いま、スポーツマーケティングが熱い!| 第9回 ワールドカップ、経済効果は? ラグビー編(2)

いま、スポーツマーケティングが熱い!| 第9回 ワールドカップ、経済効果は? ラグビー編(2)

北海道から九州まで全国12都市での開催と44日間の長期に渡る開催期間から、地域経済への貢献も期待されていたラグビーワールドカップ2019。ラグビーファンは富裕層が多く、水のように大量のビールを消費し、試合のインターバルには各地を周遊し観光にもお金を使うと期待されていましたが、実際の行動はどうだったのでしょう。ラグビー編(2)では、観光や飲食業へ与えたインパクトを探ってみます。


大会前には4,372億円の経済効果を試算

公式サイトは2018年3月に「ラグビーワールドカップ2019 大会前経済効果分析レポート」を公表し、4,372億円の経済波及効果と2,166億円のGDP押し上げ、税収拡大216億円、25,000人の雇用創出、そして訪日外国人客40万人と試算したうえ、「インバウンド観戦客誘引」「訪日外国人客の滞在日数の長期化」「産品自牛率の向上」「訪日外国人客の滞在中の消費刺激」「税収の拡大」の経済効果拡大策を掲げました。

期待経済波及効果は4,372億円

ラグビーワールドカップ『ラグビーワールドカップ2019™大会前経済分析レポート』より

これに応えて開催各地では「観戦者に向けた1000本ツアー(神奈川県)」、リピーター獲得と個人旅行者への対応やスポーツツーリズムからなる「インバウンド観光推進(九州3会場連携)」などの施策を掲げ、競技場の整備だけでなく中長期的な観光振興を視野に入れたおもてなしに取り組みました。

インバウンド40万人の目標達成、英国とロシアは単月過去最高をマーク

会期中は出場国だけで9月30万人、10月は40万人のからの外国人客が来日。米国などからの来日は普段から多いので一概にいえませんが、「大会を目的にした訪日外国人客数」40万人はどうやら無事達成といえるのでしょう。オーストラリアや3チームを擁する英国、また数は少ないもののサモアやトンガ、ナミビアなど、普段あまり馴染みのなさそうな国々からもお客様を迎えられたのは嬉しいことです。

45試合中28試合が行われた10月には、英国、ロシアからの訪日客が単月として過去最高を記録。他にも豪州、米国、カナダ、フランスの出場国からの訪日客は10月として過去最高をマークしています。

ラグビーワールドカップ2019開催期間の出場国訪日客数

(法務省出入国管理統計統計表月報より)

2019年10月に2018年10月よりも外国人宿泊者数が増えた都道府県は27。とくに香川県73,6%、福井県61.7%で増加が顕著でした。必ずしもラグビー効果とはいえませんが、長期滞在中の周遊だとしたら開催地以外への経済波及効果といっていいかもしれません。

2019年10月の外国人のべ宿泊者数

(観光庁「宿泊旅行統計調査」より作成。緑色の枠はゲーム開催地)

ただし、熊本県、兵庫県、埼玉県は、都市部へのアクセシビリティが仇になったのか、開催地なのに若干外国人宿泊者が減っていました。

ラグビー観戦外国人客は38.5万円を消費、フランス人は47.6万円

観光庁が実施した調査によると、ラグビー観戦した訪日外国人客の支出はなんと平均38.5万円観戦していない旅行者の2.4倍に上っています。

観戦した訪日外国人客のなかでも、フランスは47.6万円のうち14.9万円、オーストラリアは40.8万円のうち10.6万円を飲食費に使っていて、観戦しない訪日外国人客の飲食費3.4万円に比べると、確かにお金持ちで沢山お酒を飲んでいそうです。

観戦した訪日外国人客の支出は平均38.5万円

(観光庁「ラグビーワールドカップ2019日本大会の観戦有無別訪日外国人旅行者の消費動向」より)

スポーツ観戦費では、イングランド、ウェールズ、スコットランドの3チームを擁する英国の観戦客の8.1万円が突出しました。

消費増税後のビール業界に大きな恩恵

10月には消費税が10%に上がって酒類販売への影響が懸念されていましたが、ラグビーファンは期待通りそれを補ってくれたのでしょうか。

キリンビールの報道によると、ラグビーワールドカップ世界パートナー「ハイネケン」は、大会会場とファンゾーンで独占販売された成果で、増税にも関わらず10月単月で対前年比224%をマーク。9月から10月までの2ヶ月間では、対前年比282%と大幅増でした。ハイネケンを擁するキリンビールとしては「一番搾り缶」も同2ヶ月間で対前年115%を達成していて、ラグビーとビールは確かに親和性が高いようです。

「ラグビーワールドカップ2019™ハイネケントロフィーデザイン」

(キリンビールニュースリリースより)

日本フードサービス協会の月次外食売上高では、消費増税の影響もあって全体では前年同期比2.4%減に落ち込むなか、「パブ・ビアホール」だけは9月に11.1%、10月も2.7増。日本人も訪日外国人客も、多くのひとがパブに集いビールとゲームを楽しんだのでしょう。

英国パブ「HUB」「82」を展開する株式会社ハブのIR資料によると、とくに日本の出場ゲーム日は売上の伸びが顕著です。

HUBのイベント期間売上高

(「株式会社ハブ2020年2月期第2四半期決算資料」より)

月次売上で見ても、消費増税後に関わらず9月同様対前年同期比125.6%の売上を確保。客数は117.7%なので、単価の高いお客様を多く獲得できたようです。

HUBの月次売上高と客数

(対前年同期比、株式会社ハブ「12月度月次速報についてのお知らせ」より作成)

HUBでは2018年8月からラグビーワールドカップへ向けたプロジェクトチームを発足。様々な事前イベントで観戦を盛りあげるとともに、訪日外国人をメインターゲットとしてホームページやメール、メニュー、接客の英語対応と国外からの予約受付、通常の10倍量のビールストック確保といった取組みを進めてきました。

HUBのサイトでは、いまも日本語と英語で、ラグビーのほかにサッカーやバスケットボールなどのゲーム情報を積極的に発信しています。

HUBは1年以上かけてラグビーファンを拡大

(「株式会社ハブ2020年2月期第2四半期決算資料」より)

インバウンド増加やパブ・ビアホールの売上アップといった経済効果は、JRFUだけでなく地域や関連企業を巻き込んだスポーツマーケティングの成果といっていいでしょう。

ラグビー編(3)では、「日本ラグビー戦略計画」が掲げる「レガシーを活用した永続的発展」について、社会人リーグ「トップリーグ」のアクセスログなどから探ってみます。

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いま、スポーツマーケティングが熱い!| 第10回 ワールドカップの熱狂に持続性を ラグビー編(3)

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2019年は、日本ラグビー界にとって節目の年でした。公益財団法人日本ラグビーフットボール協会(JRFU)も「RWC2019の成功はもちろんのこと、その後に退会のレガシーをいかに残し、活用する取り組みを推進できるか、非常に重要な1年」としています(2019年度事業計画より)。目標通りベスト8入りを果たしたこのあとは、東京オリンピック2020種目の7人制強化に加え、「ジャパンラグビートップリーグ」の発展、そしてその持続性を担保するための競技人口の裾野拡大といった中長期戦略が重要です。ワールドカップの熱狂は、日本ラグビー界にどんなレガシーを残したのか、あるいは残せていないのでしょうか。

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この記事のライター

法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。
CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している。

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