違いはわかる?顧客のセグメンテーションとターゲティング

違いはわかる?顧客のセグメンテーションとターゲティング

多様化するニーズと目まぐるしく変化する市場に対しては、なるべく少ないリソースで最大限の効果を得られるマーケティング戦略が求められます。その基本として顧客の「セグメンテーション」と「ターゲティング」の設定が挙げられます。場合によっては近しい意味になり、混同しがちな「セグメンテーション」と「ターゲティング」を整理して解説します。


セグメンテーションとは

セグメンテーションとは、一般的に「分割する」「区分けする」を意味するワードで、
マーケティング戦略では、対象とする市場を細分化したものを指します。市場を細分化する意義は、一定のニーズを持つ層へ自社の商品・サービスのアピールを効率的に行える点にあります。

たとえば、カレー市場において「インドカレー」だけ対象にするのか、「洋風カレー」「お子さまカレー」など含む広い市場をターゲットにするかで、マーケティングに必要なリソースは大きく変わってくるでしょう。

セグメンテーションの代表的な指針(変数)

セグメンテーションを行うにあたっては指針として「変数」が用いられます。代表的な変数として以下の4つが挙げられます。

地理的変数(ジオグラフィック変数)
国、地域市町村、気候などの分類

人口動態変数(デモグラフィック変数)
年齢、性別、職業、所得、学歴、ライフステージ等の客観的な基準による分類

社会的心理的変数(サイコグラフィック変数)
ライフスタイルやパーソナリティ、志向や価値観などによる分類

行動変数
商品に対する反応(購買状況、ベネフィット、ロイヤルテイ)などによる分類

こうした変数を用いて消費者や顧客を類型化して分類します。
セグメンテーションの方法について、詳しくは以下のリンクをご参照ください。

STP分析でセグメンテーションする具体的な方法と事例

https://manamina.valuesccg.com/articles/695

自社にとって優位なマーケティング戦略を練るうえで欠かせないフレームワークSTP分析。今回STPのうちのS=セグメンテーションについて、市場を細分化する具体的な方法やポイント、事例をご紹介します

セグメンテーションで注意すべきは、単に市場を細分化すればいいわけではない、ということです。こうした変数の中から自社に意味ある軸を見つけ出すのが、セグメンテーションの最大の目的になります。

ターゲティングとは

ターゲティングとは、どの顧客層をターゲットにするか、そして数ある市場の中から自社の商品・サービスを売り込むかの決定を指します。自社のリソースにあった市場を選定できるかが、マーケティング戦略の成功を左右してきます。

セグメンテーションによって細分化した市場で、どの顧客層に狙いを絞るのかというターゲティングを行う際には以下のような指針が利用されます。

ターゲティングの代表的な指針

ターゲティングを行う際の指針として、おもに以下の6つ(6R)が利用されます。

市場規模(Realistic Scale)
その市場は売上や利益をあげられる規模があるかどうかを確認します。基本的に利益は市場の大きさと比例する可能性が高まりますが、大きければいいというものでもありません。別の言い方をするならば、採算が合わなければその市場は魅力的ではない、というわけです。

市場の成長性(Rate of Growth)
将来的に成長する可能性のある市場か?現在小さい規模であっても将来成長する見込みがあれば焦点を当てる対象になるかもしれません。

顧客の優先順位と波及効果(Rank & Ripple Effect)
優先順位を見極め、ターゲティングを行っているかがポイントとなります。自社の強みをより活かせる市場や、広告や口コミの波及が大きい市場は優先順位が高くなります。

到達可能性(Reach)
実際に商品やサービスを提供したり広告を届けられるかを再確認します。どんなに良い商品やサービスでも、物理的な理由などで提供できなければ現実的ではありません。

競合状況(Rival)
競合他社がどの程度存在するのか、競合他社に対して差別化できるかどうかがポイントです。

測定可能性(Response)
効果測定できるかどうかを確認します。効果測定できなければビジネスの目標達成の成否がわからないだけでなく、スタッフの評価基準も明確にできません。

セグメンテーションとターゲティングの違い

セグメンテーションとターゲティングの違いをさらに端的に解説すると、セグメンテーションは市場や顧客層を地理的変数など4つの変数で区別する作業、ターゲティングはセグメンテーションにより区分された市場(顧客層含む)の中からターゲットにする顧客層を決定する作業となります。

STP分析=セグメンテーション+ターゲティング+ポジショニング

セグメンテーションとターゲティング、そして「ポジショニング」という概念を加えると、「STP分析」というマーケティングのフレームワークを使えるようになります。

ポジショニングとは、対象市場の中で同業他社との差別化を十分に行いつつ、自社の商品やサービスの魅力を顧客層にアピールする作業です。

STP分析のやり方

S(セグメンテーション)T(ターゲティング)P(ポジショニング)の並びのとおり、まずはセグメンテーションで市場を細分化します。これによって市場を絞り込み、より効率的なマーケティングを目指します。その場合には上で紹介している地理的変数など4つの変数を利用します。

続いてターゲティングの項でも紹介した6つの要素を使い、あらかじめ細分化してある市場のうち、どこを対象にするかを選びます。

そして最後に、ポジショニングによって対象市場の中で、同業他社に対して自社が優位な地位を確立します。優位に立つには、価格や品質など他社に勝てる要素が必要です。

またあらかじめ競争優位なポイントを把握した上で参入すれば、効率的なマーケティングが可能です。

マーケティングの基礎!STP分析を使った市場参入

https://manamina.valuesccg.com/articles/553

STP分析はマーケティングのフレームワークで、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの頭文字を取ったもの。新規参入にあたって、市場全体の中でどの分野を狙い、自社が競争優位なポジショニングはどこかを決めるのに役立ちます。

まとめ

セグメンテーションとターゲティングの違いをまとめると、セグメンテーションは市場を細分化する作業、ターゲティングは細分化した市場のどこを対象にするか決定する作業となります。セグメンテーションとターゲティングで市場、ターゲットを決められると、ポジショニングも交えたSTP分析によって、自社にとって優位なマーケティング戦略を練れるようになります。

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