なぜあの企業はスポンサーに?スポーツマーケティングに取り組む目的とメリット

なぜあの企業はスポンサーに?スポーツマーケティングに取り組む目的とメリット

企業がスポーツにお金を出す形には、大会やスポーツイベントへの協賛にスタジアムの命名権獲得、クラブや選手へのスポンサードなど色々な形があります。企業はスポーツマーケティングにより認知度の向上、ブランディングや販売促進などの目的を達成し、クラブや選手は資金源としてのメリットを得ます。企業がスポーツマーケティングに取り組む目的とメリット、具体的な事例を見ていきましょう。


スポーツマーケティングとは

用語としての「スポーツマーケティング」には、競技自体のマーケティングを指す場合と、企業がスポーツに関連したマーケティングを展開して、自社製品・サービスの宣伝や販売につなげるパターンの2種類があります。

この記事では後者の「企業がスポーツを利用してマーケティングする方法と事例」を説明します。

企業がスポーツのスポンサーになる目的とメリット

スポーツにお金を出す企業は、大会などのスポーツイベントへの協賛やスタジアムの命名権獲得、クラブへのスポンサード、選手の広告起用などを通じて、認知度の向上、ブランドイメージの構築や改善、CSR(社会貢献)、販売促進、市場ポジショニングの獲得などのマーケティング上の目的をもっています。

一方、スポーツ組織は企業から得た資金を元に、選手の獲得、設備の改善などに活用します。

このように企業とスポーツ組織がお互いの利益を交換し、それぞれの目的を達成できるWin-Winの関係を構築しやすい、これがスポーツマーケティングのメリットです。

コカ・コーラとコーセーに見るグローバル企業のスポーツマーケティング事例

日本コカ・コーラでは2009年から2015年まで、Jリーグをスポンサーしていました。その目的は同社の飲料「コカ・コーラ ゼロ」を30~40代の男性に浸透させる、というものでした。同社の分析で、ターゲットである30~40代の男性に「サッカー好き」「Jリーグを観戦する」といった行動が見られたためです。

続いて、フィギュアスケートの世界選手権やグランプリシリーズといった複数の大会をスポンサーしているコーセーの事例。コーセーのスキンケア商品「雪肌精」の全体の認知率はおよそ90%ですが、F2、F3層での認知率は約70%にとどまっていました。

そこで、F2、F3層が視聴している割合の高いフィギュアスケート大会のTV中継でCMを展開したところ、購入意向を1.2倍に上昇させる効果が出ています。

スポンサー企業は、スポーツの効果をどう見ているのか【日本コカ・コーラ×コーセー対談】

https://agenda-note.com/special/detail/id=171

 企業のマーケティング課題をスポーツがどのように解決できる可能性があるのか、そのパートナーシップのあり方を考える「Agendaスペ

Jリーグスポンサーの事例

Jリーグやサッカー日本代表に関連する企業マーケティングとして代表的なものは、1978年から始まったKIRINによるキリンカップへの協賛でしょう。これはどちらかというと社会貢献、CSRの要素が強いものでした。

一方、1991年から始まったプロサッカーのJリーグでは、各クラブの収入は広告収入・入場料収入・物販収入が3本柱となっています。このうち「広告料収入」がクラブを支援する企業からの収入です。

Jクラブ経営を支える“3本柱” サポーターも知っておくべき収益構造の基礎知識 | サッカーキング

https://www.soccer-king.jp/news/business/20170911/639321.html

 連載『あなたのJリーグライフがもっと充実! 5分でわかるサッカービジネス講座』は“読んで学ぶ講座“です。普段、Jリーグや日本代表の試合を追っているだけでは見え···

Jリーグではヴィッセル神戸の楽天や、鹿島アントラーズのメルカリなど、メインスポンサーになるには大企業あるいは成長ベンチャー企業が持つ大規模な資金力が必要に思われますが、物販でのコラボなど手頃な取り組みも見られます。

たとえば、2019年に「niko and…」や「GLOBAL WORK」「LOWRYS FARM」といったアパレルブランドを運営する株式会社アダストリアが、J1、J2に所属する39クラブとのコラボTシャツをリリースした事例があります。

サッカー好きなデザイナーによるオリジナルTシャツは、「niko and…」の実店舗、Web店舗はもちろん、各スタジアムでも販売しました。これにより新規顧客開拓に加え販路の拡大にも成功しています。

ヤフオクドームがPayPayドームに?その狙いは

ソフトバンク系列のPayPay社が、2019年11月に「福岡ドーム」のネーミング・ライツ(命名権)を取得し、2020年シーズンから同球場は「福岡 ヤフオク! ドーム」から「福岡 PayPay ドーム」に名称変更しました。サッカーなら鹿島のメルカリに神戸の楽天、野球ならソフトバンクに楽天など、新興のネット企業がスポーツにスポンサードする目的は何でしょうか。

ドーム名に名前が入るということは、ニュース・スポーツ番組などで「PayPayドーム」が連呼されることになり、CMと同じような効果を発揮するとともに、クラブあるいは野球ファンに認知を広げることができます。実際、ヤフーのCEO川邊氏は、「人気があるソフトバンクホークスは毎晩のようにスポーツ番組で取り上げられる。それに伴い、福岡 PayPay ドームも連呼されてPayPayの認知度向上を期待している」と述べています。

「ヤフオクドーム」は「PayPayドーム」に--川邊社長が狙いを語る

https://japan.cnet.com/article/35144805/

ソフトバンクグループ、ソフトバンク、ヤフーの共同出資会社であるPayPayは11月1日、福岡ソフトバンクホークスが管理する「福岡ドーム」のネーミング・ライツを取得し、2020年シーズンから、球場名を「福岡PayPayドーム」(通称:PayPayドーム)に変更すると発表した。PayPayドームのロゴなどについてはまだ詳細は発表されておらず、11月24日に公表するとしている。

まとめ

スポーツのスポンサーになるイコール、商品やサービスの宣伝やイメージアップといった面に目が行きがちです。しかし、スポーツマーケティングを駆使することで、ターゲット層に対してサービスや商品を強く訴求したり、ファンへの訴求のみならずメディアも巻き込んでの認知度アップを目指したりなど、多種多様なマーケティング展開が考えられます。

また、比較的小規模な予算でも行える物販でのコラボのような取り組みもあります。自社の商品・サービス拡大のひとつのチャネルとして、スポーツに着目してみても面白いのではないでしょうか。

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