商品やサービス普及のターニングポイント「キャズム理論」とは?

商品やサービス普及のターニングポイント「キャズム理論」とは?

新商品、サービスが市場に普及するまでの段階を示す「イノベーター理論」に対して、アーリーアダプターからアーリーマジョリティに到達するには大きな溝(キャズム)があるとする「キャズム理論」も有名です。キャズムを超え、アーリーマジョリティに普及させるにはどうしたらよいでしょうか?


キャズムの前提となる「イノベーター理論」の基礎

イノベーター理論とは、1962年にアメリカ・スタンフォード大学の教授エベレット・M・ロジャースが著書「イノベーションの普及」のなかで提唱した「商品やサービスの普及過程を5つの層に分類し、それをもとにしてマーケティング戦略や市場のライフサイクルについての検討すべき」という理論です。

普及の過程は以下の5つに分類します。

1.イノベーター(革新者)
2.アーリーアダプター(初期採用者)
3.アーリーマジョリティ(前記追随者)
4.レイトマジョリティ(後期追随者)
5.ラガード(遅滞者)

1番の「イノベーター」から昇順に普及し、イノベーターとアーリーアダプターに受け入れられば新しい商品やサービスは拡大していく、とするのがイノベーター理論です。

マーケティングの基礎知識「イノベーター理論」とは?

https://manamina.valuesccg.com/articles/1187

新しいモノやサービスが市場に普及する過程を分析する際に、「アーリーアダプター」「キャズム」などの用語は聞いたことがあるはず。これらは消費者を5つのグループに分類して分析した「イノベーター理論」の一部です。5つのグループや普及の分岐点など、イノベーター理論について解説します。

アーリーアダプターとアーリーマジョリティのあいだにある「キャズム」

さきほど紹介した2番めの「アーリーアダプター」と3番めの「アーリーマジョリティ」の間には大きな溝=キャズム(chasm)が存在する、と1991年、アメリカのマーケティング・コンサルタントであるジェフリー・A・ムーアが提唱しました。これが「キャズム理論」の概要です。

イノベーター理論では「イノベーター」と「アーリーアダプター」に受け入れられれば、商品やサービスは普及するとしていますが、キャズム理論では、アーリーアダプターに受け入れられただけでは、市場の大多数である2つの「マジョリティ」(アーリーマジョリティ+レイトマジョリティ)は受け入れない、としています。

キャズムはなぜ発生するのか?

アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に「キャズム」が発生するおもな理由は、イノベーター&アーリーアダプター(初期市場)と、アーリーマジョリティ以降の層(メイン市場)での価値観の違いを挙げています。

初期市場の代表的な価値観は「新しさ」、メイン市場におけるおもな価値観は「安心」です。初期市場はとにかく新しさのみを追求し、商品やサービスの質は求めません。一方のメイン市場が求める安心感は、失敗したくない気持ちとも言い換えられます。こうした相反する価値観の差がキャズムを生じさせます。

キャズムを超えるためには?

キャズムを超え、商品・サービスを市場に広める代表例として、以下の3つの方法があります。

・段階に応じてアピールする内容を変える
・インフルエンサーやアンバサダーを利用する
・ニッチ市場を狙う

普及段階ごとにアピールする内容を変える

初期段階(初期市場)では「先進性」をアピールし、ある程度の普及が実現したところで「安心感」~みんなが使っているからもう安心できる~を訴求すれば、キャズムの前後である初期市場とメイン市場それぞれに合致する訴求ができます。

フリマアプリ「メルカリ」のマーケティング活動はまさにこの例にあてはまります。メルカリでは、200万DL到達時にTVCMを展開しようと考えていて、200万という数字は、メルカリというサービス名を各種媒体で見たことがあったり、知り合いが実際にメルカリを使っていて、気になる存在と感じる人の割合が高くなるポイントだからとしています。

気になる人が増えたタイミングで一気に認知度を高めるためにTVCMを展開し、サービス開始から6年半で月間利用者数1500万人超、累計出品数15億品以上(2020年1月時点)という日本最大のフリマアプリに成長しました。

メルカリとラクスルが明かす、スタートアップがキャズムを超える方法

https://forbesjapan.com/articles/detail/23652

2018年5月にマザーズに上場したラクスルと、6月に上場したメルカリ。ラクスルは登録ユーザー数が60万人を突破し、メルカリは国内外合わせて1億ダウンロードを突破している。両サービスはアーリーアダプターとアーリーマジョリティとの間にある「キャ

メルカリ、初の事業戦略発表会 「Mercari Conference 2020」を開催

https://about.mercari.com/press/news/articles/20200220_mercari_conference_2020_summary/

二次流通データを軸に、パートナー企業と新たな「売買」体験を創造 フリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリは、2020年2月20日(木)、報道関係者様およびパートナー事業者様を対象に、今後の事業構想や戦略を発表するメルカリ初の事業戦略発表会「Mercari Conference 2020」を開催いたしましたので、お知らせいたします。 フリマアプリ「メルカリ」は、2013年7月のサービス開始以来、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに、個人が簡単かつ安心・安全にモノ

インフルエンサーやアンバサダーを利用して信頼感・安心感を広げる

インフルエンサー、アンバサダーという影響力を持つキャラクターに協力を仰ぎ、信頼できる人からの口コミ、という安心感を演出してもらうのも方法のひとつとして挙げられます。これにより、メイン市場での浸透度が高まります。

こうした方法で成功を収めたのが「ネスカフェアンバサダー」です。

ネスカフェのコーヒーサーバーをオフィスや事業所に広めるべく、50台限定でモニターを募ったところ、1000を超える応募がありました。

応募したのはおもに職場のムードメーカー(アンバサダー)的な人物で、彼らがキャンペーンの存在に気づいて応募。そのうわさが口コミでひろがっていきました。
こうしてスタートからわずか4年で28万人もの人が「ネスカフェ アンバサダー」となり、ネスレ日本のビジネスを大きく躍進させた、という実績があります。

すでに28万人!「ネスカフェ アンバサダー」とは何か?――「元気な外資系企業」シリーズ〜第3回ネスレ日本 - リクナビNEXTジャーナル

https://next.rikunabi.com/journal/20170223_c1/

大きな変革の時代。企業でも、さまざまな取り組みが進む。では、海外に本社を持つ外資系企業では、どんな取り組みが推し進められているのか、探ってみる外資系特集企画。第3回は、ネスレ日本の「新事業」だ...

まずニッチ市場で評判を確立する

最初にニッチ市場への訴求を行い、キャズムの先にあるメイン市場、そこでリーダーシップを取れるようにします。

リーダーシップが取れればそれに対するフォロワーの口コミを期待できます。その口コミがマス層に広がって結果的にキャズムを超えられる、というフローになります。

まとめ

キャズム理論では、新たな商品やサービスの普及がアーリーアダプターを超えてマジョリティに普及するには、大きな溝=キャズムを超えないといけない、としています。

価値観が異なる初期市場、メイン市場に浸透すればいわゆる「ヒット作」になりますが、そうなるためのハードル=キャズムを超える方法には3つあります。
・普及段階ごとにアピールする内容を変える
・インフルエンサーやアンバサダーを利用して信頼感・安心感を広げる
・まずニッチ市場で評判を確立する

自社の状況や商品・サービスの内容を考慮し、どの方法が適しているのかを見極めて訴求すればキャズムを超えられるでしょう。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連する投稿


マーケター界隈で最近話題になった記事まとめ マーケ系主要メディアのTop5も調査【21年1月】

マーケター界隈で最近話題になった記事まとめ マーケ系主要メディアのTop5も調査【21年1月】

その月のマーケター向け注目トピックを厳選してお届けする新企画「マナミナ編集部が選ぶ今月のマーケティングトピック」。1月はClubhouseの話題が特に盛り上りましたが、各メディアでは、どのような記事が閲覧数を伸ばしたのでしょうか。調査ツール「Dockpit」を使ってマーケター向けビジネスメディア「マーケジン」「日経クロストレンド」「DIGIDAY」の人気コンテンツを調査するとともに、マナミナ編集部の注目記事もピックアップ。それぞれのテーマを紹介しながら、人気の要因を探ります。


商品やサービス普及のカギ「クリティカルマス」とは?

商品やサービス普及のカギ「クリティカルマス」とは?

商品やサービスの普及率が一気に上昇するポイント「クリティカルマス」。用語としては「クリティカルマス」単体でも使われますが、イノベーター理論の一部に含まれます。今回はクリティカルマスの紹介、そして類似する「キャズム理論」との違いを解説します。


新たなデータマーケティング手法「モーメント」とは?

新たなデータマーケティング手法「モーメント」とは?

昨今のデータマーケティングにおいて「モーメント」を重視した分析が進んでいます。消費者が商品やサービスを求める瞬間を「モーメント」として分析し、UX向上に活かそうとするものです。マーケティングにおける「モーメント」とは何で、なぜ重視されるようになったのか説明します。


Web行動ログから顧客理解を深化させるパナソニックの戦略とは|日経クロストレンドFORUM 2020レポート

Web行動ログから顧客理解を深化させるパナソニックの戦略とは|日経クロストレンドFORUM 2020レポート

「パナソニック」が、ヴァリューズ独自のWeb行動ログを分析することで推進した、マーケティング戦略における顧客理解深化とは。2020年11月に開催された「日経クロストレンドFORUM 2020」において、パナソニック株式会社アプライアンス社の富岡氏と、株式会社ヴァリューズ執行役員の子安が登壇し、データと向き合うことで、マーケティング部のメンバー全体により深く消費者インサイトを浸透させていくという、パナソニックのデータ組織構築事例を解説しました。本稿ではそのレポートをお届けします。


ブランド戦略立案に必要な3つのフレームワーク

ブランド戦略立案に必要な3つのフレームワーク

ブランディングのための戦略=ブランド戦略。戦略立案のためにはいくつかのステップを踏む必要があります。その際にフレームワークを利用すると効率が上がります。ここではブランド戦略立案に便利なフレームワーク「3C分析」「SWOT分析」「PEST分析」をご紹介します。


最新の投稿


BTSのアーリーアダプターとマジョリティの違いを検索データで分析!NiziUとの比較も

BTSのアーリーアダプターとマジョリティの違いを検索データで分析!NiziUとの比較も

2020年の第63回グラミー賞の候補にノミネートされるなど、今や破竹の勢いで世界に進出する韓国発の7人組男性ヒップホップアイドルグループ「BTS」。本記事ではそんな「BTS」を検索するユーザーの変化を分析します。比較的初期から「BTS」ワードを検索していたアーリーアダプター層と、最近の世界的人気を受けて検索行動を行うマジョリティ層には、どのような違いがあるのでしょうか。


【3/9(火)】新しい食スタイルの最新動向と、具体的な対策方法・事例紹介 ~植物性食品のトレンド分析から~|ヴァリューズ×ベジプロジェクトジャパン共催ウェビナー

【3/9(火)】新しい食スタイルの最新動向と、具体的な対策方法・事例紹介 ~植物性食品のトレンド分析から~|ヴァリューズ×ベジプロジェクトジャパン共催ウェビナー

今回のセミナーでは、株式会社ヴァリューズのリサーチャーがWEBログデータ・アンケート調査結果のご紹介をしながら、大豆ミート・オートミールなど話題の植物性食品の市場・商品動向を分析、トレンドの背景にある消費者心理を読み解きます。


中国における美顔器の市場概況 ~ 2大人気日本ブランド「ヤーマン」「Dr.Arrivo」の施策を分析

中国における美顔器の市場概況 ~ 2大人気日本ブランド「ヤーマン」「Dr.Arrivo」の施策を分析

日本国内でも美容家電は注目度の高いカテゴリですが、中国においても「美顔器」の出荷台数は例年増加傾向にあり、市場規模は2020年では80億元(約1,280億円)近くの予測となっています。 中国における美顔器の市場概況と2大人気の日本ブランド「ヤーマン」「Dr.Arrivo」の施策を分析し、調査レポートにまとめました。(ページ数|27p)


ホスト以外でもできる?Zoomの画面共有方法の基本と応用

ホスト以外でもできる?Zoomの画面共有方法の基本と応用

Zoomには資料やブラウザを画面共有する機能があります。画面共有すれば、よりリアルなWeb会議やミーティングを行えます。Zoomの画面共有機能のやり方から画面共有ができない場合のトラブルシューティングまで解説します。


中国の次なる巨大マーケット「下沈(かしん)市場」在住者特徴を都市市場と比較調査。懐事情は都市市場とほぼ変わらぬ水準に

中国の次なる巨大マーケット「下沈(かしん)市場」在住者特徴を都市市場と比較調査。懐事情は都市市場とほぼ変わらぬ水準に

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、中国の都市市場および3級都市以下の都市及び農村である下沈(かしん)市場在住の男女600人を対象にアンケート調査を実施し、都市市場/下沈市場在住者それぞれの特徴と購買実態を比較分析しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング