企業研究は難しい
はじめまして、小幡のぞみ(おばた・のぞみ)です。私は大学でマーケティングを勉強しながら、ヴァリューズでインターンとして働いていました。そして今年の4月、新卒としてヴァリューズに入社しました!
就活のとき、困ったのが企業研究でした。行きたい業界を見つけたら、会社ホームページや就活サイトで情報収集をしたり、インターンに参加してみたり…。でも、紹介されているのは企業の良いところばかりで、本当のところはなかなか分かりません。
そこで今回、私が入社するヴァリューズの競合分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使って企業研究をしてみました。eMark+は消費者のインターネット上の行動を分析し、実際消費者がどんなサイトを閲覧しているのかを調べることができます。業界のあの大手企業は、本当に人気なのか?何に力を入れているのか?といった視点から、今までとは一味違った企業研究をしていきます。
第3回は、「通信業界」を分析しました。新規顧客と既存顧客へのアプローチで、各社は全く異なる戦略を取っており、結果として利用アプリにも大きな差があることがわかりました。また、その前は銀行業界を研究しました。
通信業界3社をマーケティング視点で企業研究!現役大学生のデータドリブン就活【第3回】
https://manamina.valuesccg.com/articles/777競合分析ツール「eMark+」を使って、就職活動に役立つコンテンツをお届けする企画。第3回は通信業界の主要3社、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクグループをWebサイトの集客状況から分析し、企業の強みや違いをまとめました。
銀行業界5社をマーケティング視点で企業研究!現役大学生のデータドリブン就活【第2回】
https://manamina.valuesccg.com/articles/707競合分析ツール「eMark+」を使って、就職活動に役立つコンテンツをお届けする企画。第2回は銀行業界の主要5社、三菱UFJ・三井住友・みずほ・ゆうちょ・りそなをWeb・アプリの集客状況から分析し、企業の強みや違いをまとめました。
今回は、お菓子業界の分析として、売上上位5社を分析します。業界研究の参考に活用頂ければ幸いです。
分析企業の紹介
まずは、売上高ランキングトップ10を見てみました。
業界動向サーチを基に作成。
江崎グリコは菓子+冷菓事業、明治HDは菓子事業、中村屋は菓子事業の売上高
■カルビーは一貫したバリューチェーンが強み
売上トップは、「じゃがりこ」や「フルグラ」を販売するカルビー株式会社です(以降、「カルビー」と表記)。国内市場において、スナック菓子で54.7%、シリアルで37.9%とトップの市場シェアを獲得しています。また、「ポテトチップス」や「じゃがりこ」の主原料である馬鈴しょ(じゃがいも)の開発・育種から店頭への流通までの一貫したバリューチェーンを構築していることが特徴です。(参考:よく分かるカルビー(個人投資家の皆さまへ))
■森永製菓は海外市場の獲得を進める
売上第2位は、「ハイチュウ」や「ジャンボ」を展開する森永製菓です。菓子食品事業・冷菓事業・健康事業の3事業それぞれで高いシェアを持っています。また、「ハイチュウ」「ミルクキャラメル」といった商品は米国・中国・台湾に販売拠点を持ち海外事業の拡大も進めています。(参考:事業紹介 | 森永製菓について)
■明治は幅広い事業展開が強み
売上第4位は、「果汁グミ」「スーパーカップ」を展開する明治ホールディングスです(以降、「明治」と表記)。お菓子事業だけでなく、牛乳やヨーグルトといった食品、全身性抗菌剤などの医薬品と幅広い事業展開が強みです。お菓子業界では第4位の売上高ですが、食品事業全体で比較するとトップの市場シェアを獲得しています。(参考:明治グループの今|明治ホールディングス株式会社)
■グリコは流通戦略の差別化が目立つ
売上第4位は、「ポッキー」や「ビスコ」で馴染み深い江崎グリコ株式会社です(以降、「グリコ」と表記)。グリコは、「おいしさと健康」を企業理念として掲げ、お菓子事業のほかにもベビー・マザー事業や果汁・清涼飲料事業も展開しています。また、オフィス向け置き菓子サービスの「オフィスグリコ」を展開しており、流通戦略における差別化にも成功しています。(参考:事業一覧 | 【公式】江崎グリコ(Glico))
■ブルボンは斬新なアイデアでヒット商品を生み出す
売上第5位は、「プチ」や「アルフォート」で有名な株式会社ブルボンです(以降、「ブルボン」と表記)。「おいしい笑顔の真ん中に」という合言葉のもと、菓子・飲料・食品を中心に商品展開をしています。2018年2月には、既存商品である「ルマンド」をアイスクリームの中に丸ごと入れた「ルマンドアイス」が日本食糧新聞社の優秀ヒット賞を受賞するなど、高い商品開発力が強みです。(参考:「「ルマンドアイス」 優秀ヒット賞を受賞 NEWS RELEASE」」)
サイト訪問者数は1位明治、2位森永製菓
まずはeMark+で、2020年2月の各企業のサイト訪問者数ランキングを見てみました。 カテゴリ「食品・飲料」を指定すると次のような画面になります。
1位~15位をピックアップしてみると、以下のようになりました。
デバイス:PC&スマートフォン
対象期間:2020年2月
売上2位~4位の明治・森永製菓・グリコがランクインする形となりました。前年同月比を見ると、特に森永製菓・明治はユーザー数を大きく伸ばしていることが分かります。
次に、直近1年間のサイト訪問者数推移を比較しました。
デバイス:PC&スマートフォン
対象期間:2019年3月~2020年2月
明治が年間を通してトップを獲得していますが、特に昨年11月以降に訪問者数を大きく伸ばしています。明治は、サイト内に「インフルエンザNavi」という特集ページを設けており、インフルエンザへの関心が高まる冬の時期に流入が増加していることが伺えます。
一方、森永製菓は「森永ビスケット」とセサミストリートがコラボした期間限定キャンペーンがニュースサイトを中心に話題となり、サイト訪問者が増加しています。実店舗での購入が中心となるお菓子においては、コンテンツマーケティングやキャンペーンの告知がサイト集客の主な要因になっているといえます。
各社の集客構造は?SNSでの独自企画で心を掴む
次に、直近6か月におけるカルビー、森永製菓、明治、グリコ、ブルボンのそれぞれの公式サイトについて、流入元を比較しました。
まずは、外部サイトからの集客状況について、セッション数によるランキングを見てみます。
デバイス:PC
対象期間:2019年9月~2020年2月
セッションシェアは、セッション数に対する各企業の獲得比率を表す。
青:カルビー、赤:森永乳業、緑:明治、黄色:グリコ、水色:ブルボン
1位と3位には、カルビーとグリコの会員サイトがランクインしました。カルビーやグリコは無料の会員サービスを展開しており、登録者が定期的に公式サイトにも訪問していることが伺えます。
カルビーのファンクラブサイト「カルサポ!」
会員限定のキャンペーンやスペシャルコンテンツが用意されている。
また、各社共通してTwitterやFacebookなどSNSからの流入も多いことが特徴といえます。キャンペーン上だけでなく、商品を使ったレシピやクイズなど消費者の興味を惹く様々な情報を発信しており、訪問に繋がっています。
検索ワードでコンテンツマーケ施策を比較
続いて、各サイトの流入に繋がった検索キーワードを分析します。
カルビー・森永製菓・明治のサイトにおいて、流入につながった検索キーワードをセッション数でランキング化
デバイス:PC
対象期間:2019年9月~2020年2月
カルビーはオンラインと国内数店舗のみで展開している「グランカルビー」の検索、揚げたて商品をその場で食べることができる実店舗「カルビープラス」の検索が目立ちます。また、明治はインフルエンザに関連するキーワードで流入が圧倒的に多いです。
森永製菓は、「マフィン」「焼き方」など、レシピを検索するキーワードでの流入が目立ちます。公式サイトではレシピを多数公開しており、普段とは違うレシピを探す消費者が閲覧していることがうかがえます。
同様に、グリコ、ブルボンのサイトにおいても流入につながった検索ワードをランキング化しました。
グリコ・ブルボンのサイトにおいて、流入につながった検索キーワードをセッション数でランキング化
デバイス:PC
対象期間:2019年9月~2020年2月
商品名での指名検索が多かったブルボンに対して、グリコは「亜鉛不足」をはじめとして、健康に関わるキーワードでの検索が流入に繋がっています。同社は栄養成分百科というサイトを用意しており、健康を気を遣っている層が情報収集で閲覧していることが伺えます。
まとめ
最後に企業分析を通して分かった各社の特徴をまとめます。
カルビー・・・ファンクラブや実店舗での販売など、独自の施策を展開。サイト訪問者数増加にも寄与している。
森永製菓・・・コラボキャンペーンにより訪問者数を大きく伸ばす。自社商品を活用したレシピを掲載するなど、コンテンツマーケティングにも力を入れている。
明治・・・年間を通してサイト訪問者数はトップを獲得。インフルエンザ予防など、消費者の関心が高まる話題への情報提供が訪問者数増加につながっている。
グリコ・・・カルビー同様に会員制度を用意し、ユーザーの定期訪問を促している。健康に高い意識を持つ層に向けた情報発信を行っている。
ブルボン・・・SNSやブログ記事からの流入比率が高い。商品企画からプロモーションにおいて斬新なアイデアで独自の戦略を取り、消費者の心を掴んでいる。
今回は、お菓子業界をテーマに売上上位5社の分析を行いました。実店舗での購買が中心となるお菓子業界では、SNSの活用やキャンペーンなどの施策の方向性は同じでも、その内容は全く違うことがわかりました。
本記事の調査は、ヴァリューズのインターネット行動ログ分析ツール「eMark+」を用いて調査を行いましたが、2020年10月に新ツール「Dockpit(ドックピット)」がリリースされました。こちらの分析ツールでは、調べたいサイトやアプリは任意に指定できるため、気になる業界の動向を簡単にチェックできます。
Dockpitには無料版もありますので、ぜひ登録して実際に体験してみてはいかがでしょうか。
ヴァリューズ保有モニターパネル(20代以上)のログデータを用いて、カルビー、森永製菓、明治、グリコ、ブルボンの各社公式Webサイト訪問者の行動ログを分析。行動ログは、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用。データはヴァリューズ保有のモニターでの出現率を基に、国内ネット人口に換算して推測。
対象期間:2019年3月~2020年2月
デバイス:PC&スマートフォン
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