いま、スポーツマーケティングが熱い!| 第10回 ワールドカップの熱狂に持続性を ラグビー編(3)

いま、スポーツマーケティングが熱い!| 第10回 ワールドカップの熱狂に持続性を ラグビー編(3)

2019年は、日本ラグビー界にとって節目の年でした。公益財団法人日本ラグビーフットボール協会(JRFU)も「RWC2019の成功はもちろんのこと、その後に退会のレガシーをいかに残し、活用する取り組みを推進できるか、非常に重要な1年」としています(2019年度事業計画より)。目標通りベスト8入りを果たしたこのあとは、東京オリンピック2020種目の7人制強化に加え、「ジャパンラグビートップリーグ」の発展、そしてその持続性を担保するための競技人口の裾野拡大といった中長期戦略が重要です。ワールドカップの熱狂は、日本ラグビー界にどんなレガシーを残したのか、あるいは残せていないのでしょうか。


今回は、サイト分析ツールのeMark+を使い、1月に開幕したラグビーのトップリーグサイト等の利用状況を中心に探ってみます。

ワールドカップ会期中にユーザー急増、終了後も勢いを維持

2019年1年間で854万ユーザーを集めたワールドカップサイトに比べると、トップリーグサイトのユーザーは年間166万人。チケットラグビーは同77万人で、ワールドカップが即ユーザー急増とはいっていないものの、トップリーグサイトにフォーカスしてみると状況はずいぶん変わっています。2018年はシーズン中でも最大20万人強だったユーザー数が、ワールドカップ会期中には40万人を越えて倍程度に。ワールドカップサイトは11月にアクセスが急減しましたが、トップリーグサイトは11月以降も勢いが衰えていないのです。

とくに女性ユーザーは、2018年通年33万人から2019年通年61万人に倍近く増えました。一般に女性ファンはチームより個々の選手に惹かれる傾向が強いので、その熱意をいかにつなぎとめるかが重要になりそうです。

トップリーグサイト(チケットサイト含む)のユーザー数推移(男女別)

トップリーグサイト(チケットサイト含む)のユーザー数推移(男女別)

※対象デバイス:PC、スマートフォン

トップリーグサイト(チケットサイト含む)のユーザー数推移(年代別)

トップリーグサイト(チケットサイト含む)のユーザー数推移(年代別)

※ラベルは各年代の最多月
※対象デバイス:PC、スマートフォン

ファンクラブへのテコ入れが鍵に?

JRFUでは、2008年から公式ファンクラブ「JRFUメンバーズクラブ」を運営。入会費1,000円、年会費3,500円(18才以下は年会費無料)を払うと、JRFU主催ゲームの招待券2枚(4,000円相当)やチケットの優先・先行予約、先行優先入場、会員限定コンテンツ、オリジナルピンバッジといった、かなりお得に見える特典があります。登録や更新、友だち紹介や来場などの応援行動に応じたポイントプログラムも提供されています。

JRFUのリリースによるとラグビーワールドカップ開催期間中10,057人が新規入会したとのことで反響は大きかったものの、会員数は11月時点で47,127人。トップリーグサイトユーザー数と比べると、もう少し会員が増えてもいいようにも思われます。JRFUの「日本ラグビー戦略2016-2020」にはファン増大のKPIとして「メンバーズクラブ会員数」と記載されているだけなのですが、バスケットボールのB.LEAGUEなどの成功事例も参考にしつつ戦略的な攻めを期待したいところです。

日本ラグビーフットボール協会公式ファンクラブ「JRFUメンバーズクラブ」の会員数

(「JRFUメンバーズクラブ ラグビーワールドカップ2019期間中に1万人超の新規入会」より作成)

ワールドカップの次につなげるには

ワールドカップを機に「にわかファン」が急増し、市場に追い風が吹いているのは間違いありません。この好機をラグビー戦略計画通り普及に活かしていくには、東京オリンピック2020での活躍はもちろん、JRFUメンバーズをコアにしたファンコミュニケーションの充実が欠かせないでしょう。

eMark+を用いて調査すると、ワールドカップ閉幕後の2019年12月、「ラグビー」で検索したユーザー自体は50万人程度まで減少していますが、併用検索キーワードからは次なる集客につながりそうなユーザーの関心も感じられます。

「ラグビー」で検索したユーザー数推移

「ラグビー」で検索したユーザー数推移

※対象デバイス:PC

男性は高校ラグビーや大学ラグビーなど、学生のゲーム自体に関心が高そうです。比較的年収も高いと思われる50才前後で「チケット」のキーワードが使われているので、メンバーズクラブのターゲットになりそうです。

女性は日本代表やワールドカップの検索が多く、昨年の余韻に浸っているのかもしれませんが、50代前半を中心に「トップリーグ」へ関心を寄せる層も存在しています。

「ラグビー」で検索したユーザーの併用検索キーワード

「ラグビー」で検索したユーザーの併用検索キーワード

※対象デバイス:PC
※集計期間:2019年12月

女子を狙うかどうか

トップリーグサイトユーザーの利用が特徴的に多いサイトからは、男性のスポーツニュース好きが明らかに。他の競技も含めてニュースを閲覧しているのかもしれませんが、ファンクラブ等の露出にこうしたメディアは活用できそうです。

女性ユーザーはそもそも母数が少ない中ではありますが、ラグビー関連サイトに加え「チケットぴあ」「チケットラグビー」「ローチケ.com」の利用が多く、観戦意欲が高いと見られます。コアファン予備群といっていいのではないでしょうか。

トップリーグサイトユーザーの利用が特徴的に多いサイト

トップリーグサイトユーザーの利用が特徴的に多いサイト

(2019年12月、男女別。ピンクはスポーツニュース、グリーンはラグビー関連、
オレンジは一般ニュース、ブルーはチケット)
※対象デバイス:PC

2020年1月現在、ワールドカップ公式Twitterのフォロワーは26.3万人、リーチ・マイケル選手は10.5万人に対し、トップリーグは5.9万人。Facebookフォロワーはワールドカップ公式アカウントが463万人、日本代表が15.8万人に対しトップリーグは3.4万人です。プロスポーツだとB.LEAGUEは14.4万人、Jリーグは22.5万人でした。

フォロワーの多寡に一喜一憂する話ではもちろんありませんが、祭りのあとも熱狂を維持し日本にラグビーを定着させていくには、トップリーグ会場を擁する自治体やラグビーファンの恩恵が証明されたビール業界といったステークホルダーとのタッグによるマーケティング強化が欠かせないのではないでしょうか。

B.LEAGUEほどの高度なデジタルマーケティングをすぐに実践できなくても、いまならワールドカップ成功の影響から味方は多いはずです。

現時点でワールドカップ閉幕後も比較的関心を維持しているのは、デジタルネイティブ世代よりも上の年代と見られます。東京オリンピック2020の好機にラグビーの魅力を訴求し続けるには、開催前に各地イベント等で行われていたような地道なPR(例えば2019年7月の文京朝顔・ほおずき市で実施されたワールドカップのバッジ無料配布など)も、案外侮れないかもしれません。

祭りのあとのラグビーがどうマーケティングを進化・深化させていくのか、今後も注目です。

この記事のライター

法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。
CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している。

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