「感情」で消費する中国のZ世代

「感情」で消費する中国のZ世代

新型コロナウイルスが終息した後、経済が低迷しているように見える中国ではさまざまな新しい消費現象が現れています。以前から話題となっていたシティウォーク、ペット経済、リラックス感のあるファッションや「搭子社交」など、これらの現象をよく考えてみると、一つのキーワードに辿り着きます。それが「感情」です。社会的地位を証明するためにブランド品を追い求め、他人に自慢するのではなく、現在の中国のZ世代は、むしろ自己の癒しに注目し、一つの活動や商品を購入する際に自分に「感情的な価値」をもたらすかどうかを重要視しています。この現象は中国で「感情経済」を生み出すに至りました。本記事ではこの現象について詳しく紹介します。


【無料ダウンロード】デジタル・トレンド白書2024 – Z世代トレンド・SNS動向編|ホワイトペーパー

https://manamina.valuesccg.com/articles/3770

国内外におけるZ世代の消費トレンド、Instagram、TikTok等SNSの利用実態など、2024年に反響の高かった16本のデジタル動向調査をピックアップし、白書として収録しました。(「Z世代トレンド・SNS動向編」ページ数|140P)

感情価値とは何か?

感情価値の範囲は非常に広く、ポジティブな感情価値とネガティブな感情価値があります。一般的に言われる感情価値はポジティブな感情価値、つまり人々に良い感覚をもたらし、肯定的な感情を引き起こす能力です。本来感情価値はマーケティングの概念で、顧客が感じる感情的な利益とコストの差額を指します。感情的な利益は顧客のポジティブな感情体験であり、コストはネガティブな感情体験です。顧客は製品やサービスの品質や実用性といったハードな要素を重視する一方で、消費体験における感情価値も非常に重要視します。感情価値は製品やサービスが消費者に与える感情的な体験を具体化する、無形の付加価値です。

DT研究院が発表した「2023年若者消費調査」によると、中国の若者の約半数が感情価値に基づいて消費することを望んでいます。人々は単なる物理的な商品を購入するのではなく、体験の消費者として行動しています。調査によると、今中国の消費者が精神的な消費を重視しており、特に若年層の消費者がその傾向が強いです。たとえば、ある製品が消費者に喜びをもたらすには、機能が優れているだけでなく、癒しの要素など、感情的な刺激も重要な要素となっています。

若者の消費が多くなる理由トップ3
記事をもとに、ヴァリューズが翻訳

中国のZ世代はどのような消費で感情価値を得ているのか?

現在、中国の主要なショッピングプラットフォームには、消費者に感情的価値を提供する様々なバーチャル商品が登場しています。たとえば、試験を受ける学生を応援するための「試験応援サービス」、失恋した人を慰める「失恋慰めサービス」など、バラエティに富んだサービスが提供されています。これらはまだニッチなサービスではありますが、中国の若者の日常生活に重要な役割を果たし、大きな経済効果を生み出している商品もあります。その代表例が「ブラインドボックス」です。

止まらないブラインドボックス

ブラインドボックスとは、消費者が事前に具体的な商品のデザインを知ることができないランダムな特性を持つ玩具ボックスを指します。このトレンドは日本で「ミニフィギュア」という名前で誕生し、欧米で人気を博した後、「ブラインドボックス」としても知られるようになりました。その実体は日本人にも馴染みの深いガチャガチャの箱入りバージョンです。とはいえ、中国のブラインドボックスはおよそ1000~1300円と決して安くはありません。1シリーズ12種類ほどで、1~2種類のレアアイテムが含まれていることが多いです。このブラインドボックスは一種のトレンド玩具として、中国の若者市場にうまく浸透しました。文具、美容製品、お菓子、玩具など、さまざまな「ブラインドボックス+」ビジネスモデルも急速に展開されています。現在中国のショッピングモールではブラインドボックスの自動販売機が至る所に見られ、その周りには若者たちが集まって購入している光景がよく見られます。

中国の知名ブラインドボックスのブランド「POP MART」

「Z世代」は旺盛な消費力と強い購買意欲を持ち、ブラインドボックスのランダム性や未知性は、彼らが求める新鮮さや刺激を満たします。ブラインドボックスを収集することは、若者たちにとって大きな楽しみとなり、彼らはソーシャルメディアで自分の「戦利品」やユニークなコレクションを共有することも好みます。このようにしてブラインドボックスは若者たちの間でさらに影響力を拡大しているのです。

ペット経済

もう一つ注目されるのは中国で急速に拡大しているペット経済です。
ペット産業の消費規模は急速に拡大しており、伝統的なペットフードや用品に加えて、ペットの写真撮影、ペット教育、ペットマッサージ、ペット葬儀といったサービスも若者の注目を集めています。また、一部の若者はペット探偵やペットコミュニケーター、ペットインフルエンサーなどの新しい職業にも関わっています。

ますます拡大するペット消費市場規模
記事をもとに、ヴァリューズが翻訳

タオバオや天猫では、ペットのおやつを購入する消費者の50%以上が19歳から30歳の年齢層であり、「Z世代」はペット産業の成長を牽引する主要な原動力となっています。特にペット用品、特にペットフードを選ぶ際には、消費者は品質と安全性を最も重視し、価格はそれに次ぐものです。
従来の世代とは異なり、若者はペットを「家族の一員」として捉え、ペットにより良い生活を提供することを厭いません。自分にお金を使うよりも、ペットにお金を使う方が満足感が高いのです。ペットを飼うことは充実感や達成感を伴い、直接的な喜びと感情的なフィードバックを得られる体験です。若者にとってペットを飼うこと自体が一種の感情消費と見なされています。

占いにハマる中国の若者たち

ここ数年の経済低迷の中で中国の若者は異常に迷信的になり、今や「大事は生年月日で占い、小事はタロット、無事は星座」というフレーズが若者の間で流行しています。
抖音(Douyin/中国版TikTok)で「タロット」や「星座」と検索すると、関連する話題は数十億回の再生数を誇り、数多くのタロット占い師が短編動画プラットフォームでファンの疑問に答えています。
NetEaseのデータ研究チームによると、今年3月に発表された「インターネット占い調査」では、若者が占いの主要な利用者になりつつあり、占いを経験したことがある若者の割合は78.81%に達し、そのうち70%以上がオンラインで占いを行っています

オフラインの「占い屋台」と比べ、インターネット占いは即時性や手軽さなどのメリットがあり、若者たちの選択肢は生年月日占いに限らず、本命星座、タロット占い、夢占いなど多岐にわたっています。
Bilibili(中国版のYoutube)では百本以上のエピソードがあるドキュメンタリー『中国風水文化』は200万回以上の再生数を誇り、中国古代命理学は253.9万回の視聴を記録しています。また、「三分間であなたも六壬占術を使えるように」「タロット入門シリーズ」などの動画も、多くの忠実な視聴者を持っています。

Bilibiliにおける風水に関するドキュメンタリー

インターネットでの玄学ブームは一方で神秘主義そのものの魅力から来ています。人は常に未知の事柄や運命に強い好奇心を抱くものです。また一方で社会の激しい競争や日常生活での挫折による不安や迷いといったネガティブな感情も、若者たちが心の癒しを求め、神秘主義に転向する要因となっています。この熱狂の背景には巨大な潜在消費市場が存在していることを示しています。

未来への展望

ブラインドボックスやペットの飼育、占いに至るまで、その根本にあるのは消費者が追い求める感情価値です。この感情価値が消費者に正確に提供されるとき、その消費には一種の中毒性さえもあります。中国のZ世代はほとんどが一人っ子であり、高速に発展する社会環境の中での激しい競争が若者たちに精神的なストレスを蓄積させています。社会がますます孤独化する中、人々の脆弱な感情を捉えた者こそがビジネスチャンスを手にするのです。

参考文献

【イラストで知ろう!イマドキ中国】 「盲盒」とは何ぞや?
http://j.people.com.cn/n3/2021/0318/c94476-9830259.html
“Z世代”消费观啥样?注重“情绪价值” 追求品质生活
http://www.news.cn/fashion/20240820/b31bd402fcaf482da28afbad394200e8/c.html
互联网算命仍在疯狂“收割”年轻人
http://www.21jingji.com/article/20220125/herald/0f36d6a4368df4092c1eaaee267b20bd.html
算卦、塔罗、风水……年轻人沉迷互联网“算命”?
https://36kr.com/p/1389759043091459


【Z世代をより理解したい方へ】総ページ数140P以上のZ世代ホワイトペーパーの無料ダウンロード

ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。今回、国内外におけるZ世代の消費トレンド、Instagram、TikTok等SNSの利用実態など、2024年に反響の高かった16本のデジタル動向調査をピックアップし、白書として収録しました。

ホワイトペーパーの詳細・ダウンロードは
データ分析のヴァリューズ、 「デジタル・トレンド白書2024 – Z世代トレンド・SNS動向編」を公開をチェック

この記事のライター

広東省出身の中国人留学生。現在は名古屋大学でメディアを専攻している。

関連するキーワード


中国トレンド調査 中国市場

関連する投稿


より早いスピード感で手軽に調査をスタート!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」とは【第1回】

より早いスピード感で手軽に調査をスタート!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」とは【第1回】

トレンドの変化が速い、と言われている中国市場。「最近、中国市場の変化が掴めない。言語の壁もあり、中国人生活者の考え方がよくわからない。」というのも多く耳にします。従来の調査には1ヶ月以上の時間が必要ですが、サブスクリプション型のWeb調査ツール「ValueQIC(ヴァリュークイック)」なら、言語の壁を感じることなく最短1週間で調査結果を確認することが可能です。第1回は、その特徴を事例とともにご紹介します。※本資料は記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


中国で勢いを見せる「氷雪経済」を最新調査

中国で勢いを見せる「氷雪経済」を最新調査

2022年に開催された北京冬季オリンピックの「オリンピック効果」によって、中国では「氷雪経済」の成長が加速しています。アイススポーツを中心にレジャー、文化などを総合的に巻き込むこの経済システムは、広いサプライチェーンと高い集客効果を持っています。本記事では、氷雪経済が中国にどのような変化をもたらしているのかを調査しました。


2025年の中国春節消費の新トレンド 〜 Z世代が牽引する新年の風潮

2025年の中国春節消費の新トレンド 〜 Z世代が牽引する新年の風潮

2025年の春節(旧正月)が終わり、中国の都市や農村の至るところで、まだ新年の余韻が感じられます。しかし、例年と異なり、今年の中国の春節消費はより個性的でデジタル化が進んでいます。Z世代(1990年代後半から2010年代初頭に生まれた世代)が春節消費市場の中心となりつつあり、年貨(春節用の買い物)や贈り物の選び方、そして春節文化の楽しみ方において新たな価値観を生み出しています。本記事では2025年中国の春節の消費トレンドを詳しく分析します。


中国の健康消費の新トレンド ~ 若者に人気の「中式養生水」

中国の健康消費の新トレンド ~ 若者に人気の「中式養生水」

中国の経済発展につれ、飲料の選択にも変化が見られるようになりました。かつては、炭酸飲料が売上ランキングを独占していましたが、中国人の健康意識の高まりとともに、高糖分の飲料が体に与える負担が認識されるようになり、無糖茶飲料が新たな市場の主役となりました。無糖茶は、さっぱりとした味わいと低カロリーという特徴を持ち、健康志向の消費者のニーズを満たしてきましたが、過去には味わいと機能性の両面で十分に満足させるものではありませんでした。こうした中、さまざまな改良が加えられ、伝統的な養生理念と現代的な飲料の形態を融合させた新カテゴリー「中式養生水」が登場し、注目を集めています。


スマート家電は生活の質を向上させる?中国におけるスマート家電の利用実態を調査

スマート家電は生活の質を向上させる?中国におけるスマート家電の利用実態を調査

近年のデジタル化や購入支援政策も相まって、中国国内でスマート家電が広く普及し始めました。スマート化によって利便性や機能性が向上すると謳われていますが、実際のところはどうなのでしょうか?ヴァリューズ独自の中国定性調査サービス「ValueQIC(ヴァリュークイック)」を用いて、ユーザーの本音を明らかにしました。


最新の投稿


約5割がWeb広告運用の成果に「満足していない」!約8割が広告運用の成果把握に課題を実感【富士フイルムビジネスイノベーション調査】

約5割がWeb広告運用の成果に「満足していない」!約8割が広告運用の成果把握に課題を実感【富士フイルムビジネスイノベーション調査】

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社は、事業会社に勤めており、Web広告の運用に携わっているマーケティング担当者を対象に、広告運用と成果把握に関する実態調査を実施し、結果を公開しました。


人新世をめぐって ~ 人が起源の地質革命

人新世をめぐって ~ 人が起源の地質革命

SDGs(持続可能な開発目標)という言葉にも慣れ、人類と環境の関係に関しても再考が必要との認識が深まりつつある今。人類が我がもの顔で地球資源やそれら環境の利益だけを享受する行動を制し、あらゆる自然環境と共存するという考えとその行動を真剣に追求することを急がねばならない時に来ているかもしれません。本稿では「人新世(じんしんせい)」というワードをキーに、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、人類と地球の歩んできた歴史関係の精緻な理解の薦め、そして未来のために今とるべき行動は何かを問いかけます。


LINEヤフー、法人向けサービス「LINEプロモーション絵文字」の正式提供を開始

LINEヤフー、法人向けサービス「LINEプロモーション絵文字」の正式提供を開始

LINEヤフー株式会社は、法人向けサービス「LINEプロモーション絵文字」の正式提供を、4月1日より開始したことを発表しました。


ReBearとOshicoco、Z世代の決済手段と消費行動についての合同調査結果を公開

ReBearとOshicoco、Z世代の決済手段と消費行動についての合同調査結果を公開

α・Z世代に特化したリサーチプラットフォームを運営するReBear合同会社と、推し活領域を専門としたマーケティング企画会社である株式会社Oshicocoは、「Z世代の決済手段と消費行動の多様化」について合同調査を実施し、結果を公開しました。


より早いスピード感で手軽に調査をスタート!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」とは【第1回】

より早いスピード感で手軽に調査をスタート!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」とは【第1回】

トレンドの変化が速い、と言われている中国市場。「最近、中国市場の変化が掴めない。言語の壁もあり、中国人生活者の考え方がよくわからない。」というのも多く耳にします。従来の調査には1ヶ月以上の時間が必要ですが、サブスクリプション型のWeb調査ツール「ValueQIC(ヴァリュークイック)」なら、言語の壁を感じることなく最短1週間で調査結果を確認することが可能です。第1回は、その特徴を事例とともにご紹介します。※本資料は記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ