成長市場のクラフトビール、大手メーカーのWeb集客戦略は?キリン「スプリングバレー」が人気か

成長市場のクラフトビール、大手メーカーのWeb集客戦略は?キリン「スプリングバレー」が人気か

マイナス基調にあるビール市場のなかで成長を続けるクラフトビール市場。近頃は大手メーカーの参入が続き、競争が激化しています。そんななかで各社はどのような戦略を取っているのか。本記事では、大手ビールメーカーのクラフトビールに加え、Amazonで人気の定番クラフトビールをピックアップ。各ブランドのWeb集客の特徴や強みを分析していきます。


日本国内のビール市場は厳しい状況が続いています。 大手ビールメーカー4社が発表したビール系飲料の去年1年間の販売実績によると、各社の販売数量や売り上げはいずれも前年比マイナスとなり、ビール類市場は16年連続で前年割れとなりました。

そんなマイナス基調にあるビール市場の中で、成長を続けるのが「クラフトビール」。若者の“ビール離れ”が広まる中で、クラフトビールが堅調に伸びているのはなぜでしょうか。

その理由の一つには、若者のビールの嗜み方の変化があります。今の若者はビールを”ぐいぐい”飲むというより、自分のペースで”ちびちび”とゆっくり飲むスタイルが定着しつつあります。消費者が自分の好みの味わいを選べる多様性が特徴のクラフトビールは、こうした若者の飲み方にマッチしています。

しかし実は、ビール販売量におけるクラフトビールの国内シェアは、0.9%(2019年)とまだ小さな存在です。ビール消費大国である米国が13.6%(2019年) であることを考えると、日本ではまだまだ成長の余地があると考えられます。(参考:『見てわかるビール市場 「クラフト」が創造的破壊者に』

そんな中、いまでは店舗でもよく見かけるようになったクラフトビール。最近では大手メーカーによる参入が相次ぎ、競争はより一層激化しているように感じます。実際に、キリンホールディングスの中期経営計画、サントリービールの2020年の事業方針の中ではクラフトビールが取り上げられており、サッポロビールはクラフトビールと銘打ってはいないものの、自主開発したホップや個性的なビールを取り揃えています。

そこで今回はクラフトビールに焦点を当て、大手企業を含む各クラフトビールメーカーのWeb集客戦略やプロダクトの特徴を、徹底的に調査していきます。

【関連記事】“第3のビール”の公式サイト訪問者数を調査!圧倒的な強さを見せたのは「金麦(サントリー)」

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気温も高まり、アルコール飲料がより美味しく感じられる季節になってきました。新型コロナの影響もあり、巣ごもり消費でビール業界にも変化があったのではないでしょうか?そこで、今回は第3のビール(新ジャンル)に絞って、公式サイト のユーザー動向や属性などについて掘り下げてみたいと思います。

大手メーカー3社+クラフトメーカー3社のブランドを取り上げる

今回の調査では、大手ビールメーカー3社が発売しているクラフトビールに加え、Amazonの売れ筋ランキングでコンスタントに上位に入っている定番クラフトビールを合わせた、以下の6社のクラフトビールを取り上げます。

1位/2位:ヤッホーブルーイング インドの青鬼/よなよなエール
3位:キリンビール SPRING VALLEY 豊潤 (スプリングバレー)
6位:ヒューガルデン ホワイト瓶
9位:銀河高原ビール
14位:サントリー TOKYO CRAFT (東京クラフト)
52位:サッポロビール HOPPIN' GARAGE (ホッピンガレージ)


※表記の順位は2021年10月7日時点でのAmazonの売れ筋ランキングから表記しています。

SPRING VALLEY 豊潤 (スプリングバレー): https://www.springvalleybrewery.jp/
TOKYO CRAFT(東京クラフト) : https://www.suntory.co.jp/beer/tokyocraft/
HOPPIN’ GARAGE(ホッピンガレージ) : https://www.hoppin-garage.com/
よなよなエール / インドの青鬼 : https://yonasato.com/ec/
ヒューガルデン ホワイト瓶 : https://hoegaarden.jp/
銀河高原ビール : https://gingakogenbeer.com/

※キリングループはヤッホーブルーイングと資本業務提携の関係にありますが、今回は別々に調査しています。

各クラフトビールのサイト集客力は?SPRING VALLEYが好調か

まずは、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて、各公式サイトへの訪問ユーザー数(UU数)の推移を分析、各社のWeb集客の現状を確認してみましょう。

各クラフトビールブランドのサイトUU数推移
期間:2020年9月~2021年8月
分析ツール:Dockpit

SPRING VALLEY(青色)は全国発売を開始した2021年3月に最も多くのユーザーを獲得しており、その後も継続して集客に成功しているようです。

また、クラフトビールのパイオニアともいわれるヤッホーブルーイングのよなよなエール(グレー)は、1年を通して安定してユーザーを獲得していることが分かりました。

HOPPIN' GARAGEは女性に、TOKYO CRAFTは男性に人気か

では、どのような人がどのクラフトビールに関心をもっているのでしょうか。性別のユーザー割合に特徴が出ていたのでご紹介します。

各クラフトビールの性別ユーザー割合
期間:2020年9月~2021年8月
分析ツール:Dockpit

全体の傾向として、やはり男性ユーザーの割合が高いですね。

その中でも特に男性の割合が高いのは、サントリーのTOKYO CRAFT。一方、女性の割合が最も高いのはHOPPIN' GARAGEでした。ヒューガルデンは飲みやすい味わいや西洋風のデザインから女性向けの印象の強いですが、HOPPIN' GARAGEの方が女性比率が高いのは意外な結果ではないでしょうか。

集客構造から各社のプロモーション戦略を調査

続いて、各ブランドのプロモーション施策を探るべく、Webサイトへの集客構造を比較してみます。

各クラフトビールブランドの集客構造
期間:2020年9月~2021年8月
分析ツール:Dockpit

「クラフトビール」クエリを抑えるヤッホーブルーイングが自然検索では優位か

自然検索からの集客は、SPRING VALLEYとよなよなエールが顕著に高くなっていました。特によなよなエールは他の流入経路と比較しても自然検索の割合が最も高くなっています。

これら2つのサイトに、ユーザーはどんな検索キーワードで流入してきているのでしょうか。

下記はSPRING VALLEYとよなよなエールの2サイトについて、自然検索での流入数の多いキーワードをランキング形式で示した結果です(Dockpitを用いて分析)。

検索キーワードシェア(青:SPRING VALLEY、ピンク:よなよなエール)
期間:2020年9月~2021年8月
分析ツール:Dockpit

流入キーワードは、「よなよなエール」「スプリングバレー」「水曜日のネコ」など、ブランド名の名指し検索が多いですね。

注目したいのは、よなよなエールは「クラフトビール」「クラフトビールとは」といった検索キーワードからの流入を獲得している点です。クラフトビール自体への理解度や、各ブランドへの認知がまだ低い段階のユーザーを集客できていることが、よなよなエールが自然検索からの集客に成功している要因のひとつと言えそうです。

キリンビール公式サイトからの導線が機能するSPRING VALLEY

外部サイトからの流入割合はSPRING VALLEYが特に大きいです。

そこで外部サイトからの流入経路をランキング形式で確認してみると、SPRING VALLEYではキリンビールの公式サイトや会員サイトからの流入が大部分を占めていることが分かります。

SPRING VALLEY 豊潤の外部サイトからの流入経路ランキング
期間:2020年9月~2021年8月
分析ツール:Dockpit

多くの訪問ユーザーを獲得している公式サイトから、SPRING VALLEYのブランドサイトへの導線がしっかりと機能していることで、たとえば「スプリングバレー」の製品名を覚えておらずブランド名で検索できないが、「キリンのクラフトビール」として認識している層を取りこぼさず集客できていると思われます。

キリンビール公式サイト内のブランドサイトへのリンクページ

SNSからの集客が強いクラフトビールはどこか?

SPRING VALLEY、よなよなエール、HOPPIN’ GARAGEの3ブランドは、メール経由、ソーシャル経由の集客に成功しているという共通点があります。特にSPRING VALLEYはソーシャルからのサイト集客が他のブランドと比較しても大きな割合を占めています。

そこで、SPRING VALLEYのソーシャル施策について、詳しく調べてみます。

SPRING VALLEY 豊潤のソーシャル流入構成と流入セッション推移
期間:2020年9月~2021年8月
分析ツール:Dockpit

分類できているソーシャル流入の中では、Twitterからの流入が最も高くなっています。

また、先ほどのサイトユーザー数推移の結果では、全国発売を開始した2021年3月に最も多くのユーザーがサイトに訪問していましたが、ソーシャルからの流入に絞ってみてみると、2021年7月に多くの流入を得ていることがわかります。

SPRING VALLEYがどんなTwitter施策を打っていたのか気になるところです。そこで、2021年7月ごろに行われていたキャンペーンを確認してみます。

SPRING VALLEYのブランドムービー視聴キャンペーン

こちらは、ソーシャル経由の流入の中で、最もセッション数の多かったランディングページです。

キャンペーンの内容は、
1.キリンビール公式Twitterアカウントをフォロー
2.対象の投稿のリンクからブランドムービーを視聴し、Twitterで視聴完了投稿

という手順をふむと、抽選で1年分のSPRING VALLEY があたる、というもの。

ファンがキャンペーンを通してTwitterに投稿し、それをみた人がキャンペーンサイトに流入する、という流れにより、認知拡大に成功しています。実際に、Twitterで「#スプリングバレー」のハッシュタグを検索してみたところ、ファンの方々がおつまみとセットの写真を投稿したりと、自己流の楽しみ方を投稿されている人が多く、盛り上がっている様子が見受けられました。

ファンとの関係づくりが特徴のHOPPIN’ GARAGE

また、サッポロビールのHOPPIN’ GARAGEではメール経由の流入割合が最も高く、CRM施策に重点をおいていると思われます。開封率やクリック率の高いメルマガを配信できているのではないでしょうか。

ブランドキャラクターである「ホッピンおじさん」からのメルマガでは、クーポンや最新イベント情報を配信

HOPPIN’ GARAGEの最も大きな特徴は、その製法にあります。水、麦芽、ホップ、酵母にくわえて、「魅力的な人々の人生ストーリー」をもとにビールを生み出す「ストーリーブリューイング」と呼ばれる製法が用いられています。

HOPPIN’ GARAGE おつかれ山ビール

例えば、お酒と自然と子供をこよなく愛する、登山アプリを手がける「YAMAP」専属ガイドである前田 央輝さんの人生ストーリーをもとにつくられた「おつかれ山ビール」。実際に「山」に登った人だけではなく、仕事や家庭など、人生における大小さまざまな「山」を乗り越えた、すべての人に向けたビールです。

このHOPPIN’ GARAGEのプロモーションには、ファンとの関係性づくりにおいて以下のような特徴があります。

ひとつは、HOPPIN’ GARAGEの大きな特徴である「人生ストーリー」。
同ブランドではファンから自身の人生ストーリーを募集しており、それを「RADIO HOPPIN' GARAGE」という番組でYouTubeに公開しています。また、ファンにとっては自分のストーリーがそのまま商品化される可能性があります。
実際に商品化された人生ストーリーはこのラジオや、note、ブログ、インスタグラムなど多くのメディアで共有され、そのビールを飲んだ人はインスタグラムのハッシュタグ「#ホッピンガレージ」で投稿する、という流れができています。みんなで一つのストーリーを共有し、みんなで一緒に体験をつくっていくのが大きな特徴です。

もうひとつは、ファンへの途切れのない接点づくり。
ホッピンおじさんからのメルマガに加え、2か月に一度、個性的な新作ビールが届く「ホッピンおじさんの新作定期便」が顧客のロイヤリティを高めています。さらに、ラジオやブログ、毎月開催しているオンラインイベントなど、コアなファンが参加できる「場」が豊富に用意されていることも特徴の一つです。新商品発売時には、オンライン飲み会なども開催しているようです。

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ヒット商品の成功の裏側には、プロダクトをいかに世間へ浸透させていくかという戦略が隠れています。本記事では、そんなマーケティング戦略の重要な要素である「セグメンテーション」について、各社のインタビューやデータから秘訣を探っていきます。

まとめ|ブランドの個性が心をつかむ時代に

ヤッホーブルーイングのインドの青鬼、よなよなエールに加えて、ヒューガルデンのホワイト瓶や銀河高原ビールは今でも根強い人気を博しており、これまで長く愛されてきました。そんな中、ここ数年のうちに大手各社が発売を開始したクラフトビールはいずれも個性的で、すでに人気を集めています。

例えば、キリンビールのSPRING VALLEY 豊潤<496>は、「これぞ、クラフトビール」のメッセージ訴求からも見受けられるように、本物感、重鎮感を感じさせるクラフトビールです。

一方、サントリーのTOKYO CRAFTは、「ホッと寛ぎたい自分時間に。いつもと違う料理と共に。そんな特別な時間に寄り添えるペールエール」というコンセプトを訴求しており、おうちで過ごす日常のなかに特別な時間を、という昨今のコロナ禍の状況を加味した”シーン訴求”が特徴のクラフトビールでした。

また、サッポロビールのHOPPIN’ GARAGEは、魅力的な人々の人生ストーリーをもとにつくる製法が特徴のクラフトビールで、ファンとの関係性に強みをもっています。

大手各社の趣向を凝らしたこれらのクラフトビールの人気は、Amazonの売れ筋ランキングからみても明らかです。これまで長く愛されてきたクラフトビールブランドに対し、大手メーカーのクラフトビールは今後どう市場に浸透していくか、クラフトビール市場の動向には、今後も目が離せません。

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インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、国内の20歳以上の男女10,007人を対象に、新型コロナウイルス感染拡大前後での食生活の変化や食に対する意識変化をアンケートにて調査しました。

<分析概要>
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「Dockpit」を使用し、2020年9月~2021年8月のネット行動ログデータを分析しました。
※ユーザー数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』は、競合サイト分析や消費者のトレンド調査に役立ちます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

2022年4月に新卒としてヴァリューズに入社しました。それまでは大学院でダイヤモンド半導体について研究しつつ、ヴァリューズの内定者アルバイトとして働いていました。

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