タクシー配車アプリ勢力図の変化到来か?再編や新規参入など話題多数
タクシーは街頭でつかまえるか、電話で配車予約するかといった時代から、今ではスマートフォンで簡単にタクシーを呼ぶことができる「タクシー配車アプリ」。このテクノロジーの進化と共にタクシー業界では生き残りをかけた再編が近年激化しています。
2020年に入ってからのニュースを見ても業界再編の波を思わせるニュースが続いています。
4月には「JapanTaxi」と「MOV」の事業統合が発表され、現行の「MOV」のアプリをベースとした「GO」という新サービスが早くも9月には展開される予定であることも明らかになり、7月には、以前まではハイヤー手配のみだった「Uber」が、東京都(一部限定)にて日の丸リムジン・東京エムケイ・エコシステムの3社との連携でタクシー配車に参入したと発表。これら勢いを感じる中、「DiDi」においては全国の一部地域からの撤退が発表されたりと、タクシー業界の勢力図に変化が生じている時期が来ているとも言えるでしょう。
今回はこれらタクシー配車アプリのうち、2020年7月時点でサービス提供している以下の5つの主要アプリを比較、調査しました。
図:主要タクシーアプリ アイコン一覧
(左より「Uber」、「Japan Taxi」、「MOV」、「DiDi」、「S.RIDE」)
主要5アプリのユーザー数及び各属性を比較、調査
では、各アプリのユーザー数や属性を見ていきましょう。以下の一覧は5つのアプリのサービス提供エリアとサービス内容の一部を抜粋した一覧です。
サービス提供エリアにばらつきがあるものの、ユーザーデータからはどのような属性の違いが現れるでしょうか。
図:主要5アプリ サービス抜粋一覧(2020年8月時点)
■ユーザー数は「Japan Taxi」が首位
まず2020年2月から7月の直近半年間のユーザー数の変化を見てみます。
コロナ禍で外出が激減したためか一時は各社ユーザー数が減少したものの、2020年6月ごろから各アプリ共に右肩上がりを見せています。
首位は継続して「Japan Taxi」。日本全国47都道府県で使える唯一のタクシーアプリという点が大きな強みでしょうか。ユーザー減少後の2020年5月と直近の7月を比べると+56%の伸長となっています。
同じく2020年7月を5月からの伸長率で見ると、首位「Japan Taxi」と4月に事業統合を発表した「MOV」の伸長も+61%と高く、今後「Japan Taxi」と統合される新アプリ「GO」の登場でどのように変化するか注目です。
そして、7月に「Uber Taxi」を開始した「Uber」は+12%伸長(同じく2020年5月比)。
タクシー配車サービスについてはまだ立ち上がったばかりの段階といったところでしょうか。こちらもこれからのサービスエリア拡大と共に期待です。
図:ユーザー数推移
期間:2020年2月〜7月
デバイス:スマートフォン
■全てのタクシーアプリにおいて男性の利用が多い傾向
続いて性別で見ると、全アプリの半数以上が男性の利用となっています。特に多かったのは「S.RIDE」の69.9%。半数以下ではありますが、女性の利用率で一番多かったのは45.9%の「MOV」という結果に。
図:ユーザー数 性別
期間:2020年2月〜7月
デバイス:スマートフォン
■年代別では利用アプリにばらつき
年代別で見てみるとばらつきが現れています。20代の利用率が高いのが「DiDi」で35.2%。一方、50代、60代に関しては「S.RIDE」で比較的、比率が高くなっていました。
図:ユーザー数 年代別
期間:2020年2月〜7月
デバイス:スマートフォン
■サービス提供エリアの差はあるものの、関東地方の利用が多数
アプリによってサービス提供エリアに差があるものの、全体的に見て、関東地方で利用されているケースが多いようです。全国エリア展開をしている「Japan Taxi」では関東の割合が57.2%ありました。(※「S.RIDE」に関しては関東地方のみのサービス提供)
また、近畿地方では「MOV」の利用が35.1%という数値も目立ちます。
「DiDi」は関東地方23.1%、近畿地方で26.4%、九州地方でも20.8%と比較的高めです。7月より一部地域から撤退したものの、全国主要都市にまんべんなくユーザー保有していると推測できました。
図:ユーザー数 地域別
期間:2020年2月〜7月
デバイス:スマートフォン
■職業別では業務利用が主と見るも、生活の足利用が見られるケースも
職業別においては「会社勤務(一般職員)」「会社勤務(管理職)」で、全てのアプリともにほぼ半数以上との結果となりました。やはり業務利用での移動などが殆どでしょうか。
その一方、数字は小さいですが、「専業主婦(主夫)」の利用も平均して6.2%という結果が現れました。タクシーが生活の足となっている数値なのではないかと推測できそうです。
図:ユーザー数 職業別
期間:2020年2月〜7月
デバイス:スマートフォン
■アプリ併用は77.8%が単一アプリ利用との結果に
いくつもの配車アプリがある中、意外にも77.8%との多くが一つのアプリのみを利用しているという結果になりました。
中でも多数だったのは「Japan Taxi」のみの利用が69.3%。次に単独利用が多かったのは「Uber」の59%となっています。
「MOV」も「DiDi」も単独利用が50%を超えていましたが、「Japan Taxi」と「Uber」の併用もそれぞれに一定数見受けられました。「MOV」と「DiDi」には併用利用者が比較的多いと言えそうです。
「S.RIDE」に関しては、46.5%が単独利用の一方で、ほぼ同数の46.6%が「Japan Taxi」を併用しているという興味深い結果に。どのように使い分けているのかが気になるところです。
図:併用「アプリ」数 円グラフ
期間:2020年2月〜7月
デバイス:スマートフォン
図:アプリ併用状況「Uber」から他アプリ
図:アプリ併用状況「Japan Taxi」から他アプリ
図:アプリ併用状況「MOV」から他アプリ
図:アプリ併用状況「DiDi」から他アプリ
図:アプリ併用状況「S.RIDE」から他アプリ
タクシー業界のIT進化に注目!タクシー車内広告のデジタルサイネージ化
タクシー業界のIT化の進化の加速は、2020年夏に開催予定だった東京オリンピックにむけたものという説もありましたが、いずれにせよ急速なキャッシュレ化や、車種に関しても乗り降りしやすい低床フラットフロア・電動スライドドア式が増えるなど、大きな変革が見受けられます
その変革の一つとして注目したのは、タブレット端末の導入に乗じた後部シート向けモニターでの「デジタルサイネージ広告」の増加です。
実際2019年12月時点で、先の5つのアプリの内「Uber」を除く実に4つのアプリ対応タクシーが、タブレット端末を活用した広告事業に乗り出しているとの発表もあり、個室の空間でじっくり吟味してもらえるのはタクシー広告の最大のメリットとも言われるその市場予測は、年々拡大方向にあるというデータも出ています。
そもそもデジタルサイネージ自体が拡大傾向にあり、2019年のデジタルサイネージ広告市場規模は、749億円(前年比113%)となる見通しとの発表(2019年12月時点)もありましたし、また2023年には、2019年比1.7倍の1,248億円になると予測も出されています。
これらデジタルサイネージの中でも、特にタクシー広告については2016年以降、首都圏を中心に急速な普及がみられ、法人向けサービスを提供する広告主からの需要が急増から、タクシーにおける2019年のデジタルサイネージ市場規模は24億円、2020年には48億円、さらに2023年には2019年比約3倍の75億円規模に達すると予測されているとのことです。
これらの予測数値より、タクシー業界の革新の波は、タクシー業界だけでなく広告業界にも影響があると言えそうです。
まとめ
近年のタクシーにおける様々な変革により、タクシー業界の変化は、数多ある業種のなかでも特にIT化への勢いを感じていた人も多くいるのではないでしょうか。
続々と開発されている「タクシー配車アプリ」。昨今の業界再編やシステム統合で、これからどのように差別化をはかり生き残っていくのか。また、さらなるIT・デジタル化によりタクシーの利便性はどう変わるのか、これからの動向にも大いに注目です。
調査概要
全国のモニター会員(20代以上)の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」を使用し、2020年2月~2020年7月におけるユーザーの行動を分析しました。
※アプリのユーザー数はAndroidスマートフォンからのアクセスを集計し、ヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
本記事ではeMark+を用いて調査を行いましたが、eMark+の機能がパワーアップした新ツール「Dockpit(ドックピット)」が2020年10月にリリースされました。まずは無料版に登録して、実際にDockpitを体験してみてくださいね。
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マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
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