企業研究は難しい
就活の中で非常に重要な企業研究。やるべきとわかっていても何をしたらいいのか、どれくらいやったらいいのかなどなかなか難しいですよね。今回はそんな企業研究をマーケティング視点で行っていきたいと思います。
今回、注目するのはお菓子業界です。マナミナで以前公開したこちらの記事について、2022年版に情報をアップデートしてお伝えします。
お菓子業界5社をマーケティング視点で企業研究!大学生のデータドリブン就活【第4回】
https://manamina.valuesccg.com/articles/822競合分析ツール「eMark+」を使って、就職活動に役立つコンテンツをお届けする企画。第4回はお菓子業界の上位5社、カルビー・森永製菓・明治・グリコ・ブルボンをWebサイトの集客状況から分析し、企業の強みや違いをまとめました。
今回分析するのはお菓子業界の大手5社、「森永製菓」「江崎グリコ」「カルビー」「ブルボン」「不二家」の各公式サイトです。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用します。
集客状況の概況は?
まずは、各サイトのユーザー数推移を見ていきます。
「森永製菓」「江崎グリコ」「カルビー」「ブルボン」「不二家」のユーザー数推移
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
群を抜いて森永製菓サイトのユーザー数が多いことがわかります。また、江崎グリコのサイトも安定して多くのユーザーを獲得しています。
続いて、各サイトの新規ユーザー率推移がこちらです。
「森永製菓」「江崎グリコ」「カルビー」「ブルボン」「不二家」の新規ユーザー率推移
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
ブルボンの新規ユーザー率が高くなっています。このことから、ブルボンはキャンペーンなどで、比較的多くの新規ユーザーを獲得していると考えられます。逆に、カルビーは新規ユーザー率が低くなっており、カルビーのサイトには比較的リピーターが多いことがわかります。
各サイトの集客構造は?
次に、具体的に各社がどのようにして自社サイトへの集客を促しているのか、見ていきましょう。
「森永製菓」「江崎グリコ」「カルビー」「ブルボン」「不二家」の集客構造
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
※ノーリファラーを除く
全体的に自然検索からの流入割合が高いことがわかります。ユーザーがどのようなキーワードで各サイトに流入しているかを見てみましょう。
「プロテイン」に強い森永とグリコ
まずは、流入キーワードが特徴的な森永製菓と江崎グリコから。
「森永製菓」「江崎グリコ」の流入キーワード(単語分割 | 自然検索)
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
「プロテイン」「筋トレ」「タンパク質」といった筋トレに関連するキーワードが上位に含まれています。これらのキーワードから流入したセッションのランディングページを見てみましょう。
「筋トレ(森永製菓)」と「プロテイン(江崎グリコ)」のランディングページ
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
森永製菓の「かんたん、わかる!プロテインの教科書」というプロテイン特化のポータルサイトと、江崎グリコの「POWER PRODUCTION MAGAZINE」というトレーニングや栄養などについて情報発信をするサイトのページがそれぞれ上位を占めていることがわかります。森永製菓と江崎グリコは、これらの情報発信サイトを通して、「筋トレ」や「プロテイン」といったキーワードからの検索流入が上位になっているようです。森永製菓と江崎グリコのユーザー数が5サイトの中で1位と2位だということと絡めて考えると、これらの情報発信サイトがユーザー数の多さに貢献している可能性もあるのかもしれません。
またこれらの情報発信サイトは、各社公式サイトの訪問者の性別にも影響を与えていそうです。
「森永製菓」「江崎グリコ」「カルビー」「ブルボン」「不二家」の性別
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
森永製菓と江崎グリコのサイト訪問者の性別を見てみると、他サイトと比べて男性の割合が高いことがわかります。森永製菓の「かんたん、わかる!プロテインの教科書」と江崎グリコの「POWER PRODUCTION MAGAZINE」が、男性の割合を高めている要因の一つだと考えられます。
続いて、カルビー、ブルボン、不二家の流入キーワードを見てみましょう。
「カルビー」「ブルボン」「不二家」の流入キーワード(単語分割 | 自然検索)
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
それぞれ、企業名がトップになっています。そして、カルビーはじゃがりこ、ブルボンはアルフォートなど、各企業の目玉商品名をキーワードとした流入も目立ちます。指名検索が起こりやすい目玉商品を複数持つことで、より多くのサイト訪問につながると考えられます。
また、カルビーの「じゃがりこ」と「フルグラ」のように、それぞれの商品で異なる属性のユーザーを獲得することも、ユーザー数を増加させるために有効だと考えられます。下のグラフは、「じゃがりこ」または「フルグラ」というキーワードでカルビーのサイトに流入したユーザーの属性を比較したものです。
「じゃがりこ(カルビー)」と「フルグラ(カルビー)」のユーザー属性
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
「じゃがりこ」は20代の比率が高く、「フルグラ」は30代の比率が高くなっています。異なる属性のユーザーがそれぞれの商品名で検索し、カルビーのサイトに流入していることがわかります。
「対局おやつ」など。「将棋」と「不二家」の意外な関係性とは?
自然検索以外の集客構造について特徴的なのは、不二家への流入の中で、外部サイトからの流入割合が他サイトより高いことです。
どのような外部サイトから不二家のサイトへの流入が多いかを見てみると、公共機関が21.4%を占めており、そのうちのほとんどが日本将棋連盟となっています。
「不二家」の外部サイトカテゴリと「公共機関」の外部サイト
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
日本将棋連盟のサイトから不二家のサイトへ流入したセッションのランディングページを見てみると、そのうち98%が、2021年7月5日から 2022年5月24日にかけて行われた不二家が主催の叡王戦のページへの流入となっていました。
また、このページでは、叡王戦の対局中におやつとして提供された不二家のお菓子や叡王戦限定のお菓子BOXがPRされており、「ペコちゃんの将棋コラム」というコーナーもあります。不二家は、このように将棋と絡めた施策を打つことでサイト訪問者や購入者の増加を狙っていたのでしょう。
森永製菓は、LINEが消費者とのタッチポイントに
集客構造における、その他の特徴は、ここ2か月で森永製菓のソーシャルからの流入数が伸びてきていることです。こちらが各サイトのソーシャルからの流入数推移です。
「森永製菓」「江崎グリコ」「カルビー」「ブルボン」「不二家」
のソーシャル流入セッション数推移
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
2022年9~10月にかけて森永製菓のソーシャルからの流入数が顕著に増えています。使われている媒体の内訳を見てみましょう。
「森永製菓」のソーシャル構成
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
LINEとTwitterがメインの媒体のようです。下のグラフからわかる通り、直近1年間ではLINEからの流入が特に伸びてきています。
「森永製菓」のソーシャル:「LINE」「Twitter」からのセッション数推移
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
伸びが顕著な2022年9月~10月に森永製菓公式LINEアカウントから投稿されたのは、ユーザーがスタンプで自分の意見を発信できるものでした。
実際に森永製菓のLINE公式アカウントを追加して調査してみると、投稿内容には森永製菓サイトへの訪問を促す文章とURLが含まれていることがわかりました。スタンプで反応したいと思わせる画像でユーザーを惹き、サイトへの流入を促すという流れを想定しているのではないでしょうか。
ブルボンサイトに40代訪問者が多い理由は『あの方』?
最後に、各サイト訪問者の年代を見てみましょう。
「森永製菓」「江崎グリコ」「カルビー」「ブルボン」「不二家」訪問者の年代
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
まず、目につくのは、森永製菓のサイトが各年代から大きな偏りなく訪問されているということです。そして、これはネット利用者全体のグラフと似た形をしています。これは、森永製菓が幅広い年代から関心を向けられていることを意味しているといえるでしょう。また、森永製菓のサイトが幅広い年代から関心を持たれていることは、サイト訪問者が多いこととも強い結びつきがありそうです。
もう一つ特徴的なのは、ブルボンのサイト訪問者のうち、40代の割合がこの5サイトの中で最も高いことです。その理由の一つとして、中村倫也さん出演のCMやキャンペーンを施策として打っていることがあげられそうです。
「中村倫也」というキーワードで検索している人の年代を見てみると、40代の割合がもっとも高くなっています。
「中村倫也」検索者の年代
期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン
このことから、ブルボンのサイトに40代訪問者の割合が高い理由として、この年代に人気なタレントを起用していることが一因として考えられます。
まとめ
今回は、お菓子業界の5企業、「森永製菓」「江崎グリコ」「カルビー」「ブルボン」「不二家」をマーケティング視点で分析しました。
最後に、今回発見したことをまとめます。
・ユーザー数は森永製菓のサイトがトップ
・ブルボンは新規ユーザーの割合が、カルビーはリピーターの割合がそれぞれ比較的高い
・どのサイトも自然検索からの流入の割合が最も高い
・健康関連の情報発信サイトを持っている森永製菓と江崎グリコは「筋トレ」や「プロテイン」といったキーワードでの流入が多い
・日本将棋連盟という意外な外部サイトから不二家のサイトへの流入が見られた
・森永製菓のサイトではソーシャル部門ではLINEからの流入が伸びている
・中村倫也さんが登場する施策を打つブルボンのサイトが40代の訪問者を多く持つ
前回のお菓子業界分析の記事にはなかった新しい発見が多くありました。これからも様々な業界を分析し、新たな発見をお届けします。
2023年4月にヴァリューズ入社予定の大学4年生です。大学では主に経済学を学んでいます。