【解説者紹介】
「経験の有無」がコンテンツ評価に影響
安部:2023年1月のコンテンツマーケティング最新動向レポートでは、昨年のSEO重要トピックの振り返りを紹介しています。その中から今回は「EATがEEATへ変更(Google検索品質評価ガイドライン更新)」されたことをピックアップして、解説していきます。
岩間:2023年のSEO対策を考えるうえでも外せないトピックですね。ぜひ教えてください。
安部:まずEATとは何かについて、おさらいしていきたいと思います。
改めて思い出していただきたいのは、Googleはユーザーの求める、質の高いコンテンツを検索結果の上位に表示させようとしているということ。質の高いコンテンツとは具体的にどのようなものかを示す基準として、これまでは
E:Expertise(専門性)
A:Authoritativeness(権威性)
T:Trustworthiness(信頼性)
が用いられていました。いわゆるEATと呼ばれるものですね。
この基準が2022年12月15日に変更され、従来のEATにExperience(経験)が追加されたことで、「EEAT(ダブル・イー・エー・ティー)」となったんです。
変更理由は「権威性の見直し」と「AIライターへの対応」か
岩間:Experience(経験)が追加されたことで、具体的に何が変わるのでしょうか。
安部:「内容が正確で、正直で、安全で、頼れる」信頼できる情報を提供するというGoogleの方向性には、大きな変化はないと思います。
安部:Googleは、これまでも経験を評価するという姿勢を示していたのですが、なぜこのタイミングであえて経験を追加してきたのか考えたとき、あくまでも仮説ですが、僕は2つの背景があるのではないかと思います。
まず、これまでは権威性の高さが重視され過ぎていたのではないかということ。コロナ禍で信頼性のある情報がより重視されるなか、権威性のあるサイトが高く評価されることが多かったと感じています。
ただ、権威性の高いサイト(官公庁など)や監修者・ライターの記事が、ユーザーにとって本当に分かりやすいのか、実際にユーザーが活用できる情報が載っているのかと問われると、一概にそうとは言えない状況にあるのではないかと。
ユーザーファーストであることを考えたとき、権威性が重要であることは前提としつつも、そのあり方を見直しているのではと考えています。
安部:もうひとつ、可能性として考えられるのが、AIライターの存在です。GoogleはAIが書いたコンテンツも上位表示させるのか、など、SEO界隈では熱いトピックとなっています。
今回追加された「経験があるかないか」は、AIライターか人間かの大きな違いになりうると思っています。経験は、人間だからこそ持つことができるもの。Googleは、AIか人間かではなく、経験があるかないかで判断しようとしている、といった考え方もできそうです。
YMYL領域か否か?EEATへの変更が与える影響とは
岩間:経験が重視されるようになったことで、今後のコンテンツ作りにどのような影響があると思いますか。
安部:2つの方向性が考えられます。
■方向性①
まずは、YMYL(Your Money or Your Life)領域以外のコンテンツへの影響。医療やお金関係など、誤情報があった際のリスクが大きいYMYL領域に関しては、引き続き専門性や権威性が重視されていくと考えます。
YMYL領域ではないサイトに関しては、権威性よりも、ユーザーレビューのようなものが重視されていく可能性があります。例えば、洗濯のコツの話なら、科学者などが解説するより、実際にたくさん洗濯して汚れを落としてきた人の経験が重視されていくかもしれません。
■方向性②
YMYL領域かどうかにかかわらず、経験が重視されていくことも考えられます。例えば医療関係なら、これまでは権威ある医師によるコンテンツが評価される仕組みでしたが、権威性が高くなくても、普段から現場にたくさん立っている医師や看護師が書いたコンテンツのほうが信頼されるようになる、といった見方もできるでしょう。
EEATを踏まえ、マーケターがとれる対策
岩間:EATがEEATになったことで、起こりうる変化がイメージできました。マーケターはどう対応していけばよいでしょうか。
安部:信頼できるコンテンツを作っていくことの重要性自体は変わらないという前提で、これまで資格の有無や知名度、影響力といった権威性の高さを重視して、コンテンツの監修者やライターを選んでいたなら、今後は経験も見ていくことが求められるのではと考えます。このことは、EEATになったからというより、ユーザーのためのコンテンツを作るなら大切なことです。
安部:ちなみに、あくまで仮説のひとつですが、その人のSNSアカウントや個人ブログで経験を判断する可能性もあると考えています。その領域の情報をずっと発信してきている人なのかを、GoogleがSNSアカウントやブログで判断するということですね。
そこで掲載されるコンテンツが自動で作られたものではないか、経験に則した、よりオリジナルな内容か、もポイントになり得るかと。
岩間:特定の通販サイトや比較サイトで見られるように、よくレビューしている人など、一定の信頼がある人だけが口コミできる仕組みが入ってくる可能性もありますね。
安部:そうですね。とはいえ、経験があるかないかをGoogleがどう判断しているのかは、まだわからないところでもあるので、今すぐそこに大量のリソースを投入する必要はないのではないかと感じています。
岩間:確かにSEOに関わっていると、Googleがどう評価しているかがわからず、対策が難しいと感じることがあります。
安部:やはりGoogleの評価は多面的なので、これまで通りのユーザーに信頼されるコンテンツ作りを続けていくことが大切だと思います。
加えて、今回お話した通り、これまでは権威性のあるサイトが強かったため、企業ドメインが有利な状況だったと思います。しかし、経験が重視されるようになったことは、個人ブロガーと相性が良くなったという見方をすることも可能です。そのため、今後は、個人ブロガーのサイトが、若干上がる傾向が出てくる可能性もあるでしょう。検索結果画面の動きを注視していく必要があります。
以上、1月のコンテンツマーケティング動向「SEO編」でした。次月のネタも楽しみにお待ちください。
(本調査はあくまでも傾向に注目し、今後の施策における仮説立てや優先順位の検討に有効活用するためのものであり、因果関係を示すものではないこと、また、各トピックの内容やVALUESの見解は、資料作成時のものであり、今後の情勢やアルゴリズムの変化によって変わることがある旨、ご留意ください)
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IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。