「貯金」と「貯蓄」の検索行動で浮き彫りになるユーザー像とその関心事とは

「貯金」と「貯蓄」の検索行動で浮き彫りになるユーザー像とその関心事とは

2019年に問題になった「老後資産2,000万円」が記憶に新しいなか、政府によって「資産所得倍増計画」が発表されました。「貯蓄から投資へ」とも謳われている現在。「お金」に関して、漠然とした不安と戸惑いを抱えている人も多いのではないでしょうか。「人生100年時代」とも言われる長い人生のために、どのように資産を作り守って行くか。「貯金」と「貯蓄」という2つのワードを検索する消費者のWeb行動に着目し、調査・分析しました。


「貯金」と「貯蓄」。その意味の違いを確認

まずは「貯金」と「貯蓄」について、それぞれの違いを明確に区別してみましょう。

「貯金」は、金融機関だけに限らず、家の貯金箱なども含め所有しているお金のことを指します。貯金とよく似たワードである「預金」は、銀行や信用金庫、信用組合などの金融機関に「預ける」お金のことを指します。金融機関に預けて運用してもらい、金利が受け取れる金融商品の1つが「預金」です。
一方で「貯蓄」は、貯金や預金、生命保険や投資商品などを含めた金融資産全体の蓄えに対して使われます。「投資商品」には様々な種類があり、不動産や金なども投資商品であり、「貯蓄」に含まれます。「貯金」に比べて「貯蓄」は、幅広い「蓄財」が対象となります。

「貯金」と「貯蓄」の2ワード、消費者はどう使い分けている?

「貯金」使用者が多数。「貯蓄」とのワード併用率は5.9%と低め

では、それぞれを検討するユーザー像にはどのような違いがあるのでしょうか。行動ログを分析できるDockpitを使って分析してみましょう。2021年9月〜2022年8月の1年間において、「貯金」と「貯蓄」の2つのワードがどれくらいの人にどのように関心を持たれているのか、検索しているUU数推移と併用率を見てみました。

下図左側がUU数推移、右側が併用率を表したグラフです。2つのグラフにおいて、ブルーの線及び円が「貯金」、ピンクの線及び円が「貯蓄」を表しています。
まずは左側のUU数推移から見てみましょう。2022年1月では「貯金」が「貯蓄」の約4.5倍となっており、両者の差が最も大きくなっています。それ以外の月も平均して4倍程度の差が開いており、このことから見ても「貯金」の方がより一般的に用いられているワードだと言えそうです。

次に右側の併用率です。ブルーとピンクの円の重なった部分の大きさを見ると、「貯金」と「貯蓄」を併用している人は5.9%で、あまり高くないことがわかります。

図:「貯金」と「貯蓄」検索者のUU数推移と併用率

図:「貯金」と「貯蓄」検索者のUU数推移と併用率
期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:PCおよびスマートフォン

「貯金」は若年層に多く、「貯蓄」は中高年になると関心が高まる?

続いて、同じく2021年9月〜2022年8月の1年間のデータで、性年代別の比較をしてみましょう。下図左側が性別差を示したグラフ、右側が年代別のグラフです。前述のグラフ同様、ブルーが「貯金」、ピンクが「貯蓄」を示しています。

性別のグラフを見ると、「貯金」「貯蓄」共に若干女性の方が多く見てとれますが、大きく変わりはないようです。一方、年代別のグラフを見ると、「貯金」を検索するのは20代の若年層に多く、「貯蓄」では30代の検索者が一番多いという結果に。これは年代を重ねるとともに金融リテラシーが高まり、「貯金」と「貯蓄」を区別し、資産管理することへ意識が変化しているのではないかと推測できます。

図:「貯金」と「貯蓄」の性年代別

図:「貯金」と「貯蓄」の性年代別
期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:PCおよびスマートフォン

「貯金」と「貯蓄」検索者は同時に何を検索している?関心事を深掘り調査

「貯金」派も「貯蓄」派も「平均」が知りたい!

これまでの調査で、「貯金」と「貯蓄」が、それぞれ違う属性の人に検索されていることがわかりました。ここで、検索キーワードランキングを用いて、「貯金」と「貯蓄」がそれぞれどのようなワードと同時に検索されているのかを見てみましょう。

「貯金」のランキングで目につくのは、「20代」「30代(歳)」といった若年層を示すワードです。「同年代の人ってどれくらい貯めている?」というモデルケースを探していると考察できそうです。その裏付けになるような「平均」というワードも見られることから、平均的な「貯金額」に関心が強いようです。そのほか、「大学生」や「結婚」というワードもランクイン。これらからは、ライフステージが変わるタイミングで「貯金」を気にし始める傾向があるのではと推測できます。

続いて「貯蓄」のランキングを見てみましょう。「貯金」検索者同様に「平均」や「中央値」というワードが挙がりました。やはりモデルケースを求める意識は「貯蓄」でも関心事の1つのようです。ほかには、「おすすめ」や「積立投資」「保険」といった具体的な金融商品の検索ワードがランクイン。より積極的にお金のことを考えようという意欲や、金融商品への関心の高まりがうかがえます。

このように、「貯金」「貯蓄」のいずれも「平均値」などのワードが検索されていることを見ると、「どの程度の資産があれば良いのか」「現在どの程度の過不足があるのか」という、金額に関する具体的な事実を知りたいという心理が表れていると考えられます。

図:「貯金」と「貯蓄」のキーワード検索ランキング

図:「貯金」と「貯蓄」のキーワード検索ランキング
期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:PCおよびスマートフォン

関心ワード検索を見ると、検索者の人生設計までも垣間見える?

最後に「貯金」「貯蓄」のワード検索者が、他にはどんなワードを検索しているのかを「関心ワード検索ランキング」で見てみます。このランキングでは、「貯金」と「貯蓄」検索者の年代差をさらに明確にした結果が表れました。

「貯金」を検索したユーザーは、具体的な金額のほか「実家暮らし」「セミリタイア」といった若年層を連想させるワードが多く挙がっています。特に「実家暮らし」といったワードにフォーカスしてみると、「実家暮らしだとどれくらい貯金ができる?」といった更なる検索者の関心事も推測できそうです。また「セミリタイア」に関しても、長く勤めることや出世に関心の少ない今の若年層が、「仕事を辞めるまでにどれくらいの貯金があればいいのだろう」と計算するような姿も想像できます。「貯金」に関心が高い若年層には、「貯金だけではなく、総合的に「資産」をどう増やすか」といった「貯金から貯蓄」に繋げる具体的かつ理解しやすいアプローチ(貯金以外の金融商品の案内や資産形成に関する総合的なセミナー開催など)を提案すると、ダイレクトに響くかもしれません。

一方で、「貯蓄」を検索したユーザーは、「老後資金」「終身保険」「証券口座」と、具体的な金融商品のワードを検索していました。金融リテラシーが高まりつつある中高年層がイメージできると言えるでしょう。また、中にはユニークなワードとして「食費」というものもありました。「貯蓄」のワード検索者の男女の割合を見ると女性が半数以上を占めることから、家計の節約をして貯蓄に回そうと、一家の家計をやりくりする主婦像がイメージできそうです。そういったケースには、「家計の節約」目線での保険商品の見直しや、既に保持している金融商品の利回り確認、「節約した家計で始められる」少額投資が可能な金融商品のアプローチなどで、様々な金融商品へ更なる興味を駆り立てることが出来そうです。

図:「貯金」と「貯蓄」の関心ワード検索ランキング

図:「貯金」と「貯蓄」の関心ワード検索ランキング
期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:PCおよびスマートフォン

まとめ|1文字違いで年代・性別・関心にまで違いがある

今回の調査では、「貯金」と「貯蓄」の似た2つのワードにも関わらず、検索者の属性やライフステージ、関心事にも明確な違いが表れる結果となりました。

「貯金」に関しては、若年層がいかに多数の検索をしているか、そして、自分の未来のライフステージにどれくらいのお金が必要なのかということに興味があることがわかりました。一方で「貯蓄」検索者は、ある程度金融リテラシーが高まり、そこから様々な金融商品の検討を始めているといった様子が表れました。

各年代共に「満足できる資産を蓄え、守る」ためには、それぞれの関心事に見合った金融商品の選定と的確なアプローチのために、まずは金融リテラシーを高めることが必要不可欠なのではないかと考えさせられました。

人生において簡単には切り離せない大切なお金の話。みなさんはどんなワードを検索しますか?

調査概要

・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2021年9月〜2022年8月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス


▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。

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