中国定性調査サービス“百路QIC”で見た、中国における「都市市場」VS「下沈市場」の今

中国定性調査サービス“百路QIC”で見た、中国における「都市市場」VS「下沈市場」の今

昨今の中国の購買力や経済力を押し上げる原動力となるのは、中国総人口の7割を占める「下沈市場」だと言われています。対して中国国内1級〜2級の都市からなる「都市市場」との違いはどのようなところにあるのでしょうか。ヴァリューズ独自の中国定性調査サービス「百路QIC(ヴァリュークイック)」を用いて「都市市場」と「下沈市場」のライフスタイル意識や購買チャンネルなどを比較調査しました。


中国総人口の約7割を占める「下沈市場」とは?

下沈(かしん)市場とは、中国の3級都市以下の都市部及び農村のことです。この下沈市場は人口母数が大きく、中国の総人口の7割を占めています。消費能力の向上、及びインフラ投資拡大などの理由で近年注目を浴びている市場と言えるでしょう。
では、下沈市場で暮らす人々の生活実態は、都市市場とどのような違いがあるのでしょうか。
中国定性調査サービス「百路QIC(ヴァリュークイック)」を使って調査しました。

※都市市場と下沈市場の分け方
今回、ヴァリューズが独自保有する中国パネルを用いた定性調査サービス「百路QIC」を使い、中国人生活者を「都市市場在住者」と「下沈市場在住者」に分け、それぞれの生活実態と購買実態を調査しました。

都市市場在住者と下沈市場在住者の生活実態〜ネット・ライフスタイル・健康・美容

まず、1日のネット利用時間にはどのような違いがあるのか見てみます。

平日のネット利用時間に関しては、都市市場在住者は下沈市場在住者より長いことがわかりました。平日と休日に関係なく3時間以上ネットを利用する人の割合は、都市市場在住者が下沈市場在住者より約10%高くなっています。

よく利用する媒体に関しては、都市市場は「Wechat」、下沈市場は「テレビ」という結果に。
また、都市在住者は「Weibo」「Red」など情報系の媒体をより利用する傾向にあり、一方、下沈市場在住者は「TikTok」、「Kuaishou」といったショートムービーアプリをより利用することがわかりました。ショートムービーアプリで「地域情報」を取集する頻度が高いこともわかりました。

ライフスタイルについての意識・関心を見てみると、都市市場在住者、下沈市場在住者のいずれも「背伸びせず自分に合ったものを使う」層が最も多く、特に都市在住者は下沈市場在住者より1割も多いという結果になりました。
都市市場在住者は自分の趣味や生き方、自由時間、自分独自の信念をより意識していることが読み取れます。

健康意識においては、都市市場在住者、下沈市場在住者いずれも「1日3食の規則正しい食事をとるようにしている」と回答する層が最も多く、両者を比較すると都市市場在住者のほうが1割多い結果になりました。
都市市場在住者は「朝食は必ず食べる」「健康のために白湯を飲んでいる」「健康食品ではなく、普通の食品で健康を維持したい」など普段の食事をより気をつけていることがうかがえます。

次は美容意識についてです。都市市場在住者は「美容食品ではなく、普通の食品で美容を維持したい」と考えており、下沈市場在住者は「黒ゴマ、ハトムギなど美容効果のある食材を意識的に食べている」など、居住地を問わず全体として健康的な食生活を重視する傾向があることがうかがえます。
また、下沈市場在住者は美容関連の最新情報をより多く取集したり、美容食品やサプリメントを飲んでいることがわかりました。

都市市場在住者と下沈市場在住者の購買実態〜購入品の生産国・購入チャンネル

今回の調査では消費財を対象に、過去1年以内に購入した商品の生産国などについて調査しました。その結果、すべての商品カテゴリの1位は中国となりました。特にスナック菓子は9割、オーラルケア商品は8割が、中国産商品を購入されています。

日本産の購入率が最も高い商品はいずれも「スキンケア化粧品」となっています。都市市場在住者は4割弱、下沈市場在住者は2割の方が、過去1年間に日本産の化粧品を購入していることがわかりました。
また、都市市場在住者では日本産、下沈市場在住者ではアメリカ産の人気があると読み取れます。

購入チャンネルの結果を見てみましょう。半数近い都市市場在住者と下沈市場在住者は総合スーパーで商品を購入していますが、オンラインでの購入となると、都市市場在住者は「Taobao」と「JD」を併用することが多く、下沈市場在住者は「Taobao」と「Tiktok」をメインで使用して購入することがうかがえます。

続いて商品購入時に重視するポイントの結果も見てみましょう。
居住地を問わず「コストパフォーマンス」と「品質・性能の良さ」が重視するポイントとなりました。
都市市場在住者は、より「口コミや評価」「有名ブランド・メーカであること」など大衆の考えを重視するのに対して、下沈市場在住者は、より「家族や知人に勧められたこと」など、自分に近い人たちの考えを重視する傾向がうかがえます。

まとめ


今回は、中国定性調査サービスの百路QICを用いて、都市市場在住者と下沈市場在住者の違いについて分析しました。その結果、以下のような特徴が見られました。

・下沈市場在住者は都市在住者に比べ、1日のネット利用時間はやや短く、よく利用する媒体も「TikTok」や「Kuaishou」などショートムービーアプリの割合が高い。地域情報を投稿する人が増えているため、下沈市場在住者にとって「TikTok」は従来の娯楽目的としてだけのアプリではなく、情報取集媒体、商品購入プラットフォームとしての一面がある。
・都市市場在住者、下沈市場在住者はいずれも「背伸びせず自分に合ったものを使う」層が最も多く、以前のように爆買いや高価な商品の購入は減少傾向にあると考えられる。
・日本産商品の購入に関しては、都市市場在住者のほうがより積極的に購入している。

中国定性調査サービス百路QIC(ヴァリュークイック)

今回の調査に利用したのはヴァリューズが独自に開発した中国市場向けの定性調査サービス「百路QIC(ヴァリュークイック)」です。調査結果を最短2週間で得ることができ、従来よりスピーディーな調査が実現します。

この百路QICは中国人消費者モニターの登録者数が1万人を突破したことによりリニューアルされ、モニター属性も多様化し対象エリアが拡大したことで、より幅広いテーマの調査に対応できるようになりました。
指定したテーマについて中国人消費者本人が写真や動画で自身の生活実態を紹介する機能なども追加し、よりリアリティを感じられる調査が可能になっています。


中国定性調査サービス「百路QIC」を使った中国関連テーマの分析事例は下記資料におまとめしています。ぜひダウンロードください。

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この記事のライター

株式会社ヴァリューズ マーケティングリサーチャー

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