職種別のサイト訪問傾向を分析!BtoBのWebコミュニケーション設計に使える【データアナリストが語る現場のデータ分析】

職種別のサイト訪問傾向を分析!BtoBのWebコミュニケーション設計に使える【データアナリストが語る現場のデータ分析】

本連載「データアナリストが語る現場のデータ分析」では、ヴァリューズのデータ分析チームが実際に行なったプロジェクト内容を語り、そこから得られた知見や分析の手法などを解説していきます。今回のテーマは、オンライン上で法人ユーザーにアプローチする方法です。コロナ禍でオンライン営業の必要に迫られる中、コロナ前後でWEB行動がどう変わったのか、どうアプローチすれば効果的なのか、職種別に分析していきます。


ユーザーのメディア閲覧傾向を職種別に探る

こんにちは。ヴァリューズデータ分析チームの高木です。本連載「データアナリストが語る現場のデータ分析」では、ヴァリューズのデータ分析チームが実際に行なったプロジェクト内容を語り、そこから得られた知見や分析の手法などを解説していきます。

今回のテーマはオンライン上で法人ユーザーにアプローチする方法です。最近よくBtoB企業のクライアント様から頂く課題として、「オンライン上で、ターゲットがどういったメディア・サイトに現れるのか分からず、アプローチ手段が分からない」といったものがあります。

そもそもこうした課題については、コロナ以前はターゲットが消費者向けのBtoC企業のお客様からお聞きする場面が多かった印象があります。しかし、今回のコロナ禍でBtoB企業がオンライン営業の必要に迫られたことにより、ターゲットを企業で働く人向けとした分析の要望が増えてきました。

そこで本記事では、職種別の法人ユーザーのWEB行動ログデータを分析し、オンライン上の行動傾向を把握します。BtoB企業のコミュニケーション設計シーンに使えるのではないでしょうか。

▼前回の「データアナリストが語る現場のデータ分析」はこちら。和田さんがネットスーパーECのUI改善事例を解説しました。

ネットスーパーECのUI改善のため購入にかかる時間を競合と比較した事例とは【データアナリストが語る現場のデータ分析】

https://manamina.valuesccg.com/articles/1058

本連載「データアナリストが語る現場のデータ分析」では、ヴァリューズのデータ分析チームが実際に行なったプロジェクト内容を語り、そこから得られた知見や分析の手法などを解説していきます。今回のテーマはネットスーパーECサイトのUI改善。ユーザーのスムーズな購買体験の障害となっていた箇所を洗い出し、改善策を提案したプロジェクトとはどのようなものだったのでしょうか。

コロナ前後で起きたWEB行動変化の全体感

まずはコロナ前後のWEB行動変化の概要を捉えるため、一人当たりネット利用時間を職種別に集計し、昨対比を見てみました。

コロナ前と比較して、全体的に1ヶ月の一人当たりネット利用時間が105%と伸びていることがわかります。リモートワークなど家で過ごす時間が長くなり、ネットを利用する時間が伸びている様子です。特に伸びている職種は「クリエイター/デザイナー」「情報システム」といったパソコンで作業する仕事が多く、約130%以上に伸長しています。また、「医師」といった職種も約110%に伸長しているようです。

※集計期間:2019年12月、2020年12月

職種を「クリエイター/デザイナー」「情報システム」「医師」、また「医師」と対比するために「看護師」の計4つに絞って、詳細にみていきましょう。

一人当たりネット利用時間の推移を見てみると、どの職種も4月または5月にピークが存在しています。1回目の緊急事態宣言が2020年4月であり、その影響でネット利用時間が長くなっていると推測できます。

また、下図のように性年代の割合をみると、全体と比較して「看護師」や「クリエイター/デザイナー」は女性の割合が高く約70%占め、「医師」や「情報システム」は男性の割合が高く約80%を占めています。

※集計期間:2020年6月~2020年12月

「あの職種」の人はどんなサイトを特徴的に閲覧するのか?

次に、ターゲットに効果的にアプローチできる面を探るため、上記でみた職種のユーザーが特徴的に閲覧されているサイトを集計してみましょう。日本全体のネット行動と比較して、どれだけ特徴的なサイトかを示す「特徴値」を定義し、職種ごとに特徴的な閲覧サイトTOP10を集計しました。

※集計期間:2020年6月~2020年12月

まず「医師」と「看護師」のサイトランキングを比較すると、同じ医療業界でも閲覧しているサイトの傾向が異なることがわかります。「医師」だと「日経メディカルオンライン」やm3関連サイトといった医療従事者のみしか閲覧できないサイトがTOP3にランクイン。やはり医療関連情報を収集する場所として上記のようなサイトが代表的であり、「医師」に効率的にアプローチできるサイトといえます。

また、医師で2位の「日経メディカルオンライン」で閲覧されているページをみると、WEBセミナー関連のページ閲覧数が増加していました。オンライン営業の必要性が高まる今、WEBセミナーという形で「医師」にアプローチすることが増えてきた傾向が伺えます。

一方で「看護師」に特徴的に閲覧されているサイトを見ると、1位は看護師のためのコミュニティサイト「看護roo!」でした。「看護roo!」は看護師のためのWEBマガジンで、転職サポートサービスも提供しています。

看護師のための求人・転職サイトは他にも多くランクインしていました(医療ワーカー(2位)、ナース人材バンク(3位)など)。慢性的に看護師の数が不足していた状況に加え、体力的にハードな職場環境(夜勤が多い等)が看護師の転職を促進し、その傾向がサイトランキングに反映されたのかもしれません。

「情報システム」だと、エンジニアリングに関する知識を記録・共有するためのサイト「Qiita」が1位にランクイン。メディアサイトとしてはIT関連に特化した「アットマーク・アイティ」「ITmedia」といったサイトが特徴的に閲覧されている様子です。また「クリエイター/デザイナー」だと、Adobe IllustratorやAdobe Photoshopといった画像描画・編集ツールを提供している「アドビシステムズ」が1位に来ていました。他にもSNSとしてはアイデア出しに使えるサービス「Pinterest」が特徴的でした。

医師はお酒や登山が好き…アンケートも絡めて考察

最後に、オフラインも含めた行動を把握するため、アンケート結果と紐付けて、「どういったチャネルで情報を入手しているか」「興味関心ごとは何か」を「医師」に絞って集計してみました。

※集計期間:2020年6月

「医師」の新しい情報の入手先としては「インターネット」経由が上位を占めています。その中でもインターネット掲示板やブログの書き込みが特徴的。また、興味関心をみると、全体と比較して「お酒」「登山・トレッキング」「不動産投資」が特徴的であるようです。医療関係のサイト以外でも、こういった趣味関連のサイトやコミュニティでも医師へのアプローチは可能でしょう。

まとめ

最後に本記事での分析をまとめます。

・コロナ禍以降、オンライン営業の必要性が高くなっている
・全体的に一人あたりネット利用時間が増加。PCで作業をする職種以外にも、例えば「医師」といった職種でも増加している
・法人ユーザーへ効果的にアプローチできる面を探すため、職種別に特徴的に閲覧されているサイトランキングを集計。例えば「医師」だと、日経メディカルオンラインやm3関連サイトといったサイトがランクイン。またWEBセミナー関連の閲覧数も増加している
・法人ユーザーのオフラインも含めた行動を把握するため、アンケート結果と紐付けて、本陣ユーザーの意識面を調査。例えば「医師」だと、情報の入手先としてインターネットが多く、興味関心ごととして、「お酒」「登山・トレッキング」「不動産投資」といったトピックが特徴的

今回の結果をみなさまの業務にお使いいただければ幸いです。また、分析では弊社・ヴァリューズ保有のモニターによるWeb行動ログデータを使用しています。分析手法に関するご質問や、こんなデータ分析ができないか、など、ぜひお気軽にご相談ください。

【分析概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2019年12月〜2020年12月のデータ
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

調査データのお問い合わせはこちら

この記事のライター

「マナミナ」を運営している株式会社ヴァリューズのデータアナライズグループです。統計解析のRやデータ可視化のTableauなど、データ分析に詳しいメンバーが集まっています。

関連する投稿


What kind of people can only be reached through Instagram? And Twitter? Users “only” available from each major platform

What kind of people can only be reached through Instagram? And Twitter? Users “only” available from each major platform

Many think “most people use both X (formerly Twitter) and Instagram.” There are users who can only be reached through certain platforms. Using app activation data, we researched how many and what kind of users can be reached exclusively through each app and analyzed which users are most likely to purchase via ads, etc.


Instagramじゃないとアプローチできない人ってどんな人?Twitterの場合は?主要SNSの「のみ」ユーザーを調査

Instagramじゃないとアプローチできない人ってどんな人?Twitterの場合は?主要SNSの「のみ」ユーザーを調査

「X(旧Twitter)とInstagram、大体みんな両方使っているだろう」と何となく思っていませんか?狙いたいターゲットによっては、どちらかの媒体でしかアプローチできないユーザーが意外にも存在するかもしれません。今回はスマホアプリの起動データから、それぞれの「のみ」利用ユーザーがどれくらい存在し、彼らがどのような特徴をもった人々なのかを調査。広告が購買に繋がりやすいのはどちらの「のみ」ユーザー?など、施策を見据えて分析していきます。


書籍『データ分析失敗事例集』の著者インタビュー!分析で陥りがちな失敗とは

書籍『データ分析失敗事例集』の著者インタビュー!分析で陥りがちな失敗とは

他者にデータ分析を依頼する際、または自身が分析する際、失敗が起こらないよう、どんなことに気を付けているでしょうか。 2023年8月3日に出版された『データ分析失敗事例集』(共立出版)では、25の失敗事例が掲載されています。株式会社ヴァリューズからは、輿石 拓真、川島 彩貴、竹久 真也の3名が著者として参画。敢えて成功ではなく失敗を取り上げた出版の背景や、失敗しないためのポイントを伺いました。 データ分析を担当する方だけでなく、データ分析を依頼する方、依頼の可能性のあるマーケターの方も必見です。


スマートニュースのユーザーはどんな人?データからみる消費ニーズと広告の可能性

スマートニュースのユーザーはどんな人?データからみる消費ニーズと広告の可能性

SmartNews(スマートニュース)は、約3000ものメディアから集めたニュースやコラムなどをまとめたニュースメディアです。スマートニュースアプリを利用するユーザーはどのような人たちなのか。どのような消費ニーズがあるのか。Web行動ログデータとアンケートデータをもとに検証しました。


「そもそもデータ量が少ない」地方の課題を克服!生活者目線とデータを掛け合わせた、地方のデータマーケティングとは

「そもそもデータ量が少ない」地方の課題を克服!生活者目線とデータを掛け合わせた、地方のデータマーケティングとは

「データの重要性はわかっているが、自社でも活用できるかわからない」と考えている企業は多いのではないでしょうか。地方にあり、都会とは状況が異なると思っている企業もあるかもしれません。今回紹介するアド・セイル株式会社は、香川県にあるデジタルマーケティング企業。地域密着という強みを活かした取り組みのほか、地方企業がデータマーケティングを行う際の課題や可能性について、同社の関氏に伺いました。


最新の投稿


三井不動産、ECブランドの成長を支援するプラットフォームを提供開始

三井不動産、ECブランドの成長を支援するプラットフォームを提供開始

三井不動産株式会社は、統合コマースプラットフォーム「ecforce」を提供する株式会社SUPER STUDIOとともに、ECブランドの成長を“商業”と“物流”の両面から支援するプラットフォームを提供開始したことを発表しました。


【TVドラマランキング】共感性や独自性が話題に。「不適切にもほどがある!」「君が心をくれたから」など

【TVドラマランキング】共感性や独自性が話題に。「不適切にもほどがある!」「君が心をくれたから」など

近年動画配信サービスが普及し、時間や場所にとらわれず様々なジャンルの動画を手軽に視聴できるようになりました。テレビ離れが幅広い年代で囁かれている時代、話題になるテレビドラマとは、どのようなものなのでしょうか。今回は、2024年1月~3月に放送されたドラマについて、認知度や視聴方法、満足度、満足理由などをランキング化。その実態を探りました。


配膳ロボットの認知率は約9割、現在利用率は6割 1年後には利用率1.4倍伸びる!?【LINEリサーチ調査】

配膳ロボットの認知率は約9割、現在利用率は6割 1年後には利用率1.4倍伸びる!?【LINEリサーチ調査】

LINEリサーチは、今と近未来の流行予想を目的として「配膳ロボット」にかんする流行予想調査を実施し、その結果を公開しました。


約4割がメルマガきっかけでの商品購入経験あり/もっとも読まれやすいのは「19~20時台」【ラクス調査】

約4割がメルマガきっかけでの商品購入経験あり/もっとも読まれやすいのは「19~20時台」【ラクス調査】

株式会社ラクスは、「メルマガを読む時間帯」や「読みたいと思うメルマガの内容」など、一般のメール受信者を対象としてメールマガジンに関する調査を実施し、結果を公開しました。


BitStar、2024年1-3月「インフルエンサーパワーランキング」を発表!アニメとコラボレーションした楽曲が高視聴数を記録

BitStar、2024年1-3月「インフルエンサーパワーランキング」を発表!アニメとコラボレーションした楽曲が高視聴数を記録

株式会社BitStarは、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「BitStar Match」のデータに基づき、2024年1月~3月に活躍した動画クリエイターや動画チャンネルのランキングを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ