MaaSとは?
MaaSは「Mobility as a Service」の略で、「マース」「モビリティ・アズ・ア・サ―ビス」などと読みます。このMaaSとは、多種多様な移動ニーズに応えるために情報・予約・決済を統合した移動/輸送サービスのことを指します。
さらにMaaSは「サービスとしてのMaaS」と「インフラとしてのMaaS」の大きく2つに分かれます。前者は商業的な意味合いが強いもので、後者は社会保障・セーフティーネットとしてのMaaSです。具体的な例は後ほど紹介します。
■フィンランドのMaaS Global社が発祥
MaaSはもともとフィンランドで提唱された概念です。2009 年、フィンランド政府は環境政策のロードマップを発表しました。その方策のひとつとして盛り込まれたのが「自動車依存からの脱却」です。それを契機に官民連携で研究が進み、MaaSの元となる概念が誕生しました。さらに2015 年には MaaS Global 社が「Whim」というアプリを開発し、すでにヘルシンキで実用化されています。
このWhimは、公共交通機関やタクシー、カーシェアなどの予約・支払いをひとつのアプリでおこなえるサービスです。Whimを活用すると、複数の交通手段をよりシームレスに利用できます。実際にヘルシンキではWhimの導入前と導入後で比べると、自動車の使用率が下がり、公共交通機関の利用率が上がったそうです。
■日本でもMaaSでさまざまな社会課題の解決が期待される
日本でもMaaSへの期待は高まっています。CO2 削減、過疎地域の移動手段確保、都市部の渋滞解消など、数多くの社会問題解決の糸口になると考えられています。
なかでもMaaSが過疎地域の移動手段確保に果たす役割は少なくありません。超高齢社会に突入し、国内のいたるところで過疎が見られ、さらには高齢者ドライバーの事故も話題に事欠きません。
日本のMaaS事例を紹介
MaaSの概念をより具体的につかむためいくつかの実例を見ていきましょう。
■MaaS事例:小田急MaaSアプリ「EMot」
「EMot(エモット)」は小田急電鉄が提供するMaaSアプリです。2019年10月から2020年3月までの間、実証実験がおこなわれています。EMotの役割は「複合経路検索」と「電子チケットの発行」の大きく2つ。
複合経路検索は前述のWhim同様、鉄道・バス・タクシー・シェアサイクルなどを組み合わせての経路検索ができ、アプリを通じて予約・決済も可能です。電子チケットの発行は、飲食チケットの購入、買い物額に応じた無料モビリティチケットの配付などがそれにあたります。たとえば、駅ビルで一定額以上を買い物した利用者に対して、駅から自宅バスの運賃を無料にするといったサービスが提供されます。
■MaaS事例:トヨタ「e-Palette」
トヨタ自動車が開発を進めている「e-Palette」は、Autono-MaaS専用EV(電気自動車)です。
Autono-MaaSとは、自動運転車を意味する「Autonomous Vehicle」と「MaaS」を組み合わせたトヨタの造語。e-Paletteは「すべての人に移動と感動を」をコンセプトに、低速移動・バリアフリーなど乗降客や周囲に配慮した設計になっているのが特徴です。
2020年の東京オリンピックでは、選手村内の巡回バスとして導入される予定になっています。先日、発表されたばかりのトヨタの実証都市「コネクティッド・シティ(静岡県裾野市)」でも、人・モノの輸送にこのe-Paletteが利用される報道が出ています。
インフラとしてのMaaS事例
最後に、インフラとしてのMaaSの実例をご紹介します。ここ数年、日本各地でMaaSの実証実験が官民連携でおこなわれています。
たとえば島根県太田市では、MaaSアプリの導入に加えて、定額タクシーの取り組みが実施されています。利用者は月額3300円払えば、地域のタクシーを何回でも利用できます。まだ実験段階ではあるものの、高齢者の移動手段の確保、移動ニーズのミスマッチの解消が見込まれます。
MaaSは成熟社会の問題を解決する
先進国の多くは少子高齢化という問題を抱えています。日本も高齢化社会で2019年現在、65歳以上の高齢者の割合は約3割にものぼります。このような社会では、MaaSが重要な役割を担っていくことでしょう。環境負荷低減やQOL(Quality of Life)の向上など、MaaSは現代社会の問題を解決してくれるかもしれません。
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