Z世代のお金の使い方・働き方の最前線「ラウド・バジェティング」「リゼンティーズム」| 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年6月)

Z世代のお金の使い方・働き方の最前線「ラウド・バジェティング」「リゼンティーズム」| 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年6月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、Z世代を中心に広がっているお金の使い方や働き方の価値観について紹介します。


「ラウド・バジェティング」積極的にNOと言う節約意識

■ラウド・バジェティング(Loud Budgeting)とは

Z世代やミレニアル世代を中心に「ラウド・バジェティング(Loud Budgeting)」という節約の価値観が広がっています。ラウド・バジェティングとは、直訳すると「声高に主張する予算管理」。周りに自分のお財布事情を隠さずオープンに話そう、という動きです。

例えば、友人から食事の誘いを受けたとき、提案されたお店が予算オーバーだったとします。そういった時になんとなく経済的な理由からは断りづらく、無理して誘いに乗ってしまったり、「予定があるから」などと他の適当な理由をつけて断ってしまう時があるかもしれません。ラウド・バジェティングが広めているのは、こういった状況で本音を隠さず伝えてみようということです。自分の予算を相手に正直に伝えることで、予算内に収まる別の予定に変えてもらうことにも繋がります。そして何よりも、オープンに話すことで予想外の出費を抑えることができ、経済的な不安から逃れられることは大きなメリットと言えるでしょう。

■流行のきっかけはTikTok

ラウド・バジェティングという言葉は、アメリカニューヨーク在住のLukas BattleによるTikTok投稿がきっかけで広まりました。ラウド・バジェティングを説明した動画は、2024年6月現時点で再生数150万回、いいね数18.3万にまで広がっています。

@lukasbattle Replying to @operelly ♬ original sound - Lukas Battle

Lukas Battleは、2023年に流行したクワイエット・ラグジュアリー(Quiet Luxury)という言葉の意味をそのままひっくり返してラウド・バジェティング(Loud Budgeting)という言葉を生み出しました。

クワイエット・ラグジュアリーについてはこちらの記事で紹介しています。

「クワイエット・ラグジュアリー」「Japandi」など...海外トレンドに見るビジネスの種(2023年10月)

https://manamina.valuesccg.com/articles/2843

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、アメリカ出身の著者が、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、ロゴに頼らないシンプルなデザインで、スローファッションの考え方とも通ずる「クワイエット・ラグジュアリー」と、日本の「侘び寂び」とスカンジナビアの「ヒュッゲ」を融合させたスタイル「Japandi」に注目しました。

■共感を呼んでいる理由

Z世代やミレニアル世代は、学費ローンの返済があることに加えて、物価や家賃が高騰する状況下で贅沢を言っていられないと感じていることから、ラウド・バジェティングの考え方が一般人の感覚として多くの共感を呼んでいるようです。

Lukas Battleの投稿動画でも紹介されていたように、ラウド・バジェティングは「十分なお金がないから」ではなく、「(そのことに)お金を使いたくないから」という気持ちの表明でもあります。ラウド・バジェティングは、経済的に余裕がないといった意味合いには重点を置かず、あくまでも自分の目標のために積極的に予算管理に取り組んでいることを周りに伝えるというコンセプトです。このような発想の転換となる考え方が浸透することによって、ラウド・バジェティングを実践する人は、誘いを断って人付き合いの機会を逃す不安から少し逃れることができ、代わりに自分の経済的な目標に近づいたとポジティブに捉え直すことにも繋がっています。

【参考文献】
https://www.glamourmagazine.co.uk/article/loud-budgeting-financial-trend
https://www.marketwatch.com/story/tiktok-users-say-loud-budgeting-is-in-for-2024-its-kind-of-a-joke-but-experts-say-it-could-help-you-b3697922
https://www.cnbc.com/2024/01/29/how-a-tiktok-comedians-call-for-loud-budgeting-can-help-your-wallet.html

「リゼンティーズム」Z世代に広がる仕事観

■コロナ後のアメリカのワークトレンド

パンデミックを経験してから変化が起きている働き方への価値観。私生活と仕事のバランスを見直す人が増え、2022年にはアメリカを中心に「クワイエット・クイッティング(Quiet Quitting、静かな退職)」という言葉が流行しました。

クワイエット・クイッティングとは、必要最低限求められる職務だけを遂行する働き方のこと。将来のキャリアや目標のためではなく、日々の生活で心身ともに余裕を持って過ごすことに重点を置いています。「ハッスル・カルチャー」(キャリア最優先で自分の生活を犠牲にするような働き方)に疑問を抱き、それに反発する動きとしてZ世代を中心に広がっています。

■クワイエット・クイッティングの進化系、リゼンティーズムとは

そして2024年には新たにリゼンティーズム(Resenteeism)という言葉が広がり始めています。リゼンティーズムとは、Resentment(憤り)とAbsenteeism(欠勤)を掛け合わせた言葉です。次の職を探すことに困難を感じ、今の仕事に満足しないまま続けている状態のことを指します。クワイエット・クイッティングにはワークライフバランスの充実を図りながら仕事を続けるというポジティブな側面もある一方で、リゼンティーズムは仕事を辞めたくても辞められないというネガティブな意味合いが強くなっています。

■世代別の仕事に対する価値観 リゼンティーズムに至る背景は

アメリカの労働者を対象にしたSurveyMonkeyの調査(※1)によると、仕事への意識についてZ世代の47%が「惰性で働いている(Coasting)」と回答。他の世代は、「充実して働いている(Thriving)」という回答が最も多かったのですが、Z世代だけが「惰性で働いている(Coasting)」という回答が他の項目を上回っていました。

また、仕事へのモチベーションについて「気合いが入っている」「給与のために働いているだけ」のどちらが自分に当てはまるかという質問をしたところ、「給与のために働いているだけ」を選んだ割合は、Z世代42%、ミレニアル世代37%、X世代31%、ベビーブーマー世代26%(※2)という結果になりました。若い世代ほど給与のために働いているという感覚が強いことが明らかになりました。また、仕事に満足していない人の割合が最も高いのもZ世代でした(Z世代19%、ミレニアル世代15%、X世代11%、ベビーブーマー世代8%)。

調査対象者全体の66%が「(過去12ヶ月で)給与よりインフレ率の方が上昇していた」と回答しており、経済的に厳しい状況が続いていることも、仕事から得られる充実感が低くなってしまう要因として挙げられます。

(※1)SurveyMonkey Workforce Survey April 2024
https://public.tableau.com/views/CNBCWorkforceApril2024/Desktop?:embed=y&:sid=&:display_count=n&:origin=viz_share_link
2024年4月の調査、アメリカの労働者5,993人が対象
(※2)世代区分: Z世代(27歳以下)、ミレニアル世代(28〜43歳)、X世代(44〜59歳)、ベビーブーマー世代(60〜78歳)

■リゼンティーズムから脱するには

同調査内で、仕事への意欲を向上するために会社が改善できる事柄について、全世代共通で給与や福利厚生の充実という回答があがりました。その他にも、特にZ世代は自主性や信頼関係、社員同士の繋がりを他の世代より求めていることが分かりました。これらの要素を改善することが、Z世代社員の働く意欲を向上させる鍵となるかもしれません。

【参考文献】
https://www.cnbc.com/2024/04/23/bosses-have-a-problem-gen-z-quiet-quitting-is-out-resenteeism-is-in.html?&qsearchterm=gen%20z
https://www.surveymonkey.com/curiosity/cnbc-workforce-survey-april-2024/

この記事のライター

大学ではポルトガル語と言語学を学び、常に様々な外国文化や言語に興味がありました。
海外情報に関する記事を通じて、何かヒントに繋がる新たな視点や面白い発見をお届けできればと思います。

関連する投稿


【無料レポート】2026年最新!海外インナーケア2か国調査~専門家を信じるアメリカの「エビデンス志向」、TikTokで買うタイの「ソーシャル共感志向」の実態とは?

【無料レポート】2026年最新!海外インナーケア2か国調査~専門家を信じるアメリカの「エビデンス志向」、TikTokで買うタイの「ソーシャル共感志向」の実態とは?

アメリカおよびタイの生活者におけるインナーケアの位置づけを深掘り調査。2か国の生活者のインナーケア活用実態や商品購入時の重視ポイントなどにもとづいて、健康・美容意識の傾向を読み解き、それぞれの市場におけるインナーケア商品の差別化要因を考察しました。対象2か国への市場展開・参入をするにあたり、有効な商品価値やアプローチ方法を検討・判断するための意思決定材料となるレポートとなっています。※本レポートは記事のフォームから無料でダウンロードできます。


【無料レポート】タイ機能性食品市場2026〜健康に何を選び、どう買うのか

【無料レポート】タイ機能性食品市場2026〜健康に何を選び、どう買うのか

タイの機能性食品市場について、日本から見えるのは市場規模や売り場の概況までです。生活者が健康のために何を摂り、どう買っているのかまでは、なかなか見えてきません。本レポートでは、機能性のある食品・飲料の8カテゴリを対象に、タイの消費者2,475名に独自のアンケートで聞きました。健康のために何を選び、いくら払っているのかを、データで確かめています。※本レポートは記事のフォームから無料でダウンロードできます。


Z世代女性、コスメ・服選びでAIに「自分に合うか」を相談【MERY調査】

Z世代女性、コスメ・服選びでAIに「自分に合うか」を相談【MERY調査】

株式会社MERYは、全国の15歳~30歳の女性を対象に実施した「Z世代の購買に関するMERYアンケート」の結果を発表しました。


「防老」から「享老」の時代へ ~ 中国シニア市場の新動向と日本企業の参入機会

「防老」から「享老」の時代へ ~ 中国シニア市場の新動向と日本企業の参入機会

変わりゆく中国の高齢化の現状やシニア層の価値観・ライフスタイル。その変化を体系的に紹介するとともに、従来の医療・保障を中心とした「防老」(老後の備え)から、自我実現や社会参加を目的とした「享老」(老後の享受)へとシフトする消費心理および市場動向について解説。中国市場参入を計画する日本企業にとって、参考となる中国シニア市場の今をまとめました。


中国の若者に人気なのはドッグフードならぬ「ヒューマンフード」?「人糧」の魅力とは

中国の若者に人気なのはドッグフードならぬ「ヒューマンフード」?「人糧」の魅力とは

中国の社会人の若者の間で、「人糧」と呼ばれる食事が今、人気を集めています。「ドッグフードの人間版」のような自虐的なニュアンスの名前を持ちながら、忙しい彼らにとって生活の助けになっています。本稿では、この人糧の特徴や魅力について紹介します。


最新の投稿


大企業の公開PDF、タイトル情報の未設定が半数超【パワーメディア調査】

大企業の公開PDF、タイトル情報の未設定が半数超【パワーメディア調査】

株式会社パワーメディアは、TOPIX Core30構成企業30社が公式サイトで公開しているPDF資料を対象に、タイトルや作成者などの文書情報(メタデータ)とセキュリティ設定の状況を調査し、結果を公開しました。


電通プロモーション、共感と対話を重視したSNS投稿設計をAIで支援

電通プロモーション、共感と対話を重視したSNS投稿設計をAIで支援

株式会社電通プロモーションは、株式会社電通PRコンサルティングと共同で、エンゲージメントとLTV(顧客生涯価値)につながる関係づくりにつながる関係づくりを支援する新たなメソッド「PR driven SNS」を開発したことを発表しました。


生成AIのおすすめ、約8割が信頼も約6割はWeb検索で再確認【NEXER Group調査】

生成AIのおすすめ、約8割が信頼も約6割はWeb検索で再確認【NEXER Group調査】

株式会社NEXER Groupは、「消費者のAI検索と企業情報への信頼度・選定行動調査」を実施し、結果を公開しました。


オウンドメディアのAI検索対策、8割超が実施も「十分」は23%【PRIZMA調査】

オウンドメディアのAI検索対策、8割超が実施も「十分」は23%【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、オウンドメディアの運用に携わる担当者1,000人を対象に、「オウンドメディアにおける一次情報の活用とAI検索対応」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


記憶に残った電車内広告、見た後の行動率は60%【オリコム調査】

記憶に残った電車内広告、見た後の行動率は60%【オリコム調査】

株式会社オリコムは、首都圏・関西の15~69歳を対象とした「広告の純粋想起」に関する調査の分析結果を発表しました。自由回答で挙がった電車内広告907件を対象に、広告を見た後に関連行動を取ったと回答した割合を算出しています。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ