グラフは前述の割合の累計で、「1(起動が月に1日)」と「2(起動が月に2日)」のユーザーの合算は38.0%になります。
また、青い棒グラフは「利用頻度が低い(=ライトユーザー)」グループ、オレンジ色の棒グラフは「利用頻度が高い(=ヘビーユーザー)」グループです。今回取り扱うデータでは、月のアプリ起動回数が4日以上あればヘビーユーザーのグループに分類されています。
利用頻度が低いユーザーの割合は48.7%、利用頻度が高いユーザーが51.3%となることから、TVerアプリの約半数のユーザーが月に4日以上、つまり、およそ週に1回はTVerを使っていそうだということがわかります。
つづいて、ヘビーユーザー・ライトユーザーのグループ別に、過去3年間のユーザー数の推移データも見てみましょう。
TVerアプリ利用頻度別ユーザー数推移
期間:2019年9月~2022年6月
両グループともに過去3年間、同じようにユーザー数は右肩上がりに伸びてきています。期間の両端である2019年9月と2022年6月を比べると、ヘビーユーザーは約2.2倍、ライトユーザーは約2.3倍となっており、ライトユーザーの方が若干伸びが大きいことがわかります。
ただし2022年2月以降、ヘビーユーザー数はやや頭打ちになり、オレンジ色のグラフが横ばいになっている様子がうかがえます(グラフ上、矢印の期間)。一方で青色のライトユーザーは、2021年12月から2022年1月の2か月間で大きく伸びており、以降も増加が見られます。冬休みのタイミングで始まった「年末年始はTVer」キャンペーン(※)により、ライトユーザーが大幅に増えたと考えられます。
(※)「年またぎイッキ見ドラマ特集」「年末年始バラエティ特集」「アニメ大特集」「TVer限定!人気10番組スピンオフ特集」などの特集が組まれ、TVer史上最多の番組配信数となったキャンペーン。
さらに、年代別のTVerアプリ起動者数の推移データも見てみましょう。
TVerアプリ世代別起動者数の推移
期間:2019年9月~2022年6月
期間を通じて、最も起動者数が多いのは40代です。また、2021年9月以降、20代・30代の若年層と50代の中年層の起動者数が逆転しかけているのが見て取れます。
下の表を見るとライトユーザーにおいては、60代以上の起動者数が約3.9倍、50代が約2.2倍と、40代以下に比べて50代以上の伸びが特に大きいことがわかります。ヘビーユーザーおいても60代以上の増加が顕著ですが、次に20代の増加が大きく出ています。
TVerアプリ起動者数:ライトユーザー
期間:2019年9月~2022年6月
TVerアプリ起動者数:ヘビーユーザー
期間:2019年9月~2022年6月
50代以上のテレビをメインで視聴してきた年配層が、主にTVerのライトユーザーとして増加している様子がうかがえます。他の視聴メディア(主に地上波放送)とTVerをダブル使いしている可能性もありそうです。
コロナ禍前後で見るTVerユーザー像の変遷
ここまでTVerアプリのユーザー推移を見てきましたが、その変化にはどういった市場背景があるのでしょうか。コロナ禍の前後を通じて、TVerアプリユーザーがどのように変化したか、属性別に集計したデータを見ていきましょう。
2019年7月のアンケートデータおよび2019年9月のログデータをコロナ前、2021年7月の両データをコロナ後として集計しています。
■性別×年代別のデータ
最初は、TVerアプリユーザーの性年代データからです。
TVerアプリ起動者の属性:性年代
TVerアプリのユーザーは総じて女性比率が高いですが、特に利用頻度が高いユーザーに女性が多いことがわかります(6割強)。この男女比は、コロナ前後で大きく変化していません。恋愛モノなど、テレビドラマをよく視聴する層に女性が多い、などが理由として考えられます。
また、男女ともに40代ユーザーの割合が最も大きくなっています。
■世帯年収のデータ
世帯年収ごとのTVerアプリのユーザー割合を見ていきます。
TVerアプリ起動者の属性:世帯年収
全体に大きな割合を占めるのは世帯年収200~600万円未満までのユーザーセグメントで、7割ほどを占めています。
TVerユーザーのコロナ前後を比較してみると、利用頻度の高いグループでは「500-600万円未満」、利用頻度が低いグループでは「600-700万円未満」の増加がより大きいことがわかります。
■同居家族のデータ
同居家族のセグメント別にも、TVerアプリユーザーの割合を見ていきます。
TVerアプリ起動者の属性:同居家族
全体のボリュームゾーンは「単身者(40代以下)」と「独身・親と同居」、「子どもあり世帯(末子大学生・社会人・その他)」であることがわかります。独身者と、子どもが家を出た後の家庭において、TVerが余暇の楽しみになっているようです。反対に子どもが小さい家庭では、節約を心がけたり、リアルタイムで家族でテレビを観たりする目的で、TVerを利用する層が少ないのかもしれません。
コロナ禍を通じた変化としては、いずれのグループも「単身者(40代以下)」と「夫婦のみ世帯(50代以上)」セグメントが割合を増やしています。
TVerユーザーのメディア視聴状況の変遷
続いては、TVerアプリのユーザーがどのようなメディアを視聴、閲覧しているのかというデータを見ていきます。
■テレビ(地上波放送)の視聴時間
まずは、TVerアプリユーザーが、コロナ禍前後でどれくらいテレビの地上波放送を視聴していたか見ていきましょう。
TVerアプリ起動者のテレビ視聴時間
コロナ禍前後でTVerの利用頻度が高いユーザーのテレビ視聴時間はやや伸びており、利用頻度が低いユーザーの視聴時間は短くなっています。
TVerのヘビーユーザーには、元々テレビをよく視聴する層や、TVerがきっかけで地上波のテレビ番組を長時間視聴するようになったユーザーが、増加傾向にあるのかもしれません。一方、ライトユーザーは視聴時間が短くなっているので、普段あまりテレビを見ないユーザーがTVerを使い始めているケースや、元々テレビをよく見るユーザーがTVerの併用を始めたことで、テレビの視聴時間が短くなっているケースなどが考えられます。
■VODサービスの視聴時間
つづいて、VOD(動画視聴サービス)の視聴時間のデータです。
TVerアプリ起動者のVODサービス視聴時間
元々、全体と比べてTVer利用者のVOD視聴時間は長めでした。コロナ禍を経てさらにVODサービスの視聴時間は増え、特にTVerヘビーユーザーの視聴時間の伸びが大きい様子です。
NetflixやAmazon Prime Videoなど、TVer以外のVODサービスと併用して楽しんでいる層が、ヘビーユーザーをメインに増えているのかもしれません。
■新しい情報の入手元
TVerアプリ起動者の新しい情報の入手先
2019年(コロナ禍以前)
TVerアプリ起動者の新しい情報の入手先
2021年(コロナ禍以後)
TVerユーザーが新しい情報を仕入れるのに使うメディアの変遷についても触れてみましょう。
コロナ前後で、ネット利用者全体と比べた際のポイントを見てみると、TVerヘビーユーザーでSNS(LINE,Twitter,Facebookなど)を情報収集源とする人が特徴的に増えていることがわかります。SNSでテレビ番組アカウントが発信している情報をチェックする人が増えた、それを起点に普段の情報収集をSNSで行う人が増えた、などが原因として考えられます。
一方、TVerライトユーザーでは「テレビ番組」の割合がコロナ後に減少しています。前述の、テレビの視聴時間がこのセグメントにおいて短くなっていることと連動していることがわかります。
TVerユーザーのサイコグラフィックデータ
最後に、TVerアプリユーザーのサイコグラフィックデータ(購買に関する興味関心データ)から、ユーザー像の深掘りと、コロナ前後でのインサイトの変遷を見ていきましょう。
※以下、データ内で登場する「特徴値」とは、TVerユーザーとネットユーザー全体とを比べた時に、どれだけTVerユーザーが特徴的であるかを数値化したものです。グラフの色は、ターゲットリーチ率(該当サイトに該当セグメントの何%が訪問したか)を表します。
■色の例(両端の値は2019年サイトランキングのもの)
まずは、TVerの利用頻度が高いユーザーのデータからです。ランキングは、特徴値順になっています。
TVerアプリ起動者のサイコグラフィック:ヘビーユーザー
2019年(コロナ禍以前)
TVerアプリ起動者のサイコグラフィック:ヘビーユーザー
2021年(コロナ禍以後)
「サイトランキング」を見ると、コロナ前はテレビ放送に関するサイトや、キャリア公式のポータルサイトが高い特徴値で出現していましたが、コロナ後はテレビ局の公式サイトに加えて、YouTubeやTwitterといったSNSが並ぶようになっています。YouTubeでテレビ局によるニュースなどの動画を閲覧する人が増えているのかもしれません。また、ヘビーユーザーは元々テレビ好きな人が多く、VODや動画共有サイトなど、映像媒体一般への関心が高いとも考えられます。
また、「興味関心マップ」で特徴値が高いトピック(グラフ右上)を見ると、元々「ファッション」「コスメ」「料理」といった一般生活に関するワードが並んでいたところから、コロナ禍を経て「俳優・女優」「お笑い芸人」「映画」といったエンタメ色の強いワードに変化しています。
つづいて、TVerの利用頻度が低いユーザーセグメントのデータも見てみます。
TVerアプリ起動者のサイコグラフィック:ライトユーザー
2019年(コロナ禍以前)
TVerアプリ起動者のサイコグラフィック:ライトユーザー
2021年(コロナ禍以後)
2021年のサイトランキングを見ると、ヘビーユーザーと同様に、コロナ前と比べてYouTubeの利用が増えているほか、アメーバブログも上位にランクインしています。また、Amazonや楽天市場などのECや、ヤマト運輸・佐川急便といった配達業者のサイトも上位入りしており、ネットショッピングを楽しむ層が増えてきていることがうかがえます。
興味関心マップに関しては、コロナ後に「お笑い芸人」のワードのスコアが上がっているのが特徴です。こちらは、TVerでお笑い番組のコンテンツが充実したため、興味関心を持つユーザーが流れ込んだ可能性があります。
まとめ
本レポートでは、コロナ禍を通じて変化してきた、TVerアプリの利用頻度別のユーザー像をまとめてきました。
ヘビーユーザーのグループは、単身者か年配の夫婦のみ世帯のユーザーが伸びている様子です。娯楽として日常的に動画配信を楽しんでいるユーザー像が浮かびます。一方でライトユーザーは全体的に年配層の伸びが大きく、テレビ視聴の最盛期を経験してきた世代からの支持が増え始めている様子です。ここがライトユーザーながらも、地上波の放送とTVerアプリでの視聴を併用し始めていると考えられます。
また、冒頭のユーザー推移のデータから、2022年に入ってからはヘビーユーザー数の伸びが鈍化し、ライトユーザーは継続的に伸びていることがわかっています。そのため、ここ数か月のユーザーの伸びは普段からテレビを視聴しない、ライトユーザーが中心となっているということかと思います。
このライトユーザーをどのようにナーチャリングし、高頻度かつ長い視聴をしてくれるユーザーへ育成できるかどうか、という点は、TVerの今後の戦略にとって重要なポイントであるかもしれません。
本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。
【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2019年9月〜2022年6月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス
国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。