いま、スポーツマーケティングが熱い!| 第8回 ワールドカップをデータで振り返る ラグビー編(1)

いま、スポーツマーケティングが熱い!| 第8回 ワールドカップをデータで振り返る ラグビー編(1)

競技ごとにスポーツマーケティングの動向をとりあげる連載企画。3つ目の競技は、昨年9月20日~11月2日のワールドカップで日本中、いえ世界中を熱狂させた「ラグビー」です。


ラグビーの競技人口は世界123カ国960万人(World Rugbyの公式登録プレイヤー数)で、バスケットボールやサッカーに比べると多くありませんが、2015年の770万人からは年々増加中。もっとも注目を集める種目のひとつです。

日本では公益財団法人日本ラグビーフットボール協会(Japan Rugby Football Union : JRFU)に、2019年3月時点で2,995チーム95,042選手が登録し、チーム役員などを入れると108,583人が公式に携わっています。

ワールドカップ後最初のイベントだった全国大学選手権決勝戦では前売り券が完売、1月12日に開幕したトップリーグ戦では当日券に長蛇の列ができ、これまで珍しかった女性ファンの歓声が響き渡ったとか。ワールドカップの成功をいかに次の普及策へつなげていけるかが、注視されています。

「過去最高のワールドカップ」

JRFUは、2017年に決定した「BIG TRY」と呼ぶ「日本ラグビー戦略計画2016-2020」をふまえ、登録者数20万人、総観客動員150万人、15人制代表の2019ワールドカップベスト8以上、2020オリンピックでの7人制代表メダル獲得といった目標達成へ向かっています。

先のワールドカップは2004年来の悲願成就の場であるとともに、東京オリンピック2020、そして次代へ向けた重要な節目でもありました。

主要戦略領域

「日本ラグビー戦略2016-2020」より

ワールドカップ2019の盛りあがりは皆さんご存じの通りです。48試合中3試合が台風で中止を余儀なくされたものの、チケットはほぼ完売して観客数は170万人。各都市1箇所以上に設置されたファンゾーンにも113万人が集いました。

テレビ中継も準々決勝の日本対南アフリカの平均視聴率が41.6%、瞬間最高視聴率は49.1%に上り、決勝戦の南アフリカ対イングランドは平均20.5%、瞬間最高26.0%を記録しています。

ワールドラグビー会長サー・ビル・ボウモントは記者会見で「2019年日本大会はおそらく過去最高のラグビーワールドカップとして記憶されるだろう」「素晴らしく、謙虚で歴史的なホスト国であった日本と日本人に心の底から感謝したい」とコメントしていて、世界ラグビー界における日本のプレゼンス向上にも貢献したといえます。

ラグビーワールドカップ2019では、1ゲーム最大7万人超を集客

観客動員最多ゲームはやはり11/2(土)の決勝イングランドvs南アフリカで70,103人。決勝ゲームほど動員数が多い傾向ながら、9/22のアイルランドvsスコットランド戦は63,731人を集めています。

日本の出場ゲームでは10/13(日)のスコットランド戦が67,666人と最多の観客を動員しました。

ゲーム別観客動員数(太字は動員数トップ5)

ラグビーワールドカップ2019サイト
ラグビーワールドカップ2019™日本大会についてのご報告より

会場別では、総動員数、1試合あたり平均動員数ともに横浜国際総合競技場、東京スタジアム(調布市)、小笠山総合運動公園(静岡県袋井市)の順でした。

会場別の観客数

ラグビーワールドカップ2019サイト
ラグビーワールドカップ2019™日本大会についてのご報告より

チームの強さは集客力に影響するのでしょうか。

1試合あたり平均観客数で見ると、優勝・南アフリカは51,279人、準優勝・ニュージーランドは南アフリカを上回る52,127人を集めていて、やはり強者のゲームは人気がありそうです。とはいえスコットランド戦はイングランドやウェールズを上回る1試合あたり平均50,778人を集めていて、熱心なファンが多いチームなのかもしれません。

得点数ランキングと観客数、開催期間中の訪日客数
*イングランド、ウェールズ、スコットランドの訪日客数は「英国」を3等分

「ラグビーワールドカップ2019サイトラグビーワールドカップ2019™日本大会についての
ご報告(https://www.rugbyworldcup.com/news/538422)」
及び法務省「出入国管理統計(http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_nyukan.html)」
から作成。

公式サイトは10月に300万人超

ワールドカップを盛りあげる公式サイトでは、試合日程やニュース、出場チーム情報に加えハイライト動画やグッズ、訪日外国人向けのトラベル情報など多彩なコンテンツを提供。

感動を呼んだ出場チーム国家によるおもてなしのための歌詞カードも、公式サイトのファンコーナーで配布されたものです。

試合前にも楽しめるプレビューコンテンツやハイライト動画などの多彩なコンテンツ

試合前にも楽しめるプレビューコンテンツやハイライト動画などの多彩なコンテンツ

サイト分析ツールeMark+のユーザーログでワールドカップ及び関連サイトの利用状況を確認してみると、ゲームの盛りあがりと日本チームの活躍を受け、会期中ワールドカップ公式サイトのユーザーは急増

ワールドカップ以外には2018年8月-12月、2019年6月-8月に社会人ラグビーユニオンの全国リーグ「トップリーグ」が例年通り開催されましたが、これら期間の比ではなく一挙に関心を集めたことが明らかです。

ラグビー関連サイトの利用動向

ラグビー関連サイトの利用動向

※デバイス:PC+スマートフォン
※「TL」はトップリーグ、「WC」はワールドカップの開催期間

ワールドカップ期間中は公式サイトとチケットサイトのほか、JRFUや「ラグビーリパブリック」「ラグビーHack」といったラグビーニュースサイトもユーザーを増やし、新たなファンを獲得できたものと見られます。「トップリーグ」サイトも、トップリーグ会期中よりワールドカップ会期中にユーザーが増えました。

男女とも、利用がもっとも多かったのは10月。男性は2019年通年平均の4.3倍、女性は4.5倍も閲覧していました。ただ、11月2日の決勝以降は利用が急減し、12月は男女とも2019年で最もアクセスが少ない月になりました。

ラグビーワールドカップサイトのユーザー数推移(男女別)

ラグビーワールドカップサイトのユーザー数推移(男女別)

※デバイス:PC+スマートフォン

年代別では、40代の関心がもっとも高く、9月、10月とも70万人以上が利用。30代以下の層は特に10月に関心が高まりました。

10月は全ての年代が年間最多利用をマークし、なかでも20代は年間平均の5.1倍に急増しています。60代以上は39.1万ユーザーと他の年代よりは反応が少なかったものの、それでも対年間平均4.0倍のユーザーが閲覧しました。

ラグビーワールドカップサイトのユーザー数推移(年代別)

ラグビーワールドカップサイトのユーザー数推移(年代別)

※デバイス:PC+スマートフォン

日本代表の躍進で20代の若年層ファンが急伸したと考えられるラグビー。ラグビー編(2)では、ワールドカップの経済効果を探ってみます。

この記事のライター

法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。
CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している。

関連する投稿


chocoZAP参入で、フィットネス業界各社のポジショニングはどうなった?

chocoZAP参入で、フィットネス業界各社のポジショニングはどうなった?

マナミナでは以前10社のジムを取り上げて各社のポジショニングや集客状況について分析しました。今回は特に、2022年7月の事業開始以降シェアを伸ばし続ける「chocoZAP(チョコザップ)」がフィットネス業界に与えた影響を中心に、業界の動向を追っていきます。


低価格ジムとして急成長したchocoZAPを早期に検索していたアーリーアダプターの特徴とは?

低価格ジムとして急成長したchocoZAPを早期に検索していたアーリーアダプターの特徴とは?

「コンビニジム」という呼び名としても知られるchocoZAPは、RIZAPが展開する24時間経営のジムです。2022年7月にサービスを開始してから、低価格かつ全国どこでも利用できることに加え、脱毛器やエステがセルフで利用できたり、入会で便利な機器がもらえたりと、多様なサービスによって多くの人の支持を集めています。急成長を続けるchocoZAPですが、サービス開始当初にはどのような人が興味を持っていたのでしょうか。chocoZAPというワードを早期に検索していた人を対象に、ユーザー属性を調査していきます。


プロ野球2023年の盛り上がりは?開幕初速を調査

プロ野球2023年の盛り上がりは?開幕初速を調査

3月末から開幕したプロ野球。多くのファンによって応援消費がされるプロ野球は、新聞や放送サービスにとっても重要なコンテンツです。しかし近年ではコロナ禍の影響もあり、周囲と「野球ネタ」で盛り上がる機会が少なくなり、世間の野球への関心低下が懸念されています。そこで今回は、3月の開幕初速に注目し、プロ野球に対する関心度を調査します。


chocoZAP参入でフィットネス業界各社のポジションニングはどうなる?大学生のデータドリブン就活

chocoZAP参入でフィットネス業界各社のポジションニングはどうなる?大学生のデータドリブン就活

コロナ禍の外出自粛による運動不足の懸念から、人気が伸びたフィットネス業界。様々なジムやスポーツクラブがある中、ライザップが展開するコンビニジム、chocoZAP(チョコザップ)が急成長しています。今回はそんなチョコザップを中心に、ルネサンスやカーブス、エニタイムなど計10社のジムを取り上げ、フィットネス業界の動向を調査。それぞれのジムの特徴と市場におけるポジショニング、各サイトの集客状況を分析していきます。


2022年観光関連サイト推計閲覧者数ランキング ー 都道府県別の公式観光サイトでは、全国旅行支援・県民割等の影響が顕著

2022年観光関連サイト推計閲覧者数ランキング ー 都道府県別の公式観光サイトでは、全国旅行支援・県民割等の影響が顕著

公益社団法人日本観光振興協会(本部:東京都港区、会長:山西 健一郎)と、ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:辻本 秀幸)は協同で、2022年の観光関連Webサイトの年間推計閲覧者数を調査しました。


最新の投稿


BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、全国のマーケティングコンサルタントを対象に、「BtoBマーケターが始めた方が良いこと」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


デビットカードは日本でも覇権を握るのか? 検索者の実態をクレジットカードと比較調査

デビットカードは日本でも覇権を握るのか? 検索者の実態をクレジットカードと比較調査

即時払いで決済を行うデビットカード。キャッシュレス決済全体に占める割合はまだまだ低いものの、利用者や利用場面は着実に増加しており、成長の兆しを見せています。本稿では、そんなデビットカードの検討状況について、キャッシュレス決済カテゴリのマーケットリーダーであるクレジットカードと比較し、今後の市場動向を占います。


博報堂DYMP、日本経済新聞社・東北新社と企業ブランディングのためのドキュメンタリー動画広告企画を開発

博報堂DYMP、日本経済新聞社・東北新社と企業ブランディングのためのドキュメンタリー動画広告企画を開発

株式会社博報堂DYメディアパートナーズは、株式会社日本経済新聞社、株式会社東北新社とともに、ドキュメンタリー動画を制作・提供する広告企画「日経ブランドドキュメント」を開発したことを発表しました。


2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

コンテンツには事欠かない現代ですが、話題を呼ぶ人気作には、どのような「勝ちパターン」が存在するのでしょうか。2024年に放送された新規アニメ「薬屋のひとりごと」「逃げ上手の若君」「怪獣8号」「ダンジョン飯」に、11月に劇場版が公開された「進撃の巨人」を加えて、消費者の関心を調査しました。


2024年トレンド総決算!6つのテーマのマーケティング調査で振り返る

2024年トレンド総決算!6つのテーマのマーケティング調査で振り返る

マナミナでは、国内最大規模の消費者オンライン行動データを活用して、世の中のトレンドを調査しています。2024年もさまざまなトレンドを記事として取り上げてきました。今回は調査記事の総集編として、2024年のトレンドを振り返ります。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ