自動車業界のSNS活用事例|メルセデスベンツのLINEコミュニケーションを調査

自動車業界のSNS活用事例|メルセデスベンツのLINEコミュニケーションを調査

現代人の暮らしに必要不可欠といっても過言ではないSNS。企業はSNSを自社のデジタルマーケティングやプロモーションに活用し、積極的にユーザーとコミュニケーションをとっています。特に自動車は、乗り換えまでのサイクルや購入までの検討期間が長いため、購入検討時のアプローチだけでなく、広いターゲット層とどのように恒常的に接点をもつかが重要です。今回はメルセデスベンツに注目し、同社のSNSを活用したプロモーションについて調査していきます。


メルセデスベンツの公式サイトはどんな人が訪問している?

まずはメルセデスベンツの公式サイト訪問者について分析していきます。
なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使用します。

「メルセデスベンツ」「BMW」「アウディ」公式HPの指標

「メルセデスベンツ」「BMW」「アウディ」公式HPの指標
調査期間:2022年4月〜2023年3月
デバイス:PC、スマートフォン

メルセデスベンツと同様の人気外車のBMW、アウディと比較すると、訪問者数はどのメーカーも300万人台と競り合っていることがわかります。

メルセデスベンツについて特筆すべきはページビュー数の多さ。3,500万PVと、2位のアウディの1.5倍以上の数となっています。

平均滞在時間は3分11秒と、比較的長い時間HPに滞在、検討されていることがわかります。

「メルセデスベンツ」公式HPの訪問者の男女比

「メルセデスベンツ」公式HPの訪問者の男女比
調査期間:2022年4月〜2023年3月
デバイス:PC、スマートフォン

メルセデスベンツに絞ってユーザーの詳細を見てみると、訪問者の男女比は77.8%が男性。車というジャンル的に男性が興味を持ちやすいことを考えると、男性比率が高くなることも頷けます。

車種を見ても、セダンやSUVなど男性人気の高い車種が多いことも関係しているのかもしれません。

「メルセデスベンツ」公式HPの訪問者の年代

「メルセデスベンツ」公式HPの訪問者の年代
調査期間:2022年4月〜2023年3月
デバイス:PC、スマートフォン

年代は40代、50代とミドル世代で山が高くなっています。メルセデスベンツ=高級外車のイメージがあり、新車で1番お値打ちなAクラスでも498万円からと高価格帯であることから、若い世代は手が出しにくいのかもしれません。

「メルセデスベンツ」公式HPの訪問者の世帯年収

「メルセデスベンツ」公式HPの訪問者の世帯年収
調査期間:2022年4月〜2023年3月
デバイス:PC、スマートフォン

世帯年収をみると、やはり世帯年収高めの層の割合が高くなっています。800万円以上の割合が高くなっており、特に1,000-1,500万円の層の厚さが目立ちます。

「メルセデスベンツ」公式HPの訪問者の未既婚・子供の有無

「メルセデスベンツ」公式HPの訪問者の未既婚・子供の有無
調査期間:2022年4月〜2023年3月
デバイス:PC、スマートフォン

また、訪問者の年代がミドル世代が多いこともあり、既婚者、子供ありが多くなっています。

メルセデスベンツのデジタルマーケティングを探る

ではどのようにして、メルセデスベンツは公式サイトに対して集客を行っているのでしょうか?

「メルセデスベンツ」公式HPの訪問者の集客構造

「メルセデスベンツ」公式HPの集客構造
調査期間:2022年4月〜2023年3月
デバイス:PC、スマートフォン

高級外車として名の知れているメーカーなだけあって、自然検索(検索経由のサイト訪問)が34.1%。同様にブランド知名度からか、リスティング広告からの流入が第2位となっています。

注目したいのが、4番目に位置しているソーシャル(SNS)。企業側が打てる施策としては、リスティング広告とあまり大きな割合の差はなく、注力している様子がうかがえます。

利用率の高いLINEでの囲い込みに注力

では、ソーシャル(SNS)経由の訪問において、具体的な流入元の内訳はどのようになっているのでしょうか。

「メルセデスベンツ」公式HPのソーシャルからの訪問経路の割合

「メルセデスベンツ」公式HPのソーシャル経由の流入元の割合
調査期間:2022年4月〜2023年3月
デバイス:PC、スマートフォン

ソーシャル(SNS)からの訪問経路の内訳をみると、LINEが82.7%と大半を占めています。
LINEはその他のSNSと違い、友だち登録をすると直接コミュニケーションを取ることができ、メッセージもターゲットに分けて細分化して送ることができるため、より密にコミュニケーションが取ることができるSNSです。

総務省統計局による「人口推計」のデータ、ならびにDockpitのデータを用いて作成
期間:総務省統計局「人口推計」:2022年10月、Dockpit:2022年12月
デバイス: スマートフォン(各SNSのスマホアプリ)
※20-60代のみ

また、LINEは主要SNSの中でも日本人の利用率が最も高いことも、メルセデスベンツがLINEに注力している理由かもしれません。

では、LINEから公式サイトへ訪問しているユーザーは、サイト内でどのようなコンテンツを見ているのでしょうか?

LINE経由で「メルセデスベンツ」公式HPに訪問したページ

LINE経由で「メルセデスベンツ」公式HPに訪問があったページ
調査期間:2022年4月〜2023年3月
デバイス:PC、スマートフォン
※調査日の2023年4月20日時点の遷移先

1位は「新型Cクラスの試乗への送客目的と考えられるページ」。現在は遷移先が変更されてしまっているため推察になりますが、URLに「campaigns/c-testdrive-cp/」とあるため、Cクラスのテストドライブのキャンペーンであることが考えられます。

メルセデスベンツオンラインショールームキャンペーンページ

2023年4月に開催されたキャンペーンのオンラインショールームへの送客ページへの訪問者数も目立ちます。こちらのキャンペーンでは、「Garmin」のスマートウォッチが抽選でプレゼントされています。

一つのリンクだけではなく複数のリンクから送客しているので、LINEの中でもどの部分から訪問しているのかを計測しているのかもしれません。

Mercedes_EQ(電気自動車)の1Day試乗キャンペーンページ

その他にはMercedes_EQ(電気自動車)の1Day試乗キャンペーンなどもありました。こうしたキャンペーンの告知を、LINEアカウント登録者という顕在層に当てることで、継続的に顧客と接点をもち、囲い込みを行っていることがうかがえます。

検討層へのアプローチから購入後のアフターフォローまで、LINEに集約

最後に、メルセデスベンツがLINEアカウントでどのような内容を訴求しているか、実際にアカウントを見ながら調査していきましょう。

メルセデスベンツの公式LINE「自分にぴったりのクルマを探す」機能

出典:メルセデスベンツLINE公式アカウント

メルセデスベンツの公式LINEは「自分にぴったりのクルマを探す」機能が充実しており、ユーザーはLINE上でボタンを押していくだけで、手軽に自分に合った車種を探す事ができます。

そこから公式サイトへと遷移させて、見積シュミレーションやオンラインショールームを通して、さらに細かくユーザーの目的にあったアプローチをすることが可能です。

さらに、LINE公式アカウント上から試乗予約をすることもできます。

メルセデスベンツLINE公式アカウント試乗予約

出典:メルセデスベンツLINE公式アカウント

また、購入後もLINEでサポートしてくれます。メルセデスベンツに興味を持っている人、すでに所有している人どちらに対してもLINEをうまく活用し、囲い込みを行っているといえます。

メルセデスベンツLINE公式アカウントオーナーの方へ

出典:メルセデスベンツLINE公式アカウント

まとめ

今回は、自動車業界のSNSを活用したプロモーションについて、メルセデスベンツのLINE公式アカウントを例に分析しました。

メルセデスベンツはLINEを活用して、ターゲット層にアプローチを行い、ユーザーと継続的にコミュニケーションをとって効果的に集客を行っていることがわかりました。

特にSNSはユーザーとの距離が近く、コミュニケーションが取りやすいことから、集客の肝になりうる媒体です。直接ディーラーに行って購入を検討していた時代とは違い、ネットで情報を収集するワンステップを挟む現代は、どれだけネット上で見込客とコミュニケーションをとり、来店につなげるかが鍵になるでしょう。

今後の各自動車メーカーのSNS活用から目が離せません。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

アメリカ留学中にWebの仕事に出会い、帰国後に起業。自社で物販を行う側、ライターとして活動。アウトドアが趣味

関連する投稿


組織内のデータ活用の自走化を目指す。カーフロンティアのDX推進事例

組織内のデータ活用の自走化を目指す。カーフロンティアのDX推進事例

お客さまの豊かなカーライフの実現を目的に、カーメンテ・整備・点検の総合予約サイト「timy」や、WEB予約台帳システム「PITLOCK」を展開している株式会社カーフロンティア。リアルだけでなくデジタルでの事業展開にも力を注ぐ同社ですが、ほんの数年前まではデータ活用に関する知見がほとんどなかったといいます。どのようにして社内のDXを推し進めていったのか、同社の上野谷氏と中島氏、浅野氏に伺いました。


The buzz around ChatGPT! SEO as seen in Bing user trends | Mar. 2023 Content Marketing Latest Trends Report

The buzz around ChatGPT! SEO as seen in Bing user trends | Mar. 2023 Content Marketing Latest Trends Report

Microsoft Bing has been the topic of recent discussions with the introduction of ChatGPT. The number of users is on the rise, partly due to the pandemic. In addition to Google and Yahoo!, should marketing strategy also incorporate Bing? VALUES' marketing consultants will explain the latest trends surrounding Bing.


EV市場トッププレイヤーのテスラ。関心層の人物像とカスタマージャーニーとは?

EV市場トッププレイヤーのテスラ。関心層の人物像とカスタマージャーニーとは?

自動車業界の中でも、消費者の関心が年々高まるEV。2022年の「EV」検索者数は2020年の2倍となっています。では、EVの代表例ともいえる「テスラ」の関心層はどのような人で、どのような検討行動を行っているのでしょうか。検討者をクラスタリングし、実際のカスタマージャーニーも追いながら、テスラのターゲット理解を目指します。


EV販売台数で世界2位の中国メーカーBYD、日本上陸。国内消費者の反応は?

EV販売台数で世界2位の中国メーカーBYD、日本上陸。国内消費者の反応は?

テスラを筆頭に電気自動車(EV)市場が急速に拡大する中、中国のEV大手、BYDが日本市場への進出を果たしました。日本の自動車メーカー各社がEVを開発していく中で、BYDの参入はどのような影響を与えるのでしょうか。今回はBYDについて、どのようなユーザーが関心を持っているのか、比較されているのはどんなメーカーなのかを分析していきます。


タイの最新バイク事情 ライフスタイルの変化でバイクは生活の足から余暇の楽しみへ進化

タイの最新バイク事情 ライフスタイルの変化でバイクは生活の足から余暇の楽しみへ進化

タイでは、ここ数年で庶民の足である小型バイクの市場が活性化しています。バイク市場の現状とその背景にある庶民のライフスタイルの変化について、ご紹介します。


最新の投稿


化粧品業界の最新動向は?新たな展開やマーケティング事例を紹介

化粧品業界の最新動向は?新たな展開やマーケティング事例を紹介

コロナ禍を経て急速な変化を遂げている化粧品業界。コロナ禍からの回復を期待される中、新たなビジネスチャンスやマーケティング戦略の創出によって業界は活気づいています。この記事では、化粧品業界の最新動向やマーケティングの成功事例などについて詳しく解説します。化粧品業界のマーケティングに携わる方はぜひ参考にしていただければ幸いです。


SNSの影響度と利用状況は?Z世代購買者の5割はUGCを参考に【スマートシェア調査】

SNSの影響度と利用状況は?Z世代購買者の5割はUGCを参考に【スマートシェア調査】

SNSマーケティングプラットフォームOWNLY(オウンリー)を開発・運営するスマートシェア株式会社は、2023年4月に全国15~59歳の男女630名を対象に、SNSの影響度と利用状況について調査を実施しました。


節約への意識高く、節約の主な理由は貯蓄・投資【ビズヒッツ調査】

節約への意識高く、節約の主な理由は貯蓄・投資【ビズヒッツ調査】

株式会社ビズヒッツは、全国の男女498人を対象に「節約のために取り組んでいることに関する意識調査」を実施し、そのデータをランキング化しました。


3C分析ツール「Dockpit」にカスタムダッシュボード機能を搭載 誰でも簡単に業務・目的別のデータ分析やモニタリングが可能に

3C分析ツール「Dockpit」にカスタムダッシュボード機能を搭載 誰でも簡単に業務・目的別のデータ分析やモニタリングが可能に

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、直感的なダッシュボードで誰でも簡単に3C(自社・競合・市場)分析できるツール「Dockpit(ドックピット)」に、既存のメニューを跨いで自由にカードを組み合わせてダッシュボードが作成できる「カスタムダッシュボード」機能を追加いたしました。キーワード分析、競合分析、業界分析の各種機能を自由に組み合わせることで、業務・目的別にデータ分析やモニタリングをおこなうことが可能になっています。


値上げの影響を受けたのは約8割!値上げの対策は「ポイ活」が1位【LENDEX調査】

値上げの影響を受けたのは約8割!値上げの対策は「ポイ活」が1位【LENDEX調査】

5月16日に経済産業省が電気料金の値上げについて認可をしたことから、2023年6月から各電力会社で電気料金の値上げをすることが発表されました。これによって、北海道電力、東北電力、東京電力エナジーパートナー、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の7つの電力会社で電気料金が値上げされます。電気料金以外でも昨今様々なモノが値上げされています。今回、ソーシャルレンディングサービスを提供する株式会社LENDEXは、20代~60代の男女を対象に、「値上げ」に関する調査を実施しました。消費者はその値上げに対してどのように思っているのでしょうか?


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ