マーケティングの基礎!STP分析を使った市場参入

マーケティングの基礎!STP分析を使った市場参入

STP分析はマーケティングのフレームワークで、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの頭文字を取ったもの。新規参入にあたって、市場全体の中でどの分野を狙い、自社が競争優位なポジショニングはどこかを決めるのに役立ちます。


STP分析とは

マーケティング戦略を決めるのに使う考え方・仕組みがフレームワークです。フレームワークを使えば、集めるべき情報や市場や自社の客観的な立ち位置を素早く把握できます。

STP分析は3C分析などと並ぶマーケティングの基礎的なフレームワークで、Segmentation・Targeting・Positioning(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)の頭文字を取ったものです。アメリカの経営学者でマーケティングの権威フィリップ・コトラーが提唱しました。

STP分析は、市場で自社が有利なポジションを確立するのに役立ちます。

STP分析の進め方

市場を細分化し、その中でターゲットにする市場(顧客)を選定し、最後に競合に対して自社が優位なポイントを確認します。

セグメンテーション(segmentation)

STP分析でセグメンテーションする具体的な方法と事例

https://manamina.valuesccg.com/articles/695

自社にとって優位なマーケティング戦略を練るうえで欠かせないフレームワークSTP分析。今回STPのうちのS=セグメンテーションについて、市場を細分化する具体的な方法やポイント、事例をご紹介します。

セグメンテーションでは市場を細分化します。市場を絞り込めば、市場全体を対象にするより効率的なマーケティングが可能です。

市場を細分化する要素として代表的なものを列挙します。

1.地理的変数
国・地方・都市・市区町村など。住宅街のコンビニで生鮮食品を取り扱っているのは、住宅街とオフィス街で品揃えを変えている例です。政令指定都市に出店するのは、都市の規模によるセグメンテーションです。

2.人口動態変数
年齢・性別・職業・所得・学歴・家族構成など。20歳から34歳までの男性を指す「M1層」は年齢と性別で市場を細分化した例です。

3.心理的変数
価値観・ライフスタイル・性格・好みなど。例えばインドア派とアウトドア派で顧客の志向が異なるのは理解しやすいでしょう。

4.行動変数
曜日・時間帯・経路・頻度など。飲食店で平日はサラリーマン、休日は家族と客層が入れ替わるのは行動変数の一例です。

ターゲティング(targeting)

ターゲティングでは細分化した市場のうち、どこを目標にするかを選びます。
ターゲットを選定する指標として、6Rが用いられます。

市場規模(Realistic Scale)
絞り込んだ市場が小さすぎないか。利益を上げるのに十分な市場規模が必要です。

市場の成長性(Rate of Growth)
今後成長するまだ小さな市場では、将来大きな利益を挙げられる可能性があります。

顧客の優先順位と波及効果(Rank & Ripple Effect)

到達可能性(Reach)
顧客に商品やサービスを届けられるか。東京の飲食店が大阪に対してマーケティングする効果は薄いでしょう。

競合状況(Rival)
ライバルが既に大きなシェアを得ている場合、その市場は魅力的とは言えません。

測定可能性(Response)
顧客に対する施策の効果が計測できるか。計測できれば施策を改善できます。

ポジショニング(positioning)

ポジショニングでは対象市場の中で、同業他社に対して自社が優位なポジショニングを確立します。優位に立つには、価格や品質など他社に勝てる要素が必要です。

また予め競争優位なポイントを把握した上で参入すれば、効率的なマーケティングが可能です。

STP分析の代表例

コカ・コーラ

世界最大のソフトドリンクメーカーであるコカ・コーラ社は、マーケティングのケーススタディによく使われます。炭酸飲料のイメージが強いと思いますが、日本だけで年間100種類以上の新製品が投入され、「ジョージア」「綾鷹」「爽健美茶」「い・ろ・は・す」は、海外にも展開され10億ドルブランドに達した日本発のブランドです。

「たとえば、緑茶は寿司や刺身などの和食になくてはならない飲料です。それが中華料理などの脂っこい食事の際にはウーロン茶を選択し、朝食には栄養バランスとカロリーに配慮して野菜ジュースを選択する」

同じ茶系飲料でもセグメンテーションに合わせて緑茶・烏龍茶・紅茶・トクホ製品を出し分けていたり、ペプシというわかりやすい競合に対して差別化できる要素は?といったポジショニングの勉強が可能です。

ユニクロ

カジュアル衣料を展開するユニクロは日本を代表するアパレルメーカーです。フリースにカシミヤのセーター、ヒートテックなど低価格で高品質のヒット商品を次々と送り出しています。

ユニクロでは「Made For All」、すなわち国籍・年齢・職業・性別などあらゆる区別を超えた万人のための服を目指しています。この考え方は一見、市場を細分化しターゲティングするSTP分析に合致しないように見えます。

ユニクロのターゲットは「カジュアルかフォーマルか」「トレンドかベーシックか」の軸でいうと、カジュアルでベーシックな「LifeWear」というセグメンテーションです。

GAPやZARA、H&Mなど他のファストファッションとユニクロを分ける違いは顧客を絞り込むのではなく、心理的変数で商品を絞り込むセグメンテーションだったのです。

ディズニー

テーマパークやアニメを展開するディズニーも、マーケティングのケーススタディによく使われています。

例えばディズニーは年齢に基づいて市場を細分化していて、12歳以下の子ども・ティーンエイジャー・大人向けにそれぞれマーケティング戦略を立てています。

一般的なテーマパークは12歳以下の子ども向けに作られていて、一緒に来る大人にとっては魅力的ではありません。市場を細分化してターゲティングした結果、大人は無視された形になっています。

一方、ディズニーでは12歳以下の子どもの親に対してサポートするマーケティング戦略を開発しました。12歳以下の子どもに関する意思決定をするのは、親だからです。

STP分析を活用すれば優位なポジションでビジネス展開できる

ディズニーの例に見られるように、市場を細分化した結果それぞれのセグメンテーションに対する自社の課題、つまりメインターゲットは12歳以下の子どもだが親に対してもマーケティング施策が必要という課題がわかるようになります。

また12歳以下の子ども、まで絞り込めればペルソナを設定してカスタマージャーニーを作成し、それぞれの接触ポイントでの課題に対してマーケティング施策を打てるようになります。

​​

メールマガジン登録

最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連するキーワード


フレームワーク STP

関連する投稿


バリュープロポジションキャンバス(体験設計のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

バリュープロポジションキャンバス(体験設計のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回は、バリュープロポジションキャンバス(体験設計のアウトプット)について寄稿いただきました。※本記事は菅原さんの書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)と連動した内容を掲載しています。


価値マップ(顧客理解のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

価値マップ(顧客理解のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回は、価値マップ(顧客理解のアウトプット)について寄稿いただきました。※本記事は菅原さんの書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)と連動した内容を掲載しています。


リーンキャンバスとは?定義やメリット、書き方を紹介【無料テンプレートあり】

リーンキャンバスとは?定義やメリット、書き方を紹介【無料テンプレートあり】

リーンキャンバスとは、事業の構造を簡単に可視化できるフレームワークの1つです。事業を構成する9つの要素を分解し、1枚の紙に書き上げることで、事業のビジネスモデルの全体像を可視化できます。リーンキャンバスを活用すれば、新規事業やビジネスモデルの解像度を高めるだけでなく、スピーディーな設計が可能になります。そこで本記事では、リーンキャンバスの基本的な内容に加え、リーンキャンバスの要素や使い方をご紹介します。また、リーンキャンバスでビジネスモデルを検討したい方に向けた無料テンプレートも用意しています。 リーンキャンバスの使い方から、実際の活用方法を知りたい方は参考にしていただけると幸いです。


バリュープロポジションとは?定義や重要視されている理由、成功事例や作り方を解説

バリュープロポジションとは?定義や重要視されている理由、成功事例や作り方を解説

バリュープロポジションとは、顧客のニーズが高く自社だけが提供できる価値のことを言います。 マーケティング用語の一つですが、近年ユーザーのニーズが多様化する中でバリュープロポジションの重要性が高まっています。 そこで本記事ではバリュープロポジションについて解説するとともに成功事例やフレームワーク、 バリュープロポジションの書き方や、バリュープロポジションが失敗に終わるケースについて解説します。 バリュープロポジションを理解し、自社のビジネスに取り入れて、競合他社に負けない 事業作りを目指していきましょう。


【マーケター入門編】マーケティング基礎知識まとめ28選 ~ 用語やフレームワーク、便利ツールまで

【マーケター入門編】マーケティング基礎知識まとめ28選 ~ 用語やフレームワーク、便利ツールまで

新年度がスタートし、マーケティングの部署へ新たに配属となった方も多いかと思います。そこで今回は、“まなべるみんなのデータマーケティングマガジン”である『マナミナ』で、よく見られているマーケティングのナレッジをまとめました。マーケティング用語や注目のビジネスモデル、マーケティングに役立つツールなど、スキマ時間にチェックして、マーケティングの基礎知識を身につけておきましょう。


最新の投稿


【2025年7月7日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2025年7月7日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


ライブ配信から商品購入に至った視聴者は3割超!ライブ配信は「楽しむもの」から「売る手段」へ着実に進化【PRIZMA調査】

ライブ配信から商品購入に至った視聴者は3割超!ライブ配信は「楽しむもの」から「売る手段」へ着実に進化【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、企業のマーケティング・PR担当者と、ライブ配信を視聴したことのある10代~60代の一般視聴者を対象に、「ライブ配信を活用したリアルタイムマーケティングに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


みんなの注目キーワードは?週間検索トレンドランキング(2025/06/02〜2025/06/08)

みんなの注目キーワードは?週間検索トレンドランキング(2025/06/02〜2025/06/08)

ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」をもとに、週次の検索急上昇ワードランキングを作成し、トレンドになっているキーワードを取り上げます。


世界のマーケティング責任者の71%が今後3年間、生成AIに年間1,000万ドル超を投資する計画【BCG調査】

世界のマーケティング責任者の71%が今後3年間、生成AIに年間1,000万ドル超を投資する計画【BCG調査】

ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、アジア、欧州、北米におけるさまざまな業界の最高マーケティング責任者(CMO) を対象に、生成AIに関する調査を2023年、2024年に続いて実施し、その結果に基づくレポート「How CMOs Are Scaling GenAI in Turbulent Times」を発表しました。


中国におけるキャラクターコンテンツ愛好者実態調査

中国におけるキャラクターコンテンツ愛好者実態調査

中国国内でも盛況なキャラクターコンテンツ市場。本資料では、どのようなキャラクターコンテンツが好まれているのか、派生商品やイベントなどの人気動向などにも注目し、中国におけるキャラクターコンテンツ愛好者の実態について行った定量・定性調査の結果をまとめました。 グッズの購入実態やコラボ商品・イベントへの意向なども聴取したことで、中国人キャラクターコンテンツ愛好者において受容度が高いコラボ施策も把握可能となっています。<br>※本資料は記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ